Monster Hunter:Wind Ark 作:カリオロス亜種
絶島の主①
長い夜が明け、眩い日差しが平原を染める。
「……出来る準備は全て終えた。後は、やるだけやるしかない。」
「作戦の要は、錨です。」
錨。船が流されない為に海に沈める重り。
それが今回の作戦の要だとシウニは語る。
「過去にラヴィエンテと対峙したギルドの情報によると、自分達がラヴィエンテに締め潰されなかったのは、あくまでも我々を喰らう事に固執した結果の偶然であった。との事です。つまり、今回対峙する彷徨個体はその限りではなく、ひとたび囲まれでもしたら全滅するのは明白です。」
そこで、とシウニが指を指したのは、人の4倍はあろうかという巨大な四つ目錨であった。
「この錨をラヴィエンテの出現予測地点にまばらにばら撒き、そこを人類の領域とします。」
どういうことだ。と野次が飛ぶ。あまりに荒唐無稽で、無理もない話だった。
「この錨は、相当な重量を持つと共に、海底に沈む為の返しがついています。これを無視してハンターを締め付けるような動きを取る事は難しい、と自分は考えます」
「つまり、錨の隙間にいる間は、少なくとも為す術なく潰される事は回避される、という事じゃな」
「この錨が、俺達の命綱となる。そして、狩猟の最中には砕氷飛空船による各種支援も行います。一つは火力支援、単純な爆撃です。もう一つは毒弾支援。ラヴィエンテがその場を離れようとした時に放ちます。動きを鈍らせ、高速用バリスタで移動を阻止します。もう一つは鎮静支援、奴は一度怒りで対象に執着し始めると興奮が冷めるまでには相当な時間を要する、と聞いています。そこで、大量のネムリ草による特殊な砲弾で沈静化を図ります。そして、最後の一つは回復支援。飛空船より医療キットを投下します。これらの支援を適宜信号弾で要請して、連携を取りつつ戦う。それが今回の作戦です」
ラヴィエンテが出現されると予測される平原には、タンジアギルドと飛空船が夜通し運搬した夥しい数の錨が並んでいた。
隙間には大砲やバリスタ、撃龍槍等が設置されており、さながら攻城戦の前線のような様相となっている。ここで迎え撃ち、少なくとも進路を逸らす事が叶わなければ、タンジアに未来はない。
既に勇敢なハンター達数十名が領域中にて待機している。
彼らはその役割を自ら買って出た第一陣だ。
「いいかお前ら、おさらいだ。負傷した味方は纏めて速やかに気球式担架に乗せて、信号弾を放つ。気球を飛空船のアームに釣り上げてもらい、そのまま離脱する。その間に襲われないように火力支援も同時に行う。その間はラヴィエンテに近づくんじゃねぇぞ!」
「相手は超大型の竜だ。最初は兵器による攻撃で奴の表皮を削るぞ!」
「全くクソッタレな作戦だな。やってやろうじゃねぇか!」
彼らの士気は高く、この場にいるハンター全員が勇気付けられている。
飛空船には、シウニ達含めた第二陣が待機している。その半数は、同じく第一陣に志願した者も含まれている。彼らの役割は支援、そして第一陣が負傷した際の増援だ。
「結局一回も通常のモンスターは現れなかったな。」
「いずれもラヴィエンテから逃れ、既にこの地には居ないということでしょうね……」
「モンスターもそうだし、鳥や虫の声すらしない……まるで古龍だね」
「この作戦の難易度は、古龍種との戦闘と比べても遜色ない程だろうな」
朝霧が立ち込め、静謐な時間が流れていく。
しかし、ドンドルマの観測隊によると、確実にこの場所に近付いている。との事だった。
「よぉシウニ、この作戦を生き残ったらお前、何したい?」
「俺は、ラヴィエンテがどこに向かおうとしているのかを知りたい。島一つを縄張りにして悠久の時を過ごす竜が、大陸を横断して突き進む理由……それを知りたいんだ。」
「……時々俺は、お前が心配で仕方なくなるんだ。竜の域に近付くほど、お前は何処までも飛んでいってしまうような、そんな気がする。お前がそこまで突き進もうとする理由は俺にはわからねぇが、危なかっかしくて見てられねぇから最後まで付き合うぜ」
「……ありがとう、レイさん。」
シウニが突き進む理由。それは実際の所シウニ自身もよくわかっていない。ただ、予感よりも確信めいた使命感が、彼をそうさせている。
日が登り空が青く染った頃、静寂は破られ、腹の底に響くような地響きと共に、この青空と同じく蒼に染まった大巌竜が、地平線より現れた。
「あれがラヴィエンテ……まるで蛇の化け物だ……」
「気合い入れろよ、お前ら!!」
飛空船の大銅鑼が響き渡る。次いで爆音の音響弾、閃光弾が空に向けて放たれる。ラヴィエンテを引き付け、戦闘の意思を示す。もう後戻りはできない。戦闘開始の合図だ。
初撃は飛空船による火力支援、大量の爆薬を用いた攻撃で、相手を爆炎の中に沈める。
しかし、その爆発をもろともせず、爆煙の中から姿を現した。
「喰らいやがれ!」
第一陣のハンター達が大砲やバリスタで砲撃する。ラヴィエンテは外敵の集団を見遣り、咆哮を上げる。
地が震え、錨が共鳴音を上げる程の咆哮。
しかし、それでも勇敢なハンターたちは怯まずに撃ち続けた。
「まずは景気良くかましてやるぞ!撃龍槍用意!」
撃龍槍、本来ならば対巨龍兵器の切り札として使用することが多いが、ラヴィエンテは機動力に優れ、一度意識されれば二度と当たることは無い。ならば、まずは撃龍槍を用いて不意をつく。我々が脅威だと認識させる。
「用意、放て!!」
蒸気機関で駆動する巨大な槍は、回転しながらラヴィエンテの装甲に突き刺さる。威力は絶大で、血飛沫が大量に飛散する。
頭部をを天高く上げ怯む。相当効いたようだ。
「まずは一発だ。そのまま継続して砲撃するぞ!」
しかし、ラヴィエンテの頭部は下がらず、高度を増していく。上空からの突撃の合図だ。
「……!!退避だ!退避しろ!!!」
天より落ちる巨大な一対の角が、地面を穿つ。その衝撃で狩人達は吹き飛ばされる。
「……!!!クソッタレ!潜りやがった!」
ラヴィエンテは地中に潜る事が出来る。轟音を鳴らしながら、地面の中を泳ぎ回る。
「地面から突き上げくるぞ!離れろ!」
地中からの攻撃では、折角の錨も意味を成さない。少しづつ、少しづつではあるが、人類の生存領域は狭まっていく。
ラヴィエンテがハンター達を囲うように這い回る。その余りのエネルギーに地面は隆起し、途轍も無い振動が狩人達を襲った。
「地形が丸ごと変わりやがる。これが大巌竜か……!」
絶島の主、ラヴィエンテ。それは、天災と呼ぶに相応しいほどの力を持っていた。
はい、フルトン回収装置です。待たせたな