人間失格呪霊合格堕胎信仰グッドバイ 作:血屋
妊娠した事を彼氏に伝えると殴られた、拳と頭蓋の衝突音が小気味いい。
痛いのが気持ち良かったので放置していたが、だんだんむず痒くなってきたので両腕を切り落とした。
そしたら彼氏は何やら大きな声を出し始めた、近所の犬よりも大きな声だったので私は素直に感心してしまった。
犬って声が大きいイメージがあるから、人間もそれくらいの声を出せるとは思っていなかったのだ。
キャンキャン泣きながら彼氏は大きな窓を開けてベランダに出た、洗濯物を取り込むのだろうか。
彼氏は私の家に住んでいるが、家事はいつも全部私がやっている。
そんな彼がとうとう家事をやってくれるんだ、私は感動で涙が出そうになった。
シャツの畳み方がわからないならば教えてあげよう、そう思って待機していると彼は庭の方まで走って行ってしまった。
洗濯物はこっちだよと教えてあげるも、彼は振り返る事なく家の外に出てしまった。
追いかけると彼は道路で寝っ転がっていた。
彼に路上就寝の趣味がある事は知らなかったので、少し困惑したけどここが道路だと言うことを思い出すと私は彼を揺さぶった、車が通るのを邪魔してしまうといけないからだ。
しかし一向に起きる様子がない、それほど眠いなら仕方がないと思い、私は彼を背負って家の中に入った。
ベッドに寝かせようかとも思ったが、シーツが汚れるのは嫌なので浴槽に放り込んでおいた。
そんな事をしているとお腹が膨らんできたので、私はキッチンに行くと包丁を取り出した。
産まれてくる子が男か女かはわからない、だけど私の胸は期待に満ち溢れていた。
赤ん坊というのは素晴らしい物だとよく聞くので、それはきっと私の人生を彩ってくれるのだろうと予見していた。
包丁でザクザクとお腹を切ると、子宮が見えてきた。
真っ赤な色の内臓を見るとなんだかワクワクして、腸を引っ張り出して遊びたい気分になってくるけど、まずは子供を産まないといけないと思い、なんとか衝動を押さえつけた。
「何をしているんだい?」
いつのまにか隣に立っていた五条袈裟の男がそう言った、額の縫い目を解いたら楽しそうだなぁなんて事を思った。
「子供を産もうとしているんですけどなかなか見つからなくて……妊娠したって嘘だったのかな?あのヤブ医者め」
それを聞いた男はクツクツと笑うと、私の隣に椅子を持ってきて腰掛けた。
いくら探しても赤ちゃんが出てこないので、仕方がないからもう一回お腹を閉じた。
赤ちゃんを探すのにいくつか内臓を取り出さないといけなかった内臓は、まな板の上に乗せてある。
「坊主さんも食べます?夕食」
「おや、いいのかい?」
「えぇ、いいお肉が手に入ったんですもの」
まな板の上の内臓を一口大にカットして、鍋に入れて火にかける。
骨は取り出していなかったのだが、どうやら内臓に混ざっていたらしい、頭蓋骨くらいの骨と小さな肋骨のようなものを取り出すとゴミ箱に捨てた。
「この骨はいらないのかい?君の子だろ?」
「私に子はいませんよ?そもそも処女ですし、私が聖母マリアなら話は別ですけど」
調味料を入れる暫く煮ると、いい感じのスープが出来上がったのでお皿に取り分ける。
そのまま夕食にしようと思ったのだが、体が汚れていることに気づきお風呂に入ろうと思った。
だけれども両腕のない男が浴槽に入っていて、私は入れなかった。
誰だろうなと思いつつシャワーだけ浴びて服を着替える。
「早かったね」
「知らない人が入っててお湯に浸かれなかったの。よーし、じゃあ頂きます。あ、冷めちゃったかな?」
「いや、おかげでまだ暖かいままさ。ところで、私が誰か疑問に思わないのかい?」
「誰でもいいんじゃないですか?」
坊主は不思議な事を言ってたけど、私にはその意味はよくわからなかった。
一緒に夕食を食べる相手なんて誰でもいいのに。
よく相手を見るとかなり顔がいい男だった、そういえば
いや、特に彼氏にしたいとかそう言うわけではないのだけれど。
夕食を食べ終え、洗濯物の取り入れにかかった。
誰かがペンキをばら撒いてしまったようだ、床がベットリとしている。
「片付け、手伝おうか?」
「大丈ですよ。あ、そういえばまだ名前聞いてませんでしたね。お名前は?」
「私は羂索、呪術師だよ。何もかもがイカれた君に、会いにきたんだ」