Monster Hunter:Wind Ark   作:カリオロス亜種

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出航④

「紅霞鳥だって……?本当に見間違いじゃないのか?」

「間違いねぇ、あの特徴的な角に巨大な翼、どの要素を取っても特徴が一致している。だがあの個体は何かがおかしい」

「えっと、そのモンスターってこの大陸には棲息してないはずなんだよね?どこかの縄張りから追い出されてこの場所まで逃げてきたのかな」

「わからん、だがシウニの有様を見ればわかる通り、奴の持つ力は尋常じゃねぇ。あんな個体を退けた奴が居たとすればそいつは相当な化け物だぜ」

「なんにせよ、まずはギルドで状況を報告してからだな。」

「赤色の救難信号、つまり現地パーティでは対処しきれない事態という意味だ。それを俺たち森林地帯の担当パーティが撃った。街の方から緊急招集の合図が上がっているという事は、どうやらちゃんと意図は伝わってくれたようだな……」

 

ジオ・ワンドレオの上空に光の弾が打ち上がる。

それは、現段階を持って全ての調査を中断し、ギルドへ帰還せよという意味の信号である。

 

「しかし、片手剣の盾が一撃でぶっ壊れるとはな……全く馬鹿げた膂力だ」

「……衝撃は何とか逃がしたはずだったのに、まだ痺れが取れない」

「出会い頭の一撃、それも奴は恐らく本気じゃねぇ 奴の攻撃を受け止める考えは捨てた方がいいかもしれん」

 

その耐久性に信頼を置いていたハイドラナイフの盾、それが一撃で破壊される事態。

通常片手剣のガードは、わざと衝撃を逃がしてダメージを和らげる動きをするのだが、今回は不意打ちを喰らい不完全な受け方をしてしまったのも要因の一つである。

──あの咆哮の主では無いと、無意識の内に油断していたのかもしれない。

 

 

拠点に帰還すると、ギルドの職員達が慌ただしく走り回り、市場にはいつもの活気とは違う緊張した空気が漂っていた。

 

「おまいさんら、ひとまずは無事だったか。何があったか聞かせてくれ」

 

レイは、ギルドマスターに事の顛末を話した。

森林地帯の南部で巨大な竜の痕跡を確認し、その直後に大きな咆哮が鳴り響き、その姿を確認した所、咆哮の震源地にこの大陸には居ないはずの鳥竜種を確認した事。そして、この個体が予想に反して非常に強力で痛手を貰い、やむなく撤退した事。

 

「ふむ……別の大陸から飛来した個体がこの地で縄張りを作り、今回の騒動で他のモンスターと同じく興奮した様子で姿を現した、ということか、或いはこやつが騒動の原因そのものか……」

「奴の咆哮を直接聞いて、その姿を確認した上での印象なのですが、気が立っている、というよりはどこか冷静さを持っていたように思いました。」

「あぁ、やつはそもそも俺達を本気で仕留めにかかるつもりは無かったように思う。資料によるとだが、奴は外敵を驚異とみなすと、翼に水のブレスを含ませ、飛行能力を犠牲に重量の増加を図ることがあるらしい。縄張りを誇示する目的ならば、最初から臨戦態勢でその形態に入っていてもおかしく無いハズだ。奴の周辺にも不自然に水に濡れたような痕跡は見当たらなかった。つまりあそこは奴の縄張りというわけじゃねぇ」

「なるほどのぅ、仮に森林地帯の南部を縄張りと定めていたとするならば、ギルドの調査によってもっと早くに存在が発見されていたはずだぜな」

「……あの咆哮を聞いた時に思ったんです。あの声はまるで、自分に立ち向かう者を呼んでいるようだと。根拠は無いですが、そう感じました。」

「ハンターの勘、だね。シャナも前に似たような事を感じた事があるよ。やれるものならかかってこい、みたいな」

「……つまり件の奴さんは、この地に飛来し、自分の驚異となる生態系の主を見定めようとしているという事になるのかのぅ なんとも傲慢な振る舞いだぜな。各地を放浪し、自身の本来の縄張りに関わらず他の生態系に干渉する存在、さしずめ"彷徨個体"と言ったところか」

 

彷徨個体──その在り方は、あまりに軽やかだと、そう感じた。

 

 

 

ギルドの対策が整うまでの期間、シウニは宿に戻り、右腕の治療も兼ねて休息を取っていた。

 

ずっと共に戦ってきた相棒、ハイドラナイフ。

その盾が壊された事により、同時に狩人としての矜恃にも罅が入りつつあった。

 

例の彷徨個体は、近々最適な討伐パーティが組まれ、狩猟以来がギルドより下る事になるだろう。

 

「コイツを破壊した落とし前は俺自身の手で付けたい。だが俺は……」

 

やはり俺には、重すぎるのか?

 

「今は考えていても仕方ない、身体を休めよう」

 

いつものように身支度を済まして、眠りに着く。常に隣に置いていた盾は、今は無惨な姿となっている。それでも無理やりに眠りについた。今は、何も考えないように務める……

 

 

翌日、シウニは街の鍛冶屋に趣いた。

 

「どうも、ハンターのシウニと言います。戦闘でハイドラナイフの盾が破損してしまい、間に合わせでも良いので盾をひとつ作成してくれませんか?」

「おぉ、例のデカい鳥竜と戦ったっていう兄ちゃんか?なんでも人手不足の調査隊に自ら志願した勇気ある狩人だと聞いてるぜ」

「……そんなものじゃないです、本当に。」

「盾を一つ作って欲しいとの事だが、間に合わせでもいいって事は兄ちゃん、また奴と戦いに行くつもりなのかい?」

「出来ればそうしたいのですが、無謀ですよね」

「いや、ハンターって奴は案外そういうもんだぜ。ここでへこたれる奴らから辞めていくんだ。待ってな、ドスジャギィの素材じゃあねえが、軽量で扱いやすい走竜の片手剣がある、ソイツの盾を譲ってやるぜ」

「いいんですか?また壊してしまうかもしれない」

「そんな事気にすんなよ、武具ってのはハンターを守る為に在るんだぜ。きっと兄ちゃんの命を守ったハイドラナイフの盾も本望だろうよ」

 

こうして譲り受けた片手剣、ドスバイトダガーの盾を装備した。

工房の新作として保管されていたそれは、完璧に整備が行き届いていた。

「軽い。あの盾よりも」

「あぁ、片手剣の真髄ってのは軽さにある。身軽さこそが生命線だ。だが盾としての性能は俺が保証するぜ、兄ちゃんの命をきっと守ってくれる」

「……本当に、ありがとうございます この盾を握ってようやく覚悟が決まりました」

「おうよ、何処までも翔んでいきな!」

 

鍛冶屋の粋な計らいにより、いざという時に立ち向かう準備は出来た。後はギルドの判断を待つだけである。

 

「──ギルドマスター、例のハープスエイルの討伐パーティについて、一つ推薦したい奴がいるんだ」

「あぁ、おまいさんは現状この街随一の手練だ、討伐パーティには必ず入ることになる。ある程度おまいさんの要望は聞き入れるぜ」

「助かるよ、ギルドマスター。俺から推薦したいのは、以前から共にパーティを組んでいる3人だ」

「……ほう、騒動の始まりの頃から組んでいたブルームと、ドンドルマからの応援で駆けつけた手練のシャナはともかく、あの青年も推薦の対象なのかい?」

「ああ、あいつはまだ腕こそ未熟だが、シャナと同じ状況対応能力とハンターとしてのカンを持ち合わせている。そして何より、あれ程の手痛い一撃を喰らってもなお折れずに立ち向かうつもりで居るらしい、全く見上げた根性だぜ」

 

「なるほどのぅ、パーティの事をよく見ているおまいさんの言う事じゃ、間違いないのだろう。上位ハンターレイ、パーティのリーダーとしてあの青年をしっかり導いてやれ」

「……ありがとうございます」

 

かくして、討伐パーティの編成が決定された。

 

「俺たちのパーティがそのまま討伐パーティに……?」

「あぁ、俺が推薦した」

「……機会をくれてありがとうございます、次は足手纏いにはならない」

「そう気負いすぎるなよ?お前が受け止めきれねぇ脅威は俺たちが受け止めてやる、お前はその相棒と共に存分に舞えばいいさ」

「……はい……!」

 

四人組のパーティ一行は狩場に再び足を踏み入れる。ギルドの情報によると、未だ森林地帯の南部に奴は佇んでいるのだという

 

ドスバイトダガーの盾を撫で、感触を確かめる。軽さの中に確かな堅牢さを併せ持つ、信頼出来る盾だ。

 

さぁ、再戦と行こうか。




次回からガッツリ戦闘回となります が、がんばります、、、
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