俺様勇者と武闘家日記   作:星海月

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闇を制する者

 

「ミオ!!」

 

 ユウリが叫ぶ。私は痛みに顔を歪めるが、なんとか倒れまいと踏みとどまる。シーラのスクルトがなければ、致命傷を負っていたことだろう。

 

「ベホイミ!!」

 

 ユウリの背後から、自身の回復を終えたシーラが私に回復呪文を唱えてくれた。みるみるうちに痛みが和らいでいく。

 

「ありがと、シーラ!!」

 

 背中の傷が回復した私は、ホロゴーストに向かい合うように向き直った。

 

『ほう……、虫けらの分際でしぶとく足掻くか……。よかろう、私も本気を出させてもらう』

 

 そう言うとホロゴーストは、黄色い目を一瞬光らせた。その瞬間、なんとホロゴーストの体が2つに分裂した。

 

「!?」

 

 一体でさえ厄介なのに、二体で攻撃されたら今度こそやられてしまう。まだあいつの動きも把握しきれてないのに……!

 

 すると、分裂した二体のホロゴーストはこちらが攻撃を仕掛ける前に再び姿を消した。脅威が二倍になり、思わず三人とも身構える。

 

「スクルト!!」

 

 そこへ、シーラが二度目の防御呪文をかけた。もし攻撃が当たっても、さっきよりも大きなダメージは受けないはず。だけどそれでは、根本的な解決にはならない。

 

 ザシュッ!! ドシュッ!!

 

「ああっ!!」

 

「くっ!!」

 

 今度はシーラとユウリに攻撃が当たった!? けど、いったいどこから!?

 

 2人の方に視線を移しても、すでにホロゴーストの姿はない。これではまるでかまいたちのようだ。このまま見えない攻撃を受け続けていれば、嬲り殺しにされてしまう。

 

 シーラは右足から血を流しているし、ユウリは左頬を殴られた跡がある。当然痛いはずだが、魔力が切れるのを危惧しているのか、なかなか回復しようとしない。

 

「ユウリちゃん……。これ以上回復呪文使ったら、MPなくなるかも」

 

「奇遇だな。俺のMPもそろそろ底を尽きそうだ」

 

 そう言うとユウリは、シーラが指に嵌めている祈りの指輪に目をやった。

 

「万が一の時には、シーラ。お前がその指輪を使え」

 

「え!? でもこの指輪って、確か使用回数が決まってて、何回か使うと壊れちゃうんじゃなかったっけ!?」

 

「だからこそだ。お前のMPが尽きたら、それこそ俺たちの旅はここで終わりになる」

 

「そんな……!」

 

「俺にはこの剣がある。お前とミオを優先して回復しろ」

 

「でも……」

 

 シーラは葛藤していた。きっと自分とユウリ、どちらを優先すべきか悩み、ジレンマを抱えているのだろう。いつも自分を犠牲にして仲間を優先する、目の前にいる勇者はそういう人だ。だけど、私もシーラと同じ、はいそうですかと素直に従うつもりなんかない。

 

――考えるんだ! 姿の見えないホロゴーストたちをあぶり出す方法を!!

 

……そう言えば、ホロゴーストはそもそも何の魔物なんだろう?

 

 暗い洞窟では見えなかったが、ユウリが炎の呪文であたりを照らしたら、影となって現れた。

 

 私はふと、天井近くに設置してある松明を見上げる。さすがの魔物でも、真っ暗な洞窟内では視界が利かなくなるからか、最低限の明かりはつけているらしい。

 

 でも、例えば骸骨の姿をした地獄の騎士は、元々目がないけれど、明かりなんて必要なのだろうか? ここにはホロゴーストと地獄の騎士しかいない。それならわざわざ明かりをつける必要なんて――。

 

「――!!」

 

 そこまで考えて、頭の中で何かが閃いた。暗い洞窟に松明をつけている理由……。ホロゴーストが姿を消しているのって、もしかしたら……。

 

 その時、前方から殺気を感じた。しかし、考え事をしたせいか、反応が間に合わない!

 

 ドガッ!!

 

「うぐっ!!」

 

 左の脇腹辺りに、強い衝撃と痛みが走った。ホロゴーストは私の脇腹を殴りつけると、すぐにまた姿を消した。

 

「ミオちん!! 待ってて、今回復を……」

 

「ま、待ってシーラ。その魔力、私がいいって言うまで取っておいて」

 

「え!?」

 

 胃液が逆流し、のどの奥からこみ上げてくるのを必死で抑えながら、ユウリを一瞥する。そして私は、無言である一点を指さした。

 

「……そういうことか」

 

 どうやら今のジェスチャーだけでわかってくれたようである。私は頷くと、星降る腕輪を最大限に引き出した。そしてユウリは、鞄の中から液体の入った小瓶を取り出した。

 

「ユウリちゃん? それって聖水じゃあ……」

 

「行くぞ、ミオ!!」

 

「うん、お願い!!」

 

 シーラの問いには答えず、ユウリは聖水が入った小瓶の蓋を開けた。そして私が走り出すと同時に、蓋の開いた小瓶を思い切りぶん投げた。

 

 投げた先は私が指差した先――、松明の火だった。逆さまに落ちた小瓶から、中に入っている液体――聖水が溢れ落ち、松明の火にかかる。

 

 と同時に私は最大限の素早さで反対側の壁に掲げてある松明の真下までダッシュすると、壁を伝い松明に向かって飛び蹴りを放った。

 

 ジュッ、とほぼ同時に左右の壁の松明の火が消え、周囲は真っ暗闇になった。

 

「シーラ!! 火の呪文を!!」

 

「!! わかった!!」

 

 この一連の動作にピンときたのか、シーラは迷う間もなく呪文を唱えた。

 

「ギラ!!」

 

 シーラの持つ杖の先から、小さな炎の帯が放たれる。この炎自体に殺傷能力はほとんどなく、いわゆる目眩まし程度に使われるのだが――。

 

 真っ暗な洞窟を明るく照らすには、十分な光量を放っていた。そして、光が生み出されたと言うことは、当然影もできる。その影にこそ、ホロゴーストは潜んでいるのではないだろうか?

 

「ライデイン!!」

 

 私の考えに気づいたユウリが、シーラの放ったギラによって生み出された影に向かって雷撃呪文を放った。雷撃が影に直撃した瞬間、ついぞ聞いたことのない悲鳴が洞窟内に響いた。

 

『グオオオオオオオオ!!』

 

 雷撃に体を貫かれてもなおホロゴーストは生きている。だが、かなりのダメージを与えたようだ。

 

「効いてる!?」

 

「ああ、お前の読み通りだ! 奴はずっと影を行き来して俺たちを狙っていた!」

 

 光が消え、再び暗闇と化したと同時に、ユウリの声と走り出す足音が鳴り響く。ホロゴーストに近づいてトドメを刺すつもりだろう。だがもう一体のホロゴーストも、今は影となるものがないからか、気配はあるが姿までは現さない。

 

 そしてユウリは、全く視界が見えない状態にも関わらず、まるで見えているかのように真っしぐらに走っていく。間もなく斬撃とともに何かが倒れる音が聞こえた。

 

 ようやく暗闇に目が慣れた私は、少しでもユウリに応戦しようと近づく。少し離れたところに、ユウリらしき人影と、その足元に黒い蟠りが見える。

 

「迂闊に近寄るな!! まだ奴は生きてる!!」

 

「!!」

 

 ユウリの声に、反射的にピタリと足を止める。その瞬間、かつてない殺気がぶわりと広がるのを感じた。

 

『おのれ……。人間の分際で小賢しい真似を……。我の真の力、見せてくれる!!』

 

 ホロゴーストが叫ぶとともに、洞窟全体がホロゴーストの気配で覆い尽くされる。暗闇の中でも見える、さらに深い黒い影。まさに暗黒とも呼べるそのモノが、洞窟全体を漆黒へと塗りつぶしていった。

 

「なっ、なんだ!?」

 

 遠くの方で、ナギが驚いた声を上げる。アルヴィスとともに未だ数体の魔物と戦っている最中だったようだが、ホロゴーストの放った漆黒の闇がナギたちのところにも及び、松明で薄暗かった場所ですら闇に飲み込まれる。

 

『我が作り出した闇の中で、恐怖に怯え死ぬがいい!!』

 

 もはやホロゴーストの体の一部と化した闇が、まるで生き物のように蠢く。そして、周囲の闇が寄せ集まり、錐状に形作られていく。それはまるで先端が鋭利な黒い鍾乳石のようだった。それらがいくつも生み出されると、こちらに向けて一斉に襲ってきた。

 

「うわわっ!!」

 

 ドドドドドッ!!

 

 私はシーラをかばいながらなんとか避け、ユウリは剣で黒い錐を斬り払う。なんとか初撃は避けることが出来たが、はたして次の攻撃は避けられるかどうか……。

 

「アルヴィス!!」

 

 そのとき、ナギの悲痛な声が響いた。嫌な予感が体中を駆け巡る。

 

「どうしたの!? ナギちん!!」

 

 ここからでは暗いのと距離があるので二人の様子はわからない。居てもたってもいられずシーラが問いかける。

 

「アルヴィスがやられた!! オレを庇って……」

 

「!!」

 

 果たして、予感は的中した。アルヴィスは無事なのか、確かめたくても敵の攻撃がいつ来るかわからない以上、迂闊な行動はできない。

 

 だけど、少なくともシーラは今すぐにでもアルヴィスの元へ駆けつけたいはずだ。ナギもアルヴィスも、薬草くらいなら持っているが、回復呪文は使えない。もしも命に関わるような怪我だとしたら、薬草では到底治せない。それなら――。

 

「ユウリ! 私たちもアルヴィスたちのところに行こう!」

 

 私は迷うことなくきっぱりと言った。

 

「当然だ。俺はシーラを守りながら二人のところに向かう。お前は俺の後ろをついて来い。……信じるからな!」

 

「うん!!」

 

 ユウリが私を信じてくれる。その一言が、私にさらなる勇気を与えてくれた。

 

「ごめんユウリちゃん。一か八かだけど、指輪使うね!」

 

「謝るな。それはお前のものなんだから、使い方はお前が決めろ」

 

 ユウリの言葉に覚悟を決めたのか、シーラは腕を組んで祈るポーズをした。シーラの指に嵌められた祈りの指輪が一瞬光ったが、幸いにもそれで壊れることはなかった。

 

「ピオリム!!」

 

 突然体が白い光に包まれる。今のはシーラが放った、仲間全員の敏捷性を高める呪文だ。

 

「お願い二人とも。あたしをアルのところに連れてって!」

 

「ああ」

 

「もちろん!」

 

 シーラがアルヴィスを助けたいと強く願っていることは、誰が見ても分かった。私とユウリはすぐに頷く。

 

「行くぞ!!」

 

 ユウリの掛け声と同時に、シーラも走り出す。少し遅れて私も二人のあとに続いた。

 

 ほどなく、禍々しい殺気とともに黒い錐が再び襲いかかってきた。一撃目と同じ速度なら、きっとこれもかわせるはず、そう確信し、軌道の先を読んでかわそうとしたが、突如右腕に鋭い痛みが走った。

 

「っ!!」

 

 迂闊だった。一撃目は直線的な攻撃だったが、今回はうねうねと蛇のように軌道を変えながら的確に狙ってきた。傷口を見ると、刃物のようなもので切り裂かれている。それを見た私は内心舌打ちをした。元が影なのだから、自由自在に形や動きを変えられるのは当たり前ではないか。

 

 私はすぐに薬草を取り出すと、患部に貼り付けた。薬草は服用の他にも、患部に直接当てても効力を発揮する。ただしあくまでも応急処置ではあるが。

 

「大丈夫か!?」

 

「うん、大丈夫!!」

 

 何本もの黒い攻撃を剣で打ち払いながら、ユウリが問う。予測不能な動きをする影は、もはや黒い触手のようだ。自身も攻撃を避けながら、私やシーラのところまで触手が及ばぬよう、素早い動きと手数の多さで攻撃をしのいでいる。

 

 走りながら止血し応急処置を施した私は、気持ちを切り替える。さっきは油断してしまったが、シーラの呪文のおかげでいつもより素早く動けるはずだ。

 

 目、腕、脇腹、太腿、足元、あらゆる角度から狙ってくる一撃を、跳躍し、身を反らし、後退もしくは前に踏み込みながら、次々と躱していく。たまにシーラの背後に向かってくる影は、ユウリが気づく前に私が蹴り飛ばした。

 

「アルヴィス、大丈夫か!!」

 

 一足早く二人の元へ駆けつけるユウリ。シーラと私も程なく到着した。一人影の群れと戦うナギ。その後ろにうずくまっているアルヴィスを見て、私たち三人は声を失った。

 

「――!!」

 

「アル!! 腕が……」

 

 アルヴィスの左の二の腕から下が、切り落とされていた。何とか止血しようと薬草や薄布を巻き付けてはいるが、傷口からはとめどなく血が溢れている。

 

「ふふ、……駄目ね、こんなところでヘマするなんて」

 

 脂汗をにじませながら、必死に笑顔を見せるアルヴィス。そのあまりにも衝撃的な姿に、私は血の気が引いていくのを感じた。

 

「動かないで!! あたしが今助けるから!!」

 

「シーラ!?」

 

 そう言い放つと、シーラはアルヴィスの隣にしゃがみ込み、杖を掲げて目を瞑り、体を集中させた。

 

「ザオラル!!」

 

 初めて聞く呪文だ。私がいない間にレベルアップして、習得したのだろうか。

 

 すると、杖の先から淡い光が溢れ出し、アルヴィスの傷口と、近くに転がっていた切られた片腕が光に包まれた。

 

「シーラ、アナタまさかその呪文……」

 

「うん。レベルアップして覚えたの」

 

 片腕がアルヴィスの傷口に引き寄せられ、光に導かれるようにひとりでに動く。ゆっくりと片腕が傷口に近づくと、まるで磁石のように切られた片腕がくっついたではないか。

 

「す、すごい……!!」

 

 思わず声を上げるほど、まさに奇跡の瞬間に立ち会ったような感覚だった。

 

「まだ完全にくっつくまで時間がかかるから、もうちょっと待ってて」

 

 真剣にアルヴィスを治療するシーラに、アルヴィスはもう片方の手で彼女の頭を撫でる。

 

「ありがとう。アナタに助けられるなんて、本望だわ」

 

 にこりと微笑むアルヴィスの眦に、うっすらと涙が滲んでいるのが見えた。

 

「皆!! あたしがアルヴィスを治療している間に、絶対にあいつを倒して!!」

 

「当たり前だ、あいつはここで決着をつける!」

 

 そう言い放つと、ユウリはナギの隣に立ち稲妻の剣を構えた。

 

「良かった……。アルヴィスの奴、攻撃を防ぎきれなかったオレを庇ったんだ……。絶対に、死なせちゃならねえと思って、オレ……」

 

 後ろ姿は分からなかったが、涙をこらえながらアルヴィスを庇って戦うナギの姿は、傷だらけだった。もし全てを避けていたら、アルヴィスに当たってしまっていたのだろう。だからあえてナギはここから一歩も動かず、影の攻撃を避けつつも、受け止めていたのだ。

 

「よくやった、ナギ。ここからは、俺達三人で戦うぞ」

 

「へっ、偉そうに言うんじゃねえよ!」

 

 鼻をすすりながら、ナギはぶっきらぼうに言い捨てた。だけどユウリと肩を並べてからのナギは、どことなく落ち着いているように感じた。

 

「試したいことがある。二人とも、あいつをおびき出してくれ」

 

「おう!」

 

「わかった!」

 

 ユウリの提案に是非もなく頷くと、私とナギはそれぞれ左右から襲ってくる影を避けながら、攻撃を入れ続けた。

 

 影とは言え、実体があるから攻撃そのものは入る。私が繰り出した拳も、当たった瞬間影の感触が震えるのを感じた。どのくらい効いているかは分からないが、全く効いてないわけではないようだ。

 

「このまま左右から攻めて、中央に追い込むぞ!!」

 

「うん!!」

 

 ナギのドラゴンテイルが影を絡め取り、続く動作で影を引きちぎる。対して私も、向かってくる影を拳や蹴りで受け流しながら、鉄の爪で切り裂いていく。

 

 攻防を繰り返し、少しずつ二人はじりじりと中央へと詰め寄る。やがてその影がある一角から放たれているものだと分かる。

 

『ここまでよくやった……。人間にしてはな。だが、ここで終わりにしてやろう!』

 

 突如、無数の影が放射状に飛び出した。今までのとは比べものにならない数だ。それら一つ一つがまるで意思を持っているかのように、私たちに向かって襲いかかってきた。

 

「くそっ!! まだあんな力が……」

 

「ナギ!! 集中しよう!!」

 

 矢継ぎ早に私たちを狙う数多の攻撃。その悉くを見極め、躱し、撃ち返すが、次第に頬、腕、足、背中と、僅かな傷が次第に増えていく。だけど痛みより、ユウリのために活路を導かねばならない使命感に心が満たされていた。

 

「はあああああっ!!」

 

 ザシュッ!!

 

 足を踏み込み、渾身の力で最後の一撃を繰り出す。鉄の爪で切り裂かれた影は、あまりにも儚く散っていく。

 

「っしゃああああっっ!!」

 

 ナギの方も、一度に何本もの影を絡め取り、地面に叩きつけた。致命傷を負ったのか、影はそのままはらはらと地面に溶けていく。

 

 と同時に、私とナギの間を縫って、ユウリが剣を携えたまま走り出した。

 

「ユウリ!!」

 

『ばかめ! 正面から堂々と来るとは!!』

 

 ホロゴーストはさらに影十数体をユウリに向けて放った。だが、本気で斬りかかろうとするユウリの前では、塵芥も同然だった。

 

「ライデイン!!」

 

『無駄なことを!!』

 

 再び繰り出す一体の影が、ユウリの放つライデインを打ち払う。

 

 その隙に、ホロゴースト本体へと斬りかかるユウリ。しかしホロゴーストは真上に跳び、剣は虚空を薙いだ。

 

 ユウリの真上に浮いているホロゴースト。金色の二つの目が細められ、蔑んでいるとも笑っているとも似つかぬ表情を浮かべる。

 

『死ね!!』

 

 咆哮と共に、ホロゴーストの攻撃が雨のように降り注ぐ。回避不可能なほどの猛攻を、ユウリは尋常ならざる速さで切り抜けていく。だが――。

 

「っ!!」

 

 ぷしゅっ、とユウリのこめかみ辺りから血が噴き出す。視界を遮られたのか、一瞬彼の動きが止まる。

 

 それでも彼は剣を振るった。見えていなくても、気配で分かるのか、彼の切っ先はまっすぐホロゴースト本体めがけて貫いた。

 

『があああああぁぁぁぁぁっっっ!!!』

 

 絶叫が洞窟にこだまする。しかし、ホロゴーストの影は未だ動いている。隙だらけになったユウリの背中めがけ、影の一つが迫ってくる。

 

「うらあああっ!!」

 

 それを、ナギが掛け声とともにドラゴンテイルで打ち払う。しかしなおもホロゴーストは倒れない!

 

 その時だった。ユウリの体が突然光り始めた。いや、彼の体に反射しているだけで、実際に光っているのは、彼が手にしている稲妻の剣だった。

 

 ドガガガガッッッ!!

 

 稲妻の剣に貫かれたままのホロゴーストの身体は、剣から放たれる無数の眩い光に絡め取られ、けたたましい轟音とともに爆発した。

 

『ア゙ア゙ア゙ア゙ア゙ァァァァァァッッッッ!!!!』

 

 断末魔のような声を上げたホロゴーストは、そのまま光とともに消え去った。

 

「や……、ったのか?」

 

 誰にともなくナギがポツリとつぶやく。

 

 光が消え、剣に貫かれていたホロゴーストは跡形もなくなり、ただ剣を持つユウリだけがひとり取り残されていた。彼はゆっくりとこちらを振り向きながら、長い息を吐いた。

 

「……ああ。あいつの気配はもうない。やっと……、やっと倒したんだ」

 

 その瞬間、私たちは喜びのあまり駆け出し、お互い抱き合ってその勝利を喜んだのだった。

 

 




途中から真っ暗な洞窟で戦ってて見えるんかいと突っ込まれそうですが、ものすごい勢いで目が暗闇に慣れたということにしてください。
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