ガガギゴに転生した俺氏、何故かエリアたん含めた霊使い達に激重感情向けられてるんだが… 作:生牡蠣
というわけでそろそろ書かないとなぁ…ウィンたん編は1万字超えたし、今回は短くまとめなきゃ…
↓(結果)
1 万 4 0 0 0 字 突 破
私「ば な な」(精神崩壊)
ラヴァルの炎樹海。そこは炎属性のモンスターにとっては楽園だが、他の種族からすると地獄のような場所である。
それも当然、森がずっと炎に包まれており、長時間留まれば水属性も脱水を起こして死んでしまう可能性も0ではない場所だ。そんな所誰も行きたがらないだろう。
おまけにここを本拠地としているラヴァル達は戦い以外にはほとんど興味を示さない。その為森の整備なんて全くしない、ぶっちゃけフロギスさんの生活空間以外は結構荒れ放題だ。
ここも炎樹海の最奥に近いためか道はほとんど整備されておらず、もう獣道と言っても差し支えない程には荒れていた。
おまけに周りをよく見ると、ここに自生しているであろう『シード・オブ・フレイム』や『燃える藻』といった危険な植物も見られ、ある程度戦える者でないと歩くだけでも危険な道という事も分かる。
本来であれば誰もが進んで通りたくない道、それどころかここを通る事となった者たちは思わず顔を顰めてしまうくらいには嫌な場所であろう。
「んっふふ~♪ らんらら~~ん♪」
そんな道にも関わらず、あたいは鼻歌を口ずさみながら進んでいた。
曲はしばらく前に『トリックスター』達が歌っていた曲名も知らないアイドル系のラブソング。正直あたいの好みの曲ではないのだが、今はこういったアップテンポの曲を歌いたい気分なのだ。
日常的に樹海に入る者でも嫌がる道のりをスキップしながら上機嫌に進む女。もはや後々都市伝説や怪談話として語り継がれそうな話だと自分でも思う。
しかし、この胸からあふれ出る幸福感を留める事はあたいには不可能だった。
「うぇへへ~ギゴくぅ~ん♡」
普段のあたいからは想像もつかない甘い声を上げながら、脇に抱えていた紙切れを我が子のように抱きしめる。
本当はカバンか何かに仕舞って大事に扱うべきなのだが、出来ればこの愛おしい紙を離さずに自分の手で持っておきたかったのだ。
あぁ…これさえあれば、あたいとギゴ君は……♡♡♡♡♡
『火霊術の着火点』
あたいの生まれた家は、そう呼ばれていた。
あたいが生まれるずぅ~~っと前のご先祖様がこの霊術を完成させたからこう呼ばれたらしい。
火…というか炎と言うのは便利なもので暗闇を照らしたり、身体を暖めたり、時に戦いの武器になる程に昔から重宝されてきた。
そんな火の霊術の基礎を完成させたあたいの家はそれから栄えていき、いつしか火霊術はおろか、霊術を扱う者たちの中でも一目を置かれるようになった。
そんな家に産まれたあたいは、生まれながらにして天才だったらしい。
あんまり自覚はないのだが…赤ん坊の頃から内に秘める魔力の量が桁違いだったとか、幼子でありながら中級の火魔法を扱えたりなど『百年に一度の天才だ!』と呼ばれていた。
前者はさておき、後者は親の弟子たちがやってたから皆できるものだと思ってたんだけど、本来はどんなにセンスがあっても10年修行して取得できるかどうかのレベルらしい。今思うとリアルなろう系だったわあたい…
そのような事もあり、両親や親戚たちはあたいの将来に期待の目を向けた。
この子なら、この家を更に繁栄させてくれるだろうと。
実際あたいも、大好きな両親が喜んでいる姿が嬉しくて、自分も将来は一族を更に繁栄させる立派な霊使いになると信じて疑わなかった。
…しかし、それは叶わぬ願いとなるのだった。
それは何故かって?……
―――私は、火霊術を使う事が
別に火霊術の才能がないわけではない。むしろ一族が始まって以来歴代最強の可能性があると祖母も言っていた程だ。
では、何故火霊術が使えなかったのか?……その理由は、火霊術の
あたいの家系の当主は代々、最強の火霊術―『紅』を習得する事が掟であった。
火霊術―『紅』。それは炎系最強の霊術で、魔法使い族はおろか戦士族、ドラゴン族、機械族といった高火力を持つ集団からも一目を置かれるほどに強力な攻撃霊術。
霊術をマスターした者が放つその威力は、あの伝説の『真紅眼の黒龍』の黒炎弾に勝るとも劣らないらしい。この霊術によって、あたい達の一族も繁栄できたと言っても過言ではない術だ。
当然、あたいも将来家を継ぐ立場として6歳くらいの頃から『紅』の訓練をする事となった。それを取得しなければ、いくら才能があったところで当主は務まらないからだ。
その時に、あたいは初めて知ったのだ。――火霊術の残酷さを。
初めての訓練の日。その時にあたいの先生になったのはお母様の弟子であった女性だ。
弟子の中で霊術の扱いがとても上手い実力者で性格も良く、お母様や他の弟子たちからも信頼が厚い人だった。当時のあたいも良く面倒を見て貰っていて、その人の事を本当の姉のように慕い『お姉ちゃん』と呼んでいた。
『そんなお姉ちゃんと一緒に火霊術の訓練なんて楽しいに決まっている!』と訓練当日のあたいも緊張よりワクワクとした気持ちが勝り、目を輝かせていたのを今でも覚えている。
しかし、あたいの輝きはすぐに動揺へと変わった。
『まずはお手本を見せる』と言ったお姉ちゃんは、おもむろに足元にあった籠に手を伸ばし、そこから何かを取り出した。それは、真っ赤に燃えている様な体毛を持つ小さなネズミの様な生物であった。
あたいはその生物には見覚えがあった。あれは『ヴォルカニック・ラット』だ。
火山地帯に生息するネズミの一種で、その愛らしさからペットとしての需要も高いモンスターだ。おまけにその頃子どもたちの間で“とっとこヴォル太郎!”というネズミ系モンスターをメインとしたアニメが流行っていたので、一時期はあたいもそのモンスターに憧れを持っていた。
『うわ~、ヴォル太郎だ~!』と小声で喜ぶあたい。そんなあたいの様子にお姉ちゃんは気付いていない様子で話を続けた。
『いいですか?紅はまず――――』
そうお姉ちゃんが言った瞬間、ヴォルカニック・ラットは業火に包まれた。
…………えっ、ヴォルたろぅ…?
『ヂッ!?』と短く悲鳴を上げた小さなネズミは、一瞬だけ何が起こっているのか分からないという表情を浮かべ、そのまま炎の中へと姿が消えた。
『―――このようにモンスターを生贄にして……』
しかしお姉ちゃんは手の中のネズミが消えたのにもかかわらず、淡々と話しを続けていた。
…なんで?ヴォル太郎が消えたんだよ?もっと驚こうよ……?
お姉ちゃんが何か言っているような気がするが、何もわからない。あたいはもう一度お姉ちゃんの手の中を見た。すると不思議な事に、炎は
その光景を見た時、あたいはようやく目の前でなにが起こったのかを理解した。……理解できてしまった。
『――まぁ難しく説明しましたがヒータにとっては簡単な……ッ!?ヒータ大丈夫!?ヒータッ!! だ、誰かぁー!!』
あたいはお姉ちゃんの目の前で倒れ込んでしまった。
この一瞬で色々な事が起こりすぎたのだ。
ヴォルカニック・ラットの死
その命を糧として燃え続ける小さな炎
普段は優しいお姉ちゃんからは信じられぬ残酷な行動
まだ世の中の事を知らないあたいには、その全てを受け止め切れなかったのだ。
次に目を覚ました時、あたいはベッドの上だった。
目覚めたあたいをまず出迎えたのは、ベッド脇であたいが無事だったことに安堵するお姉ちゃんの姿だった。
その目じりには涙も見え、お姉ちゃんは本当にアタイの事を想ってくれていると実感でき、正直嬉しかった。
……だからこそ、そんなお姉ちゃんがあんな残酷な事を平然とできるなんて信じられなかった。
まだショックが抜けきってはいなかったが、居てもたってもいられずあたいはお姉ちゃんを問いただした。何故、あんな惨い事をしたのかと。
その結果お姉ちゃんの口から語られた言葉に、あたいは更にショックを受けた。
それは、あたいの一族の歴史だった。――――それは、血にまみれた歴史だった。
『紅』は、その本領を発揮するために
生贄を捧げる事で、生贄となった命そのものを炎へと変える術だったのだ。
生贄となるモンスターが強ければ強い程その威力は増大し、その力でご先祖様も戦いで功績を残し、繁栄していったとお姉ちゃんは語った。
あたいは理解が出来なかった。一つの術を極め、一族を大きくしていったご先祖様は正直凄いと思う。しかし、その足元には何百何千…いや、それ以上の屍の上に成り立っているのだと考えると震えが止まらなかった。
一族が、自分が無数の命の上に立っている。幼いながらもその残酷さを理解できてしまい、とても怖かった。
何が名家だ。何が火霊術の着火点だ。こんなの自分たちは多くの命を奪った大罪人ではないかっ!!
あたいは胸の中に燃え滾る強い怒りを感じた。
その怒りは今まで多くの命を犠牲にしてきた自分の家に対してなのか、その事を知らなかったとはいえ過去の栄光を誇りに思っていた自分に対してなのか、もうあたいには分からなかった…
その日以来、あたいは「紅」どころかほとんどの火霊術を使えなくなってしまっていた。
霊術は、使用者の精神力も大きく作用するもので、その術が強くなればなるほどに精神力を消耗するもの。あんな経験をしてしまったあたいは霊術を使おうとすると、あの時無残に燃やされたヴォルカニック・ラットの姿がどうしても脳裏にフラッシュバックしてしまい、術が使えなくなってしまったのだ。
でも、あたいはこれで良かったとも思っていた。だって、これであたいは誰の命も奪う事がないのだから…
しかし、あたいの周りはそれを許さなかった。
霊術を使用できなくなったあたいを持っていたのは、落胆と罵倒であった。
せっかく更なる繁栄のチャンスだったのに、あたいの精神が弱いのが原因で全て台無しになったと一族たちからは辛い言葉を投げかけられ、責められた。後で聞いた話だが、あたいの出世を期待して他の勢力とのコネの足掛かりにしようとしたり、戦などに売り込んで富を得ようとしていた算段だったのがパーになってしまったらしい。まぁ、完全な八つ当たりだ。
しかし幼いあたいからすれば、昨日まで良くしてくれていた親族たちの態度がガラっと変わったのが怖くてたまらなかった。
親戚たちの怒りの原因が理解できないあたいは、きっと自分が霊術を使えないのが悪い、精神が弱いのが悪いのだと自分を責めた。
そんな一族たちの怒りを治めようと、あたいを庇ってくれた両親の悲しそうな顔は今でも鮮明に思い出せるくらいに辛かった。
両親にあんな顔をさせてしまった、一族の期待を裏切ってしまった。何とか挽回したい、でも霊術の為に命を奪うのは嫌だ。
あたいは…あたいはどうすればいいの!?
当時のあたいは辛い現実、ジレンマなどが重くのしかかり、あたいはつぶれる寸前であった。
自分はどうするべきか誰かに教えて欲しい。誰かが颯爽と現れてこの苦しみから救って欲しい。そんな叶わぬ願いを胸に秘めながらも、この苦しみからはずっと解放されないのだと心のどこかで思っていた。
あれからしばらくして、あたいはとある霊術研究家――先生の元、住み込みで弟子入りする事となった。
先生はお母様の昔の知り合いらしく、あたいが霊術を再び使えるようになるために色々学ばせてほしいとお母様が頼み込んだらしい。
…実は修行というのは表向きの話。本当は親族たちから日々攻め続けられ消耗しきったあたいを逃がす為にお母様が作ってくれた逃げ道であった。
本当、お母様には感謝しかない。
先生の元には、霊術の種類は違えどあたいとだいたい同じくらいの年齢の子ども達が集まってきており、あたいもその子らと共に霊術の修行に励んだ。
最初はその子たちとギクシャクとした関係で、時に衝突もしたけれど共に一緒の時間を過ごす程にお互いの距離が縮まり、やがて皆かけがえのない友人になった。
皆と過ごす時間は本当に輝いていて、実家でのゴタゴタで消耗しきっていたあたいの心は次第に回復していくのが分かった。
…しかし、それでもなお、再び霊術を使える兆候は見られなかった。
昔診てもらったお医者さんの話では、あの経験がトラウマとなり無意識のうちに心にロックをかけてしまっている状態だとか。
今の生活が嫌なわけではない。しかし、結局はあの苦しみからは一生逃れられないのだとあたいは落胆にも似た感情を感じた。
…これは、もしかしたら逃げてしまったあたいへの罰なのかもしれない。これはあたいが背負っていくべき罰だから仕方がないのだ。
皆と一緒に居る時も、そう自分に言い聞かせて無理矢理全てを諦めようとした。
きっと死ぬまでこの苦しみを背おっていくのだと思っていた。
『ヒータ、辛そうだけど、大丈夫?』
―――そんな時だ。あたいを苦しみから解放してくれた彼が手を差し伸べてくれたのは。
そう言ってあたいの顔を心配そうにのぞき込んだ彼は、一緒に修行している子…エリアちゃんと霊術契約をしたトカゲ人間。名前は確か…ガガギゴ。
ぶっちゃけ、当時のあたいは『変な名前のトカゲ…』という印象しかなく、これからもあんまり関りとかないんだろうなと思っていた程度の認識だった為、急に声を掛けられた時は予想外の事で驚いたのを今でも覚えていた。
『…別に、なんでもないよ』
『…そっか、なら良かった』
あたい達の初会話は、そんな感じの素っ気ないものだった。
その頃彼とは今のように何でも話せる間柄じゃなかったし、何よりその頃悩んでいたのは家庭の事情というデリケートな事。正直良く知らない相手に知られたくない問題だった。
実際、こう突き放すように言っておけばこいつも離れて行くだろうという思いもあった。
『ヒータ、今日は大丈夫か?』
『…大丈夫だって』
しかし、その会話の後も彼は何かにつけてあたいを気遣う様に声を掛けてくれるようになった。
『ヒータ、今日はどうだ?』
『…問題ないって、しつこいよ?』
『ヒータ、調子は…』
『モーマンタイッ!』
実は、最初の頃は『うざいなこいつ…』と思っていた。
『ヒータ、調子はどう?』
『…ほんっとに懲りないね、君は』
『ヒータ、ご機嫌麗しゅう』
『プッ!何それ、似合わないねぇ~!』
『ヒータ、』
『お~ガガギゴ君じゃん!せっかく来たんだしちょっと話そうよ』
『ヒ『ギゴ君!一緒に素材集め行こうぜ!!エリアちゃんにはあたいから言っといたからさぁ!!』……オ、オウ』
しかし、毎日追い返しているのに懲りずに話しかけて来るこのトカゲに段々と愛着が沸いてきて、何時しか気兼ねなく話せるほどに仲良くなっていった。
えっ、途中からあたいからグイグイ行くようになってないかって?
……しょうがないじゃん!毎日ツンケンして突き放してるのにそれでもあたいの事を気遣ってくれて、おまけに素材集めとかクエストとかで強いモンスターとかが現れてピンチの時に颯爽と助けてくれる(D―HERO)ナイスガイだよ!?こんなの好意持つでしょ!?
…あっ、この時はまだこの好意はLIKEであってLOVEではないからねッ!?
……へっ、『この時は』って……ッ!?!?////////
は、話を戻すよッ!!
『ヒータ、今日も、大丈夫?』
『…………あはっ、ギゴ君になら、言ってもいいかな…』
そんな風にギゴ君への好感度を上げていったあたいは、何時しか実家であった出来事をギゴ君に話していた。
その頃には彼の事は信用していたし、何よりその時丁度実家で暮らしていた頃の夢を見た事もあって少しナイーブになっていたのかもしれない。
でも、まさか最初にこの話をするのが先生や他の霊使いの娘じゃなく、ギゴ君とは思わなかったなぁ……思えば、あの頃からギゴ君に惹かれて…い、今のなしっ////
『――と、言うわけであたいはここに居るってわけ』
『…………』
あたいが話し終わるまで、ギゴ君は何も言わず、ただ話を聞いてくれた。
あーあ、ついに話しちゃった、一族を失望させたあたいの醜態。
…ギゴ君はどう思っただろう?半分逃げるようにしてここに来た臆病者って思われたかな?それとも一族の責任から目を背ける卑怯者?
まぁ、どっちも当たってるけど……もしそうだったら少し悲しいかも…
『―――ヒータは、優しいな』
しかし、ギゴ君から返ってきた言葉は、あたいの予想を大きく外れるものであった。
『……優しい?あたいが?』
『うん。……オレ達人外型のモンスターって、上級魔術の為とか上級精霊の召喚とかで意外と生贄に使う人間が多いんだ。中にはそれが日常的になって、何とも思わない奴もオレは見て来た。でも、ヒータはそんな生贄になったモンスター達の為に悲しんでくれている。それだけでは無念は晴れないけど、少しは浮かばれると思う』
『だから、ヒータは卑怯者や臆病者じゃない。――どこまでも優しい子なんだよ』
ギゴ君がそう言った瞬間、あたいは目が熱くなるのを感じた。
その原因が、いつの間にか流れ出た涙と気が付くのに時間はかからなかった。
『ひ、ひひひひひひひひヒータぁ!?どうしたの!?お腹痛いの!?きゅ、キューキューロイド呼ばなきゃ!?いや、その前にサイコ・ショッカー先生に…』
『あはは、大丈夫だよギゴ君。…これは痛いからじゃないからさ…!』
急に慌てふためくギゴ君の様子に笑いながら、あたいはギゴ君を落ち着かせる。
そう、この涙は痛みや悲しみから来るものではない。
今まで、ずっと苦しかった。本当は誰も生贄になんかしたくないだけなのに、それはあたいが弱いからだと言われ続けて来た。何時しか、あたいも自分自身がおかしいのだと思い込んでしまっていた。
しかし、ギゴ君はあたいを肯定してくれた。――命を軽く扱う行為に苦しみを感じるのは、おかしくない事を。
あたいを肯定することで、苦しみから救ってくれたのだ。
『あはははっ!…はぁ、ありがとうギゴ君。なんか元気出たよ』
『お、オウ…オレ、なんかしたっけ…?』
『うん、してくれたよ。…でも、なおさら
苦しみから解き放たれたあたいであったが、結局火霊術が使えないことに変わりはなかった。これでは両親や親族に報いる事は出来ないだろう。
皆には悪いけど、やっぱりあたいは当主にはなれないなぁ…
『…っん?それならトークンで代用すればいいんじゃない?』
しかし、ギゴ君はまたしてもあたいの悩みに光を照らし、道を示してくれた。
『……へっ?トークンって…あの?』
『そう、クリボーとかドッペルとかのアレ』
あたいの気の抜けた声に、ギゴ君は頷いた。
トークン。それはモンスターが持つ力や魔力の粒子が集まり生み出されるものだ。
その見た目はクリボーやおジャマの一族に見た目が似ている者が多く、一見すると生き物の様だが、結局は粒子の集まりがそう見えているだけなので生き物ではなく自然現象に近い存在であった。
あのトークンを生贄にする…ッ!?
『と、トークンで生贄代用するって事!?そんな事出来んの!?』
あたいは驚きの声を上げた。
あたい自身トークンという存在は知っていたが、それを生贄の代用にする等という発想は実家にいた時も、先生の元で学んでいる時もそんな発想はなかったからだ。
『うん、実際オレ、トークンを素材にして砲撃戦してくるキャノン・ソルジャーと戦った事あるから問題ないと思う(KONMAIも大丈夫って言ってたし)』
あたいの疑問に答えるギゴ君。
その光景に、あたいは確かに希望を見た。
こ、これなら誰も犠牲にすることなく、両親の期待にも応える事が出来る!!
『そ、それならあたいにも火霊術が使えるかもッ!!…あっ、でもトークンってどうすれば生成できんだろ……』
せっかく見出した道だが、その道のりは険しい事が容易に予想できた。
まず、トークンの生成は自然現象の面が大きく、それを自らで生成する方法は限られている。
考えられる方法は2つ。トークン生成の魔術書を手に入れるか、トークンを扱う術者に教えを乞う事だ。
だが、トークン生成の魔術書はどれも貴重で入手が困難。トークンを扱える者の伝手もあたいにはなかった。
あぁ、せっかく見えた光は途轍もなく遠い―――
『トークン、トークンかぁ……あっ!オレ、心当たりあるから教えてもらえるか頼んでみる!!』
『ふぇ!?』
―――ちょ、なんでもギゴ君解決してくれるんだけど!?希望の光眩しすぎてあたい目が開けられないんだけどぉ!?!?
そんな会話をしてから、色々な事がトントン拍子に進んだ。
まず、トークンの扱いを学ぶためにあたいはラヴァル達に教えを乞う事となった。
ラヴァルは最近強いモンスターを倒しまくっているギゴ君の活躍を耳にして手合わせを目的によくやってくる集団なのだが、その戦闘脳からは想像できない程に繊細なトークン技術を持っていた。
そんな彼らにギゴ君は、定期的に勝負する条件にあたいにトークンの技術を教えてくれるよう頼み込んだのだった。
『良かったな、ヒータ……んっ?あぁ、オレの事は良い。どーせ断っても勝負仕掛けて来る奴らだし、WIN―WINな関係になっただけだ。……それに、ヒータの力になれて、オレも嬉しい』
そんな事を頬を赤くしながら言ったギゴ君の姿は、今でも鮮明に思い出せるくらいにかっこ良かった。
かっこ良すぎてその日からしばらく夜のお供に……な、なんでもないっ!/////
『ヒータ、調子はどう?…んっ?あぁ、オレの事は気にしないで。ちょっとジャッジメントとやり合ってただけだから』
その他にもラヴァルの強者との戦いで疲弊して、ボロボロなはずなのにあたいの事を気遣ってくれたり…
『ヒータ、ちょっと疲れてる?あー…トークン扱うの難しそうだもんなぁ……でも、ヒータならきっと習得できる。オレ、信じてる!』
中々トークン生成が上手くいかず、挫けそうなあたいに寄り添って励ましてくれたり…
『おぉ!これは紛れもないラヴァル・トークン!!ついにやったなヒータ!!』
あたいがトークンを初めて生成出来るようになった時は、まるで自分の事のように喜んでくれたっけ…
『ヒータ、これあげる。きっとヒータの力になると思う』
あたいの為に貴重な魔術書や罠カードを探してくれたりと、ギゴ君はあたいの為に色々してくれた。
そして修行を始めてから早1年。ついにあたいはトークンの扱いをマスターしたのだった。
『今日で修行も終わりか…立派になって…!』ぶわぁ!
『もう、ギゴ君ったらそんなに泣かなくてもいいじゃん!大げさなんだから…』
『だって…だって…!ヒータの頑張りがついに報われたんだ…こんなに嬉しい日はないっ!!』
トークン技術を習得したあたいを見て、ギゴ君は号泣しながら喜んでくれた。
…でも、違うよギゴ君。あたいの頑張りだけじゃない。ギゴ君が…貴方があたいをここまで連れてきてくれたんだよ。君が支え続けてくれたから、照らし続けてくれたから、あたいは歩き続けられたんだよ。それに…
その頃には、あたいにとってギゴ君は特別な存在になっていた。
彼の事を考えると胸が苦しくなる、しかしそれが心地よくて幸福感さえ覚えてしまう。―――まぁ、簡単な話、あたいはギゴ君に恋をしていた。
もう種族だのなんだのは関係ない。ここまであたいを信じてくれた男を好きにならないはずないじゃないか。
『…あ、あのねギゴ君…あたい、貴方に伝えたいことがあるの!』
『ん~?なんだい?』
あたいは深く息を吸い、意を決してギゴ君にそう言った。
実は、あたいはこの修行が終わったらとある事をやろうと決心していたのだ。
それはもちろん――――告白だ。
あたいはギゴ君に返し切れない程の恩がある。その恩に報いるために、あたい自身を彼にあげるのだ。
…ううん、これは言い訳だな。本当はあたいがギゴ君と結ばれたいと本気で思っているのだ。
あたいはもう、ギゴ君のいない人生なんて考えられない。ギゴ君と一生を添い遂げたい。恋人になって、キスをして、結婚して、もちろん子どもだって……//////
と、とにかく!あたいはギゴ君との関係はこれまで通りなんて嫌!この思いをギゴ君に伝えて、こ、恋……恋人になるんだぁぁぁ!!////////
『ギゴ君、あたいは貴方の事がs『ギゴくぅ~ん♡』き!……はっ?』
しかし、あたいの一世一代の告白は甘ったるい雌猫のような声に遮られてしまった。
あたいとギゴ君の間に、水色髪の少女――――エリアちゃんが割って入ってきたからだ。
『え、エリアぁ!?何で抱き着いて……というかどうしてここにっ!?』
『え~?だってギゴ君、最近ラヴァル達のとこばっかり行ってるんだもん。流石に何かあったと思って心配になって迎えに来るよ~』
『だ、だからって抱き着かなくても…』
『最近の私はギゴ君成分…ギゴニウムが欠乏しているのです。こうして抱き着いてしっかり摂取しましょう♪』
『何その成分』
突然現れたエリアちゃんはギゴ君に顔を埋めながら、そんなやり取りを始める。
そんなエリアちゃんに、ギゴ君も動揺してあたいの言葉も聞こえなかった様子だ。
目の前にあたいがいるのに、2人のそんなやり取りが続く。その姿は―――――まるで恋人同士のようだった。
“ギリぃ……!!”
そう認識した瞬間、あたいの頭に歯を食いしばった音が響いた。
この
これから告白して、恋仲になる予定だったのに邪魔しやがって…早く離れろ。
この考えが浮かんだ時、あたいは内心驚いていた。
彼女は一緒に霊術の修行をし、苦楽を共にした親友とも呼べる大切な人物だ。
しかし彼女がギゴ君に抱き着いた瞬間、大切だという思いはどこかへ消えていき、彼女に対する憎悪しか沸いてこなかったのだ。
な、なんで…エリアちゃんは大切な友達なのに……こんな事考えちゃいけないのにっ!
『ほ、ほらっ!オレ、しばらくはヒータの修行を手伝うって言ってたじゃん!?でも、ヒータも今日で修行終わりだから心配しなくていいよ!!』
『本当っ!?じゃあこれからはまた一緒に居られるんだね!嬉しいな~♪』ぎゅうぅ…♡
『ほぉぉぉ!?や、柔っこいお山がぁ…!』
ギゴ君の言葉を聞いて、エリアちゃんはホールドの力をさらに強める。
あ゛あ゛あぁぁぁぁぁ!離れろ雌猫!ギゴ君に、あたいの男に引っ付くんじゃないっ!!
『あっ、それはそうとヒータちゃん、修行終わったんだね』
そんなあたいの心情をあざ笑うかのように、エリアちゃんはギゴ君に抱き着いたままあたいに顔を向けた。
『
エリアちゃんは、満面の笑みで
……あぁ、そうだよね。ギゴ君は最高にかっこいい男だもんね。あたいの他にも、彼の事を好きになる勘違い女が出て来てもおかしくないよね。
……でも、関係ない。彼はあたいを絶望から掬い上げてくれた光。彼以外の男なんて考えられないくらいにあたいは彼に夢中なのだ。勘違い女が何人いようが、彼を諦める事なんて出来るわけがない。最後に彼と結ばれるのはあたいだ。
『
あたいも満面の笑みで返した。
あたいの胸の中にあるギゴ君への思いは、もはや火霊術の比ではないくらいにごうごうと燃え滾っており、もはやあたい自身にも止められるものではなくなっていたのだ。
「ふぅ、ここで中間……まだまだ遠いなぁ…」
過去を振り返りながら歩き続けていたあたいだが、目的の場所まではまだまだ遠く、少しうんざりしてしまう。
他の
なに、この紙さえあれば目的は8割型達成した様なものだ。焦る必要もないだろう。
「そう、この紙さえあれば……デヘへ♡」
あぁ、やっぱり駄目。早くこの紙をあそこへ届けたい気持ちが溢れてきてしまう。
顔のにやけも抑えられず、口元が歪んでしまう。今鏡を見たら、きっと人生最大の喜びをかみしめている自分の顔が移るであろうことは想像に容易かった。
「あぁ、早く持って行きたいなぁ――――」
「――――この婚姻届け♡」
ギゴ君に書いて貰った紙。これは引っ越しの為の書類なんかじゃない。
これは、あたいとギゴ君が結婚するための証なのだ。
しかもこれはただの婚姻届けではない。とある幻想魔族ととあるアンデット族が自らの持つ力を全て注ぎ込み完成させたとされる特別なものだ。
なんでも、この婚姻届けに記載された夫婦は幻想魔術の力で魂レベルで絡まり合い、永遠に離れる事がなくなるのだとか。
この効果は死がふたりを分かつまで?ははっ、そんなわけないだろう。アンデットの力によって死後も魂レベルで絡まり合い、絶対に離れない。まさに永遠の愛を形にした婚姻届けと言えるだろう。
手に入れるのには苦労した……この婚姻届けの製作者を探し出し、これを貰うまでも一悶着あったのだが、長くなるので割愛しよう。
完成したものを“リチューアル・チャーチ”に持って行き、神官が祝福する事で隠されている術式が発動し、名を書かれた2人は文字通り永遠に繋がる事が出来る…あぁ、何て甘美な響きだろう。
……もちろん、ギゴ君に何も言わずに勝手にこんな事をしてしまうのには罪悪感がないわけではない。
でも、仕方がないじゃないか。ライバルであるエリアちゃんは女のあたいでも偶に見惚れてしまう程に魅力的だ。後あたいより胸も大きい。
もしエリアちゃんかあたいかの二択を迫られたら、きっとエリアちゃんを選んでしまうだろう。
エリアちゃんだけじゃない。他の霊使いの子達もギゴ君に好意を抱き、隙あらばギゴ君の番になろうとするいやしい雌猫ばかりだ。
彼女達も皆魅力的で、あたいじゃ勝負にすらならないだろう。後半数以上あたいより胸も大きい
……ま、まだ成長途中だからぁ!!
…とまぁ、この様に真正面から戦っても、この勝負にあたいは勝てないのだ。
ではギゴ君を諦めるのか?それは絶対にしたくない。
だからこそ、あたいはこのような強硬手段に出るしかないのだ。
…ごめんね、ギゴ君。こんな汚い手段なんか使って、貴方を縛り付けて…でも、ギゴ君の人生を奪った償いとして、あたいをあげる。
ギゴ君が望むことは何でもすし、ギゴ君がヒモになりたいのならあたいが養うよ?
それに……え、エッチな事やこ、ここここ子どもだって何人でも産んであげるっ!////(爬虫類族と作れるのか分からないけど…)
あたいに光を照らしてくれた貴方に、今度はあたいが尽くすよ?
だからさ、ギゴ君。あたいと一緒に―――――
“ぶおぉんッ!!”
「ッ!?」
突如空気そのものが切り裂かれるような音が聞こえ、あたいは後ろへ大きく飛んだ。
瞬間、あたいが先程までいた場所に何かが強い勢いで衝突し、土煙が上がった。
煙が晴れてくると、そこには地面が抉れて、まるで大きなハンマーでも振り下ろしたかのような跡が残っていた。
しかし奇妙な事に、落ちてきたものの姿形はない。地面に跡が残っているだけなのだ。
これだけ大きな跡を残すものだ。この一瞬で隠すことなんて出来るわけがないし、壊れたのならば残骸が残るだろう。
では、何が落ちて来たのだ?
“ふわりっ”
落ちて来たものについて思考を巡らせていると、前髪が風に揺られたのを感じた。
さっきの衝撃によって発生したのだろうそれは、心地いいと感じられる風で――――多大な魔力を含んでいた。
……あぁ、もう来たんだ。来るならせめてリチューアル・チャーチに行った後の方が良かったんだけど……まぁ仕方ないか。
「こんな強力な魔法、当たったらひとたまりもないなぁ…今度から魔法を打つ時は周りをよく見た方がいいと思うぜ?なぁ―――――」
――――ウィンちゃん
「大丈夫、手加減してたから」
あたいがそう呟くと、頭の上から声が聞こえて来た。
あたいは上を見上げるように首を動かす。
そこにあった光景は、無数の鳥たちが空を覆い尽くしている光景であった。
緑色の鳥たちが空一面に広がり、もう空の色は本来何色だったのか分からない程だ。
同じ緑の鳥が集まり大空を制している光景は、世界の終わりの前兆を見ているかのようである種の恐怖すら感じる光景だ。
『ガスタ・イグル』に『ガスタ・ガルド』、『ガスタ・コドル』まで……ははっ、ガスタの鳥が勢ぞろいだね。
しかし、1羽だけガスタの鳥ではない鳥獣族の姿もあった。
ドラゴンのように巨大な身体と鋭いくちばしと爪、そして自らが大空の王者を証明するかのように頭に王冠を被った鳥。
そう、あれは神の鳥と呼ばれ崇められている伝説の鳥―――『神鳥シムルグ』
そんなシムルグの背に立ち、緑髪の少女――ウィンちゃんがあたいの事を冷たく見下ろしていた。
「手加減って……地面の跡見る限り手加減してる様子ないんだけど?」
「そう?…でもさぁ、
人のもの。その言葉を聞いた時、あたいは大火葬のごとく燃え上がる怒りを感じたが、なんとかそれを抑え込む。
「泥棒?……人違いじゃない?あたいは何も盗んでないよ。ましてやウィンちゃんのものなんて…フッ」
おっと、いけない。最後の方は思わず少しニヤけてしまった。
あたいの言葉を聞いたウィンちゃんの目は更に鋭くなった。
「……じゃあ単刀直入に言ってあげる。ギゴ君を返して。彼はあたしの夫なんだから」
そう言いながらウィンちゃんは、左手の薬指を口元へ運び、軽く口づけをした。
……なんだ、今のしぐさ?よく見たら薬指に何か光っている者が見える様な…まぁ、いいや。
それにしても、ウィンちゃんもおかしいことを言うなぁ…
「あははっ、ウィンちゃんってば冗談が下手だねぇ~…下手過ぎて全然笑えないや」
あたいはそう言いながら杖を構え、小さく声を漏らした。
「『フォトン・サンクチュアリ』」
瞬間、あたいの周りに神秘的な輝きを放つ2つの玉―――「フォトントークン」が現れた。
そう、これはウィンちゃんに対する宣戦布告。あたいが火霊術―「紅」を発動するための準備だ。
フォトントークンは強力なトークンだが、光属性の為本来は火霊術の対象ではない。しかし、あたいの杖には「ヒータの役に立つと思うから」という理由でギゴ君からプレゼントされた『DNA移植手術』の罠カードの力を編み込んでいるから問題はない。
ふふっ、
「そんな冗談を二度と言わなくていいように、ウィンちゃんに教えてあげる」
ギゴ君は、あたいの雄だ
「はぁ、ヒータちゃんがそんな態度ならしょうがないね。正直に言わないヒータちゃんが悪いんだからね…」
ウィンちゃんがため息をつきながらそう言った瞬間、彼女の周りを囲んでいた鳥獣たちが“キーッ!”と甲高い声で威嚇を始める。
その顔つきの鋭さから、いつ飛びかかって来てもおかしくないということが簡単に察せた。
「無駄だと思うけど、一応言っとくね。ギゴ君の居場所を教えてくれたらこのまま何もしない。でも、教えてくれないなら――――分かってるよね?」
そう言ったウィンちゃんの声は、禁止魔法である『大寒波』を彷彿とさせる位に冷め切っていた。
風魔法の使い手であるウィンちゃんとガスタの鳥獣たち、そして神鳥シムルグ。彼女達を一度に相手にするなんて無事では済まない。下手をすれば命を落としてもおかしくはないだろう。
では、ギゴ君を諦めるのか?―――――ふざけるな、そんな選択肢があるわけがない。
「―――上等だおらぁっ!!」
あたいは自分を奮い立たせるように叫び、火霊術を爆発させた。
ごめんね、ギゴ君。もう少しあの家で待っててね。
そして、あたいが帰って来たその時は――――
文字通り、永遠に繋がっていようね♡♡♡♡♡
霊使いちゃん達のバスト比較早見表(諸説あり)
ライナ<ヒータ<<<エリア<ウィン<<<<<<アウス
???:ダルク
ちなみに婚姻届けの作成者はどこぞの見習いちゃんと死霊の王の模様
見習いちゃん「こ、これさえあれば魔術師さんと……♡♡♡」
死霊王「なんかヤバいもの出来てて草。魂実質1つになるわけだし管理楽になるやん!一般販売したろ」
今回も長くなってしまった……しかもこれ、結構カットした結果なんすよ…
もっと話まとめられるようにガンバラナイト…
ここまでご拝読ありがとうございました