俺様勇者と武闘家日記   作:星海月

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眠らない町

 

 

 お昼を済ませたあと、残りの仕事を全て片付けた私たちは、ビビアンさんと座長さんから報酬をもらい、関わった劇場の人たちに挨拶を済ませ、劇場の入り口で一時解散することとなった。

 

 久々に慣れない仕事に携わったからか、魔物を相手にするときより疲労感が強い。外に出て空を仰ぎ見ると、夕日が町全体を赤く染め上げていた。けれど、日が傾き始めても相変わらずこの辺り一帯は暖かい。

 

 私はユウリと一緒に、町でも特にお店が立ち並ぶという商店街へと向かった。

 

 道すがら、いくつもの露店商が並ぶ通りに出た。魔物の蔓延るご時世とはいえ、人の購買意欲というのはそう変わらないらしく、どのお店も人が並んでおり賑わいを見せている。

 

 お店の人に気づかれない程度にちらりと品物を見てみると、食べ歩き出来そうな美味しそうな食べ物、女の子なら一度はつけてみたいアクセサリー、一見なんだかわからないアイテムなど、その品揃えは多種多様だった。

 

「うわあ、こんなにたくさんお店見たの初めてだよ!」

 

 私はお店と商品のあまりの多さに、はしゃいでいた。

 

 そしてユウリがいるのを忘れて、ついふらふらと近くにあった露店に足を踏み入れてしまった。

 

 そこには女性向けのキラキラした宝石やシンプルな銀細工など、様々なデザインのアクセサリーが置いてあり、私は思わず感嘆の声を上げる。

 

「すごいなあ、こんな細かい細工、どうやったらできるんだろう」

 

 じーっと眺めていると、ユウリが後ろから声をかけてきた。

 

「なんだ、お前でもこういうのが欲しいのか?」

 

 皮肉交じりに言い放つが、今の私は別のことを考えていた。

 

「いや、欲しいっていうか、どういう風に作るのかなって思って」

 

 そう言うとユウリは、不思議なものを見るかのような顔をした。

 

「職人にでもなる気か?」

 

 職人か。そういうのもいいかもしれない。もともと実家では、きょうだいの洋服や小物などを古着や余った布で作っていたので、自分が身に付けるより作る方に興味が湧いてしまうのだ。

 

「う~ん、魔王を退治したら、自分で工房でも開こうかな」

 

 などと言っていたら、後ろで吹き出す音が聞こえたので、私は思わず振り向く。

 

「今のって、もしかしてユウリ?」

 

「……お前が笑わせるようなことを言うからだ」

 

 一見平然としているが、口を抑えて必死に笑いをこらえているユウリ。いや、笑わせるつもりなんて微塵もなかったんだけど。でも、あの仏頂面を極めたユウリが笑うなんて初めて見たし、深く考えないでおこう。

 

 あんまりじっと見てると機嫌が悪くなりそうなので、視線を外し、他にもお店がないか辺りを見回してみる。

 

 すると、ちょうど小腹が空いていたからか、いつの間にか無意識に売り物を凝視していたのだろう。その店の店主が、細い串にこんがりと炙った鶏肉を串に差した、見るからに食欲をそそられる食べ物を私に差し出してきた。

 

「お嬢ちゃん、そんなにお腹が空いてるならこの串焼き食べなよ」

 

「あっ、いや、そんなつもりじゃないんです。すいません」

 

 けれど店主は一歩も引かず、今しがた金網に乗っていたもう一本の串焼きを取り上げ、

 

「あんたかわいいからサービスでもう一本つけてあげるよ。ほら、そこの彼氏と仲良く食べな」

 

 そう言って、二本とも私に差し出してきた。

 

「いやあの、私たち別にそう言うのではないんで……」

 

「いいからいいから。熱いうちに食べないと」

 

「……じゃあせっかくなんで買わせて頂きます」

 

 結局食欲には勝てず、押しに負けてここは素直に一人分だけ支払うことにした。

 

「お前……少しは恥じらいってもんがないのか」

 

 店主から串焼きを受け取ると、後ろにいたユウリが心底呆れたように言う。

 

 いや、ロマリアでタダ同然まで値切ってた人に言われたくはないんですけど。

 

 少しムッとした私は、串焼きを彼の目の前に見せながら、

 

「じゃあこれユウリにあげようとしたけど、どうしようかな」

 

 と、意地悪く言ってみた。けれど興味がないとでも言うように、ユウリは私から視線をそらし、別の露店の品物を眺めている。

 

 うーん、そう来るか。それなら、嫌でも興味を持ってもらおうじゃない。

 

 ふと閃いた私は、串焼きを隠すように持つと、彼に聞こえるように声を張り上げて言った。

 

「あっ、このお肉、食べたことのない味がする!!」

 

「は?」

 

 思わずこちらを振り向くユウリ。そこへすかさず彼の口元に串焼きを持っていく。

 

「はい、ユウリ。あーん」

 

 さすがのユウリも即座に対処出来なかったのだろう。私の言葉に素直に口を開けてしまったのが運の尽き。私は笑顔でその串焼きを彼の口に入れた。

 

「!?」

 

「あー、ごめん。やっぱりただの唐辛子だったよ」

 

 あっはっは、と嘘くさい笑いを見せた私は、動揺を隠せないユウリの顔を確認したあと、心の中でガッツポーズをとった。

 

「どう? おいしい?」

 

 一方、何が起きたのかわからないユウリは、鶏肉を口の中に入れながら、目を瞬かせている。すると、彼の顔が次第に紅潮していくではないか。

 

 ん? もしかして唐辛子の量が多かったのかな?

 

 予想外の反応に、戸惑う私。

 

「えーと、あの、そんなに辛かった?」

 

 顔を真っ赤にしながら口元を押さえる彼の姿を見て、私はしまったと思った。

 

 辛いのが平気だと言っていたが、どのくらい平気かは人によって様々だ。この反応を見るに、おそらくユウリが耐えられる辛さの量を越えていたらしい。

 

「ごっ、ごめん! 大丈夫?」

 

「お前……あとで覚えとけよ……」

 

 若干涙目になっているユウリが、恨めしそうにいい放つ。まずい、これあとで絶対怒られる奴だ。

 

「あの、ユウリ……」

 

「アルヴィスのところに行ってくる」

 

 結局ユウリは食べかけの串焼きを全部私から奪い取り、ここからは別行動だと言って、私を置いてその場から立ち去ってしまった。

 

 どうしよう。完全に彼を怒らせてしまったようだ。私はお腹が空いているのも忘れて、しばらく呆然立ち尽くしていた。

 

 

 

 モヤモヤした気持ちでドリスさんのお店に到着すると、店の外でてきぱきと働くルカの姿があった。

 

「あ、アネキ。どうしたの?」

 

「ちょっとね。時間が空いたから、ルカに会いたくなっちゃって」

 

 私の言葉に気づいたルカは、作業でしかめっ面をしていた顔を綻ばせた。

 

「相変わらずだなぁ、アネキは」

 

 その彼らしいマイペースな口調に、私は心底安堵した。環境が変わって自身の生活が大変な中、ルカ自身が変わってなかったのは彼の強みと言えるだろう。

 

「仕事はどう? 家にいるより大変でしょ?」

 

「まーな。でも、おれがやりたくてやってるだけだから後悔はしてないぜ。アネキだって似たようなもんだろ?」

 

「うん、そうだね。私も後悔はしてない」

 

 自分で言ったその言葉は、どこか嘯いているように聞こえた。そんな私の些細な異変に気づいたのか、ルカが訝しげな顔をしてこちらをじっと見ている。

 

「アネキ、なんかあったのか?」

 

 顔に出ていたのだろうか。私は取り繕った笑顔で誤魔化した。

 

「ううん。大丈夫だよ。それよりルカ、ドリスさんに迷惑とかかけてない?」

 

「だっ、大丈夫だよ! そりゃちょっと店の窓ガラス割ったり、注文の数間違えたりはするけど、後始末は全部おれがやってるし!」

 

「そりゃあそうでしょ。なんかちょっと心配になってきたんだけど?」

 

 あたふたしながら言う彼の姿を見て、殊更不安を募らせる。けど、次の言葉を言う前に、彼は凛とした顔つきに変わった。

 

「おれが頼りないってのはアネキも知ってると思うけど、一人で家を出た以上、覚悟を持ってここにいるつもりだから。だから、安心して」

 

 その真摯な目に、私の心が一瞬震えた。ルカが冗談で言っている訳じゃないのは、長年一緒に暮らして来たからこそわかる。

 

「うん、わかった。ルカは昔から、こうと決めたら最後までやり遂げる子だったもんね」

 

 私は頭一つ分低いルカの頭を撫でた。

 

「私、応援してるから。困ったことがあったら、お姉ちゃんになんでも言って」

 

 そう言うとルカは、照れながらも私の手を振り払う。

 

「いやアネキには言わねーよ。だって魔王倒すじゃん。おれのことなんか構ってる場合じゃないだろ」

 

「そういうの気にしないでいいから。家族として、お姉ちゃんとしてルカにしてあげたいだけなの。立派な商人になるつもりなんでしょ? だったら周りの人をもっと頼んなきゃ。多分お父さんだってそう言うよ」

 

「……うー、まあ、そうかも。わかった、ありがと」

 

 少し考え込んでから、ルカは素直にお礼を言った。そして再び顔を上げる。

 

「でもさ、アネキ。アネキはアネキで色々やることあると思うから、アネキも困ったことがあったらおれに言えよな。おれには師匠もいるし、この街で知り合った商人仲間も何人かいるからさ」

 

「うん、ありがとう」

 

 私は嬉しくなり思わず笑みを浮かべた。いつのまにかこんなに逞しくなっていたなんて想像もしてなかったけど、実際に会ったらやっぱりルカはルカのままで、ほっとした。

 

「あ、そうだ。ちゃんとお母さんやエマたちにも時々顔見せるんだよ? 心配してたんだから」

 

「わかってるよ。もう少ししたら仕事も落ち着くから、そしたら一度家に戻るよ」

 

 キメラの翼使ってな、と付け加えた。さすが商人の卵、一度行った村や町に一瞬で行ける便利アイテムのことは知っているようだ。

 

「明日は砂漠に行けそう?」

 

「ああ。今日はいまのところずっと天気も安定してるみたいだから、大丈夫だって」

 

「そっか。じゃあ明日は予定通り出発でOKだね。もう今日一日何したらいいか皆悩んでてさ。結局今まで劇場でバイトしてたよ」

 

「へえ~。いいなあ。てか、よく入れたね? あそこ関係者以外立ち入り禁止なはずなのに」

 

「シーラが昔そこで働いてたんだって」

 

 言われて、ぽんと手を叩くルカ。

 

「あー、昨日のバニーガールの姉ちゃんか。確かに見たことある格好してると思った」

 

「そう、それで中に入ったんだけど、そこにビビアンさんっていう踊り子が来て……」

 

「ええ?! ビビアンって、姉ちゃん、あの人と知り合いなの?!」

 

「知り合いなのはシーラだけどね。それで彼女を見たナギがもう目の色変えちゃって……」

 

 そう言うと、ルカは納得したように頷いた。

 

「ああ、そりゃ、あんな人を見たら、男の人なら誰でもそうなるって。だって、劇場に行ったことない俺ですら知ってるくらい人気者だよ」

 

「そうなの? 確かにすっごい美人だったけど、ユウリは全然反応なかったなあ」

 

 私の言葉に、ルカは考え込んだ。

 

「……うーん。きっと勇者さんてカッコいいし、有名人じゃん? たくさんの女の人に囲まれたりしてるから、美人に見飽きてるんだよ」

 

「あー、なるほどね」

 

「でもさすがに、砂漠の城の女王様の美しさには驚くんじゃないかなあ。絶世の美女だって噂だし」

 

「砂漠?! 砂漠にお城があるの?」

 

 私は興味津々でルカの話に耳を傾ける。

 

「うん。イシスって町があってさ、そこに……」

 

 こうして他愛のない話を続けていると、家にいた頃を思い出す。ルカも同じなのか、話している間、自分でもきづかないうちに私の呼び方が家にいた頃に戻っていた。

 

 そしてふと辺りを見回すと、気づけばすっかり薄暗くなっていた。

 

「うわ、もうこんな時間?! ごめん。仕事中なのにずっと話し込んじゃったよ」

 

「おれの方は大丈夫だから、用事があるなら行きなよ」

「それじゃ、また明日ね!」

 

「ああ、また明日な、姉ちゃん」

 

 そう言ってお互い挨拶を交わし、私はルカと別れた。気づけば、ルカに会う前よりも幾分心が軽くなったような気がした。

 

 

 

「え、まだ帰ってきてないんですか?」

 

 ドリスさんの店でルカと別れ、そのあと一度宿に戻ってみると、意外にもシーラが先に待っていた。約束通り二人で大衆浴場に足を運び、周囲に怪しい人物の気配がないか念のため確認したあと、幾日かぶりのお風呂にゆっくりと浸かることができた。

 

 もともとこの町は水場が少ないのだが、地理的には一年を通して暑い気候が続くため、わざわざ北東の山の向こうから水を引いているらしい。なんでもこの町の近くに、その水を引く仕事を請け負ったホビット族がいるんだとか。

 

 とにかくその人のおかげでこうしてお風呂に入ることができたのだ。ありがたい話である。

 

 そんな上機嫌な中、再び戻って宿屋の主人に聞いてみると、男性陣が未だに戻ってきていないことが判明した。

 

 ナギはともかくユウリまで帰ってこないなんて、珍しい。なぜなら今は、他の町ならとっくにベッドの中にいる時間なのだから。

 

 当然お店はとっくに閉まってると思いきや、シーラ曰く、この街は夜からが稼ぎ時なんだそうだ。なので夜遅くまでやっている道具屋さんも結構いるらしい。

 

 アルヴィスさんのところに行くと言っていたが、ずいぶんと時間がかかっている。何かあったんだろうか。

 

 仕方なく私とシーラは部屋に戻り、明日の支度と就寝の準備を始めることにした。

 

「この町にいるとさ、時間の感覚がマヒしちゃうよね」

 

 苦笑しながら話すシーラ。確かにここは暗くなってもそこかしこが明るくて、家路につく人々はそれほど多くない。常に明かりがついてたり音楽が流れていたりするので、いつ陽が沈んだのかも気づかないのだ。

 

「それでもあたしは、夜でも賑やかなこの街が好きなんだけどね」

 

 そう話すシーラの姿が、どことなく寂しげに感じた。アッサラームに住んでいたと言う割には、どこかこの町を羨んでいるようにも見える。

 

 すると、隣の部屋の扉が開く音が聞こえた。いつものように二部屋取ってあり、音のする場所はユウリとナギの部屋である。私たちはすぐさま隣の部屋に向かった。

 

「あっ、ユウリちゃんだ! おかえり!」

 

 シーラが声をかけた瞬間、ぎょっとした顔になるユウリ。やけに疲れた様子だけど、どうしたんだろう? それになんだか仄かにいい匂いがする。

 

「おかえり! 随分遅かったね。アルヴィスさんと何かあったの?」

 

 私が何気なく聞くと、ユウリは魔物の形相でこちらを睨み返すと、

 

「うるさい!! お前には関係ないだろ!」

 

 そう怒鳴り散らされた。彼に何があったのか気にはなるが、ルカとの会話で一度は晴れた心が、今度は重い石を落とされた気分になり、これ以上は何も聞けなかった。

 

 すると、シーラがにやりと笑みを浮かべながらユウリに尋ねた。

 

「ねえねえ、ユウリちゃん♪ アルんちで『ぱふぱふ』やったでしょ?」

 

「!? お前、なんで……!?」

 

 明らかに動揺するユウリ。シーラはさらに言い立てる。

 

「だってあたし、アルのところで居候させてもらってたし~☆ それにユウリちゃんから、懐かしい匂いがするもん♪」

 

「くっ……!」

 

「だからってそんなに機嫌悪くなることないじゃん、ミオちんがかわいそうだよ」

 

「……」

 

 さり気なくフォローを言えるシーラ。だけど今の私には二人の会話についていこうとするだけで精一杯だった。

 

「んで、どう? 結構楽しかったでしょ?」

 

 彼女が再び笑顔を見せると、ユウリはついに押し黙ってしまった。朗らかに笑うシーラを一瞥し、

 

「……黙れ! 俺はもう寝る!!」

 

 そう吐き捨てると、部屋の扉を乱暴に閉めてしまった。私だけがよくわからないまま、取り残された感じになっている。

 

「ねえ、シーラ。『ぱふぱふ』って一体何なの? なんであんなにユウリは怒ってるの?」

 

「ん~、あたしの口からは言えないかな~。でも、普通の人はユウリちゃんみたいに機嫌悪くはなんないはずなんだけどね」

 

「??」

 

 ますますわからない。そんなやたらと口に出すものじゃないなんて、どう考えても怪しすぎる。

 

「ミオちんも、むやみに色んな人に聞かない方がいいからね☆」

 

 シーラに念を押され、結局ユウリがアルヴィスさんのところで何をしたかわからないままになった。

 

 あとはナギだけだ。ナギの場合、きっとまだビビアンさんの踊りに夢中になっているのだろう。そう思い、ひとまず部屋に戻ろうと、踵を返したとき、ここにあるはずのない壁にぶつかった。

 

「!?」

 

 どういうことかと見上げると、それは壁ではなくナギだった。全く気配が感じられず、当の本人は間の抜けた顔でただぼーっとそこに突っ立っている。

 

「どっ、どうしたのナギ?! 全然気づかなかったよ!」

 

 けれどナギは、明後日の方を向いたまま返事もせず、まるで脱け殻のようになっている。

 

「うあぁ、ナギちんやばいかも」

 

 シーラは苦い顔をしながら額に手を当てた。

 

「どういうこと? シーラ心当たりあるの?」

 

「うん。大体ビビのファンの人ってこうなっちゃうんだよねぇ。我が友ながら罪作りな奴よ」

 

 確かに今日ビビアンさんに出会ってから、ナギの様子が変なのは、一目瞭然だった。ただ、彼女が好きなんだなってのはわかるけど、だからってこんな魂が抜けた状態にまでなるのだろうか?

 

「誰かを好きになるって、こういう感じだったっけ?」

 

「『好き』の形には、いろいろあるんだよミオちん」

 

 いいながら、うんうんうなずくシーラ。うーん、私には理解できない。

 

「ほらナギ、こんなところで立ってないで、部屋に入りなよ」

 

 私がぽんと背中を叩くと、ビクッと体を大きく震わせ、まるでいきなりルーラでここまで飛ばされたかのように辺りをキョロキョロと見回した。

 

「あれ? なんでオレこんなところにいるんだ?」

 

 どうやらここまでどうやって来たのか記憶にないらしい。

 

「おかえり。ビビアンさんの踊りはどうだった?」

 

 すると、ナギは興奮冷めやらぬ様子で私に顔を近づけると、大声でまくし立てた。

 

「どうだったもなにも、あれはまさに天使……いや女神様のようだったぜ!! あの流れるような動きといい、それでいて気品のある表情といい、全てにおいて普通の人間が出来る技じゃない!! まるで一枚の絵画を見ているようで……」

 

「ちょっ、待って……ストップ! わかったから!」

 

 ……余計なことを聞くんじゃなかった。まさかこんな流暢に感想を伝えてくるとは思わなかったので、私は両手を前に出してナギの暴走を必死で食い止める。

 

「明日は砂漠に行くんだから、早く休まないと! ユウリは先に部屋に入ってるよ」

 

「お前……! 急に現実に引き戻すようなことを言うなよな」

 

 一瞬にして、ナギの表情が曇る。まるでこの世の終わりに直面したかのような様相だ。どれだけ現実から目をそらしていたんだろうか。

 

 私は強引にナギの背中を押し、ユウリのいる部屋の扉を開けて無理やり押し込んだ。奥でなにやらユウリが喚いていたような気がするが、気にしないことにする。

 

 ともあれ、明日はいよいよ砂漠に出発することになる。砂漠は初めて見るので何もかもが未知の領域だ。

 

 町を歩いたときにユウリに聞いたのだが、砂漠は魔物も強く、気候も厳しいという。

 

 私は気を引き締めて、明日に備えることにした。

 





今回出てきたぱふぱふは、Ⅲの意味ではありません。今後の展開のため別シリーズバージョンに変わってます。

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