俺様勇者と武闘家日記   作:星海月

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辺境の島ルザミ

 

 東の大陸を離れた私たちは、ルカに教えてもらったルザミの島を探すため、引き続きヒックスさんの船で航海をしていた。

 

 だが、このだだっ広い大海原では、島を一つ探すにも容易ではない。いくらルカに場所を教えてもらったとしても、この広大な世界で、地図だけで小さな島を見つけるのは至難の業だからだ。

 

 今日も船員さんやナギの持つ『鷹の目』を使い島を探すも、それらしきものは見つからずにいた。

 

「はあ、いったいどこにあるんだろ、ルザミの島って」

 

 皆と一緒に甲板に出て海を見渡すも、鷹の目の特技もない私には水平線しか見えない。

 

「そんなところで何ため息なんかついてるんだ」

 

 するとそこへ、ユウリがやってきた。私だけではない。彼もここ数日ずっと海を眺めているせいか、その表情には疲れが見え始めていた。

 

「だってなかなか島が見つからないんだもん」

 

 私はむくれた顔で答えると、再び波立つ海原に顔を向ける。そんな私の様子を、ユウリは呆れた顔で眺めていた。

 

「そんな簡単に人の住む島なんて見つかるわけないだろ。ジパングもそうだが、俺が知らないほど小さな国ならなおさらだ」

 

 そう言い放つと、すぐにユウリは去っていった。そんなことを言うためにわざわざ来たのだろうか?

 

 その後もずっと島の捜索は続いたが、結局この日も見つかることはなかった。

 

「あーくそ、マジでしんどいんだけど」

 

 次の日。いつも通り朝食を食堂で食べようと足を運ぶと、すでに食べ終わったのか、ナギがテーブルに顔を突っ伏していた。そして彼の向かいに座った途端、先ほどのセリフを耳にしたのだ。

 

「大丈夫? だいぶ疲れてるね」

 

 このところずっと鷹の目で島を探していたナギは、連日目を酷使していたせいか、目をぐりぐりと揉んでいる。

 

「なあミオ。今日オレ休んでもいいか?」

 

 顔を上げたナギが、肯定して欲しそうな顔で私に尋ねた。

 

「うーん、じゃあユウリに一度相談してみれば?」

 

 するとナギは信じられないと言った形相で、

 

「は? オレに死ねってこと?」

「なんで?!」

 

 そう睨み付けられた。どうやら確実にユウリに断られると思っているらしい。……まあ、私もそう思うけど。

 

「私も手伝いたいけど、鷹の目を使えないからなあ。……あ、そうだ! シーラ!!」

 

 私はタイミングよく食堂にやってきたシーラに目を留め、声をかける。

 

「あ、ミオちん、ナギちん、おはよー」

 

 寝起きなのか、けだるそうに朝の挨拶をするシーラは無防備で、妙に色気があった。現に近くでご飯を食べている船員さんの何人かは、私たちに気づいて近づいてくる彼女の姿を、ボーッとしながら目で追っている。

 

「ちょうどいいところに! ねえ、シーラ。ナギの負担をなくすにはどうしたらいいかな?」

 

 私はナギが鷹の目を酷使して辛い思いをしていることをシーラに話した。

 

「う~ん、あたしの回復呪文じゃあ疲れをとることはできないからなあ。それにレベルアップで覚えた呪文もナギちんの助けにはならないし」

 

 賢者となったシーラの今のレベルは5。時々船を襲う魔物と戦っているうちに、彼女のレベルもいくつか上がったのだ。

 

「……あ、これならどうかな?」

 

 何か思いついたのか、目を光らせたシーラがおもむろにナギの顔の前に手を突き出した。

 

「お、おい、何を……」

「ヒャド!!」

 

 パキィィン!!

 

 突如シーラが唱えたのは、氷の呪文だった。なんと彼女の放った氷の塊は、ナギの両目に直撃して張りついたではないか。

 

「なっ、何だ!? 冷てえ!! 痛え!!」

「疲れた目には、冷やしたほうがいいかなと思って」

「シーラ、それはちょっとやりすぎだよ!」

「ふん。俺がいない間にずいぶんと面白そうなことをやってるじゃないか」

 

 突然現れたユウリの登場に、嫌な予感が生まれる。

 

「ふざけんな!! この状況を見てお前ら何とも思わねえのかよ!!」

 

 ナギの絶叫が食堂に響き渡る。さすがにかわいそうになった私は、ナギの両目にくっついたまま剥がれない氷塊を取ろうと手を伸ばすが、ナギに思いきり振り払われる。

 

「バカ!! 引っ張ったらオレの目まで取れちまうだろ!!」

「わあ、ごめん!!」

 

 なんて焦っていると、今度はユウリがナギに向かって手をかざす。

 

「メラ」

 

 ぼおっ!!

 

「ぎゃああああああ!! 目が燃える!!」

 

 ユウリがメラをナギの顔に向かって放った途端、氷は溶けたものの今度は目が炎に包まれてしまった。

 

「なっ、ナギ!! 大丈夫!?」

「ホイミ!」

 

 私の声に反論する間を与えず、シーラが先手を打って回復呪文をかけてくれた。瞬時にナギの顔のやけどが治る。

 

「もう!! 二人ともナギの目をなんだと思ってんの!?」

 

 たまりかねた私が二人を叱ると、さすがに反省の色を見せる。

 

「えへへ……、覚えたての魔法だったからつい調子に乗って……」

「ふん。いつもより火力は抑えていたつもりだ。……たぶん」

「そうじゃなくて、『ごめんなさい』は!?」

『……ごめんなさい』

 

 本気で怒っている私に気圧されたのか、シーラだけでなくユウリまでもが素直に従った。

 

「ミオ……。お前本気で怒ると怖いんだな」

 

 ぼそりとナギまで若干引いた目で呟く。いや、なんでナギまでそんな顔で私を見るの!? せっかくナギのために怒ったのに!

 

 なんて、そんな他愛ないやり取り(?)をする中、五日目にしてようやくルザミの島を見つけることができたのであった。

 

 

 

 遠くから見るとその島は、海に浮かぶ小さな山のように見えた。山の麓には数件の家と畑があるのみで、僅かな人工物がむしろ不自然に思えるほど、人間が住んでいるような雰囲気は感じられなかった。

 

 だが海岸には、船が泊められる波止場が設けられており、船から降りて周囲を見渡すと、舗装された道が波止場から集落へと続いている。

 

 ここまでの道程に人影は一切なく、聞こえるのは鳥のさえずりと風が木々を揺らす音のみ。まるで俗世から離れた自然の楽園のようだった。

 

「本当にこんなところに人なんているのかな?」

 

 木漏れ日を浴びながら、私は誰にともなく呟く。

 

「うーん、でも波止場の辺りは古いとはいえ整備されてるんだよね。なんでこんな秘境みたいな所なのに人が行き来できる場所は整ってるんだろう」

 

 シーラの疑問ももっともだ。剥がれかけたレンガ張りの路面に目を落としながら、私も一緒になって考え込んでいると、

 

「おそらくここは流刑の島なんじゃないのか?」

「流刑の島?」

 

 前を歩くユウリがそんなことを言って来たので、私は思わず顔を上げた。

 

「あ、そーかもしれないね☆」

 

 シーラもユウリの言葉に合点がいったのか、ポンと手を叩く。

 

「だから何だよ。流刑の島って」

 

 理解できないナギが私の心を代弁するかのように尋ねる。するとユウリは説明するのも面倒という風に息を吐いた。

 

「国を揺るがすほどの大罪を犯した者が罰として送られる辺境の島ってことだ。そこに送られたら最後、一生国には帰れないと聞く」

「えーと、てことは、ここは犯罪者が住む島ってことか?」

「……そうとも言い切れない。今じゃほとんどの国が流刑自体を廃止しているからな。それに、大昔の大罪人が子孫を作って、その子孫が今ここに住んでいる場合もある」

「そっかあ、よかった……」

 

 犯罪者が住むような恐ろしい島なのかと思い、私はほっと胸をなでおろす。じゃあルカが助けたというこの島の人たちも、もしかしたらその子孫なのかもしれない。でなければルカの店を作る手伝いなんかしないはずだもの。

 

「だからといって犯罪者がいないとは言ってない」

「ええっ!?」

 

 安心したと思いきや、再び愕然となる私。そんな私の反応を楽しむかのように、ユウリは小さく鼻で笑った。

 

「そうだ。念のため、山彦の笛を吹いてみるか」

 

 ユウリは鞄から、アープの塔で手に入れた山彦の笛を取り出した。こんな絶海の孤島に何度も足を踏み入れる機会など殆どない。もしオーブがあるのに気づかなければ、再びここにくるのは難しいだろう。

 

 早速ユウリは笛を奏でる。しかし山彦は返ってこなかった。

 

「そう簡単には見つからないか」

 

 結局オーブは諦めてしばらく歩いて行くと、開けた場所に出た。広大な畑には様々な作物が実っており、とてもおいしそうだ。

 

 畑の向こうには数件の家が建ち並び、その中の一件の家の前に目を向けると、一人の年配の男性が作業をしていた。

 

「どうやら無人島ではなさそうだな」

 

 若干ホッとした顔で、ユウリが呟いた。

 

「あの人に聞いてみようよ。すいませーん!!」

 

 私は早速その人のもとへと走っていった。ユウリたちも私の後に続く。

 

「こりゃ驚いた。よそから来た人間を見るのは、何年ぶりだろう」

 

 顔に刻まれた無数のしわを思い切り引き延ばすかのように、その男の人は目を見開いて私をまじまじと見ながら言った。

 

「すみません。ここはルザミの島で間違いありませんか?」

 

「ああ、そうだ。だがあんたたちみたいに、ここをルザミの島と知ってやってきた旅人は初めて見るよ。ほとんど偶然ここを通りかかったか、他の国で島流しにされた罪人しかやってこないからな」

「罪人!?」

 

 ユウリたちの言うとおり、やっぱりここは流刑の島なのだろうか。

 

「あの、この島って、罪を犯した人が沢山住んでるんですか?」

 

 おっかなびっくりな私の問いに、男性は思いきり頭を振った。 

 

「いやいや、とんでもない! それはずっと昔の話だ。今はほとんどがその罪人たちの子供か子孫ばかりだよ」

「そうなんですか……」

 

 罪人だらけの島と聞いて焦ったが、その言葉に再度胸を撫で下ろす。

 

「ほとんどと言うことは、そうでない奴も少しはいると言うことか」

「え!?」

 

 ユウリの指摘に、私はびくりと肩を激しく震わせると、恐る恐る男性に尋ねた。

 

「もしかして今も罪人が……?」

「……いや、やってきたのは一人の海賊だよ。と言っても、ここに移住して何年も経たないうちに亡くなってしまったがね」

「海賊!?」 

 

 これはまた物騒な話だ。でも、亡くなっているって……?

 

「なんで海賊がここに移住なんかしたんだ?」

 

 腑に落ちない顔で、ナギが問う。男性は元々おしゃべりが好きなのか、嬉々とした顔で話し始めた。

 

「その海賊は、海賊船から落ちてここまで泳いできたって奴なんだ。それだけでも相当奇跡だが、そいつはその後、島の女性と恋に落ち、なんと結婚までしちまったんだ」

「へえ~! 結婚しちゃうなんて、ロマンチック~☆」

 

 結婚、の言葉を聞いて、途端にシーラが色めき立つ。

 

「いや、どんだけ体力あるんだよ、そいつ」

「随分間抜けな海賊がいたもんだな」

 

 対して男性陣の冷静なツッコミに、一気にその海賊の印象が変わってしまった。

 

「まあ、話が聞きたければあの丘の向こうの高台に行ってみな。その結婚した相手ってのが、あそこに住んでるフィオナって言うべっぴんさんだからよ」

「フィオナさんって言うんですか」

 

 海賊の心を射止めたフィオナさんと言う人物に、ジパングのことよりもそっちの方に興味が湧いてきた。

 

 すると男性はナギの方を指差すと、物珍しそうに眺め見た。

 

「そう言えば、あんたのその髪の色、フィオナにそっくりだ。この島じゃあフィオナのほかに銀髪なんて見たことないからな」

「え、オレ?」

 

 銀髪自体、割と珍しい髪の色なので、こんな辺鄙な場所でナギと同じ髪の色がいることに驚いた。

 

「そんなことより、『ジパング』という名の国を探しているんだが、何か知っているか?」

「じぱんぐ? さあ、聞いたこともないなぁ」

 

 ユウリの質問に、男性はさっぱりわからないといった表情で答える。ユウリもあまり期待していなかったのか、変わらぬ表情で男性にお礼を言う。

 

「そうか。邪魔したな」

「あっ、待ってくれ!」

 

 帰ろうとしたユウリを、何かを思い出したのか男性が引き止める。

 

「さっき言ったフィオナなら何か知っているかもしれないぞ。何しろあの子はかつて学者だった人の子孫だっていうからな」

「なるほど。一理あるな」

 

 男性の考えに納得するユウリ。確かにそう言う家系なら、何か知っているかもしれない。

 

「あの丘を越えてずっと真っ直ぐ行くと、白い建物が見える。そこがフィオナの家だ。行けば一目でわかる」

 

 確かに、この緑豊かな場所で白い建物があれば、すぐに目に入るだろう。

 

「わかりました、いろいろと教えて下さってありがとうございます!」

 

 男性にお礼を言うと、私たちは早速男性が教えてくれた方向へと向かうことにした。

 

 

 

 

 

 

 絶景が広がる孤島に上陸し、歩き回ること小一時間ほど。

 

 緑溢れる大自然の中、ちらほらと点在する家々の間を通り抜けると、林に入った。そこからろくに手入れされていない林道を通ると、木々の隙間から覗く高台に、奇妙な形の白い建物が建っているのが見えた。

 

「あれって、何の建物だろう?」

 

 私の疑問に、皆誰も口を開かない。つまり誰もピンと来ていないようだ。

 

 円柱状の白い建物はてっぺん部分がドーム状になっている。端から見ると小さな灯台にも見えるのだが、ドーム状の部分にはなぜか細長い棒状のものが刺さっている。さらにその棒の先端にはガラスのようなものが張ってあるのか、日の光を反射して光り輝いており、どういう意図で設置してあるのか、まるで見当もつかないのだ。知識の豊富なユウリやシーラでも初めて見る建物らしく、訝しげに見上げるのみであった。

 

「ま、とりあえず行ってみようぜ」

 

 これ以上考えても無駄だと悟ったナギが、一足先に高台を上り、建物の入り口まで向かう。すると、なぜか中途半端な位置で立ち止まってしまった。

 

「……」

 

 そしてそのまま考え込むように、建物をじっと見つめている。

 

「どうしたの、ナギ?」

 

 何かあったのかと思い、私が声をかけると、はっとしてこちらを振り向いた。

 

「あ、ああ、悪い。なんでもない」

 

 何でもないといいつつ、どうにも歯切れの悪い様子だ。私は不審に思いながらも、彼がそう言うのならとこれ以上何も言わなかった。

 

「なにモタモタしてるんだ。いいから行くぞ」

 

 一向にその場から動かない私たちに痺れを切らしたのか、ユウリがナギの横を通り過ぎて建物の前に立ち、扉を数回ノックした。

 

「?」

 

 だが、いくら待っても反応がない。物音ひとつしないので、ユウリはイライラしながら何度も扉を叩く。

 

「おーい! 誰かいないのか!!」

 

 大声で呼びかけるが、それでも返事はない。たまりかねたユウリが左手に力を籠めようとした時だ。

 

「待て、扉を壊すな!!」

 

 そう諫めたのはナギだった。扉を壊さないのは当たり前のことなのだが、この時私はユウリの行動を止めるナギに対して、妙な違和感を覚えた。

 

「そうだよユウリちゃん。なんでもかんでも呪文で解決しようとするのは駄目だと思うよ」

 

 ……この間ナギの目を氷の呪文で冷やそうとしたのは誰だったっけ。私はシーラを横目で見る。

 

 けど、私もナギやシーラの意見には賛成だ。現にダーマの扉を呪文で壊した時、修理代を支払わされそうになった過去を思い出し、私も賛同する。

 

「二人の言うとおりだよ。もしかしたら中に人がいるかもよ?」

 

 全員に止められ、さすがのユウリも手を下ろす。

 

「ふん。お前らに諭されるのは屈辱だが、一理あるな」

 

 そう言うと、ユウリは鞄から最後の鍵を取り出した。ダーマのときも思ったが、普通そっちが先じゃない?

 

 だが、鍵穴に挿そうとする彼の手がピタリと止まった。

 

「この扉、鍵穴がないな」

『!?』

 

 私も気になって扉を調べてみると、確かに鍵穴はなかった。その間にユウリが手を伸ばしてドアノブを回すと、いとも簡単に扉は開いたではないか。

 

「そうか。田舎だからわざわざ鍵をかけなくても泥棒に入られる危険はないということか」

 

 そう言いながら、なぜか同意を求めるように私を見るユウリ。いやまあ、カザーブにある私の実家もしょっちゅう鍵をかけないことはあったけど、なんだかバカにされているようでムッとなる。

 

 返事がないので仕方ないのだが、なんとなく後ろめたさを感じつつも、私たちはそのまま建物の中に入ることにした。

 

「ごめんくださーい! 誰かいませんか!?」

 

 今度は私が大声で呼び掛けるが、それでも返事はない。やっぱり外出してるのだろうか。

 

 扉を開けて中に入ると、そこは広い部屋だった。しかしその広い部屋の大部分が本棚で埋め尽くされ、壁のようにびっしりと建ち並んでいる。本棚には隙間なく本が入っており、タイトルを見ただけで頭痛が起きそうなほど難しい単語の羅列が並んでいた。そして部屋の中央、本棚から取り出した本を読むのに最適な場所にソファが置いてあり、まるで本好きのための部屋と言わんばかりの雰囲気を醸し出していた。

 

「ほう。随分と興味深い内容ばかりだな」

「ユウリちゃん、これなんか面白そうじゃない? 『賢者と精霊の関係性について』だって」

「『世界の海と火山』、『エルフ族の歴史』、『精霊神と太古の神々』……。俺が知らない本ばかりあるな」

 

 けれどユウリとシーラにとっては、とても興味のひくもののようだ。私はつい無意識にナギの方へ視線を向ける。するとナギも本棚を興味深げに眺めているではないか。

 

 くっ……。ナギも私と同類だと思ったのに! なんだか私一人だけ仲間外れにされてるようで悔しい。

 

 いや、よく見ると、どうもさっきからナギの様子が変だ。本棚を見たと思ったら、今度はキッチン、かと思えば天井を見上げたまま微動だにしない。まるで部屋の中を探っているようだ。

 

「……ナギ?」

 

 その不自然な仕草に私は首をかしげる。この島に来てから、彼に何かあったのだろうか?

 

「こんな辺境の島に泥棒が入り込むとは、何年ぶりかな」

『!?』

 

 突然声をかけられ、大きく体をびくつかせる。そのよく通る中性的な声に、皆一斉に声の主の方を振り向いた。

 

 泥棒が入ったと言う割には、にこやかに話しかける一人の銀髪の女性。その人こそ、この家の主であるフィオナさんだったのである。

 

 

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