Monster Hunter:Wind Ark 作:カリオロス亜種
「俺たち調査隊の中でも、扱っているのはラムぐらいですね」
龍属性とは、狩りにおいて一部の竜や古龍に非常に有効とされている属性。
狩人が扱う五属性の中でも特に謎が多く、どのような狩猟対象に有効であるかどうかといった判断も難しい為、この属性を用いる狩人の経験はそれだけで重宝される。
「ん、スラッシュアックスに内蔵されてる減龍ビンだな。コイツと違ってこの片手剣は外付けじゃないっぽいけど」
盾が完成するまでの間にも、ラムは狩猟依頼をいくつかこなしていた。さすが、既に使いこなしているようだ。
「その剣斧の出力も凄まじいが…… この片手剣はそれと同等の龍属性を宿しながらも、武器としての形を十全に保っている…… 簡単に再現出来る代物ではないな」
古代の遺物を加工した武器、獄狼竜と共生関係にあるという蟲が好んで食べる実、強大な力を持ち、多くの生命を捕食した竜の素材などに宿るこの力は、他の属性を塗りつぶすように遮断する作用があるという。
「シウニよ、属性の力に特化した片手剣ってやつは下手に振るうと自滅しかねないぞ、少なくともあの戦い方は危ねぇ」
「ですね、この武器でイャンガルルガを……突き刺した時、熱いような冷たいような感覚と同時に強い痺れがありました」
感覚が鈍くなるような反応、人体にとっても危険なのは間違いない。
「なので、新しい動きを身につけるつもりです」
ポーチから秘伝書を取り出す。ここに記されている嵐の型の中には、属性を活かした突き技を軸とした立ち回りについての記述があった。
「秘伝書……?訓練で教官に渡されるようなものとはまた違った様式ですね」
「はい、おそらく最前線で狩りをしているハンター達のノウハウを纏めたものだと思います。ここを見てください」
狩場で体感する事でしか得られない知見、技術…… 狩人を生業としている者、まさにこれから狩場に身を投じ経験を積み続けようという者にとっては、とても貴重な書物だと言える。
「盾を使って武器の属性から身を守りながら突きまくるって事か。相応の慣れが必要だろうな。そんで、盾の方もそれに耐えられる代物でないと成立しないだろうよ」
「この黒狼鳥の盾ならば……耐えうるだろう。それに、他の素材では耐えきれない機構も備えている」
そう付け加えた彼が披露した驚くべき機構は、この盾の耐久性を確かに保証するものと言えた。
「すごい、ありがとうございます……!」
「ああ、非常に…… 挑戦し甲斐のある素材だった」
不吉な様相ではあるが、武器としての性能は加工担当の彼のお墨付きだ。狩りを果たす為に、全て糧にさせてもらう。
新しい片手剣を受け取ったその帰り、ラムと共に付き添ってくれた二人の興味は、秘伝書に向けられているようだ。
「これって何処で手に入れたんですか?」
「バルバレに来た時に商人から買ったものです、チャージアックスの秘伝書は見当たりませんでしたが……」
「というか多分、あの商人ももうバルバレに居ないだろうな」
「うぅ、そうですか…… 団長なら持ってたりしないかな」
「長いこと狩人やってる中でもそういう書物はあまり見ないからな。自分の商売の種でもある技術を書に纏めて共有するなんてのは、相当なお人好ししかやらんだろうよ」
上位ハンターですら簡単には得られない知見の数々、これを執筆した狩人はどのような人達なのだろうか。
「ところで、お前らはまだしばらくここに残るのか?別件でギルドお抱えの筆頭チームが来るって話だが、大剣とボウガンの兄ちゃん達の手も借りれなくなるとしたら、そいつらが到着するまで中々しんどいんだが」
「……二番船の報告次第ですね。彼らによると、大砂漠に向かって目標の巨竜が進行した可能性があると聞いているので、場合によってはロックラック等のバルバレから離れた場所に招集されるかもしれません」
「タンジアで起こったっていうあの騒ぎの元凶か。こりゃあ大砂漠に居るうちは仕事に困らねぇな」
ラヴィエンテが大砂漠に居るとしたら、今回の件にも関連があるかもしれない。
二番船、アーシェ隊から緊急招集の伝令が届かないうちは、一番船、アルカ隊はバルバレでの調査を継続する事になる。
「じゃあ当分残るって事だな── シウニ、俺にもその秘伝書を読ませてもらってもいいか?見たところ片手剣を長年扱ってるやつしか要領を得ない感覚の話も結構あるだろ、その辺りは俺が教えられるぜ?人手も足りんから実戦形式だがな」
それは願ってもない申し出だ。
あくまでもギブアンドテイクの形を取っているが、それならば単にバルバレでの狩猟を手伝うだけでも秘伝書の交換条件としては十分なはず……
秘伝書の執筆者の事をお人好しだと言っていたが、この人も相当世話を焼いてくれている。
「イザナさんと共に修練出来るなら、心強いです!」
「よしきた、ぶっ倒れない程度に回復したらすぐに復帰してこいよ?」
不敵にニヤつきながらスパルタ教官ぶりを匂わせた彼は、意気揚々と集会酒場に向かっていった。
……この時間から飲むつもりらしい。