Monster Hunter:Wind Ark   作:カリオロス亜種

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今は唯、深き眠りの中
微睡の主は、夢幻に在りて。



狩人として。②

 

──目を覚ますと、そこはキャンプだった。

 

「俺は……」

 

俺はあの時、リオレイアの目の前で意識を失ってしまったはずだ。

そして、何かを思い出して……

 

「うぅ……」

 

身体が上手く動かない。あの一撃は相当堪えたらしい。

 

「クソ……なんで俺は、ここに居るんだ……?」

 

シウニはこのクエストを一人で受注した。助けてくれる味方が居るはずも無く、ましてやキャンプにまで戻る事など不可能な筈だった。

 

「……」

 

雨音が嫌に頭に響き、まるで身体の重さを加速させるかのようだった。

何かを、思い出した筈だ。だが、それが何かわからない。

 

「よう、起きたのか」

 

キャンプの外から聞き慣れない声がした。

まさか、この水没林に自分以外の誰かが…?

 

「あんた、誰だ……?」

「誰って、それはこっちが聞きたい事なんだけどなぁ……まぁいいや、俺はラムだ。よろしく」

「ラム……君が助けてくれたのか……?」

「まぁ、そうだな。あんたハンターだろ?同業者のよしみさ」

 

俺とあまり歳の離れていなさそうな中性的な容姿の青年だ。

 

「……俺はシウニ、シウニ・フリューリンだ。助けてくれてありがとう。ところで、俺の近くにリオレイアが居たはずなんだが、奴はどこに…?」

「リオレイア?リオレイアなんてここ暫くは見てないぞ。少なくともこの地に縄張りを築いては無いはずだ。」

 

ラムの返答に、幾つか疑問が浮かぶ。

 

「……なぁ、君は一体どこから来たんだ……?この地の管轄ギルドからはリオレイアの狩猟依頼が出ている。まさか、他の地方との重複依頼……という事なのだろうか」

「俺は、この水没林の近くの村のハンターだよ。最近この辺りのモンスターの動きが騒がしいから、毎日こうやって見て回ってるんだ。そしたらあんたが倒れてた。」

「……俺が倒れてたのは、リオレイアに吹き飛ばされたからなんだ。君が姿を見てなくて、倒れた俺だけがその場に居たという事は、リオレイアは俺に構わずその場から立ち去ってしまった、のだと思う」

「うーん……確かに足跡っぽい水溜まりは見た気もするけど……何はともあれ、この地のどこかにリオレイアが居るかもしれないってんなら、それは調査する必要があるな」

 

話しているうちに、身体が言うことを聞くようになってきた。まだ少しふらつきはあるが、特に問題は無いようだった。

 

「おいおい、まだ起き上がるなよ、無理すんなって」

「急がないと、リオレイアはこの地を離れてしまうかもしれない。ラム、君は『ここ暫くはリオレイアを見ていない』と言ったよね。つまり、あの個体はどこか別の場所から逃げてきたのだと思う。」

「逃げてきた……?どうしてそう思うんだ?」

「俺があのリオレイアを発見した時、奴は何も無い方角に向かって何度も吠えていたんだ。まるで何かに怯えているような様子だった」

「リオレイアが怯えて逃げる……古龍でも現れたって言うのかよ」

「それはわからない……だが、それを突き止める為にも奴を見失う訳にはいかない」

「……わかった、それじゃあ俺も協力するよ。こう見えても、腕に自信はあるんだぜ?」

 

ラムは、そう言って背中のスラッシュアックスを掲げた。

 

「とりあえず、もう少し休んでなよ。リオレイアは俺が見つけてペイントボールを投げつける。その後二人でどうするか決めよう」

「わかった……恩に着るよ」

 

ラムがキャンプを後にする。

シウニは重い腰を持ち上げ、防具を外し傷の具合を診る。

 

「……」

 

幸い打撲程度で済んでおり、薬草による処置もラムが施してくれているおかげで腫れも引いているようだった。

 

「まだ動ける……」

 

狩りに支障はない。否、この程度で休んではいられなかった。

 

 

 

「──お、あれか、リオレイア。ほんとに居た。」

 

ラムがペイントボールを投擲、続けざまに閃光玉で視界を奪い、撤退。

 

「相当でかいな、あんなのと戦ってたのかシウニのやつ」

 

リオレイアの元を離れ、キャンプに戻る。

 

「よう、生きてるか?」

「ああ、おかげさまで」

「動けそうか?」

「大丈夫だ。リオレイアは?」

「あぁ、見つけた。相当でかかったな」

 

今回ギルドから出された依頼の内容は調査ではなく狩猟だ。しかし、この個体はどこか様子がおかしい。

 

「討伐は一旦見送って、奴の行動を観察することに注力した方がいいかもしれない。もしかすると、異変の元凶の位置が割り出せるかも」

「なるほど、観察か。それなら俺のフクズクに任せな。」

 

フクズク。梟に近い種族の鳥類で、偵察においては大いに役立ってくれる存在。

主に活用されている地域では、ユクモ地方のカムラの里などが有名である。

 

「この子がフクズクか……初めて見たよ」

「カワイイだろ?コイツが一鳴きしたらエリア移動、もう一鳴きしたら移動完了の合図だ。後はフクズクの飛んでいく方向から位置を割り出せる」

「なるほど……最初に俺が発見した時に吠えていた方角は西だった。次に大きく移動する方角がその逆、東方面だった場合、西に何かがいる可能性が高い」

「なぁ、それなら俺たち二人でヤツを削って逃げさせればいいんじゃないのか?」

「いや、確実性を取りたい。意地になって最後までその場に居座るかもしれないし、逃げる方角も変わってしまうかもしれない」

「そういうもんか……わかった、それじゃあ隠密任務と行くか」

 

二人は雨の中でも消えずに目立つペイントボール特有の痕跡を辿り、フクズクの助力もあって、比較的スムーズにリオレイアを補足できた。

 

「……いた。」

「なぁ、やっぱりでけぇよあいつ」

「そうかもしれない。俺はあの時、本来苦手な筈の空中からの攻撃で不意をつかれた。つまり奴は比較的戦闘に慣れている個体、なのかもしれない」

「歴戦の個体ってわけか。腕が鳴るぜ」

 

そう話しているうちに、リオレイアが飛び立つ。

 

「おっ、移動した。あの高度、結構な距離を移動するつもりだな」

「運がいいな……順調だ」

 

フクズクの飛んでいく方向に向かって走る。

その方角はやはり、東の方面だった。

 

「ビンゴだな、奴は東に移動しているようだぜ」

「このまま行くと狩猟用マップの管轄範囲外だ……やはりタンジアギルドの見立ては間違っていた」

「……てことは狩猟はお預けか」

 

リオレイアはこの地に縄張りを築いているのではなく、他所から飛来してきた個体だということだ。そして、その原因となった存在が西に居る可能性が高い。

 

「リオレイアが警戒して逃げる程の存在……タンジアギルドに報告したい。フクズクに文書を送り届けてもらう事はできるか……?」

「あぁ、可能だ。ちょっと待ってな」

 

ラムが口笛を吹く。するとフクズクは追跡を止めこちらに向かって帰ってくる。賢い子だ。

フクズクの脚に文書を括り付け、タンジアギルドに向かって飛ばす。

 

「ラム、君は村付きハンターだと言ったな。それならばここでお別れだ。助けてくれてありがとう、この借りは必ず返しに来るよ」

「待て待て、俺も連れてってくれよ。」

「そうは言っても、君の村にハンターの君がいないと困るだろ?」

「……俺は必要とされてないのさ。あの村には同じハンターの兄ちゃんが居る。」

 

お兄さんの腕は一流で、弟であるラムは引け目を感じているのだという

 

「……わかった、実は俺達も人手を探していたんだ。ただし、村の皆に一言伝えてから出るんだ。その方がきっといい」

「……あぁ、わかったそうするよ」

 

シウニはクエスト中断の信号を上げ、帰還用の荷車を呼び寄せる。

 

「俺はここで待つよ、君は村に挨拶をしてくるといい」

「わかった、絶対に先に行ったりするんじゃないぞ!」

 

ガーグァ荷車の傍で一人、未だ収まらぬ雨音の中、シウニは一つ思い出した事があった。

意識が混濁したあの時に見た記憶のようなもの。それは曖昧でなんの事だか思い出せる気がしない。そして、その記憶に付随して浮かんだ疑問。"何故ハンターを目指したのか"……衝撃に沈む間際、思い浮かんだのはそれだった。

 

「……ハンターを目指した経緯……今まで考えもしなかったが、思い出せない……。」

 

ただ、あれ以降胸にざわつく感覚。その何かを必ず成し遂げなければならないという想いだけが、漠然と頭の中に離れずに居た。

 

「──ようシウニ、またせたな、考え事か?」

「……あぁ、おかえり、ラム。」

「よっし、それじゃあ行こうぜ、タンジアに」

 

帰還用の荷車に揺られ、ふとラムの装備を見る

 

「その武器は、何の素材から出来ているものなんだ……?」

「あぁ、これか。これはこの水没林で発掘されたシーブライト鉱石から生成されたものを加工した武器だ。」

 

スラッシュアックス、ディーエッジ。まるで生き物の頭骨のような形状をしたその剣斧は、雨に濡れ、翡翠色の輝きを放っている。

 

「シウニの獲物は片手剣だな。珍しい色の組み合わせをしているんだな」

「あぁ、俺の相棒だ。さっきもこいつに救われた。」

「片手剣かぁ、俺が一番最初に使ったのも片手剣だったぜ」

「あぁ、俺もだ。この重さが一番しっくりきて、今でも使っている」

「んー、俺は中々しっくりくる武器が見つからなくて、兄ちゃんのお下がりのスラッシュアックスを握ってみたら、コイツだって確信できたんだよな。最初は重心の異なる二つの形態を使いこなすのには苦労したけど、今じゃ自分の腕のように扱えるぜ」

「変形で重心が変わるのか……扱いこなすのにどのぐらいかかったんだ?」

「大体半年って所だな。兄ちゃんはすぐ使いこなしてたみたいだけど……」

 

半年。とても早い…… リオレイアを見つけて帰ってくる速度一つをとってもそうだが、彼は狩人としてのセンスがかなり高いようだ。

 

「……君は十分すごい。兄さんも凄いのだろうが、あまり気に病まなくていい、と思うよ」

「そうかなぁ。俺はもっと強くなりたい。タンジアでデカい手柄立てて、あっさり俺を見送った村のヤツらを見返してやりたいんだ。」

「それじゃあ、俺達の所はうってつけかもしれないな……」

「そういや人手を探してるって言ってたけど、何かあるのか?」

「俺たちは、各地を放浪して縄張りを荒らす個体、通称"彷徨個体"を追っている。今回のタンジア近辺での異変もその個体が関係している可能性があって、ドンドルマから派遣されたんだ」

「そんな大事になってたのか、それは確かに手柄を立てるチャンスかもな」

 

荷車が二人を乗せ、タンジアへ帰還する。

 

状況を報告する為に、ハンターズギルドに向かう。

 

「あ、シウニさん。文書確認しました、ごめんなさい……!確かにリオレイアは狩猟地を離れ、西竜洋へ飛来して行ったとの観測情報が報告されています。誤った情報で狩猟依頼を出してしまい、本当に申し訳ありませんでした……」

「いえ、大丈夫です。それよりも、リオレイアが何者かから逃げているという予測についてなんですが……」

「はい、こちらでも複数のモンスターが東に移動しているとの情報を得ました。いずれも他の地方から移動してきたものと見られます」

「ではやはり……」

「今回の異変は、強大な何者かによる干渉によって引き起こされたものだと予想されます」

 

強大な何者か……これほどの影響力を持つ存在といえば、古龍に他ならない。しかし、今回の異変では例によってガブラスの出現は確認されていなかった。それが調査隊が彷徨個体の関連を予想した理由の一つでもある。

 

「一体何が……」

 

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