スターリー閉店   作:三十路スキー

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一部没ネタをリサイクル。
きくり視点のお話はこちらで続けるか、新規に立ち上げるか迷い中。
『帰ってこないヨッパライ』

漫画のようにはうまくいかない、リアル路線なぼっち・ざ・ろっく。
『結束地獄』(仮)とかいずれやりたいな。


蛇足2 水中、それは苦しい。

 廣井きくり34歳、区役所勤務。市民課の冴えないヒラ職員。昇進試験は今年も不合格。証拠があるわけじゃないけど今の職場には父のコネで入ったと思っている。今日もまた喜多課長に叱られた。うちでは珍しい女性管理職だけど、とにかくおっかない人だ。ちょっとしたことでもガミガミガミガミ……。ま、公務員だから不祥事でも起こさない限りクビはないんだけどね。なんて、心の中で舌を出す。実際はそんなこともないんだろうけど、知らないや。

 あーあ。私も同期の岩下さんみたいに仕事が出来ればなぁ。今度係長への昇進が決まったらしい。昔から若手のホープとして期待されてた。同期の出世頭。なにより私なんかにも優しい。とってもいい人だ。

 

「お先に失礼しまーす!」

 

 今日はノー残業デー。こりゃ定時帰りに限るわ。今日もみんな帰んないし、視線が痛いけど。こんな日は逃げ込みたいんだ、推し活に。友達も居なければ大した趣味もない、ついでに彼氏も居たことない私の唯一の生きがい。大好きなバンドがあるんだ。

 警備員さんに軽く会釈をして、庁舎を出たら早速イヤホンを耳に差し込む。シモキタ系のエモいガールズバンドでとってもカッコイイんだよ。冴えない私がファンやってるのが申し訳ないぐらい素敵! インディーズ時代、小さなライブハウスで演ってた頃からずっと応援してるんだ。武道館だって行ったんだ! 特にリードギターの後藤さんがサイコーにエモエモでメロディアスなんだよね! このバンドの音は、ロクに酒も飲めない私が唯一酔いしれることができるモノ。ストレスも不安も、全て忘れさせてくれる。

 

 ――あのバンド、どのバンド?

 

 さて、愛しの我が家に到着。職場から微妙に遠い1DK。我ながら小奇麗にしているつもり。今日も本棚からアルバムを取り出してコンポに入れる。私は今でもCD派、今の音源じゃ味わえないモノがあるんだよ。少なくても私はそう信じている。今日は結成10周年アルバムにしよう。私のベストオブベスト。ライブのブルーレイも良いけど、今日は音の中を漂いたい気分なんだよね。

 

 ――あのバンドなんて、ホントは居なかった。

 

 

 

 

 

「んはっ!」

 

 夢を見た。ヘンな夢だ。……つーか寝てたのか、私。寝坊してリハすっ飛ばして挙句、ライブ直前に寝てたなんてバレたら、銀ちゃんや志麻に怒鳴られるどころじゃ済まないぞ。

 

「きくりー。リハやらなくて大丈夫ナノ?」

「しつこいぞイライザ。なんとかなるなる」

「今日はぜぇーったい、機材壊すなよ? 廣井」

「わーってるって志麻。先輩やぼっちちゃんの前でダセーとこ見せらんねーし」

 

 閉じた幕の前で声を抑えて話す。

 

『新宿FOLT、間もなくライブが始まります。どちらさまもマナーを守りお楽しみください』

 

 おなじみのナレーション。店員のねーちゃんの声。ここのライブじゃこの声をイントロ始める合図にしている。ゆっくりと幕が上がる。今日も一曲目は『ワタシダケユウレイ』やっぱ、これだよね!

 

「しゃあ! いくぞおめーら! しっかりついてこい!!」

 

 幕が上がり切ったタイミングで、大声張り上げて客を煽ってやる。今日は大事な単独ライブ。来月には27歳の誕生日も控えている。そしてなにより、今日は伊地知先輩とぼっちちゃんが来てるんだ。ヘタなことはできねーぞ! おにころもいつもよりたっぷり飲んじまってるけど、そのほうがノリが良くなるってもんだ。




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赤評価で締めくくりたいんや!
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