Monster Hunter:Wind Ark 作:カリオロス亜種
聴きなれない鳥の鳴き声の中で微睡み、ハイドラナイフの特有の匂いで目が覚める。これはいつもの感覚だ。
「……おはようございます、その後問題はありませんか?」
「おう、何事も無かったよ。ほら、見えてきたぜ」
そう言われ荷車から身を乗り出すと、遠方に巨大な外壁に囲まれた街が見えた。
目的の地、ジォ・ワンドレオである。
「あれがジォ・ワンドレオ……想像していたよりもでかい」
「そうだろう?内側に入ればきっと旦那ビックリするぜ」
順調に行商ルートを通過した交易商一行は、ジォ・ワンドレオ壁内に足を進める。
「あれは……巨大なイカダ……?」
壁内に辿り着いてすぐ目の前に広がった景色を見て抱いた感想は、きっとこの地に初めて来た者達の多くと共通したものだっただろう。
「そうさ、あれこそがこの街の市場だ」
巨大な湖の上に浮かぶイカダのように建造された構造物、その上に発展した巨大な市場。
これこそがこの地の真の姿であった。
「じゃあな、旦那に頼んだ仕事はこれで終わりだ。また機会があればよろしく頼むぜ?」
そう明るく笑いながら声をかけてくれたのは数日間ずっと一緒だった行商人、ラインさんだ。
「ありがとうございました、ラインさん、あなた達のおかげでこの街まで来れた」
「旦那の捜し物はこれからだろう?幸運を祈ってるぜ」
ライン達交易商一行と別れたシウニは、まず宿泊先を探すことにした。
この街でハンターとして活動しつつアノルパティスに関する情報を収集する、それが当面の目標だった。
「とりあえず宿だな。ハンターズギルドへ登録もしておかないと」
ギラギラと眩しい蒼天の下、シウニは街の人に聞き込みをしつつ宿泊先の宿を探し歩いた。
「宿はよし、後はギルドだが……」
聞き込みをしていた時、ある情報を耳にした。
「あんたハンターさんだね?ジォ・ワンドレオへいらっしゃい、今この街は狩人が大勢出払っててねぇ、少しでも人手が増えるのは安心なのよ」
「何かあったんですか?」
「なんでも近頃周辺のモンスター達の動きが活発になりつつあるって話でね、ここ数日は落ち着いてるようだけど、少し前なんて交易に支障をきたす程で、ドンドルマに応援要請を出した程だったそうよ」
生態系に異変。ドンドルマに応援を要請したということは、この街にいるハンターだけでは対処しきれなかったという事を指している。
小型や中型のモンスターのみならず、リオレウスなどの生態系の主も例外では無いという事だろう。
一先ず、情報収集も兼ねてハンターズギルドに向かうことにした。
ワンドレオのハンターズギルドは、情報が集まりやすい活気のある市場に設けられていて、大勢の人で賑わっている。
人は多いが閉塞的ではなく、むしろ開放感のある景色だ。
「こんにちは、他の場所からいらっしゃったハンターさんですかね?」
「はい、シウニ・フリューリンといいます」
「確認します、ハンターランクは2、護衛依頼一件達成済みですね!」
快活な竜人の受付嬢がギルドカードを確認する。
おそらくこのギルドはドンドルマの支部なのだろう。
「すみません、ここ数日のモンスターの情報について伺いたいのですが」
「それがですね……数日前まで各所で縄張りの外で気が立っているモンスターが頻出しててんやわんやだったんですけど、ここ一、二日はそれが嘘のように静まり返ってるんです」
「収まった……という事なのでしょうか」
「それにしては少し急すぎるんですよね……どこか不自然な静寂といいますか……その関係で今ギルドに届いている依頼もごく小数となっています」
「ありがとうございます、それともうひとつ、色々な情報が集まる場所はどこかにありますか?」
「情報ですか?そうですね、ここは色んな場所から来訪される方がいらっしゃるので、すぐ近くの酒場でも充分情報が集まると思いますよ!」
「どうも、行ってみます。」
「はい!ハンターズギルドは貴方の活躍を期待しています!」
狩場の状況に関してはもう少し詳しく知りたい、そのためには現地に赴いたハンター達に直接聞くのがいいだろうと判断した。
その後、酒場で聞き込みを行い、得た情報が三つ。
一つは、モンスター達は総じて気が立った状態で居たということ。
二つ目は、現在のモンスター達の縄張りが変化してどこに何がいるかがわからなくなってしまっているということ。
そして三つ目、今現在ガブラスの出現は確認されていないということ。
──古龍と呼ばれる存在が居る。
それは自然現象の化身とも、災害の象徴とも呼ばれ、ひとたび現れるだけで生態系や環境に甚大な被害をもたらす強大な存在。
ガブラスは、それらの出現の前兆として現れる事が多いのだという。
今回はそれらの出現は見られず、古龍特有の環境に干渉する能力のようなものも確認されていないため、古龍種が接近しているといった可能性は低いということらしい。
「……とりあえず、しばらくは縄張りの調査って事になるだろうな」
縄張りの調査。どこに何がいて、どこの群れが何と睨み合っているのか。
これらが把握できていなければ、安易にモンスターを討伐した際に二次被害を産みかねない。狩猟環境が不安定ということだ。
「手練のハンターなら今の狩場でも対処が出来るだろうけど、ある程度の縄張りが判明するまでは狩場に行くのも危ないな……」
しばらくはドンドルマから応援に来たハンター達も含めて狩猟環境の聞き込みをしつつ、アノルパティスに関する情報を集める事にした。
ジォ・ワンドレオは本当に東西様々な地方から人が集まっているようで、得られる情報もまた様々だった。
中にはメゼポルタという、ドンドルマと馴染みの深い区域で活動していたというハンターも居たのだが、生憎アノルパティスとの交戦経験は無かったようだった。
「そう簡単に宛が見つかるとも思ってなかったけど、やっぱり厳しいよな……」
ただでさえ珍しいモンスターの素材を融通してくれ、などという交渉に応じる人間はひと握りに限られる。取引の材料としてゼニーだけではどうにも弱いのだ。
「……このジオ・ワンドレオで起こっている異変に対して、何かしら貢献出来たならハンターランクの上昇も見込める、まずは上位の依頼を受けられる程にならないと交渉するにしたって役不足だ。」
シウニは、ここでグズグズしていても仕方ない、と思い立ち、縄張りの調査に参加することを決意するのであった。
ちなみにこの世界でのメゼポルタはフォンロンにあるという説を採用しています。