Monster Hunter:Wind Ark 作:カリオロス亜種
「──奴だ。予定通り回り込むぞ」
「はい」
レイの指示に従って、四人が配置につく。紅霞鳥の明確な位置が割り出せなかった為、四人は消臭玉で匂いを消し、森林に溶け込む装衣を身にまとっている。
待ち伏せが出来ない以上、隠密での行動が先手を取るには重要だった。
「──大まかな作戦はこうだ。まず奴を発見したら周りをそれぞれ別の方向から囲むように接近し、俺の合図で閃光玉を四方向から投げる。先手をとり、奴に俺達を脅威だと認識させる事が目的だ。」
「脅威、ですか」
「あぁ。奴が持つ飛行能力だと、半端な攻め方をすると上空に逃げられてしまう可能性がある。まずは混乱している隙に羽根の層を総出で削る──」
──四人の投げた閃光玉はほぼ同時に炸裂し、辺りを鮮烈な白に染め上げた。
紅霞鳥は想定通り怯み、咆哮を繰り出した。
「……!!」
相変わらず身の毛もよだつような威圧感だが、今は怯んでいる場合では無い、片手剣と太刀で翼の羽根を削り、、大剣で紅霞鳥の脚を攻撃する。
「閃光玉、効果切れるぞ!引け!」
レイ以外の二人が下がり、1:1の状況を作り出す。
レイがディフェンダーを正眼に構え、臨戦態勢を取る。紅霞鳥は思惑通り、レイに向かって攻撃を仕掛ける──
「そう来ると思ってたぜっ!」
巨大な翼の薙ぎ払いをバックステップで回避し、大剣を振り下ろす、いわゆる流斬りと呼称される、速度重視の振り下ろしだ。
初撃の降流斬りは伸びきった翼の一部を刈り取り、追撃の渦流斬り、昇流斬りで翼を弾く。
それならばと、紅霞鳥が突進の体制に入るが、側面からの射撃に見舞われやむなく中断。
──まず先に飛び道具持ちを叩かなくては。
紅霞鳥はそう思考し、突進の対象をブルームに切り替える。しかし、深い緑の草むらに隠れ置かれていたシビレ罠には気づかない。
「かかったなアホが!攻めかかるぞ!」
シビレて低い位置に下がった翼に、それぞれが重点的に斬りかかる。
片手剣の細やかな斬りかかりで羽根を根元から裁断し、紅霞鳥に効果覿面な火属性の太刀、飛竜刀【楓】によって翼の広範囲を焦がす。
機動力を少しでも削ぐ為に大剣は脚を重点的に狙った。
「ここまでは順調だ……!問題はここからだ。頃合いを見て距離を取れ!」
流石に堪えたのか、紅霞鳥が怯んだ様子の声を上げる。口から白い息が盛れ、威嚇の咆哮をあげる。怒り状態だ。
翼に自らのブレスを纏わせ、飛行能力を捨て去る代わりに相当な重量を持つ巨大な鈍器へと変貌させた。
「ここからは無理に攻め立てるな!立ち回りは指示した通りだ!」
「シウニさん、焦っちゃダメだよ……!」
「はい……!」
シウニはポーチから二個目の閃光玉を取り出し、右手で保持する。慎重に攻撃を回避し、時折反撃しつつ、有効なタイミングを探る。
レイとシャナの二人は、紅霞鳥を挟んだ対角線上にシウニが来るように立ち回り、意識をシウニに向けさせない為に音爆弾で注意を引いた。
「わかっちゃいたが……!コイツは威力だけじゃなく素早さも尋常じゃねぇ、まるで地上で軽快に飛ぶような動きをしてやがる……」
「ブルームさんの援護射撃も水の翼に対しては効果が薄いみたい、なんとか二人で注意を引いて、シウニさんの閃光玉を喰らわせる事が出来れば……!」
基本的に閃光玉は、一度使うとモンスターに覚えられてしまい、二度目以降は対処されてしまうか、効果が薄くなってしまうことが多い。出来るだけ不意をつくタイミングで発動させる工夫が必要となる…
「俺のタイミングにかかっている……」
思わずシウニの手に汗が滲む、しかし、越えなければならない試練だ。
心を落ち着かせ、今一度武器の感触を確かめる。
「……軽い、今までで一番」
自分だけでは背負いきれない重圧は仲間が一緒に背負ってくれる。片手剣が何よりも翔べるのは、信頼出来る仲間と共に戦う時だ。
奴の懐に向けて、滑る。機動力を活かして間合いを詰める、反射的に繰り出された直線的な翼の攻撃を今度は受けるのではなくいなし、衝撃を最小限にとどめつつ走り続けた。
「シウニのやつ、あそこまで動けたのか……?」
ハイドラナイフを強く握り、渾身の力を込めて翼の根元に連撃をお見舞いする、最後にナイフの峰を使い亀裂の入った甲殻を引き剥がした。
「皆、目を瞑ってくれ!」
紅霞鳥は苦悶の声を上げつつ、懐に入り込んだ鬱陶しい獲物をその目に捉えようとしたその瞬間、光が再び炸裂した。
「……よし!効いた!畳み掛けろ!!」
大剣で叩き斬り、太刀で焦がし、火炎弾で燃やす。片手剣で先程攻撃を加えた翼の根元に更なる連撃を加え、痛手を負わせる事に成功した。
だが、流石に二度目は効きが薄かったのか、想定よりも早く復帰されてしまい、肉薄して攻撃していた三人は回転振り払いを受けてしまう
「……!!! クソっ、だが痛み分けだ、今更水を飛ばした所でその翼じゃ上手く飛べんだろう。もうひと踏ん張りだ、傷を負っている方の翼の側から重点的に攻めかかるぞ!
ディフェンダーで咄嗟に防御をしていたレイが一足先に体制を建て直し、全員に指示を飛ばす。
既に使える小細工は使い切った。あとは実力の勝負だ。
レイは経験による術理で堅実に、ブルームは的確な援護を、シャナは持ち前のセンスと判断能力で臨機応変に立ち回り、シウニは翼を得たかの如く巧みに舞った。
遂にハープスエイルが弱々しい悲鳴をあげ、逃げの体制に入ろうとした。
「逃がすか!」
レイは大剣を地面に擦らせながら突進し、地面毎巻き上げながらのかち上げで脚に向かって攻撃した。ハンター達の間で、地衝斬と呼ばれる狩技の一種だ。
それまで堅実に蓄積させていた脚へのダメージが功を奏し、転倒を誘発させる事に成功した。
「今だ!トドメを刺すぞ!」
片手剣の柄を握り直し、踊るような連撃を首元に叩き込む。ブレイドダンス──訓練でその動きは幾度となく練習したが、実践で繰り出すのはこれが初めてであった。
紅霞鳥の首元からは大量の血が吹き出し、力無く地に伏せた。
「やったか……?」
「いや、まだだ!」
"彷徨個体"、ハープスエイルは最後の力を振り絞って体を持ち上げ、木々の隙間から見える青空を仰ぎ、その後力尽きた──
「……!!」
その様は、まるで旅の終わりを憂いているかのようだとそう感じてしまった。