俺様勇者と武闘家日記   作:星海月

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乙女心とロマリアの空

「うわ~、やっぱり大きいね」

 

 なんて呑気な声を上げた私は、アリアハンのお城とは異なる造りの外観を見て、思わず目を見張った。

 

 なんというか、アリアハンのお城が標準的な造りなのに対して、ロマリアのはデザインにこだわりを感じる。

 

 城門の兵士に事情を話すと、すぐに通してもらった。どうやらアリアハンの勇者が旅立ったという情報は、この土地にも広まっているらしい。

 

「アリアハンの城の中には、ロマリアに繋がる旅の扉があるらしい。だからお互いに情報を共有しているんだと、昔城の人間に聞いた」

 

 ユウリがいうには、アリアハンの王とロマリアの王は古くからの付き合いがあり、勇者の仲間の募集を世界的に広めたのも、ロマリア王のおかげだとか。

 

 要するに、こうして私たちがユウリと出会ったのも、ロマリア王のおかげだといえる。

 

 わざわざロマリア王に挨拶をするなんてさすが勇者だな、と感心していると、一番前を歩いていたユウリが突然真剣な表情で、私たちの方を向いて言った。

 

「お前ら、普段みたいにへらへら笑ったりキレたり踊ったりしたらどうなるかわかってるよな? 仮にも一国の王の前に立つんだから最低限のマナーぐらいは守れよ」

 

「そ、そんなに普段から笑ってないよ!」

 

「いや大体怒らせてんのお前じゃん」

 

「踊りばっかりじゃないよー? お手玉だってできるもん♪」

 

 三人それぞれの主張に、彼は諦めたように深いため息をつき、再び歩き始めた。

 

 ふと周りを見回すと、お城の中はとても豪奢で、柱の一つ一つにも細工が施されている。丁寧に彩られた壁紙と、鮮やかにちりばめられた装飾品を見るたびに心が洗練されていくように感じた。

 

「すげーよ、これ! じいちゃんちで読んだ本と全く同じやつだぜ!」

 

 ナギは終始興奮した様子で、辺りをきょろきょろしながら目を輝かせている。生まれてはじめて見たというだけじゃなく、盗賊としての血も騒ぐのだろうか。

 

 シーラははしゃぎながらも、兵士さんたちの前ではちゃんと挨拶したり、意味もなく騒いだりはしなかった。

 

 ユウリなんかはもうお城の中なんか慣れた感じで、堂々とした態度で通路のど真ん中を歩いている。

 

 そして、先ほどとは別の兵士に案内され、いよいよ玉座の間へと通された。

 

「おお! よくぞ参られた、勇者ユウリよ!! 英雄オルテガの噂はこのわしにも聞き及んでおるぞ。世間では英雄と言われども、オルテガにとってそなたは大事な肉親。さぞつらかったじゃったろう」

 

「私ごときにはもったいないお言葉、ありがとうございます」

 

 完璧な動作で丁寧にお辞儀するユウリ。いつもの無愛想な態度とはまるっきり違い、凛とした表情で興味深くロマリア王を見据えていた。これだけ切り取ってみれば、物語に出てくるような勇敢で凛々しい勇者に見える。

 

「しかし、残念じゃったな……。あれだけ勇猛なオルテガが魔王に……」

 

「お言葉ですが、父は魔王に倒されてなどおりません」

 

 王の言葉をさえぎり、ユウリはきっぱりと否定した。

 

「確かに父はネクロゴンドの河口付近で消息をたち、今も行方不明です。しかし私は、今も何処かで生きていると信じています」

 

「そう……じゃったな……。すまん、ユウリよ。無礼なことを言ったな」

 

「いえ、私も陛下のご厚意を賜る身にも拘らず、出過ぎた発言をしてしまいました。申し訳ございません」

 

 先ほどまで旅の扉酔いで半死状態だった姿を思い出すと、あまりのギャップに笑いがこみ上げてくる。だが場所が場所なので、私たちは必死でそれを堪えた。

 

 室内にきまずい空気が流れ始めたのを感じたのか、王様はこほん、と咳払いをした。

 

「まあ、良い。それより、長旅の疲れも癒せぬうちに言うのは酷なのじゃが、そなたたちに頼みがある。実はな、最近この国に盗賊が出没するようになっての。城の者にも警戒するように言ったのじゃが、数日前にカンダタという者がこの城の宝でもある『金の冠』を奪ってしまい、はるか西にある『シャンパーニの塔』に逃げ込んだのじゃ。もしそなたが真の勇者なら、その盗賊から『金の冠』を取り返してはくれぬか?」

 

「金の冠……ですか」

 

「もちろん、取り戻してくれたら礼をするぞ。何しろそなたたちは世界を救う旅の最中であるからな。限りある時間を割いてもらう以上、十分な報酬は支払うつもりだ。それにそなたの腕はアリアハン王から聞いておる。なんでもすでにレベル30を超えているとか。本来ならそなたたちに頼むべきではないのだが、他に適する人物がおらぬのでな。頼む、図々しいとは思うが、どうか世界を救う前に我がロマリアを救って欲しいのじゃ!」

 

「……わかりました。ロマリア王の頼みならば断る理由がございません。謹んでそのご依頼お引き受けいたします」

「そうか!! そなたなら頼もしい答えを出してくれると思っておったぞ!! では、頼んだぞ!! 勇者ユウリよ!!」

 

 ユウリの答えに、ロマリア王は満面の笑みを浮かべた。

 

 満足そうに見送る王に別れを告げ、玉座の間から退出すると、いつになく重い雰囲気が広がっていた。

 

 沈黙が続く中、私は何気なくユウリの顔を覗き込む。すると玉座の間にいたときとは打って変わって、すっかり元の無愛想な彼に戻っていたのだ。

 

 

 

「ユウリ、何かあったの?」

 

 私が彼に訪ねたのは、城を出てしばらくして、家々の壁がほんのりオレンジ色に染まり始めたころ。

 

 宿屋へ戻る途中、突然シーラは「堅っ苦しいとこに行ってたから息抜きしてくる!」とか言って、地下にあるという『モンスター格闘場』という賭博施設へと走り去ってしまい、ナギはナギで新しい武器を見に行くといって商店街の人混みに紛れて行ってしまった。なんて自由な人達なんだろう。

 

 そして残された私とユウリは、このあと特に寄り道することもなく、あと数軒の家を通り過ぎれば宿に到着するというところまで来ていた。

 

 尋ねられたユウリは憮然とした表情でこちらの呼び掛けに気づく。

 

「さっきからおかしいなと思ってたんだけど……」

 

「俺がおかしいだと!?」

 

 ものすごい形相でユウリが怒鳴った。言葉の解釈にズレを感じた私はあわてて訂正する。

 

「い、いやおかしいってのは、いつものユウリと様子がちょっと違うって言う意味だよ。何か深刻な問題でもあったの?」

 

「ああ、大有りだ」

 

 ユウリはきっぱりと言い放った。

 

「事は一刻を争うというのに、なぜ魔王を倒さねばならない俺が盗賊退治なんぞ引き受けなきゃならないんだ!! そもそもその辺の野良盗賊なんかに大事な宝を取られるだなんて、この国の防衛能力はどうなってるんだ!! 不条理だろ!! 取り返すんだったら自分の国のやつらがやればいいだろうが!!」

 

 勇者とは思えない発言に私はたじろぎながらも、それはそれで一理あるなと思った。

 

「えー……。だったらユウリ、断ればよかったじゃない」

 

「仮にも一国の王の頼みだぞ!! あの場で断れるわけないだろ!!」

 

 ようするに、世間体ってやつなのだろうか?

 

「ユウリもいろいろ大変だね」

 

「ああ。特にお前みたいな世間知らずの田舎者の話し相手をするのはひときわ疲れる」

 

 そこまで言わなくても……。

 

 ともあれ、この『金の冠』を取り返す件、公の場で了承はしたけれど、当のユウリは全く乗り気じゃないらしい。

 

「あのさあ、それなら……」

 

「いっそのこと、あのサルをシャンパーニの塔に放り込んで、その隙に冠を取り返すか」

 

 あのサルというのは、ユウリ語でナギのこと……らしい。

 

 当然ながら私は断固否定した。冗談かどうかはさておき、ナギを囮役にするなんて考え、受け入れられないに決まっている。

 

 ユウリは渋っていたが、やがて次の案を思いついた。

 

「じゃああのザルウサギをシャンパーニの塔に(以下略)」

 

「だから駄目だって!!」

 

 ザルウサギというのは、ユウリ語でシーラの(以下略)。

 

 ユウリのむちゃくちゃな提案に、私は首を思い切り横に振った。

 

「なんていうか、それじゃあ全然勇者らしくないよ。勇者ならその盗賊を退治して奪い返せばいいんじゃないの?」

 

 すると、急にユウリの目つきが変わった。まるで一番最初にルイーダさんの酒場で出会ったときのような、侮蔑に満ちた目。

 

「『勇者らしく』って、なんだ?」

 

「え!?」

 

 急にそんなことを言われたので、私は次の言葉に詰まった。だって、いつも自分のこと勇者だとか言うし、周りからも勇者だと呼ばれてる。そんな彼が、どうしてこんなことを言うんだろう?

 

「……ふん」

 

 私が黙ったままだからか、ユウリは私から目をそらし、そのまま先に歩いていってしまった。

 

 ぽつんと一人取り残されて、私は一人考えを巡らせる。

 

――私何か、まずいこと言っちゃったのかな……?

 

 しばし悩んだが、頭の足りない私はそれ以上答えを導き出せるはずもなく、考えをやめてひとまず宿に戻ることにした。

 

 

 

 宿に戻ったのは私とユウリだけで、あとの二人はしばらく経ってもなかなか帰ってこなかった。

 

「格闘場に行ったシーラはともかく、ナギは武器屋に行ってるだけなんだよね? ずいぶん遅くない?」

 

 男女二人ずつ二部屋で取ったあと、私は一人部屋でぼーっとしているのも何なんで、ユウリがいる部屋にお邪魔していた。

 

 とはいっても、話の弾まないユウリと会話しても自滅するだけなので、荷物の整理なんかをしていたのだが。

 

 ユウリはユウリで、俺に話しかけるなオーラを部屋全体に充満させながら、真剣に愛用の剣を磨いている。……要するに、二人とも無言だった。

 

 一通り荷物の整理を終え、一息ついたところで、私は窓の外がすっかり暗くなっていることに気づき、今の言葉を放ったのだ。

 

 私が二人のことでつぶやいていると、今まで下を向いていたユウリがゆっくり顔を上げ、私の方を見た。

 

 まるで今初めて存在に気づいたかのような表情をしていたので、私はなんとなく視線を鞄に戻した。

 

「……まだ帰ってきてないのか、あいつら」

 

 意外にも、私の呟きを聞いていたらしい。でもその割には、落ち着き払っている。

 

「そもそもあの二人って、そんなにお金あったのかな?」

 

 シーラはアリアハンにいたときから酒場のお酒を飲みまくってユウリに酒代払わせてたし、ナギも今までおじいさんと一緒にあの塔で暮らしてたみたいだから、武器を買えるほどのお金を持っているとは思えない。ただ商品を見るだけならこんなに時間はかからないはずだけど……。

 

 などと考えを巡らせていると、ベッドに座っていたユウリが、真剣な顔で光り輝く剣を鞘に収めて急にその場を立った。

 

「俺としたことが、迂闊だった。馬鹿を二人も野放しにして、ただで帰ってくるとは思えん。急いで連れ戻すぞ」

 

「ちょっ、ちょっと待ってよ! 急にそんな事言われても……」

 

 そういってユウリはすぐさまドアの方に向かう。そして、私の抗議も無視して、勢いよく部屋のドアを開けた。

 

 どんっ。

 

「きゃああぁぁっっっ!!??」

 

 今の悲鳴は私ではない。ユウリがドアを開けたとたん、外側から誰かが彼にぶつかってきたのだ。

 

「も~~~っ!! 痛いよユウリちゃん!! ちゃんと前見てよ~~~!!」

 

 悲鳴を上げた人物――シーラが、口を尖らせながら言った。怒っているにもかかわらず、なんともしぐさがかわいらしい。

 

 などと私がのんきなことを考えていると、ユウリが親の敵をとったような顔でシーラに迫った。

 

「お前、今まで遊んでたのか?」

 

 するとシーラは頬を膨らませた。

 

「遊んでたんじゃないもん!! 『おしごと』してきたんだもん!!」

 

「仕事……?」

 

 ユウリは何か思い当たったかのように表情を変えた。

 

「あー、ユウリちゃん、なんか変なそーぞーしてるでしょー? やーい、むっつりーvv」

 

「……………………」

 

 シーラに冷やかされ、ユウリはなぜか鬼の形相のまま沈黙した。これがナギの場合だと問答無用で呪文を放つのだが、シーラの場合だとどう反応すればいいのかわからないらしい。

 

 そんなことはお構いなしに、シーラは話を続けた。

 

「『おしごと』ってぇのは、これよんっっ!!」

 

 そういってどこからか取り出したのは、一抱えほどもある金貨の入った革袋だった。

 

「どっ、どうしたのシーラ!!?? その金貨!!」

 

 どうみたって半日かそこらで稼げるような金額ではない。もちろん裕福ではない私の実家でもあんな大金見たことがない。

 

「もちろん、モンスター格闘場で稼いだんだよ♪」

 

「ほ、ホントに?」

 

 格闘場って、あんな短時間でこんなに稼げるものなの!?

 

 格闘場……っていうより賭け事自体やったことのない私にとっては、全く理解できない話である。

 

「こんだけあれば、一か月分はお酒に囲まれて暮らせるもんね♪ あ、ミオちんにもお酒ちょびっとわけてあげるからね☆」

 

「あ、ありがと……。でも私お酒飲めないからいいよ……」

 

 するとちょうどタイミングよく、宿の玄関から聞きなれた声が聞こえてきた。

 

「くっそー!! なんでどこもあんなに高けーんだよ!!」

 

 どすどすと、荒い足音を立ててこちらに上がってきたのは、私たちが探していた仲間その2、ナギだった。

 

「おいサル。俺の許可なくこんな遅くまで出歩くとはいい根性してるな」

 

「別にあんたの監視下にあるわけじゃないしいーだろ。それに、ただ出歩いてたんじゃなくて、自分用の武器を買いに行ってたんだよ! ……結局どれも高すぎて買えなかったけどな。誰かさんが一人でお財布握ってるせいでよ!!」

 

 そう言い放つと、ナギはユウリを鋭く睨み返した。

 

 そのただならぬ不穏な空気を感じた私は、余計なこととは思いつつも、つい口を挟んでしままう。

 

「ほ、ほらユウリ。そんなに心配しなくても、やっぱりナギ武器買いに行ってただけじゃん!」

 

「…………」

 

「それにこの先の旅のことを考えるなら、新しい武器を買える資金ぐらいナギに渡してあげてもいいんじゃない?」

 

「…………」

 

案の定、私が言ったところで状況が変わるわけがなかった。

 

「……この堅物にんなこと言っても無駄じゃね? あーもう気分悪いから先にメシ食って寝るわ」

 

 そう言ってナギは、部屋の中に入ろうとした。だが、いまだに床に座り込んでいたシーラにぶつかり、転びそうになってしまった。

 

「ってぇ!! なんなんだよ、ったく……」

 

 くるりとシーラのほうを振り返る。どうやらシーラではなく、横に置いてある金貨の皮袋につまづいたらしい。

 

「お、おま……なんだよ、それ……」

 

「これはあたしが格闘場で稼いだお金だょん♪ すごいでしょ♪」

 

 シーラの話を聞いて、ナギの様子が豹変した。言葉を失い、金貨のほうを凝視している。ついでに荒くなっていた呼吸を整え、こう言った。

 

「その金貨、全部オレにくれ!!」

 

「…………」

 

「…………」

 

「…………え?」

 

 シーラ、ユウリ、そして私までもが、一瞬沈黙した。けれどすぐにその沈黙は、金貨の所有者によって破られた。

 

「ナギちん? いまどきそんな冗談誰もウケないよ?」

 

「いやギャグじゃなくて!! それくれ!! 武器買うから!!」

 

 そのあまりにも潔い申し出に、私はむしろ心地よさを感じた。

 

「寝言は寝てから言え。何でお前ごときに全ての金をやらなきゃならん」

 

「あっ、ユウリちゃん!! あたしのお金だよそれ!!」

 

 ひょいと金貨を拾い上げたユウリを、シーラが珍しく憤慨した様子で奪い返そうとする。だがユウリはシーラに渡そうとせず、きっぱりとした声でこう言った。

 

「これは旅の資金にする。つまりリーダーである俺が保管しておく」

 

「ええっ!?」

 

 私は思わず声に出して驚いた。いや、私だけではなく、遥かに衝撃を受けた二人も茫然としている。

 

 これにはナギだけでなく、シーラまでも敵に回した。そりゃあそうだろう。ばくち好きのお父さんが珍しく大勝ちして大金を手にしたと思ったら、お母さんに全部没収されるようなものだもの。

 

「好き勝手に動き回るお前らに金を持たせるわけにはいかないだろ。ここはリーダーである俺が責任を持って管理する」

 

 ……なんか嫌な言い方だ。それじゃまるで私達が聞き分けのない子供みたいじゃない。

 

 普段はユウリになかなか意見することができない私だけれど、今のその発言にはさすがに容認出来なかった。

 

「ユウリ、いくら旅にお金が必要だからって、一枚もくれないのはあんまりだよ! それに、ナギが武器をほしがるのは旅を少しでも楽にするために大事だからだと思うし、そもそもシーラのおかげで金貨が手に入ったんだよ? もうちょっと私たち仲間のことも考えて欲しいよ」

 

「……………………」

 

「ミオの言うとおりだ! なんでいつもオレたちが我慢しなきゃなんねーんだよ!! そもそもなんでシーラが稼いだ金をあんたが取り上げてんだよ!!」

 

「ユウリちゃん、あたしが飲んだお酒代ならその袋の半分で充分足りると思うよ!?」

 

 私たちの訴えを聞いて、ユウリの眉間にしわが、かつてないほど深々と刻まれる。相当不機嫌になっている証拠だ。

 

「要するに、お前らは俺の意見を誰一人として聞き入れないということだな?」

 

 沈黙。それは三人一致で肯定を表していた。

 

「……わかった。そんなに金が欲しいのなら使えばいい」

 

 どさっ、と重い音が部屋に響き渡る。

 

「そのかわり、お前らだけで盗賊退治をしてこい」

 

 …………え。

 

「この金を盗賊のアジトに行くための準備に使おうと思ってたんだが、そこまでいうなら俺は何も手出ししない」

 

盗賊のアジトって……、ロマリア王に頼まれたこと?!

 

「あとはお前らだけでやってくれ。じゃあな」

 

 そう言い放つと、振り向きもせずあっさりと部屋を出て行ってしまった。

 

 不安と重苦しい空気を残したまま。

 

「……い、いまユウリなんて言った?」

 

 恐る恐る私は皆に確認する。ナギは何故かさっきより生き生きとした表情をしていた。

 

「オレたちだけで盗賊退治だとよ。かえってあいつがいなくて気が楽だぜ」

 

 ナギはあっけらかんと言い放つ。なんでそんなポジティブなの!?

 

「いやいや、そういう問題じゃないよ!! 私たち、3人そろってもたいしたレベルじゃないじゃない!! そんな状況で盗賊退治なんてできっこないよ!!」 

 

 私は考えただけで血の気が引いた。いくら王様の頼みとはいえ、レベル30の勇者抜きで盗賊退治なんて無謀すぎる。

 

「だいじょーぶだいじょーぶ!! ミオちん、人間やるときゃやるんだよ♪」

 

 一番説得力の無いシーラに言われ、私はさらにめまいがした。

 

「シーラの言うとおりだぜ。人間、弱くても3人力を合わせればできるんだ!! って、昔じーちゃんのところにあった本に書いてあったし」

 

 …………ひょっとして、不安がってるのって私だけ?

 

 どこまでも前向きな二人に、私は羨望と脱力を一気に味わうという、貴重な体験をした。

 

 願わくば、ユウリが考えを変えて一緒に盗賊退治をしてくれますように…………。たぶん無理だと思うけど。

 

 

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