Monster Hunter:Wind Ark 作:カリオロス亜種
──数日前、"渓流"周辺──
「シャナ、合わせろ!」
「おりゃあ!」
大海の王者、ラギアクルス。
蒼き稲妻を身に纏う海竜が、その身を捻り、周囲を薙ぎ払う。
「あっ、、ぶないっ!!!」
「シャナ、無理に攻めようとしなくていい。息を合わせて堅実に行くぞ!」
「わかった!」
相対する海竜は、その個体としての実力から上位ハンター相当だとギルドに判断され、適役であるレイと、水中での戦闘経験のあるシャナの二人が依頼を受けた。
ブルームはタンジアに残り、ギルドと共に観測の任務に就いていた。
「放電来るぞ!離れろ!」
「了解……ってうわぁ!」
放電を回避したその隙に向かってすかさず雷弾ブレスを発射。体制を整えるよりも先に放たれたそれはシャナに迫り───。
「……ぐっ………!」
間一髪でレイが間に入りガード。
「ごめんなさい、救われた……!」
「問題ねぇ、次来るぞ!」
回避狩りのブレスを阻止されたことによって、ラギアクルスが標的をレイに変更する。
レイの堅実な立ち回りと指示によって、中々有効打を与えられない事に苛立ちが募っているのか、その口元からは怒りの唸り声が立っていた。
攻防の飛沫が渓流の流水を濁らせる。
このエリアでの戦闘はかなり長引いていた。
「──うおぉ……りゃアッ!!!」
大剣を縦にぶん回し、遠心力で飛び上がったレイが繰り出した渾身の振り下ろしはまるで月のような真円を描き、その軌跡は海竜の角を粉砕した。
怯んだ隙を逃さずシャナが太刀での連撃を叩き込む。最終段の回転斬りで海竜が大きく怯み、傷は相当深く入った。
「この調子だ、このまま攻めの姿勢を崩すな!」
唸る海竜の怒りは頂点に達し、背中の背電殻の輝きも最高潮に達する。
だが、海竜は攻撃をすんでのところで止め、何かを思い出したかのように海へ向かって進み始めた。
「!?……このタイミングでエリア移動か!追うぞ!」
一心不乱に海に向かって進む海竜。その目には先程のような怒りの表情はなく、ただひたすらこの場を離れようと必死に駆けていた。
「海に入りやがった、なんだってんだ?……仕方ねぇ、追跡するぞ!」
「待って!何か聴こえる……!」
先程までレイ達が戦っていた方角から、地響きのような弟と振動が迫る。木々を倒し、土を掻き分け、水を裂き、途轍も無く巨大な何かが進行する。
「な、なんだ……ありゃ!?」
「大地が割れてる……!?」
進行する地割れは岩の山をも砕き、海に向かって突き進み、消える……。ただ、腹の底から震えるような地響きだけが鳴り止まずに居た。
「ラギアクルスは、アレを察知して逃げたって事か……?」
「明らかに普通じゃない、普通のモンスターの大きさじゃないし、巨大龍だとしてもあの速度は異常だよ……!」
「クエストは中断だ……!急いでギルドに報告するぞ!」
──タンジア、ハンターズギルド──
「レイさん!」
「ようシウニ、緊急事態だ。」
「レイさん達が受けていたクエストは確かユクモ村近辺の"渓流"でしたよね、その方角は……」
「あぁ、こっちにも情報が来てたか?とんでもない化け物が出やがった。姿は確認できなかったが……」
ギルドの受付嬢も交え、事の顛末を話し合う。
「大地を割るバケモンだ。それも相当な規模で、相当な速さだった。」
「巨大龍……ではないのでしょうね、ギルドの方でも現在資料を確認していますが……」
「一つ思い当たる存在がある。だが奴は特定の場所に住み着いていて、そこ以外で確認された事はねぇって話だが……」
「まさか……大巌竜……!?」
「あぁ、あんな芸当ができるとしたらそいつ以外に検討がつかねぇよ」
「大巌竜、ラヴィエンテ……かつて"絶島"と呼ばれる場所で確認されたという超巨大生物ですね。過去にメゼポルタギルドとパローネ=キャラバンの共同戦線によって対処されたとの記録が残っています。その絶島の主が、渓流の地に現れたと……?」
「奴は一帯をぶち壊しながら海に向かって消えていった。正直どこに向かったのかわからねぇが、まさかこのタンジアに近付いてるって言うのかよ……?」
「はい、リオレイアの動きからして、まっすぐこの方角に向かってきている可能性が高い、と思います」
「マジかよ、笑えねぇな……」
「今一先ずは古龍観測隊の報告を待ちましょう。その後、タンジアの全勢力を持ってその存在を食い止めます……!」
「食い止める、ねぇ。できるのか、そんな事」
「過去にあのキャラバンとハンター達は成し遂げた。不可能では無い……と思いたいです」
突然現れた巨大生物の進行。その行く手にタンジアがある、とすれば全力で立ち向かわなくてはならない。
ただし、タンジアギルドにはそのような巨大龍との戦闘経験が無く、対龍兵器も撃龍槍しか保有していなかった。
「もしこのタンジアに向かってきたとしたら、絶望的と言わざるを得ませんね……このギルドには、メゼポルタギルドのような兵力もノウハウも無い……」
「……今すぐにドンドルマに応援要請を出しましょう。古龍観測隊の報告を待ってからでは間に合わない。」
「そうだな、俺たちはどの道あの個体がラヴィエンテかどうかを確かめなくちゃならねぇ。もしそうだった場合それは"彷徨個体"だからな。調査の為にも、更なる人手は必須だ。」
「……わかりました。タンジアギルドからはロックラックへの応援要請を出します。」
「ドンドルマへの応援の要請はラムのフクズクが担当してくれると思います。」
「ラム?誰だそりゃ」
「狩場で知り合ったハンターです。」
「狩場で……?どういう状況だよそれ」
困惑するレイを尻目に、ラムを呼ぶ。
「おう、どうした?」
「君のフクズクに、ドンドルマへの応援要請を届けて貰いたいんだ。」
「ドンドルマか……ちょっと遠いが、コイツなら大丈夫だろう。引き受けるぜ」
「ありがとう、頼んだ。受付嬢さん、よろしくお願いします」
「はい。早急に応援要請の書状を記入します。お待ちを……!」
ドンドルマへ向けて、フクズクが放たれる。
天候は曇天で、辺りには重々しい空気が立ち込めていた。
三つのギルドが力を合わせての合同作戦。
作戦の主導はタンジアが行い、ドンドルマの保有する砕氷飛空船による偵察、援護。ロックラックのハンター達による兵力を合わせて対象の竜を迎え討つ。未だかつて無い程の大規模な作戦が始まろうとしていた……。