Monster Hunter:Wind Ark   作:カリオロス亜種

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燃えるような銀朱の天蓋の下にありながら、あらゆる光をただ真っ直ぐに透き通らせる透明の大気に、あらゆる光を喰らい尽す黒雷が轟く。
鮮烈に弾けた雷は尚も霧散せず、その黒銀の煌めきをも喰らわせろと言わんばかりに、赫を覗かせ燻り続ける──




新たなる任務⑦

アルヴォーラアクスト……龍属性を宿しているとは聞いていたが、あれ程の出力とは。

 

「なんだあの武器は……?スラッシュアックスに見えるが、使い方も出力も今まで見た事ねぇ。俺より遠い位置からぶっ飛んで行きやがった」

 

足の速さには自信があったものの結果的にドベになった事に若干の驚きを見せたが、おかげで剣斧使いの彼がどんな戦い方をするかを見る事が出来た。

なるほど、ありゃ凄まじい。

 

移動や回避、攻撃の全てに変形を組み込み、そのイカれた出力から推進力を得る……

威力は凄まじいが、その反面常に剣状態で振り回す使い方はリスクが高くて出来ないって訳だな。

 

「くっそ、こっち向け!」

 

ラムの猛攻は流石に無視できないようで、煩わしそうに応戦はしているものの、狙いは依然変わらない様子だ。

 

「……そんなに恨まれる謂れは無いと思うんだが……。ラム、イザナさん!もう少しで設置完了だ!」

「うひ〜、先にオーバーヒートしそうだ」

「おう、気にせず攻めまくれ!動きは止めてやる!」

 

ラムの攻撃のインパクトに伴う爆風の隙間を縫うように接近し、イカしたクチバシ目掛けて全力バッシュ。

巨大な盾は立派な鈍器だ。

振り上げた鈍器をそのまま振り下ろし、その勢いで縦に三回転、勢いが乗り再び高く上がったソレに、全体重をのせてぶちかます。

 

これをモロに食らったモンスターはまず立っていられない。

バランスを崩して転倒、これでは反撃もクソも無い。

 

「いっちょあがり!デカいのぶちかましてやりな!」

「ナイスだ変な片手剣のおっさん!」

「しばくぞクソガキ!」

 

断じて変な片手剣でもおっさんという歳でも無い。断じて………

 

「はァッ……!!!」

 

今度は斧を下段に構えて、重心を低く構える。

今なら攻撃を避ける事に意識を割く必要は無い。だから、思いっきり踏ん張って剣を振る……!

 

振り上げと同時に斧から剣に変形させ、ガラ空きの懐を晒して藻掻くイャンガルルガ目掛けて斬りつけまくる。鋭く息を吐き、エネルギーを噴出させながらの力任せの滅多斬り。

相当な硬さを誇る甲殻だがこれには流石に耐えきれず、ド派手に砕けては血を吹き出している。……あれは、そのまま倒してしまえるかもしれない。

 

しかし、多大な傷を負い苦しそうに唸りながらも何とか体制を持ち直すイャンガルルガ。イザナさんの脳天バッシュに、ラムの渾身の乱打を受けても尚立ち上がるか……

小柄な鳥竜種とは思えない程のタフネス、決して少なくない量の血を流しながらも、依然として闘志は衰えないようだ。

 

ガキン!と硬質な音を立てて、強制的に斧状態に戻る。継戦を度外視した出力を放出し続けていたので、流石にオーバーヒートは避けられない。

 

“グワアアアァァァッ!!!”

 

脚をバタつかせ、飛び跳ねながら叫び声を上げる。これで少しは弱ってくれていれば楽だったのだが、むしろ怒りが頂点に達してしまっている。わかってはいたが、やはり一筋縄では行かない……

 

「あれを喰らっても逃げる素振りすら見せないか……!話に聞く通り、常識破りだな……」

「痛みとか感じねぇのか?おっかねぇ」

「冷却が完了するまでおれは暫く攻勢に出れないぞ……!設置出来たか!」

「あぁ、おかげで完了した!皆こちらに走って来てくれ!」

 

シビレ罠に加えて大タル爆弾G、相当な大きさで重量もある為、設置には時間を要したが、それに見合うだけの威力は見込める代物だ。

あとは、悟られないように罠にかける必要がある。

 

「あくまでもシウニ君か!」

 

……あれだけ三人に痛めつけられても何故か狙いは俺らしい……。いくら何でも不自然な執着、引っかかりはするがこれを利用しない手は無い。

 

「皆、目を閉じて耳を塞ぐ準備を!突進の勢いを利用して閃光玉と音響弾で怯ませて罠にかける!」

 

この距離ならばブレスを放たれても避け切れる。それは相手としても何度か避けられている為承知しているハズだ。

案の定こちらに向かって急接近する黒狼鳥。突進ではなく飛行による接近だが、直接攻撃を仕掛けてくる所までは想定通り。

 

「後は、タイミング……!」

 

奴は間抜けでは無い。ずっとこっちを見ていたならば、自分がせっせと仕掛けていた代物にも気付いているだろう。だからこそ、ブレーキをかけられる前に不意を突く。

イザナさんがしていたように、盾で音響弾を隠し、左手で閃光玉を構え、引き付ける。

 

「今だ!」

 

イャンガルルガとシウニとシビレ罠、その三点が直線になり、滑空の軌道の軸が真正面を捉えたこの瞬間に、まだ見せていない一発目の閃光玉を炸裂させる──効果アリだ。

滑空の勢いが止まるわけではない為、ブレーキは間に合わない。勢い、標的が視認できないイャンガルルガは左右どちらかに逸れようとするハズ、それをさせない為にすかさず音響弾で怯ませ……っ──!!

 

コイツ……!横に逸れるどころか、勘で狙いを……!?

 

「……!!!!」

 

全力で身を躱して、盾で……受け流せるか……!?

 

夥しい程の戦闘経験故か、繰り出した一撃は正確にシウニの座標を捉え、咄嗟に前に出した盾をガガガッと削る。凄まじい衝撃に晒されるが何とか、芯は逸らした……!

 

「づ……くっ………!!!」

「……!無事か!」

 

捨て身のサマーソルト、直撃でなくとも相当な威力だ。だが──

 

「……よし、、!」

 

流石にバランスを失ったようで、不格好に墜落しそのまま罠の餌食に。

 

「上出来だ!距離は取れるか!?」

「起爆は任せろ!印弾で爆破する!」

「ッ……!!頼みます!」

 

スニークロッドを地面に突き立て、跳躍。狙いは大タル……!

 

ガラガラガラ!と内部機構が音を立て、狙いを定めた切っ先から印弾が発射される。

瞬く間に連鎖爆発を起こした複数の大タル爆弾Gの爆風が、身動きの取れないイャンガルルガを容赦無く巻き込む。

 

火薬の臭いの中に、むせ返りそうな程の鉄の臭いが混じっている……。最低でも致命傷、即死も十分有り得るが、いずれにせよ命がある限り暴れ尽くすであろう事は容易に想定できた。

他の三人も同じ考えのようで、誰一人油断はしていない。

 

「……まだ、生きてるな」

 

耳も翼もボロボロで、至る所から血を流しながらも、地に伏せる事無く立っている。

身体が頑丈と言う以上に、狂気じみた執念が倒れる事を許さないのだろう。

 

誰一人、油断はしていなかった。

 

 

──咆哮。空気が張り詰め、天地が引っ繰り返るような錯覚を起こす程の、生き物から発せられたとは思えないような、大爆音。

 

唐突に意識が飛びかけ、反射的に身体を丸める。突然発生したそれが、音によるものだと気付くまで3秒。

 

「!!!!……避けろ!シウニ!!!」

 

その音を発生させた張本人が今まさに目の前で死に体となっていた黒狼鳥によるものだという事実に辿り着くまで2秒。その数秒の混乱が命取りだった。

 

次の瞬間、身体は宙に浮いていた。

なにかの比喩では無く、文字通りに。

 

イャンガルルガに、掴まれている……!

 

 

 

転落死。確実な死が近付いている。

 

背筋が、文字通りに凍りついた気がした。

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