Monster Hunter:Wind Ark 作:カリオロス亜種
またぼちぼち更新していきます。
リュウを屠る剣①
少し時は戻り、調査隊がバルバレに到着した頃に遡る──
賑やかなバルバレの大通りに、とある屋台のキッチンからなんとも言えない良い匂いが漂う。
「ニャハ。そんなに食べると倒れちゃうニャル」
「これ、いくらでも食べられるよ!」
「母ちゃん頑張っちゃうニャル。でも今はご生憎、食材が足りないからこれ以上の注文は受け付けられないニャルよ」
「流石にデザートまで頼んだ後に追加で注文はしないよ……!食材が足りないって、何かあったの?」
「ニャ。タル屋に頼んだ食材が遺跡平原でクンチュウにソシされて立ち往生ニャル。大食らいのハンター、マンプクになったらひと狩り行ってくれんニャルか?」
「クンチュウ?」
「ムシニャル。ムシ。頼まれてくれるなら、ムシのソシをよろしくニャル」
「うへぇ、ムシかぁ……苦手だけど、美味しい料理長さんの為!その依頼受けるよ!」
「ニャハハ。私は美味しくないニャルよ。それじゃあよろしくニャル」
依頼内容は、"盾虫"クンチュウ8匹の討伐。
初めて場所での初めての相手だが、肩慣らしには丁度いいクエストだ。
「そのクエスト、わたしも御一緒していいですか?あ、モスポークとココットライスでお願いします!」
そう言いつつ席に着いた彼女は、どうやら同業者のようだ。
真新しい白の装備を身に纏い、精鋭討伐隊盾斧を背に担いでいる。もしかして、新米さんだろうか?
「あ、いきなりごめんなさい……!まだここに来たばっかりで、ハンターさんらしき人が見えたのでつい」
「こんにちは、もしかして、ハンター登録をしたばっかりの人かな?よろしく!シャナと言います!」
「よろしくお願いします、私は──」
《ガァァァンッ!!ガァァァンッ!!》
「わ、びっくりした。酒場の方からだよね!?」
「フフフ、二人とも驚きすぎニャル、ところで調理法は何にするニャル?」
「えぇと、こんがり焼いてください!」
「承ったニャル」
「クンチュウの討伐に一緒に行ってくれるんだよね?大歓迎だよ、よろしくね!」
「はい、不束者ですがよろしくお願いします!」
どうやら彼女はガチガチに緊張しているらしい。複数人でクエストに向かうのも、もしかすると初めてなのかもしれない……
「……ム?オマエニャルね。パンツ一丁で、ダレン・モーランを追い払ったというウワサのハンターは。フムフム。ずいぶんと夕刊ニャルね。違う、勇敢」
「……え!?貴女が……!??」
あの巨大な龍、ダレン・モーランをなんの装備も付けずに退けた……?
「ホントに無我夢中で、役に立たなきゃという一心で大砲を込めてただけですよ……」
「凄いよ!巨大龍との戦いって、ハンターでも竦み上がって全く動けなくなる人が多いんだよ?」
「そういうものですか」
「オマエサマの度胸、カンシンニャル。ムシのソシ、よろしく頼むニャルよ」
「はい!できる限り頑張ります!」
かくして、噂のハンターがクンチュウの狩猟クエストに同行する事となった。
意外にも大食らいのようで、デザートを頼んだ後に追加で注文をしようとしていた……
準備を整えるために、会話を交えつつ大通りを進む。大通りは大勢の人で賑わい、活気に溢れていた。
「改めまして、シャナと言います!堅苦しく話さなくても大丈夫だよ!よろしくね!」
「よ、よろしく。我らの団というキャラバンに所属したハンターです。シャナちゃんは太刀を使うの?」
「そうだよ!そっちはチャージアックス…だっけ?最近造られた武器だよね」
「そう、なのかな。えっと、このチャージアックスと操虫棍が扱える武器だね」
「二種類も扱えるの!?それって凄いことだよ!」
「訓練所でオススメされたのがこの2つだったから……」
この子、実はかなりのポテンシャルを秘めている……?
「ふむふむ、甲虫種の書に書かれている内容としては、甲殻が非常に堅くて、体を丸めて外敵から身を守る……らしい」
「体を丸める……赤甲獣みたいな感じかな」
「そうかも、新米さんなのにラングロトラを知ってるんだね」
「はい、一通り勉強したつもりです」
なるほど、頼りになりそうだね。
心做しか得意気そうだ。
「堅い甲殻は私のチャージアックスに任せて、多分盾突きで崩せるから」
「りょうかい、任せるよ!」
聞けば、他の狩人と共に狩りに向かうのは初めてとの事。
先輩として、きちんとリードしてあげなければ。
必要な雑貨の購入を済ませ、クエストを受注し、狩場である遺跡平原の奥地に向かう。
照り付ける太陽とは裏腹に、吹き抜ける風はとても涼しく、爽やかだ。
鮮やかな風景の色彩も相まって、とても晴れやかな狩場だと感じた。新米の彼女も、これから始まる冒険の予感に心を躍らせているようだ。
「すごい……私、やっとハンターになれたんだ」
「すごいねぇ、遺跡平原、こんなに綺麗なんだ……!」
雄大な自然に胸が高鳴る。この大自然の中で我々は狩人として生きるのだ。
「わぁ、それがシャナちゃんの武器」
「そう、飛竜刀だよ!」
「飛竜……リオレウス……!」
「憧れなんだね」
「小さい頃に本で知って、ずっと憧れてました。これが、本物の火竜の甲殻……!」
ハンターの武具とは、他の何よりも明確な、モンスターを狩猟した証。その姿は言葉よりも雄弁に威容を物語る。
「本当に居るんだ、リオレウス。本当にあった……飛竜刀!」
「憧れのモンスターか、実は私にも居るんだ。復讐とか覚悟とか、そういう人間の都合なんて意に返さない程の強大な力強さ……狩人として対峙する立場でもやっぱり憧れちゃうよね」
どうしたって雄大な大自然。いくら立ち向かおうと、憧れてしまうものだ。
……これは一体どういう事だろう。
討伐対象のクンチュウはおろか、それらを捕食する生態を持つイャンクックまでもが地に伏せている。
明らかに尋常ではない光景に、二人して唖然とする。
「あれはイャンクック……?し、死んでる……?」
「みたいだね……凶暴なモンスターがこの場を荒らしたんだと思う、クエストは中断して気をつけて戻るよ!今はギルドに報告することが一番の任務だからね」
「は、はい!」
異様な光景に立ち竦んでしまっているようだ。無理もない……
ここでは私が先輩なんだ、しっかりしなければ。
この遺跡平原で何が起こっているのか、出来ればこの場で確かめたいけれど、相方はまだ新米のハンターさんだ。なによりも命を最優先にしよう。
「おそらくあのイャンクックが逃げてきたエリア4番は避けて、ベースキャンプまで戻るよ」
「イャンクックが倒されるという事は、同じように飛行能力を持った相手……それとも遠距離攻撃の手段を持った強力なモンスター……?捕食された形跡は無かったけど、その場にいたクンチュウも死んでいたのはなんで……?」
「嫌な予感がするね、閃光玉を準備しながら走ろう」
新米とは思えない彼女の考察を聞いて思い当たるモンスターと言えば、見境なく襲いかかる黒い鳥竜種……そうだとしたら、一刻も早くギルドに知らせなくては。
──なんの前触れもなく、遺跡平原の空が赫に染まる。
「!?」
「なに、今の赤い光……?」
ふと、エリア4の方向を見ると、激しいスパークが遺跡の上で散っているのが確認できた。
「……ベースキャンプはすぐそこ、貴女は先に戻ってて!一刻も早く正体を突き止めなきゃ……!」
「そんな、シャナさんも戻りましょう!」
「あんな光を発生させられるとすれば、その存在は一つしかないよ」
「……まさか、古龍種。なおさら危険ですよ!行くなら私も一緒に!」
「ダメだよ、私だって立ち向かうつもりは無いよ、ただ、何がいるのかをすぐさま確かめて報告しないと、被害が計り知れなくなる……!貴女は帰りの竜車の用意を!」
「……わかりました、どうか気をつけて……!」
そう、あんな芸当が可能なのは古龍種をもって他に無い。周辺の生物が死んでいたのは、もしかすると相当気がたっている個体である可能性がある。この場で一番早く到達できる上位ハンターの私が確認しないとダメだ……!