俺様勇者と武闘家日記   作:星海月

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ナジミの塔

 

結局その日は宿に泊まり、次の日の朝早くユウリさんたちと落ち合い、アリアハンを出発した。

 

「遅い。一体何をやってたんだ」

 

 出発前、世界を救う勇者であるユウリさんは、不機嫌そうに町の入り口の前に立ち、一番遅れてきた私に向かってこう言った。

 

「勇者である俺を待たせるなんていい度胸してるな。ま、どうせ鈍くさそうなお前のことだ、間抜け面でのんきに眠りこけて寝坊したんだろ」

 

 ……これが昨日初めて会った人に言う台詞だろうか。

 

 確かに遅れてきたのは悪かったけど(意外にもシーラのほうが先に来ていた)、そこまで言われる筋合いはないと思う。まだユウリさんと知り合って日が浅いこともあり、無謀だとわかっていながらも、ついムキになって言い返してしまった。

 

「ね、寝坊なんかしてません!! いろいろ仕度とかしてたら夜中までかかっちゃったんです!!」

 

「普通俺の仲間になるのなら俺と会う前に準備をしておくもんだろ。これだから田舎娘は機転が利かないんだ」

 

 ……結局、あっけなく反撃を食らってしまった。

 

 そのあと町を出てからも「足が遅い」だの「ボケた顔してる」だのさんざん言われまくったあげく、反論も許さないのだからこちらとしてはたまったもんじゃない。ただ歩いてるだけでストレスがたまってしまいそうだった。

 

 その上なぜかシーラちゃんには何も文句を言わない。この差別は何なんだろう。

 

「あはははは~!! ちょうちょだちょうちょ~♪」

 

 ……ひょっとしたらただ単に文句を言っても無駄だからなのかもしれない。

 

「ねえ、シーラちゃん。あのさ、本当にユウリと一緒に旅しちゃっていいの?」

 

 ちょうちょに気を取られているシーラちゃんに私は尋ねた。

 

 シーラちゃんはこちらに気づき、きょとんとした顔でこちらを見ている。そのしぐさがすごくかわいい。

 

「うん♪ だってこの人、お酒いっぱい飲ませてくれるって言ったもの☆」

 

「俺はそんなこと言った覚えはない!!」

 

 まー確かにそれ言ったのはルイーダさんだったけど……。

 

「でもさ、シーラちゃんどう見ても未成年のような気がするんだけど……。大丈夫なの?」

 

「うん♪ あたしこれでもおっきなタル5こぐらい一気に飲み干したことあるよ♪ でもぜんぜん平気だった☆」

 

 た、タル五個分……!!?? ってタルの入ったお酒がどのくらいかがわからないっ……!

 

「もしかしてシーラちゃんて私より年上?」

 

「そんなこと今はどうでもいいだろ。それより、見えてきたぞ」

 

 ふと街道の先を見ると、ユウリのいうとおり村のようなものが見える。

 

「あれが、レーベの村だ」

 

 

 

 レーベの村は、アリアハンと違って穏やかな空気の似合う、なんとものんびりした村だった。なんとなく私が育った村に似ている。

 

 ユウリが言うには、この村にいる老人が『魔法の玉』というものを持っているのだという。

 

『魔法の玉』というのはいわゆる魔力蓄積器みたいなもので、詳しいことはわからないけど、とにかく使うと爆発するらしい。

 

 なぜ破壊力抜群の魔力を秘めた『魔法の玉』が必要なのかというと、ここからずっと南東にある『いざないの洞窟』を通らないとこの大陸から出られないのだそうだ。

 

 けれどその洞窟は昔から地震やがけ崩れが多いらしく、今では土砂が埋まって入り口が通行禁止になっている。それを取り除くために『魔法の玉』というものが必要らしいのだ。

 

「ふん、そんなことも知らないとは、お前それでも武闘家か?」

 

「し、知らなくったって武闘家です!」

 

「あたしも知らないよ~」

 

「お前には聞いてないウサギ女」

 

 変なあだ名をつけられたのにもかかわらず、シーラちゃんはなぜかうれしそうにはしゃいでいる。

 

「ねえねえ、ミオちんにはなんかあだ名ないの?」

 

「知るかそんなの。こいつなんぞ鈍足女だ」

 

 ……結局つけてるじゃん。ていうかいつのまにかシーラちゃんにまであだ名をつけられている。

 

「そういうユウリさんは、その『魔法の玉』っていうのがどこにあるか知ってるんですか?」

 

「ホントに鈍い女だな。だからこれから探しにいくんだろうが。それからユウリでいい。敬語も使うな」

 

「あ、はい、すいません」

 

 なぜか恐縮する私。

 

「あたしも呼び捨てで呼んでいいからね、ミオちん♪」

 

「あ、うん、わかった」

 

 それはいいんだけど、その『ミオちん』ってのはどうかと思うなぁ……とはいえない小心者の私だった。

 

 

 

「ああ、それならあそこの家だぜ」

 

 意外にも、村人に聞いてものの数分もしないうちに、その『魔法の玉』を所有している人の家の場所を教えてもらった。

 

 だが、その人に会おうとしているということをその村人に言ったとたん、全力で否定された。

 

「あー、それは無理無理。なんたってあそこんちの爺さん、しょっちゅう変な魔法の研究してて、客が尋ねてきても無視してんのか絶対顔を出さねえんだ。しかも扉にはわけのわかんない鍵までつけて、勝手に開けることさえ許してくれねえ。ありゃあ中でよっぽど物騒な研究でもしてるんだぜ」

 

 そんな怪しげな人から『魔法の玉』をもらわなければならないのか。私は横目でユウリをチラッと見ると、

 

「だったら扉ごと壊せばいい」

 

 とか本気で言いそうな表情をしていたので、私は思わず目線をそらした。

 

 すっかり途方に暮れていると、シーラがなにやらせわしなく、しきりにきょろきょろしている。

 

「どうしたの、シーラ?」

 

「うーんと、この辺に酒場はないのかな~、て思って」

 

「まだ飲み足りてないの!?」

 

 確か昨日あの後ルイーダさんに、「これで最後」とかいいながら、ワインのような酒瓶を両手に持ち、浴びるように飲んでいたような気がしたんだけど。

 

「残念だけど、この村にはそういうのないみたいだね」

 

「え~~!? ショック~~~!! あたし一日一本はお酒飲まないと死んじゃうんだよ~~!」

 

「いや、それだけ飲むほうが身体に悪いと思うけど……」

 

「ザル女のたわごとなんぞ放っとけ。それよりこれからどうするか考えるぞ」

 

「ざる? 何それ?」

 

「あれー? ユウリちゃんがそんな言葉知ってるなんて意外ー! いーけないんだいけないんだ~」

 

「お前に言われたくない!!」

 

 そういってユウリは逃げるシーラを追いかけ始めた。それを眺めながら私はいまだに「ざる」の意味について考えていた。

 

 やがて日が暮れ落ち、ひんやりとした夜の空気に変わりはじめたので、ひとまずここは宿を取って、翌日行動に移すことにした。

 

 宿についてからもシーラは「お酒がない」と言って、お風呂と夕食を済ませたあとすぐに部屋に戻り、早々と眠ってしまった。

 

 一方私はと言うと、食事が終わった後ユウリに呼ばれて、ユウリが泊まる部屋で明日の予定を決めることになった。

 

「さっき村人に聞いて回ったんだが……」

 

 あれから私たちは再び聞き込みをしてたのだが、ユウリが聞いた村人の話では、この村からみて南西の方角に、『ナジミの塔』と呼ばれる塔が立っているらしい。

 

 そこには昔『バコタ』という盗賊がいたのだけれど、ある時アリアハンの兵士に捕まってしまった。彼が捕まる直前、仲間にとあるアイテムを渡したのだが、そのアイテムを持っている人物がナジミの塔にいるという。

 

 何でもそのアイテムと言うのは、解錠を得意としたバコタの技術をすべて結集させたもので、名を『盗賊の鍵』といい、ちょっと複雑な構造の鍵がかかった扉なら簡単に開けられるという。そのため盗賊たちの間ではのどから手が出るほどほしいレアなアイテムなのだそうだ。

 

「てことは、その盗賊の鍵があればあそこの家の鍵も開けられるってこと?」

 

「ああ。呼んでも出ないのならこっちから上がりこむしかないだろ」

 

 それってつまり不法侵入になるってことなんじゃないのかな?

 

「まあもし手に入らなくても家ごと呪文で破壊すればいいしな」

 

 ……不法侵入なんてかわいいもんだよね。うん。

 

「あのウサギ女にも伝えとけ。明日は『ナジミの塔』に行くとな」

 

「あ、うん。……でもさ、皆が欲しがりそうなそのアイテムを、そんな簡単に私たちにくれるかな?」

 

「そんなの、倒すか脅すかして奪えばいいだろ」

 

 もうどっちが盗賊なのかわからない。

 

 結局明日の予定はユウリの独断で決定し、後は特に何も話すこともないまま、会議はこれでお開きとなった。

 

 部屋に戻る際にユウリが、

 

「ナジミの塔周辺は古くから魔物が住み着いているようだから、戦闘になったらちゃんと戦えよ。足手まといが二人もいたら俺が疲れるだけだからな」

 

 と、しっかり念を押してくれた。ホントユウリって、いい性格してるよ。

 

 

 

 そして翌日。ぐっすり眠っていたシーラを揺り起こし、急いで仕度を済ませたおかげで、ユウリより先に部屋を出ることができた。

 

 それなのにユウリは何も言わず、そのくらい当然だ、と言わんばかりの態度で先に宿を出た。

 

「ふぁあぁ~ぁ。あーよく寝た♪」

 

 後ろでシーラがのんびりとあくびをかみ殺しながら歩いている。バニースーツにウサギの耳、おまけにものすごくかかとの高いハイヒールを履いている姿は、この村ではものすごく珍しいらしく、村人がすれ違うたびにシーラのほうをじっと見つめている。

 

 でもきっとバニーガール姿じゃなくったって、あんなにかわいらしい顔立ちをしているのだから、町行く人ならだれでも振り向くかもしれない。

 

 ふと、何でシーラはあんな格好をしているのかといまさらながら疑問に思ってしまう。

 

 聞いてみようかと決心しかけたが、ユウリが急に歩を早めたので気がそっちに行ってしまった。

 

「なにのろのろ歩いてんだ鈍足。早く行くぞ」

 

「ちょ、ちょっと待ってよ。シーラがまだ……」

 

「あたしならここにいるよ~ん」

 

 声のしたほうを振り返ると、今まで後ろに歩いていたシーラが、いつのまにかユウリの前を走っていたのだ。

 

 私は彼女の意外な脚力に心底驚いた。あんなハイヒールでよく走れるものだ。

 

 そんな調子で先を急いだもんだから、結構かかると思われていた道のりも半日足らずで目的地についてしまった。

 

 村人の話では、途中に洞窟があって、そこから塔の内部へと続いているらしい。聞いたとおりの道を進み、何度か魔物にも出くわしたけれど、ユウリが一掃してくれたおかげで難なく洞窟を抜けることができた。塔の内部は洞窟とは違い、うまく日の光が入る構造になっているのか、かなり明るい。

 

 ナジミの塔は昔からあると言う割にはあまり古ぼけた感じはしない。

 

「なんか……意外ときれいなんだね……」

 

 隣で何気なくつぶやいた私の言葉に、ユウリは奇妙なものを見るかのような目つきで私のほうを向いた。

 

「お前……。盗賊の棲みかに向かってなんて間抜けな感想を漏らしてんだ」

 

「だって……。なんかすごく掃除が行き届いてるんだもの。普通こういうところって、もっと薄暗い埃だらけの建物とか、傷だらけの壁がいっぱいあるところかと思ったんだけど、ここはぜんぜんイメージと違うね」

 

「まあ確かに、最初に入った洞窟と言い、不自然ではあるな」

 

 珍しく意見があった気がする。ユウリは腑に落ちない顔で塔の内部を見回した。

 

「ねぇねぇ、あそこにベッドがあるよ~♪」

 

 そういうとシーラは、誰よりも早く塔の中に足を踏み入れ、テンポのいい足音を立てながら奥へ進んでいってしまった。

 

「あの馬鹿……!」

 

「あぁっ、シーラ!!」

 

 あわてて私もシーラの後を追う。さらにその後ろから、大きなため息をついたユウリがついてきた。

 

 そしてその奥には、なぜかベッドがたくさん並んだ大きな部屋があった。

 

「いらっしゃいませ、お泊りですか?」

 

「は?」

 

 私は自分でも情けないほど間抜けな声を上げた。だって、盗賊の棲みかなのに、ちゃんとした宿屋があるんだもの。

 

「おいじじい。ここに『盗賊の鍵』があると聞いたんだが、お前が持ってるのか?」

 

 宿屋のおじさんを目にしたとたん、ユウリはいきなりおじさんの胸倉をつかんで脅し始めた。顔はいつもの仏頂面だから余計怖い。

 

「い、いや、わたしはそんなもの知らない!!」

 

「本当か? 隠すとためにならんぞ!?」

 

 もう完全に勇者じゃないよ、その言動。

 

「本当ですって!! わたしはただの宿屋の主人ですから!! ここの家の人に雇われてここに店を作ってるだけなんですからね!」

「なんでこんなところに宿屋があるんですか?」

 

 私の質問に、宿屋のおじさんは得意げな顔で答えた。

 

「君たち、洞窟を抜けてきたんだろう? 魔物に襲われなかったかい?」

 

「襲われましたけど……?」

 

「あの洞窟は別名『冒険者の修行場』と呼ばれていてね。魔物を倒すのに不慣れな新人の冒険者たちがちょくちょく腕試しにやってくるんだよ。けどやっぱり腕が未熟だからね、こうして休憩所を作っているのさ。いいアイデアだろ」

 

「は、はあ……」

 

 私が微妙な反応を返していると、今のやり取りをまったく無視した様子でユウリが尋ねた。

 

「ここの家の人に雇われた、だと?!」

 

「ええ。この塔には昔から住んでるご老人がおりまして、なんでも今は孫と二人で暮らしているそうですよ」

 

「孫!? 孫までいるの!?」

 

 私はさらに驚愕した。一人だと思っていただけに、孫までいると言う衝撃は半端ないものだった。

 

「どうやら、ただの塔じゃなさそうだな」

 

 そういって、ぱっとおじさんの襟元を離すユウリ。おじさんは心底安堵した様子で襟元を正している。

 

「よし、上に行くぞ」

 

 私たちの返事も聞かないまま、ユウリは宿屋のおじさんに背を向けて歩き始めた。

 

 私は宿屋のおじさんに頭を下げながら、勝手にベッドでごろごろ転がっているシーラを引っ張って、ユウリの後を追った。

 

 

 

 その後宿屋を後にした私たちは、おじさんの雇い主でもあるおじいさんとその孫がいるという手がかりをもとに、ナジミの塔を徹底攻略することにした。

 

 2階に上がり、一通り調べるため二手に分かれることにした。ユウリ一人と私とシーラの二人でだ。

 

 シーラと一緒に入り組んだ通路を進んでいると、やがていきどまりの壁が見えた。

 

 道を間違えたかと思い引き返そうとしたが、ふと壁の下に目をやると、金色に輝く宝箱がひっそりと置いてあった。

 

「こ、これって宝箱だよね!? 開けちゃって、いいんだよね?!」

 

「いーんじゃない? 宝箱も取って~♪ って言ってるよ」

 

 シーラの同意により、私は宝箱を開けることにした。恐る恐るそれに近づく。あともう二、三歩で届く――そのときだった。

 

 ばかっ。

 

 足元の感覚が、急になくなった。そして、突然足元にぽっかりと空いた闇の中に、私は吸い込まれていく……はずだった。

 

「って、あれ?」

 

 なぜか身体が宙に浮いたままブランコのようにゆらゆらしている。

 

 どういうことなんだろう。そう思って上を見上げてみた。すると、顔を赤くして歯を食いしばっているシーラの姿が見えた。よく見ると私の服のすそを思い切りつかんで引っ張りあげようとしている。

 

「シーラ!!」

 

「う~~~、ミオちん落ちるのやだよ~~~!!」

 

 私はシーラの決死の行動に、はっと我に返った。意外にも冷静に判断した私は体勢を立て直し、何とか無事に元の場所に這い上がることができた。

 

「うわ~~ん!! ミオちん助かってよかったよ~~!!」

 

 そう泣きながら飛びついてきたので、思わず私も涙腺が緩んでしまった。

 

「ありがとうシーラ!! シーラがいなかったら私大怪我してたよ……!」

 

 そう言って私たちは、お互い強く抱き合った。そしてふと疑問に思う。

 

「でもなんでこんなところに落とし穴なんかあるんだろ?」

 

「む~、わかんない。きっと誰かのイタズラだよ!」

 

 イタズラにしては手が込んでいる。なにしろ床と落とし穴の境目がわからないように似たような色の石でごまかしているのだから。

 

「そうだ、宝箱は?」

 

 私は落とし穴の反対側に回り、今度は慎重に宝箱に近づいた。恐る恐る宝箱を開けるが、今度は何も起きない。

 

 中には、薬草が入っていた。

 

「なんだぁ。これだけ苦労したのに薬草一個なんて……」

 

 私ががっくりと肩を落としていると、別行動をしていたユウリがやってきた。

 

「なにぼさっと薬草握り締めてるんだ。何もないのなら早く上の階に行くぞ」

 

 ユウリのいつもと変わらない様子を見て、私は疑問に思った。

 

「あれ? ユウリは落とし穴に引っかからなかったの?」

 

 ユウリは心底あきれたような表情を、最小限の動きで私たちに見せた。

 

「俺があんな子供だましの罠に引っかかるとでも思ったのか? お前らと一緒にするな」

 

 う~ん、本当に引っかかってただけに何も反論できないのが情けない。

 

「こっちは落とし穴に爆竹に煙玉だった。……ったく、どこのガキだ、こんな馬鹿げたものばかり仕掛けやがって……。これなら魔物のほうが何倍もましだ」

 

 常に不機嫌そうな顔をしているユウリが、今はさらに機嫌を悪くしている。また爆発させるとか言わなきゃいいけど。

 

 結局2階は罠と宝箱しかなかったので、3階に向かうことにした。けれど、3階にも同じような仕掛けがしてあっただけで、ほかに怪しいところなど何も見当たらなかった。

 

 取り立てて怪しいと言えば、上に上がる階段が二箇所あったということだけだ。

 

「どうするの? どっちに行く?」

 

「少し黙れ。今考えてる」

 

 何を考える必要があるのだろう。たとえ階段の先に罠があるとしてもユウリなら余裕で回避出来そうだし、私たちの身を案じて慎重に行動なんてことも性格的に考えられない。

 

 ともあれユウリが必死に考えてる中、こっちが勝手に行動するわけにもいかない。後で絶対文句言われるに決まってるもの。

 

 ただここでぼーっとしてるのも性に合わないので、暇つぶしにシーラとおしゃべりでもすることにした。早速シーラに話しかけようと声を……ってあれ?

 

「シーラ? どこ行っちゃったの?」

 

 そばにいたはずのシーラがいない。また一人でどこかに行ってしまったんだろうか!?

 

「シーラ!! おーい、どこー?!」

 

「ねーねーミオちん、上すごいよー!!」

 

「シーラ!?」

 

 壁の奥から聞こえてくるのはシーラの声だ。方向からしてここから遠い方の階段のようだ。

 

「ユウリ。シーラ先に行っちゃったよ?」

 

 と、声をかけるも、考えに没頭してるのか反応はなし。

 

 仕方がないのでほっとくことにした。薄情と思われても仕方ない。レベル30の勇者様ならきっと大丈夫だ、うん。

 

 私はシーラの後を追って階段を上った。上った先――4階は周囲に壁がないため屋上のようになっており、その中央に小さな建物がぽつんと立っていた。

 

 シーラはその建物の前にしゃがみこんで何かをじーっとみていた。

 

「どうしたの、シーラ? 何かあったの?」

 

「あそこの柱の向こうに、誰か倒れてる」

 

「え!?」

 

 私は急いでシーラの言う場所まで走り、思わず立ち止まった。倒れていたのは、私とそう変わらない年の男の人だったのだ。

 

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