Monster Hunter:Wind Ark   作:カリオロス亜種

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絶島の主③

太陽が天に登り、しかしその光は地上に届く事なく、代わりに降り注ぐのはにわか雨であった──

 

冷たい水滴がそこに居る人々の士気、気力、そして命をも奪いさらんとしている。

地面がぬかるみ初め、足が取られる。さらにこのままではラヴィエンテが再び地中から攻撃を繰り出す事が可能になるかもしれない。

 

「まずいな、このまま雨が強まれば湿気で火薬がダメになる。ボウガンの火薬や、砲弾とバリスタだってそうだ……!」

「ただでさえ先の見えない消耗戦なのに……!!」

 

飛空船が撤退してから半刻、戦意を喪失した者から蹂躙され、ハンター達の数は残り6割程になっている。

縦横無尽に突進する巨体を錨の影で辛うじてやり過ごし、効いている実感の薄い兵器を撃ち続ける。気力も体力も弾薬も、もう底を尽きかけていた……

 

作戦開始から戦い続けている第一陣のハンター達が、死に物狂いで肉薄し攻撃を加え、それに感化された者達が再び武器を握って応戦している。それが出来なかった者は既にこの世に居ない。

 

「……自分に考えがある、皆聞いてくれ!」

 

未だ折れずに各所に指示を飛ばしていたシウニが、まだ生き残っているハンター達に向けて呼びかける。

 

「このままだと先に終わるのは俺たちだ、この雨のせいで火薬ももうじきダメになる!そうなる前に大きな一撃をぶつける!」

 

「大きな一撃ってなんだ!俺たちに残されてる手段はもう砲撃ぐらいだぞ!」

「まだ一つだけ残っている!撃龍槍は再度使用可能だ!!」

「撃龍槍か……だがどうやって当てる……!なまじ初撃が効いたせいで常に警戒されて当たらねぇぞ!」

「全員で囮になって注意を引きつける!どうせこのままだと全滅だ、撃龍槍を当てるか全員同時にすり潰されて終わるかだ……!!!」

 

生き残った狩人達による最後の策。辛うじて無事に残っている撃龍槍の近くに砲台を引っ張り全員が集まり、その一発に全てを賭ける作戦だ。

 

「急げ!撃龍槍の周りに大砲を並べろ!」

 

泥濘によって動かすのにも苦労する砲台をなんとか近くに並べ、砲弾を込める。

大巌竜が射角に入るタイミングを待つ……

 

「まだだ、………今だ撃て!!」

 

射角に入った瞬間の号令により、一斉に砲弾が放たれる。狙い通り命中した砲弾は7割、残りは至近弾だったが、それでも引き付ける効果は果たした。

ラヴィエンテが目の前に立ちはだかる羽虫を終わらせる為に、真っ直ぐに突っ込む

 

「次が本命の撃龍槍だ、その一撃に全てを託すぞ……!!」

 

峰のような巨体による超大質量の突進。撃龍槍によって軌道をそらさなければ、確実に死ぬ。

 

ハンター達は確実な死が真正面から迫ってくる状況を受け入れ、真っ向から睨み返した。残っているのは歴戦の狩人だけだ。

 

「………!おいまさか、クソっ!やはり警戒されているか……!!」

「あれじゃ撃龍槍も当たらないよ……!」

「嘘だろ……!!!」

「一旦退避を……ッ」

 

ラヴィエンテは学んでいた。彼らは只では死なない事を。

空に浮かぶ彼らの巣も、ただ破壊される事を受け入れるだけではなかった。故に確実に、これ以上手痛い反撃を受けないように。

突進を直前で辞め、天に跳ね上がり上空から落ちる。狩人達は退避する間もなく、ある者は吹き飛ばされ、ある者はそのまま下敷きとなった。

 

──まだ生きている。だが息が出来ない。

背中を強く打った。視界が激しく回り、今にも倒れそうだ。

……だが、今度こそただで意識を手放す訳にはいかない。助けられているだけではダメだ、次こそは共に並んで……!

 

「「うおおオオッッ!」」

 

上空から叩きつけ、撃龍槍を破壊したラヴィエンテ。手が届く範囲にまで下がった頭部に向けて、死に物狂いで走った二人のハンター、シウニとラムの同時攻撃によって、無防備な右眼を深く傷付ける。

 

「グオオオォォォォォッッ!!!」

 

今までで一番大きな悲鳴をあげたラヴィエンテが、しかしすぐに距離を取り、自身の眼を奪った憎き二匹をすり潰そうと突進を繰り出す。シウニは呼吸がままならず地に倒れ込み、ラムも先の一撃の直後に意識を失い地に伏せている。迎撃する撃龍槍ももう無い。

 

──まずい、体が動かない。何も見えない……身体に伝わる痛い程の振動と、全てを破壊するかのような轟音が近付いてくる。

 

先程よりもより確実な死が、自身に迫り来る。

 

 

瞬間、とんでもない爆発が発生し、続けて発生した衝撃波が全てを吹き飛ばした。

人も、曇天も、大巌竜でさえも──

 

 

──未だ収まらぬ爆煙とキノコ雲の影から、撤退した筈の飛空船が現れた。

しかしその飛空船は高度を維持出来ず、地面に不時着する。甲板に取り付けられた"それ"は、未だに赤熱して煙を吐いていた。

 

「ぐ……あれは……あの爆発は、破龍砲か……!?」

 

意識を取り戻したハンター達が目にした光景は、ラヴィエンテが居たはずの箇所から立ち上る爆煙と、直後に身体を叩いた衝撃波であった。

 

破龍砲。凄まじい量の火薬を用いた、巨龍砲の亜種。高密度滅龍炭を用いない代わりに、ありったけの火薬を装填した砲弾は、凄まじい破壊力を誇る。

 

「ラヴィエンテは、どうなった……?」

「……ダメだ、死んでない!まだ生きている……!」

 

尋常ではないダメージを負ったラヴィエンテは、しかし辛うじて生き延び、弱々しい咆哮を上げ、生き残ったハンター達に視線を向けた。

 

「……もう戦う力は残ってない、それはお前も同じなはずだ……!」

 

しばらくの間睨み合いが続き、そしてラヴィエンテは這う這うの体で別の方向に向かった。

人の気配がしない方に。これ以上危害を加えられないように。

 

「撃、退………」

 

かくして、タンジアは崩壊を免れた。

……あまりにも夥しい犠牲の上に。

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