もし前の方がよかったという声がありましたら再掲載も検討します
新1日目:瑞鶴と提督さん
私は翔鶴型航空母艦その二番艦、瑞鶴。
ここ、ブルネイ第二十泊地で約一か月前に建造され、その日から秘書艦としての任に就いている。
*ここは泊地ですが鎮守府と表記する場合があります。
ブルネイ第二十泊地はブルネイ地方の泊地を束ねる第一泊地から遠く離れていて資源補給のための船が来る以外には特に来訪者はいない。
朝、〇五〇〇に起きるとまずは提督を起こすのが最初の仕事だ。
だがこれは大して苦労せずに終えることができる仕事だ。なぜなら
「提督さん、朝だよ~」
「ああ瑞鶴、おはよう」
提督は瑞鶴が来るときにはすでに起きているからである。
提督は瑞鶴が来ると一緒に海岸沿いの道をランニングする。
最初、瑞鶴は一緒に走ることを嫌がっていたが、提督の「体力をつけておいて損をすることはない」という持論に押されて同行していた。
今は体力も十分つき10キロのランニングはさして苦労するようなものではなくなっていた。道中の風景を眺めながら走ることが瑞鶴のささやかな楽しみの一つだった。
一時間後、ランニングから戻ると朝食の時間だ。
この鎮守府は他と比べて艦娘数が多いとはお世辞にも言えない。
そのため食堂で働く給糧艦 間宮が過労で倒れるという可能性は微塵もない。
(昔、とある鎮守府で200人超の食事を一人で作っていた間宮が過労死するということがあったらしい)
艦娘数に対して明らかにテーブルが多いので席のとりあいになることはない。
提督と瑞鶴は食事を受け取り席に着いた。
今日の朝食はご飯、海苔、梅干し、おそらく海から獲ってきたのであろう魚の塩焼き、そしてなめこの味噌汁だ。
瑞鶴はうっと息を詰まらせた。
正直に言うと瑞鶴はなめこが嫌いだ。
どれくらい嫌いかというと食べなければたとえ三食(一日分の食事)抜かれることになろうとも食べないレベルだ。
しかしランニングで腹も空いているし食べなければ倒れてしまうだろう。
それにもし残しなどしてしまったら間宮にどんな目にあわされるか分かったものではない。
不幸なことにいつもは瑞鶴の嫌いなものを食べてくれる艦娘は食堂に居なかった。もしかしたらまだ寝ているのかもしれない。
「提督さん~」
瑞鶴が泣きそうな声で提督にすがりついた。いや、すでに半分涙目だ。
「?」
提督が瑞鶴の後ろをなにやら指すので振り返ってみると後ろには間宮がいた。しかもさっきは間違いなくつけていなかった14㎝単装砲を二門も構えていた。
「瑞鶴さん~」
「は、はい?」
「お残しは~?」
「絶対だめ!」
「はい、その通りです。ではちゃんと食べてくださいね~。幸い誰も来なさそうなので瑞鶴さんが食べるまでいますね~」
「ひ、ひいっ!」
瑞鶴が悲鳴を漏らした。
そんな瑞鶴を傍目に提督は黙々と箸を進めすでに八割方食べていた。いや、単に間宮が怖いから無言なのかもしれない。
瑞鶴が味噌汁以外を食べ終えた瞬間、声が聞こえてきた。
「間宮さ~ん、朝食くださ~い」
「あ、はいはいすぐに行きますね~」
間宮が席を立った瞬間に提督と瑞鶴の間でアイコンタクトが交わされ頷きあった。
次の瞬間には瑞鶴の椀は提督の手に収まり提督は五秒で飲み干しまさに瑞鶴のトレーに戻そうとした瞬間、横からとても冷えた声が飛んできた。
「提督さ~ん、そのお椀はもしかして瑞鶴さんのですかね~」
二人が首をガクブルさせながら回転させると横にはなにやら暗いオーラを纏った間宮が笑顔で立っていた。
提督が無言の圧力に屈し首を縦に振った瞬間、間宮が行動を起こし騒がしかった食堂が一瞬で静まり返った。
「提督、前にも申しあげましたが瑞鶴さんの嫌いなものを食べてあげてはいけないって言いましたよね~」
もちろん提督には首を縦に振る以外の選択肢はない。
「大体提督は瑞鶴さんに甘すぎます。好き嫌いはきちんと克服させなければダメじゃないですか。見てください、あの電ちゃんでさえナスを食べてるんですよ」
(無言の圧力に負けたからでは)
と二人は思ったがもちろんそんなそぶりはおくびにも出さない。
*以前電はナスが大嫌いだったがついに三食ナスしか出ないようになり仕方なく食べるようになった。今でも毎日電の食事にはナス料理が一品つく。
「では味噌汁もう一回よそってくるのでちゃんと食べてくださいね~」
間宮はそういうと味噌汁をよそって戻ってきた。その間、わずか五秒。逃げることすら許されない。
「さあ、瑞鶴さん召し上がれ~」
食堂中の艦娘がこちらを見ていた。
瑞鶴は手に椀を持ち十秒ほど静止したのち意思を固めたのか一気に飲み込んだ!
これならば瑞鶴が嫌いななめこのぬめりを感じることもない。
瑞鶴が飲み込んだ瞬間ホッとした空気が流れたのはいうまでもない。
間宮は満足したのかスキップしながら調理場へ戻って行った。
瑞鶴はたっぷり30分もテーブルに突っ伏したままだった。
それを見かねた提督は瑞鶴をおんぶして執務室まで運びベッドに寝かせてあげ毛布を掛けると何事もなかったかのように机に向かい書類の処理を始めた。
瑞鶴が目を覚ましたのは正午をすぎたころだったらしい。
新1日目、どうでしたか?
個人的には前よりこの方が良い気がします。
なぜか会話が少なくなってしまいました。
ただこの方がいいのかもしれませんね。
もしかしたら今後は会話が減るかもしれません。