新章新章詐欺してすみません!(土下座)
またしばらく時間がかかりそうです。申し訳ありません。
以前から書き溜めていたものですが、載せるかどうか迷った結果、修正して載せることにしました。
修正前は恋愛要素強めで作者が耐えられなかったので直しました。
祠の牢獄での話です。
父親との別れのあと、僕は今になって泣き出した。これが肉親を失う寂しさなのか――。心にぽっかりと空いた穴を、そばにいるミオに埋めてもらいたくて、僕は彼女にすがりついた。
出来ればずっと、ミオにすがりついて泣いていたかった。けれどそれは男としても恥ずかしかったし、ユウリたちを待たせることに申し訳なさも感じていた。
――それにもう一つ、ここから一刻も早く離れたい理由があった。
《いやあ、お熱いですね、お二人さん》
その理由というのが、この人魂である。父であるサイモンの魂が天に召され、唯一看守の魂だけがこの牢獄に取り残されてるのだが、なぜかさっきからずっと僕たちの周りをうろうろしているのだ。……正直目障りでしかない。
「あのう、あなたは何か心残りがあるんですか?」
よせばいいのに、困っている人を捨て置けないミオは、幽霊でさえも声をかけた。まさか看守の魂をも救おうとする気なのだろうか。
《そうですね。私は何十年もずっとここで看守をしていたので、とにかく娯楽がなかったんです。しかしあなたたちを見たら、とても満足しました。まるで昔見た、恋愛物の舞台劇を見たような感覚でしたよ》
満足してるんだったらとっとと天に召されてくれ。人が悲しみに暮れているときに、芝居感覚でのぞき見しやがって。
「ミオ、その人魂は放っておこう。僕たちが関与する理由なんかない」
「え、でも……。サイモンさんが天に召されて、この人一人ぼっちなんだよ? ずっと一人で現世に留まったままなんて、そんなの悲しすぎるよ」
ああ、ミオ。君はなんて純粋な心を持っているんだ。そんな愛しい彼女の志に僕が逆らえるはずもなく、僕は渋々ながら看守の話を聞くことにした。
「はあ……。じゃあ最後まで付き合うよ。で、看守さん。どうすればあなたをもっと満足させられますか?」
《なんと、私の願いを聞いてくださるのですか? なら遠慮なく言いますけど、さっきも言ったとおり、私は劇が好きなんです。なので、あなたたちのお芝居で、恋愛もののハッピーエンドを私に見せてくださいませんか? 》
「は!? なんだよそれ……」
いや、待てよ? 恋愛もののハッピーエンド? てことはつまり、僕とミオが結ばれるというシチュエーションをこの看守に見せるってことだよな?
「わかりました! ぜひやりましょう!!」
「え、なんか急にやる気になったね!?」
若干ミオが引いているような気がするが、気のせいだと思うことにしよう。
「それじゃあミオ、早速やろう!」
ミオの答えも待たずに、僕は彼女に向き直り、再び抱きしめようと両手を伸ばしたのだが。
——うっ、さっきは勢いで抱きしめちゃったけど、恥ずかしくてこれ以上ミオに触れられない……!
しかも当のミオはピンと来ていないのか、僕が何をしようとしているのかさえ分かっていない様子だ。一体なんて説明したらいいんだ?
「えっと、例えばこの前オリビアさんとエリックさんが再会したときあっただろ? ああいうことを僕たちでやってみたらいいんじゃないかな?」
「なるほど! じゃあ私がオリビアさんの役だね!」
よかった。ちょうど題材となる人たちに最近出会って。当然僕はエリックさんの役だ。
「ああ、私の愛するエリック!! 会いたかった!!」
「!?」
いきなり何の打合せもなく芝居が始まった。あまりにも唐突な芝居で驚いたが、瞳を潤ませながら感極まって話すミオの演技は完璧だ。どうやら彼女には演技の素質があるようで、まるで本当にオリビアさんがそこにいるかのような存在感を放っていた。セリフが少し違う気はするが、僕も正直そんな事細かに覚えていない。要は同じような流れにもっていけばいいのだ。
「やっと会えたね、オリビア!! もう僕は君を一生離さないよ!!」
つられて僕も精一杯の演技をする。あれ? 幽霊だったから一生なんて使わなかったっけか。まあいいや。
その流れのまま僕は、完全にオリビアの魂が乗り移ったミオを力強く抱きしめた。うん。やっぱり勢いって大事だ。あれほど恥ずかしく思っていたのに、芝居だと思うとちっとも気にならない。それはミオの白熱した演技も関係があるのだろうか?
《おお、素晴らしい!! そこでそのままキッスですか? 》
「え!?」
《この流れだとお互い唇を交わしてハッピーエンドですよね? 違いますか? 》
「い、いや、その……」
流石に演技とは言え、そんなことできるわけがない。いや、僕は全然構わないのだが、もしそんなことをしてミオに幻滅されたら立ち直れない。ああでも、ミオは今演技に夢中になってるし、もしかしたら……。
《どうしました? 早く続きをお願いします! さあ!! 》
僕が葛藤している間にも、看守の魂は二人の周りをひたすらうろちょろし続け、自分勝手なことを言いまくっている。
「うわっ!?」
人魂が鬱陶しいくらいくるくる回っていたからか、とうとうミオまでもがくるくると踊り始めたではないか。これではハッピーエンドどころではない。
まずい、目が回る……。ミオに強引に踊らされ、足がもつれる。そこへ、最悪のタイミングで看守が飛び出してきた。
「わっ!!」
どたんっ!!
「いたっ!!」
看守を避けようとして足を引っ掛けてしまい、僕はミオを下敷きにして共に倒れてしまった。
仰向けに倒れたミオは、目を回して気絶していた。あの人魂、後で二、三発ぶん殴ってやる。
「だ、大丈夫!? ミオ……」
顔を上げて冷静になった僕は、今のこの体勢がかなり危険なことに気がついた。端から見たら彼女を押し倒しているようにしか見えない。
《いいですね! これこそラブコメの王道!! ラッキーハプニング!! こういうのも大好物ですよ! 》
なんだそりゃ!? もう死んでいるのに、この人魂に対して急に殺意が湧いてきた。
《お二人のおかげで、とても満足しました。これで私も天国に行けます。ありがとうございました……》
そういいながら、人魂はゆっくりと消えていった。その間に一瞬生前の看守の姿が見えた気がしたが、全く知らないし興味もなかったのでどうでもよかった。
「なんなんだ、一体……」
しまった、殴り損ねた。僕は心の中で舌打ちをしながら、気絶している彼女をそっと起こしてあげた。
「あれ、看守さんは……?」
「ああ、あいつならもう天に召されたよ。だからもう演技は必要なくなった」
「そっか。よかったね、看守さん……」
看守にまったく関心のなかった僕に対し、ミオは曇りなき眼で天を仰ぎながら、涙ぐんでいた。そんな彼女を見て、いつの間にか僕は悲しみから抜け出せたのだと、今更ながら気づいたのだった。
おわり
ルークの裏の顔がどうしても書きたくて載せました。毒舌ルークくんはとても書きやすかったです。
次こそはきっと新章です!