Monster Hunter:Wind Ark   作:カリオロス亜種

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リュウを屠る剣③

 

 

 

「ムシのソシ、ご苦労サマニャル。タルのアイルーもブジ到着ニャ」

「無事に配達されたんですね、良かったです!ただ、私たちがクンチュウを追い払ったわけでは無いんですけど……」

「ム?オマエサマ方じゃない?不思議ニャル。タルのアイルーは快適走行だと言っとったニャルよ」

「それが……」

 

今回のクエストで発生した異常事態。不可解な状況が重なり合い、説明はかなり難しい……

ただ、あの赤い閃光の後しばらくは大型モンスターや小型のモンスター、環境生物までもが姿を消したようだ。

 

「フム、噂のまつ毛のハンターと言えども大変だったニャルか」

「まつ毛のハンター!?うぅ、どんどん変な呼ばれ方が増えてる……」

 

ハンターになる為に乗った船で古龍を追い払い、その後初めての狩猟場が異常事態の連続。

 

「ハンターってこんなに大変なの……?」

「ウフフ。旦那はツいてるニャルね」

「憑いてる……??」

「ところで、もう一人のお得意様も大変の対処ニャルか?」

「は、はい。今回はシャナさんの方が大変だったので…… 今回の件で中心に居たのが仲間の人達だったみたいで、今はお見舞いだと思います」

「あの食い意地娘が顔を出さないとは、実に大変ニャル」

 

辺りにはこのお店以外にも露店で賑わい、それぞれから美味しそうな匂いと共に活気のある話し声が耳に届いてくる。これだけ多くのお店が並んでいるというのに、自分のお店に食べにくると信じて疑わない様子に少しクスッとくる。

 

「やっぱり古龍だろ?生物が丸ごと見かけなくなるなんて古龍以外に無いだろ」

「いや、さっき酒場に寄った時点でもギルドから古龍の目撃情報は出て無かった、天候も異常ないようだしな」

「まぁ、古龍なんて出ないに越したことはないがな……」

 

日が落ちて暫く経った現在、例の件は既に広まっており、バルバレ中の何処を歩いてもその噂が聞こえてくる。ダレン・モーランの接近も含めたここ数日の出来事は普通ではない珍しい尽くしのようだ。

 

「とにかく、いま私が出来ることについて団長と話し合わなきゃ」

 

自身の所属するキャラバン、我らの団の団長。

想定外が続いた初陣で疲れ切った私の顔を見るなり、何はともあれまずはメシだ!と屋台の方向に突き飛ばされた。

おかげでお腹も満たされたし、そろそろ戻らなきゃ。

 

 

 

「しかし、おまえってしょっちゅう武器壊してるよな……」

「急に言い出すことがそれかよ……」

 

てっきり傷の深い自分を気遣って夜遅くまで残ってくれているのかと思っていたのだが、ブレないやつだな、君。

 

「最初に会った時も剣と盾で別のモンスターの素材だったし、狩りの時の動きも所々危なっかしいもんな、いっその事デカい武器を使った方が慎重に動けるんじゃないか?ちょうど使えそうな鉱石もあるしさ」

「ずっと使ってきた武器だから、今変えてもまともな戦力になるまでかなりかかってしまう。それに、サポートに徹するにしても片手剣が一番だ」

「戦力ね……じゃあやっぱりアレ使うのか?」

「一先ず、加工屋に実践に耐えられる代物なのかどうかを見てもらうよ。最悪イャンガルルガの素材で片手剣を作る事だって出来る」

「じゃあ明日にでも加工屋のおっちゃんの所に行くか」

「さすがにまだ歩けないぞ」

「肩を担いでならいけるって。一人にするとすぐ暗い顔してるもんな、ベッドの上で考え込むよりはいいだろ?」

 

やっぱり、ラムなりに気遣ってくれているようだ。

 

「そうだ、どうせ片手剣ならイザナのおっさんにもアドバイスして貰おうぜ。というかおまえもあのデカい盾の使い方を真似してみたらどうだ?」

「たしかに、彼の立ち回りは一つの完成系だった」

「多少重りがある方がムチャしないだろってな」

「好きで無茶してる訳じゃないんだが……」

 

無謀な無茶には限界がある。別のアプローチを試すにはいい機会か。

 

 

 

赤い光の事件から一夜明け、日が昇り始めた辺りからバルバレの各所でも徐々に動きが増えていた。

大通りではキャラバンの一団が荷支度を進め、各キャラバンを連結させて移動の準備を進めている。

話を聞くと、「今回の騒動の原因がなんであれ、下手に動けない事態になる前に出立するのが吉」と昨夜のうちに話していたようで、予定を早めてバルバレを離れる事にしたようだ。

バルバレギルドは調査の為にしばらくこの地に残る方針ではあるものの、商人たちは危険な状況で留まる理由もない。

無理をしてでも早々に加工屋を訪ねるのは正解だったな。

 

「おいおい、あんたボロッボロなのに無理すんなって」

「キャラバンの人達がいつまでここに残るかわからないので、今のうちに加工屋にも顔を出しておきたくて」

「職人もビビるぞ、顔を見るなりキャラバンごと退散するんじゃねぇか……?」

「ベラータとイザナはギルドに残るのか?」

「あぁ、オッサンは肝が据わってんだよ。というか残るヤツが少なすぎだ、ガキンチョの手も借りたいんだが、あんたたちはどう動く気なんだ?」

「根に持ちすぎだろ……おれ達と同じ調査隊の仲間があとでギルドマスターとその辺を話し合うらしいんだけど、おれ達二人の用事は加工屋の方だ」

 

じゃあなんで重病人を引っ張ってギルドまで来てんだコイツとでも言いたげな顔をしているイザナに事情を説明し、2人がかりで担ぎあげられながら加工屋に向かう……

 

幸いラムがお世話になったという加工屋の一団はまだバルバレを発ってはいなかったようで、キャラバンのメンバーらしきハンターと竜人の加工担当が武器の点検を行っている様子だった。

 

「おはよう加工屋のおっちゃん、まだバルバレに居て助かったぜ」

「…………よう。相変わらず元気そうでなによりだ」

 

凄く喋り出しに間があった。2人がかりで包帯まみれの人間を担ぎながら武具の加工屋に立ち寄っている光景が展開されているので無理もない。

 

「き、急患……?あ、その制服、もしかしてシャナさんのお仲間ですか?」

「うん?あぁ、同じ調査隊の仲間だぞ、この包帯まみれもメンバーだ」

「そうなんですね!私、ここのキャラバンに拾われたばかりのハンターです。昨日の遺跡平原が初陣だったのでまだわかってないんですけど、ハンターさんって怪我したら加工屋に来るものなんですか……?」

「…………普通は医者にかかるものだぞ」

「いや違くて、その昨日の一件でコイツの武器が壊れちゃったんだよ、それで色々あってよくわからん剣が手に入ったから使えるものなのか見て欲しいんだ」

「昨日の……あの現場にあなた達もいらっしゃったんですね」

「よう嬢ちゃん、あんたも災難だったな。まさかあの意味不明な環境が初陣とは」

「イザナさん、昨日ぶりです!……もしかして、あの時言っていた黒狼鳥に連れていかれた人っていうのがその方ですか?」

 

あの時、シャナさんが言っていた新人のハンターは彼女の事か。彼女がいつでもギルドへ帰還出来るように準備を整えてくれたお陰で速やかに救援要請が届いたと聞いている。間接的にだが命の恩人だ。

 

「どうも、シャナさんから話は聞いてました。……イザナさん、恥ずかしいので降ろしてください」

「ろくに立てねぇのに恥ずかしがってる場合かよ……」

 

どうにか尊厳を保てる姿勢で腰を下ろし、例の剣を取り出し加工担当に渡す。どうやら元から寡黙な彼だが、緑翠の刀身を見るなり目に見えて顔つきが変わる。

 

「…………これが件の剣か、こんなものは……見た事がない」

「一種の祭具のようなものだと思います、故郷で似た形のものがあるので」

「耐久力は……申し分ないようだ。そしてなにより、相当な強さの龍の属性が宿っている」

「龍属性ですか、扱ったことのない属性ですね」

 

古の龍に有効とされる、相当な強さのモンスターが持ち得る事が多い特異な属性。奇しくもラムの剣斧がその属性だ。

 

「属性の現れ方としては……封龍剣に近いものだろう。盾はあるのか?」

「いえ、盾は無く、剣のみがそこにありました」

 

流石に、自身の手に渡った経緯まで赤裸々に語る勇気はない。もしギルドに入手の経緯を聞かれでもしたらありのままを話すしかないが……

 

「今回討伐した黒狼鳥の素材で盾を作っていただきたいんです。形状はオーダーメイドで頼みたいのですが……」

「なるほどな、それで俺の意見が欲しかったわけか」

「昨日、そのデカい盾と同じようなやつをシウニも使えばいいんじゃないかって話してたんだよ」

「これって片手剣の盾なんですね……私のチャージアックスに迫る大きさです」

「自分で言っちゃなんだが、重いしデカいしで扱い易いとは言えないぞ。付け焼き刃で身につくような感覚でもねぇ」

「…………黒狼鳥の素材ならば、比較的軽量で似た大きさの盾も作れるはずだ」

「そういや軽さの割に堅牢だって話だったか」

 

そう、黒狼鳥の素材であればある程度の軽量化が見込める。イザナさんほどの筋肉量を備えていない自分でも満足に扱える盾を作れるかもしれない。そして──

 

「キャラバンのハンターさん、先程点検していた大きな盾、それが噂に聞くチャージアックスと呼ばれる武器ですよね?」

「はい、精鋭討伐隊盾斧と呼ばれる、まだ扱う人が少ない武器……らしいです。私が訓練を始めた頃には既にあったので、私としては一番扱い慣れている武器なんですけどね」

 

そう、この武器種はつい最近になって開発されたものであり、これの整備や製造を行える職人もまた少ない。しかし、彼にはその技術があるようだった。

 

「例えばですが、チャージアックスの変形機構を応用して盾の大きさを可変させる仕組みは作れないでしょうか?」

「なるほど、簡単では無いが……昨日彼が持ち寄って来たあの鋼ならば実現出来るはずだ」

 

 

 

例の黒狼鳥の素材を用いた可変式の盾と、不気味な程に手に馴染む緑翠の剣。

故郷の祭具の呼び名に準え、その片手剣は祀導器【不聴】と銘打たれた。

 

 

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