Monster Hunter:Wind Ark   作:カリオロス亜種

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リュウを屠る剣⑥

 

 

知らぬ間に蓋が被せられていた、忘れられる筈のない記憶。

晴れでも曇りでもない、灰色の空模様のあの日に、それまでの全てが崩れてしまった。

 

あの日両親が、見た事もない大きな生物に殺された。

この世界にはよくある話で、その時抱いた感情も同様に有り触れた憎しみだった。

だけど、直前の両親の発言、死に際の行動が今になって引っかかる。

何より、自身にとって何よりも重大なはずの出来事だけが抜け落ちたまま、この瞬間まで何の疑問も抱かずに過ごしていた事。

 

「……は?」

 

この期に及んでも妙に冷静な態度を認識してようやく、自身の薄気味悪さに体が震え出す。

 

「この剣は、なんだ。 調査……?一体何がしたい?」

 

焦燥も哀しみも全て抜け落ちたまま、俺は何をしていた?

 

「…… 依頼は達成している、一旦帰るぞ。死にかけてた時よりひでぇ面だ」

 

辛うじて解っているのは、匂いが引き金となって抜け落ちていた記憶が嘘のように目覚めた事だけだ。

記憶が抜け落ちていた理由、それでもなお狩人を志した自身の思考、両親の事。

不可解な出来事やこの剣も、自身が今どんな顔をしているのかさえ、何一つ解る事がない。

 

為す術なく立ち尽くし、彼の誘導に身を任せる事しか出来そうに無かった。

 

 

 

帰還の荷車に揺られながら、天を仰ぐ。

晴れでも曇りでもないが、あの日の空模様とは違っている。

あの日の空は、雲間に敷き詰められた薄灰色の光が空を塞いでいた。

流れの速い雲の切れ目に群青色の空が覗く、この空とは違う。

 

「靄がかかっていたんです。空も飛べない人の身では、追いかけて捕まえるなんて出来なかった。 彷徨い続けるうちに、そこが何処かもわからなくなった」

 

手繰るように、確かめるように言葉を繋ぐ。

視界は空を映し続けている。

 

「…… 重すぎると、そう感じた。 産まれて始めて手に取ったそれは、獲物を穿つ牙と言うよりは、まるで自分達人類に掛けられた枷のような重さだと」

 

復讐の為にそれを求め、しかし手にしたその時に感じた確かな重さも、いつしか頼りなくなっていた。

それは狩人の剣ではなかった。狩人の扱う武器は、とても重い。

 

両手で、重々しく剣を持ち上げる。

歴戦の狩人はきっと知っているだろう。この刃が、時には右腕に取り付けられた大盾の重さをも遥かに凌駕しているように感じる事を。

 

「……」

 

案の定、彼は理解している。

この腕の震えが物理的な要因によるものでない事も、こちらが返事を求めている訳ではない事も。

 

「俺は狩人、そして彷徨調査隊としてここに居ます」

 

彷徨い、流れた先で乗り込んだ方舟。

皮肉にもそれこそが靄を振り切る手段であり、重さを抱えて落下しない為の翼だ。

追いかけて、捕まえる。

 

「この獲物は……使えます。 使わない選択肢はない」

「……それが、あんた自身だって言い切れるのか?」

「この調査の先に俺があります」

 

龍殺しの残り香が、靄を振り払うならば。

未だ残る無機質な曇天を、一つ残らず灼き切る為に。

 

 

 

バルバレに、不可解な噂が集う。

“巨大な蛇が、故郷を喰らい尽くす夢を見た”

 

同時に、ハンターズギルドに寄せられた複数の報告。

"彷徨個体"出現及び、"彷徨個体"ラヴィエンテ発見。彷徨調査隊に伝令されたし。

 

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