Monster Hunter:Wind Ark   作:カリオロス亜種

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新たなる任務④

 

 

大砂漠からバルバレを挟んだ向こう側に、大小様々な遺跡が散見される平原が果てなく広がる狩場があるという。

 

「見えてきた」

 

まず目に飛び込んで来たのは、見渡す限りの黄金の大地。吹き抜ける風は暖かく、しかし大砂漠の乾いた熱風とは違い、まるで生命を持つかのようにみずみずしく、草を、空を、遺跡の隙間を、既に枯れてしまった者たちをも乗せて力強く流れている。

ともすれば人間の遺した痕跡など直ぐさま消し去ってしまいそうな程だが、それでも確かにこの地に根付き、未だ衰えぬ存在感を放ちながらこの地と調和している。

 

自然と人工物のそれぞれが力強く"今"を彩る、そんな場所だと感じた。

 

「それじゃあ、手分けして捜し出すか。片手剣の二人はあっち側から探索してくれ」

「はいよ」

「わかりました。」

「堅苦しく話さなくてもいい、いざって時に連携が濁るからな。剣斧のあんたは俺と一緒に来てくれ。よろしくな」

「おう、よろしく」

 

シウニとラムと、酒場で知り合ったハンター二名を交えて狩猟に向かう。今回の狩猟対象は、奇猿狐 ケチャワチャと怪鳥 イャンクック。

飛来した怪鳥が吐き出す火炎液の影響で奇猿狐の気が立っているとの事だった。

 

川沿いに進んだ先、マップの表記では二番にあたるエリア。遺跡やそこに生い茂ったツタなどが絡まり、立体的な構造となっている。日陰な為か風は先程よりも少し冷たく、少しばかり火照った身体を冷やしてくれる。今一度、深呼吸をして高揚した気分を冷ややかな空気と入れ替える。相手は奇猿狐、未知の相手。油断は禁物だ。

 

「ケチャワチャは蔦が張り巡らされた地形に現れることが多いが、ここには居ないようだな……」

「もう一箇所、地図によると蔦が茂っているエリアがあるようです、そこに行ってみましょう」

「あぁ。今のうちに装備の再確認も済ませておこう、念には念をだ」

「そういえば、聞こうと思ってたんですけどその武器は片手剣……なんですか?すごく大きな盾ですね」

「これでも立派な片手剣の一種だぜ。名を『アイギスフォース』と言う。俺のやりたい戦い方を求めるうちに、コイツにたどり着いたのさ…… まぁ、詳しい戦い方は狩猟の最中で見せるよ」

 

アイギスフォース……対になっている剣とは不釣り合いな程に大きな盾だ。自身が持っている盾の二回り程の大きさになるだろうか。

 

「同じ片手剣使いのハンターからはよく揶揄われるけどな、『片手剣の良さを潰している』だの、『基本がなってない』だのと知ったような口を聞く奴も居た。だけど俺の考え方は違う。片手剣の良さって奴はそんな狭苦しいもんじゃない、もっと自由なのさ」

「自由……?」

「そう、自由だ。この武器を手に取る者の全ての個性に寄り添い、応えてくれる。そんな柔軟性を持ってるのは片手剣だけだ。そうは思わないか?」

「俺は……まだよくわからない。基本に忠実に立ち回るので精一杯なんです。」

「あんた、初めて片手剣に触れてからずっと使い続けてるクチだろう?点検の手馴れ方がそんな感じだ。」

「すごい、よくわかりましたね」

「長年同じ武器を使い込んでるんだ、きっとあんたの立ち回りにも個性が宿ってるはずだ」

 

そう話しながら、シウニ以上に手馴れた手つきでアイギスフォースの点検を終わらせる。

少々押しが強いが、この人から学べる事は多そうだ。

 

 

 

「彷徨調査隊?」

「あぁ、俺とさっきの片手剣使い、シウニはそのメンバーだ」

「彷徨の狩人……ジォ・ワンドレオを救ったとの噂を少し前に耳にした事があるな、君達がそうだったのか」

「俺は新入りだけどな、タンジアの港で立て続けに上がった"彷徨個体"の情報を受けて派遣されたらしくて、その最中に俺とシウニは出会った。アイツ、リオレイアにやられてぶっ倒れててさ。あの時はとても街を救ったハンターだとは思えなかったね」

「タンジアと言えば、つい数ヶ月前に巨大龍の襲撃があったという……あれの撃退も君達が?」

「そうだ。厳密には巨大龍じゃない。……大巌竜 ラヴィエンテだ。」

「ラヴィエンテ、だって……?確かとある島を縄張りにしている巨大な竜だったな、なぜこの大陸に……?」

「"彷徨個体"ってやつだ。特定の縄張りを持たずに各地を動き回るやたら強いモンスターで、俺たちはそれを調査してる。今はギルドの判断待ちだけどな。」

「……そんな狩人達と共に狩りを行えるのは光栄だが、聞いた限りだと片手剣の彼は実力が不明瞭だな……」

「まぁそうだな。だけど、一緒に戦ってわかった。アイツはどんな状況でも折れないんだ、怖いぐらいに。そして、時折とんでもない動きをする事がある。危なっかしいけど、あの時の動きは並のハンターを越えてたと思う。だから、あいつは大丈夫だ、多分」

「なんとも歯切れが悪いが、腕前は信頼しても良いということか?」

「まぁ、うん、多分。あれだ、噂になってるパンツ一丁で古龍を撃退した新米ハンター、あんな感じだ」

「不安になるぞ……」

 

そんな若干失礼な会話を交えつつ、怪鳥の痕跡を探し歩く。

川沿いの平原を進み、起伏の激しい丘を抜け、山の中腹へ。

 

「怪鳥……は居ないな。丸鳥なら居るけど。」

「ここまで登って痕跡のひとつも無いとなると、シウニ君達の方かもしれない。彼らもまだ交戦を開始してはいないようだが……」

 

 

 

マップの西側を探索していた片手剣使い二人は、紅葉に彩られた渓谷のエリアで、不審な影を警戒していた。

 

「あれがケチャワチャ……?」

「あぁ、そうだが、少し様子がおかしいな。外敵を警戒しているようだ。イャンクックが近くに居るかもしれない」

「仕掛けますか」

「予定通り陽動は任せてくれ、あんたは隙をついて攻撃を」

「了解」

 

ケチャワチャは耳がいい。渓谷に吹き荒ぶ風音や、紅葉が擦れる音の中でも、近づく足音は感知されてしまうだろう。

故に、走る。大きな盾を眼前に構え、真正面から距離を詰める。

 

耳聡い牙獣は、自らに接近する足音に気が付き振り向くが、眼前に飛び込んできたのは、足音からは想定できない程に大きな丸い物体。

驚き、反射的に鉤爪で引っ掻く。が、丸い物体はひらりと角度を変え、その曲面で自慢の爪をいなす。流れるように懐に入り込まれたかと思うと、鋭い痛みが連続する。堪らず飛び退くが、追撃は来ない。

目聡い牙獣は困惑する。この物体はなんだ、と。

軽い足音で急速に近づき、大きく丸い身体で鋭く刺してくる。

得体の知れない相手に集中し正体を探ろうと目を凝らしたつかの間、再び懐で痛みが走る。

何事かと視線を向けると、そこに居たのは小さな生き物だった。

なるほど、あの物体もこの生き物の仲間か。正体は看破した、騙されないぞ。

上空に飛び上がり、怒りの咆哮を上げる。

まずはあの大きな獲物を持った生き物だ、既にカタチは把握した──

 

奇猿狐がアイギスフォースの大盾に向かって滑空する。

 

「目を閉じろ!」

 

瞬間、大盾が翻り、その内側に保持された閃光玉が炸裂する。

通常、激上し顔を耳で覆った状態のケチャワチャに閃光玉は効果が薄いとされている。

しかし、大盾を強く意識させた事、手元と視線を徹底して見せなかった事、そして何より、盾が眼前に迫る程の距離で直接炸裂させた事によって、奇猿狐の視力を奪う事に成功した。

 

慣性で倒れ込むケチャワチャの肢体を再び翻した盾で器用にいなし、またも流れるように爪の根元に三撃、打ち付けるように斬りつけた。

 

「すごい……」

「今だ!存分に斬りつけてやれ!」

 

獲物に対する深い考察と、武器の特性を最大限活かした立ち回り。

これが彼の個性、上位ハンター、イザナの実力であった。

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