秘書艦 瑞鶴の日常   作:一枝光真

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2章これにて終わりです。


18日目:談義と食事 続

「あ、うん。赤城さんがご飯どうするのって聞いてきたんだけど…」

 

「えっもうそんな時間なのか!?」

 

提督が慌てて時計を見るとすでに時刻は1830。赤城が我慢できないのも無理はない。

 

提督は少し考えると財布から金を取り出し瑞鶴に渡した。

 

瑞鶴が確認すると四万円あった。

 

「これで赤城に渡してきてくれ。19人分ということをよく強調してくれ」

 

「?提督さん、いま大本営にいるのは20人だよ?」

 

「いやそれであってる。金を渡したら門のところまで来い。奢ってやる」

 

「えっ!?いいの?財布大丈夫?」

 

「なんでお前は俺の財布の状態を知っているんだ。だいたい払えないのに奢るなんて言わないよ」

 

「そ、そうね。じゃあ赤城さんに渡してくる」

 

瑞鶴が猛ダッシュして部屋から出ていった。

 

「…いい嫁じゃないか」

 

「まだ嫁じゃないよ」

 

「さっさと練度あげてやれよ」

 

少将は呆れ気味にいった。

 

「じゃあ俺もどこか適当に飯食ってくるわ。また明日でも話せそうなら話そう」

 

「ああ、また明日」

 

少将と別れて提督は大本営から横須賀市街地へと抜ける門に向かった。

 

門まで行くとすでに瑞鶴がいた。

 

提督は時計を見て目を疑った。

 

まだ瑞鶴が部屋をでてから10分しか経っていない。

 

赤城たちがいるところからの距離を考えたら普通は20分はかかるはずだ。

 

「…そんなに急がなくてもよかったのに」

 

提督の独り言は瑞鶴まで聞こえたようで瑞鶴がこっちを見た。

 

「お~瑞鶴、早いな」

 

「えっ、いま来たところだけど?」

 

相変わらず分かりやすい嘘だと提督は思った。

 

「そういえば赤城たちは大丈夫だったか?」

 

「うん、赤城さんは額が少ないって言ってたけど他のみんなは気持ちよく送り出してくれたよ」

 

「1人あたり2000円あれば十分だろ…。アイツは何人前食べるつもりだったんだ」

 

提督が呆れていうと瑞鶴は

 

「赤城さんは奢りなら何人前でもいけます!とか言ってたよ」

 

と答えた。

 

提督は絶句するしかなかった。

 

そんなこんなで話も弾み(?)二人は店の目に到着した。

 

「なんだかぼろくない?提督さん、本当にここがおススメの店なの?」

 

瑞鶴は割と本気で疑っているようだ。

 

「外観だけだ。実際俺はここに週4回も通っていた時があったんだ。味は保証する、味はな」

 

「…」

 

提督が扉を開けると威勢のいい声が聞こえてきた。

 

「ん?お前もしかして2年前くらいによく来ていた練習生じゃないか!久しぶりだな」

 

「よくわかりましたね。…それにしても店内は相変わらず悲しい状況ですね」

 

「これは先月練習生が卒業したせいだ。1か月もすればまた繁盛してるさ」

 

店主の目が泳いでいた。

 

まあ外観は汚いから入りにくいんだろうなと提督は思った。

 

とにかく空いているということは落ち着いて食事ができるということだ。

 

提督がカウンター席に座ると瑞鶴もそれに倣った。

 

「じゃあおまかせしていいですか?」

 

提督が店主に聞いた。

 

「お前、金があるからって注文が雑すぎるだろ。搾り取ってやろうか」

 

「まさか店主がそんなことをする人だったなんて!グルメサイトのレビューにマイナスでもつけておいてやろうかな」

 

「…まったく態度まで大きくなりやがって。しょうがない定価二割増で勘弁してやるよ」

 

「まあそれならいいですよ。それじゃ腹減ってるんで早く作ってくれませんか?」

 

提督がそういうと店主は調理にとりかかった。

 

「ちょっ、提督さん。財布大丈夫なの?」

 

「ん?ああ、二割増ぐらいなら全然平気だぞ?」

 

「それならいいけどさ、なんで二割増の料金受け入れてるの?」

 

「ここはな練習生が教官に連れてこられる店なんだよ。当然練習生にお金がないのは分かっているから安くしてくれてるんだよ。それでその補填を提督となった俺たちから巻き上げることでしているんだ。俺も昔はこの店に世話になったしな。後輩の財布のためにもこれくらいはしてあげないと」

 

「ふ~ん」

 

話をしているうちに料理が次々と出てくる。

 

店主の外見からは想像もできないほどそのどれもが絶品だった。

 

2時間後提督は支払いを終えて瑞鶴を連れて店をでた。

 

「そういえば提督さん」

 

「ん?なんだい瑞鶴」

 

「どうして今日私に奢ってくれたの?」

 

「帰ったらお前が鳳翔のところで奢ってくれるって言ってたからな。あっちに戻れたらなかなかお返しできなさそうだしな」

 

「でも私無料券だから奢るっていう訳でも…」

 

「いいんだよ。お前が俺にタダでも奢ってくれるという気持ちがうれしかったんだよ。気持ちには気持ちで返さないと悪いしな」

 

瑞鶴の気持ちを表すかのように帰りの道は行きよりも少し明るく感じた。

 

~2日後~

 

提督は艦娘たちとともに鎮守府へ帰る船に乗り込んだ。

 

船に乗り込む前元帥に呼ばれた提督は一週間後にトラック第一泊地に異動し第六管区司令長官となることを告げられた。少将への昇進はないらしい。

 

そして少将は横須賀第一鎮守府に配属され中将に昇進するらしい。

 

また差を開けられたなと思いながら提督は少将にもあいさつして船にのりこんだ。

 

横須賀を出航して五時間何事もなく鎮守府に戻ってくることができた。

 

提督は居残り組にもトラックへの異動を話し早速荷造りを進めさせた。

 

その夜、貸し切り状態となった鳳翔の店で提督と瑞鶴はよく食べよく飲んだ。

 

店から追い出すのに少し苦労したと鳳翔は笑っていた。

 

そして一週間後提督たちはトラックの地に降りたった。




読んでいただきありがとうございました。

次はトラック泊地での日々を書くことになります。

この章は戦闘描写が入らない、はずです。

楽しんでいただけると嬉しいです。

本当はこの章あと20話続いて最終的には紀伊やら50万トン戦艦やらが登場する予定でしたがさすがに収拾がつかなくなるのでやめました。

どこかで彼女たちが出てくることがあるかもしれません
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