「まさか私がオーブを狙っていることを予測したんですか? それにしては随分と隙だらけに見えましたが」
ヒックス……いや魔王軍の四天王の一人であるエビルマージは、俺の剣を自身のナイフで受け止めながらそう言った。
バカザルの予知夢のおかげでオーブを奪われることを防ぐことが出来たが、こいつが四天王だったなんて、あのバカは言ってなかったぞ。
いや、きっと予知夢にも『精度』と言うのがあるのだろう。そもそもなんで俺があいつの予知夢のフォローをしなければならんのだ。
「お前を炙り出すにはこのくらいで充分だ」
適当な文句を並べ立てるが、俺の胸中は穏やかではなかった。鍔迫り合いの末に、俺は一旦ヒックスから離れ、冷静にこれまでのことを振り返る。
最初に俺たちがヒックスと出会ったのは、ポルトガで国王から船を手配されたときだ。だが船着き場で慇懃に挨拶をするヒックスは、とても人を食い殺すような魔物には見えなかった。
その後も一緒に旅をしてきたが、特に不審な点は見つからなかった。そう、むしろ不自然なくらい、何もなかったのだ。
強いて言うならば、ヒックスとの船旅で、二度ほどこの海域では生息が確認されていないテンタクルスと遭遇したことだろうか。けれどそれとヒックスが関わっている証拠などなく、ただ迷い込んだ魔物を倒しただけに過ぎない。
だが、バカザルの予知夢から察するに、『溶岩』のある場所で起こるとなれば、場所は当然限られる。その場所で俺に気取られずに鞄の中に入ったオーブを奪うような相手ならば、おそらく俺が油断するような相手ということになる。ならば敵は顔見知りの可能性が高い。だから俺はあらかじめ、この場所に来る前に、自分の鞄とあいつ……ミオの鞄を交換した。
ヒックスが俺たちと行動をともにした時点である程度予想は出来たはずだが、これまでの長い旅で得た余計な情が、俺の判断を鈍らせた。それに、『敵』かも知れないとは思ったが、魔物であり、しかも四天王だったとは誰もが予想できなかっただろう。
改めてヒックスの姿を見て、俺はふと疑問に感じていたことを口にした。
「ポルトガで噂になっていた、人に化けた魔物っていうのは、お前のことだったんだな」
「ご明察です。ですが、多数の人間を喰らう他の魔物と違い、私には理性があります。それに、人間の姿を維持するために、この姿になる前から何度かあの町で実験をしていますからね」
実験……。まさか!
「……そうか。カルロスたちに呪いをかけたのはお前の指示だったんだな」
カルロスたちに呪いをかけたのは悪魔の姿の魔物ではない。あいつはたしかに言っていた。『エビルマージ様の御力』と――。
「お前が人の姿に変化することをカルロスに知られたから、あの二人に呪いをかけたんだな?」
俺が言うと、ヒックスは薄笑いを浮かべた。
「そうです。けれど、ユウリさんからその話を聞いたときは驚きましたよ。まさか彼と面識があったとは。世間というのは狭いですね」
「つまり……、口封じのためにあいつらを動物の姿に変えたってことか?」
「いえ、単なる練習台ですよ。もし本当に口封じするのなら、生かす理由がありませんから」
「ふん、やはり関係ない人間を踏み台にして目的を達成する魔物特有の性質は、変化しても変わらないな」
「そうですかね? 彼らのおかげもあり、私は魔物の気配を完全になくし別の生き物の姿に変身できる、『モシャス』の呪文を完成することが出来ました。今思い出しましたが、ジパングとやらにいたヤマタノオロチは、人を食うことで人の姿を保っていたそうじゃないですか。私なら、自身の魔力とモシャスの呪文だけで、半永久的に人の姿を持続させることが可能です。人を無差別に喰らうよりは、よっぽど平和的だと思いますけどね」
「それはお前たち魔物にとって『平和的』なだけだろ。形はどうあれ人に危害を与えていることには変わらん」
エビルマージの本来の姿はわからないが、やはりヒックスは魔物であり、魔王の配下だ。それに俺がここで奴を食い止めなければ、次に狙われるのはあの三人になる。過去の情は捨て、覚悟を決めると、俺は剣を構え直した。
「ユウリさん、あなたがオーブを持っていないとすると、他の三人のどちらかですか。すぐに逃げたのは賢明な判断ですね」
ヒックスはいつもと変わらない姿で、俺に殺気を向けている。迂闊に踏み込めば、こっちもただでは済まされない。おそらく実力は、ボストロールか、あるいはそれ以上――。
「まあ、どちらにせよ、勇者であるあなたは早めに潰しておかなくてはならない。一年半も一緒に旅をしてきたせいか、良心が痛みますけどね」
「ふん。今さらお前に良心なんてものがあるのか?」
「ありますよ、多少はね。気づいているかもしれませんが、航海中にテンタクルスが現れたのも、私があの子を呼び寄せたからなんですよ。あなた達の実力を測るためにね。だが、一度目はともかく、二度目はあっさりと倒してしまった。そんな成長著しいあなたたちに情が湧いたのか、すぐに絶望させるには惜しいと感じましてね、今日まで待ったんですよ」
「確かに魔物にしては回りくどい言い方だな。だが今の言葉を聞いても、お前が人間に対して良心を持っているとは到底思えない」
「そんなことありませんよ。現にあなたたち以上にともに過ごしてきた船員たちには、私たちをここに降ろしたらポルトガに戻るように言い含めておきました。最初は訝しんでいましたが、私が説得したら納得してくれました。無駄な血は流したくないですからね」
そのあまりにも薄ら寒いセリフに、俺は鼻で笑う。
「そいつらの船長を食い殺しておいて、よく言うな」
だが、俺の態度に機嫌を損ねるどころか、ヒックスは穏やかな笑みを浮かべた。
「私はね。魔王様の命とあれば何があろうと遂行しますが、無益な殺生はしたくはないのですよ。魔物の中にもたまにいるんですよ。人間との共存を望むものが」
「――?」
ここへ来て、俺はヒックスという存在がどういうものか、わからなくなった。
「お前もその中に入ると言うのか?」
「ええ。できれば平和的解決を望みたかった。……ですが、オーブの回収に失敗した以上、あなたがたを生かすわけには行かない」
その瞬間、無から膨大な殺気が生まれる感覚を覚えた。やはり魔物は魔物でしかない。迷いを捨てた俺は、精神を集中させた。
「奇遇だな。俺もお前を生かすつもりはない」
おそらく呪文でまともにやりあえば勝ち目はないだろう。相手はマヒャドを使いこなすほどの手練れだ。他にもまだ上位呪文を隠し持っているかもしれない。そうなると、接近戦に持ち込んだほうが有利だろう。
俺は握りしめる剣の柄に力を込めると、思い切り足を踏み込み、ヒックスに向かって
「ラリホー!!」
「っ!?」
ヒックスの放つ呪文をまともに喰らい、俺の瞼が強制的に閉じようとする。僧侶や俺のような勇者が覚える眠りの呪文を使えるとは……、迂闊だ……った……。
「ずっとともに旅をしてきたからこそ、あなたの弱点も理解しています。ユウリさん、あなたは他の人に比べて補助呪文にかかりやすい。運がないともいいますか。近くで見ていた私には気づいてましたよ。しかし、甲板での魔物との戦闘がここで仇になるとは、思いもしなかったでしょうね」
くそ……。眠気が……。こんなところで……、やられて……たまるか……。
「手始めに、あなたのその腕を切り刻ませてもらいますよ」
朦朧とする意識の中、俺はヒックスの言葉を聞き流しながら、どうにか手にしていた剣を片手に持ち替えた。
「はっ!!」
間近までやってきていたヒックスが、俺に向かってナイフを振りかざす。それと同時に俺は、自身の剣をもう片方の腕めがけて振り下ろした。
「ぐっ……!!」
「なっ!?」
鋭い痛みに、俺は思い切り顔をしかめる。だが、その痛みのおかげで強制的に眠気を取り除くことができた。
「ベギラマ!!」
ゴォッ!!
「ちっ!」
俺の放ったベギラマを回避しつつ、ヒックスはかざしたナイフを下ろして数歩後ろに下がった。
その僅かな間にも、けして浅くはない傷口から血がどくどくと流れていく。大事に至る前に、俺はすぐさまホイミを唱えた。
「なるほど。痛みで眠気を吹き飛ばしましたか。さすがはユウリさんですね。――ですが」
俺の機転に全く動じることもなく、ヒックスは手を俺の前にかざす。
「私の魔力量は魔物の中でもトップクラスを誇るのですよ。――メラミ」
「!!」
ヒックスの手から、人の頭ほどの火球が生み出されると、瞬く間に俺に襲いかかってきた。
まずい、治療が間に合わない!!
ボォン!!
「私の炎をまともに喰らうとは……。……ん!?」
俺の身体を焼き尽くすはずのヒックスの炎は、俺の身体に触れた途端威力を弱め、やがて消滅した。
「な……!?」
自信満々だったヒックスの顔色が変わる。これもすべて、ドリスの店で買った魔法の鎧の特殊効果のおかげだ。さすがに鎧に覆われていない部分は軽い火傷を負ったが、身体の大部分は無傷だ。この程度なら治癒呪文なしでも戦える。ドリスの目利きには感謝しないといけないな。
そもそもヒックスには、防具を新調したことは知っているが、その防具の効果までは教えていない。ただ言う必要がなかっただけだが、あまり人と必要以上に会話しない俺の性格が、ここへ来て功を奏したようだ。
「炎が効かない……。ならば!!」
再びヒックスが呪文を放とうと俺の前に手をかざす。その間に俺は全速力で奴の懐に潜り込むと、ヒックスの首めがけて横一閃に薙いだ。
「くっ!!」
しかしヒックスの反応も早く、既のところで躱される。喉元に浅い切り傷をつけただけで、致命傷には程遠い。
俺の一撃を躱したあと、ヒックスがすぐさまナイフで反撃する。その俊敏な剣さばきは目で追うのがやっとであり、たまらず俺は防戦一方となった。
くそっ。呪文だけでなく、反射神経も優れているのか!
ドォン!!
その時、再び山の頂上から爆音が上がった。その音を合図に、ヒックスが俺の顔めがけてナイフを突きつける。
「くっ!!」
無意識に身の危険を察知した俺はその場から飛び退くと、ヒックスに向かって手をかざした。
「マホトーン!!」
唱えたのは対象の魔力を封じる呪文。耐性のある魔物もけして少なくはない。レベルの高い魔物や呪文に長けた魔物ならなおさらだ。だが、もし万が一呪文を封じることができたら、一気に形勢が逆転する。俺は一か八かの賭けに出た。
「っ!?」
俺が放つ呪文に、あからさまに表情を歪めるヒックス。まさか呪文封じが効いたのか?
「マヒャド!!」
ゴオオオオッッッ!!
しかし、再びヒックスから繰り出された氷の礫が、凄まじい勢いで降り注いだ。魔法の鎧の効果により大したダメージは受けなかったが、結局呪文封じは失敗に終わったようだ。
「なるほど、呪文攻撃を防ぐ鎧ですか。そういうことなら、こちらも本気で行かせていただきます」
ヒックスの不敵な笑みが、俺の胸をざわつかせる。一体あの自信はなんだ?
「私ができることは、呪文だけではないんですよ!」
そう言うとヒックスは、大きく口を開けて息を思い切り吸い込んだ。
ゴオオオオオオオオオオ!!
先程よりも数倍大きな火球……、いや、あれは火球というより炎の壁だ。おそらく放出させる魔力量によって同じ呪文でも威力を調整できるのだろう。ヒックスの口から吐いた炎の壁は、まるで赤い津波のように俺の元へと押し寄せてきた。その範囲は広く、到底避けられるものではない。しかしどんな呪文だろうと、この鎧があればダメージを軽減してくれるはずだ。
――いや、『呪文だけではない』と言っていた!? ということは、この攻撃はまさか――。
「ぐああああっっっっ!!!!」
焼け付くような熱さと痛み。骨まで溶かされるような感覚。俺の絶叫は、燃え盛る炎に紛れてヒックスの耳には届かない。それでも何とか倒れまいと、かろうじて立膝をつく。
これは、呪文ではない。言うなればヤマタノオロチが放った炎を吐く攻撃に似ている。だが、威力はそれとは段違いだ。
炎が消え、目の前には変わらず佇むヒックスの姿。声を上げようと、僅かでも顔の筋肉を動かそうとすると、耐え難いほどの激痛が走る。
「私は呪文以外にも、口から炎を吐くことができるんです。しかし、どうやら呪文以外の炎は、その防具では防げないみたいですね」
ジパングのときは近くにシーラがいたから治癒ができたが、今はここに俺以外の仲間はいない。ヒックスの炎によって焼けただれた俺の身体は、もはやホイミ程度では到底治すことも出来ず、現状回復できる手段はなかった。
「とはいえ、私も一日一度が限度ですけどね。それでも、瀕死のあなたを倒すには、これ以上の呪文や炎など不要です」
ゆっくりと俺の方に歩み寄るヒックス。手にはナイフを携えたままだ。こちらが身動きできないのを見越してか、余裕の笑みで俺に近づいてくる。
――くそっ、なんとかしてあいつに一矢報いなければ……。
頭を動かすこともできず、視線のみで周囲を見渡す。俺とヒックスとの間は約5メートル。それから少し離れたところでは、さっきの噴火で吹き出されたマグマや噴石が山の斜面を伝い、こちらへと流れ落ちてくる。砂や岩があちこちでマグマに飲み込まれていくこの場所は、容易に逃げることもできない危険地帯だ。
もとより逃げることなど考えてはいない。俺がオーブを持っていないことがバレてしまった今、ここでこいつを倒さなければ、今度はあの三人に矛先が向けられる。それだけは絶対に避けなければならない。
――だから、なんとしてもここでヒックスを倒す!
俺はどうにか立ち上がると、剣を鞘に納めてヒックスを見据えた。それを見たヒックスは一瞬動揺した。丸腰になった俺に警戒心を抱きつつも、じりじりとこちらに近づいてくる。
「今更降参ですか。ならば楽に死なせてあげましょう。あなたたちとの船旅、存外悪くなかったですよ」
その瞬間、俺の眼前に佇む殺気の塊が掻き消えたと同時に、白刃が俺の首元を狙ってきた。通常なら避けられないこともない攻撃だが、全身大火傷の状態では、ほとんど身動きが取れない。そう、一部の器官以外は。
「……アストロン」
唯一動ける俺の口から弱々しく放たれた呪文。力ない声から生まれた魔力は、すぐに俺の首元を鋼鉄へと変えた。
ガギィィイィィン!!
ヒックスのナイフが、俺の喉元に刺さった瞬間はじき返される。なぜなら今の俺の身体は、頭と両腕以外が鋼鉄と化しているからだ。もちろんこれはアストロンを応用したものであり、
――呪文というのは術者の精神力とイメージですべてが決まる――
以前エロジジイが言っていた言葉が、今なら理解できる。イメージさえできれば、こういう応用も可能なのだ。
「くっ、まだそんな余力が……」
形勢を立て直そうと、ヒックスは一歩後退しようとする。だが、その場から離れる前に俺は奴の腕を掴んだ。
「はっ、離せ!!」
火傷の痛みで思うように力が入らない。俺は身体中が裂けるような痛みを堪えつつ、両手でしっかりとヒックスの腕を固定した。
「アストロン!!」
今度は自身の両腕に鋼鉄化の呪文をかける。みるみるうちにヒックスの腕を掴んだ俺の両腕が鋼鉄と化し、固定される。身動きが取れなくなったヒックスは初めて動揺の色を見せた。
「一体何を企んでいる!?」
すると遠くで、噴火によって噴き出されたと思われる火山灰や噴石が転がる音が聞こえてきた。そのうち俺が予想してきたことも起こるはずだろう。
「離せ!! ……くっ、ならば!!」
途端、ヒックスの魔力が最大限に上がっていく。俺の手から振り切るため、呪文でカタを着ける気なのだろう。だがその間に俺は最後の足掻きとばかりに、再び呪文を紡いだ。
「マホトーン!」
「ラリホー!!」
お互い賭けに出たニ人の呪文を放つ声が綺麗に重なる。前者は俺、後者はヒックスだ。もちろん確証もなく唱えたわけではない。一度目のマホトーンを唱えたとき、ヒックスは最初わずかに怯んだ。もし耐性があるのなら、そもそも怯むことなどしないのではないか? 一度目はたまたま運が良かっただけで、今回も効かないとは限らないのではないか?
「なっ、何っ!?」
しかし、俺の運の悪さもここで打ち止めになったようだ。俺の呪文は赤い光輪となり、ヒックスの体を拘束した。すぐに消えたその赤い光は、マホトーンによる呪文封じが成功した証だ。
そしてヒックスが唱えたはずのラリホーは、もちろん効かなかった。そもそも頭以外を全て鋼鉄にした状態の人間に睡眠の呪文が効いたのかはわからないが。
「どうやら……運が悪いのは……、お前の方だったみたいだな」
火傷の痛みと呪文の連続使用で朦朧とした意識でも、奴には一言言ってやらないと気が済まない。というか、自分でも無意識だったが、今もヒックスに言われた言葉を引きずっていたらしい。
「くっ……、離せ!! 離してくれ!!」
鋼鉄の腕に絡め取られたままのヒックスは、身動きが取れずジタバタと足掻いている。あまりの動揺に、今も俺が呪文を唱えようとしていることにすら気づかない。
ドドドド……。
その時、山頂から火山灰や噴石に続いて、火口から噴出したマグマがこちらに向かって押し寄せて来た。
――そろそろ、頃合いか。
「アストロン!」
俺は自分の頭に向けて最後のアストロンを唱える。これで俺の身体は全身くまなく鋼鉄となった。術中は対象者の意識がなくなるとされているが、日頃の鍛錬の成果かまだ意識はある。鈍色の視界に映し出されているのは、身動きできずにジタバタともがくヒックスの姿だ。
「バカな……!! せっかく私の……、私の計画が……!! なぜだあああ!!」
一人錯乱するヒックスの姿に、俺は怒りや悲しみの他に、魔物に対してあってはならない同情の念も湧き上がってきた。今までずっとともに旅をしてきた仲間が裏切り、俺の手で死の淵へと向かおうとしている。その状況を複雑な思いで眺めていると、ふいにヒックスとの思い出がフラッシュバックされた。
(お前との旅は……嫌ではなかった。……魔物であることを……除いてな)
すぐ目の前まで、マグマが迫る。当然俺の身体もマグマに飲まれてしまうが、鉄の融点よりも温度が低いマグマなら、鋼鉄の身体でも理論上無事なはずである。……本の知識でしか根拠はないが。
(じゃあな……、ヒックス)
やがて、最後の別れの言葉を手向けることなく、ヒックスはあっけなくマグマの海へと消えていった。
(俺も……、……あいつらに……会えるか……どう……か……)
このままあいつらに会えなかったら――。信念を貫ききれず、俺はこんなところで死ぬというのか。……いや、それもまた運命なのかもしれないな。
半ば生への執着を諦め、後悔と絶望が混濁する意識の中、ふと俺の脳裏に一筋の光が閃いたような感覚を覚えた。そしてすぐに、暗闇へと堕ちたのだった――。