前回に引き続きチュートリアルの話です。
シュガーラッシュのイベント良すぎてイベ曲ずっと再生しながら作業してました。みんな、読もう。
「…な、なに、これ!?」
ヘリコプターから降りると、どこかで見たようなヘルメットをかぶった集団が手当たり次第にあたりを破壊して回っている光景が飛び込んできた。
黒煙と銃声に埋め尽くされた戦場に、そんなユウカの叫びはいとも簡単に飲み込まれてしまい、不満の形すら成せず溶けていく。
「なんで私たちが不良たちと戦わないといけないの!!私、これでもうちの学校では生徒会に所属してて、それなりの扱いなんだけど!なんで私がーー」
とその時。
「サンクトゥムタワーの制御権を取り戻し、キヴォトスを正常化させるためにはあの部室の奪還が必要ですからです。ユウカ。」
聞きなれた声がして後ろを振り向くと、どこにいっていたのか。少しの間姿を見せなかったファウストが、いつもと変わらないすました表情で立っていた。
だが、今朝とは明らかに違うところが二つ。
一つは今朝は持っていなかった愛武器のツヴァイヘンダーを握っていること。
そしてもう一つは、その背後にいた二人の存在だった。
「おはようございまする!!!!!!!!!管理人殿!!!!!!!!!!!!!」
「あ、おはようございます管理人さん。」
自分の背丈よりもある大槍。盾とメイス。瞬間放たれる私への快活な挨拶と、呆れたような溜息。
『二人も来てたんだ。』
ファウストの後ろから姿を現したのは、彼女と同じ囚人であるイシュメールとドンキホーテの二人だった。
私も挨拶を返そうと口を開いたが。
「ファウスト先生!?今までどこ行ってたんですか!!」
………どうやら、各学園の生徒たちの方が、反応が早かったみたいだ。
「……落ち着いてください、ユウカ。ファウストはただ己の職務を遂行しただけで……」
「だとしても!!私!!連絡ぐらいは入れてくださいってあれほど言いましたよね!!」
「ど、ドンキホーテ先生。先生も今回の任務に参加されるのですか?」
「その通りだハスミ殿!!今日もキヴォトスを脅かす悪に正義の鉄槌をくだそうではないか!!!と、スズミ殿も!!」
「おはようございますドンキホーテ先生。相変わらず元気ですね。自警団の仲間を思い出します。」
「はぁ……戦場のど真ん中だってのに騒がしいですね。おはようございます、チナツ。そういうわけで私も駆り出されたので、早めに終わらせましょうか。」
「えぇ、ヒナ委員長から頼まれたお仕事ですから確実にこなしましょう。」
憤慨しながらファウストへ詰め寄るユウカと、楽し気(?)に会話するドンキホーテ。二日目にして既に信頼が垣間見えるイシュメールたちと、三人の囚人と四人の生徒が織りなす会話は多種多様で聞いていると案外面白い。
ここが戦場のど真ん中だということを忘れてしまうくらいには。
ダダダッ!!
「いったぁっ!!」
ファウストの体を揺らしていたユウカの背中に、黒煙の奥から飛来した弾丸が音を立てて着弾し地面へと落ちる。普通の人間であればこの時点で死も免れないのだが、生憎彼女たちはキヴォトスの人間だ。この程度でくたばるはずもなく、ユウカは鬼の様な形相を敵の方へと向け銃を構えた。
「あいつら、違法JHP弾を使ってるじゃない!?」
「伏せてください、ユウカ。それに、ホローポイント弾は現在違法指定されていません。」
「うちの学校ではこれから違法になるの!!傷跡が残るでしょ‼」
「今は先生方もいるので、その点に気をつけましょう。先生方を守ることが最優先。建物の奪還はその次です。」
「ハスミさんの言う通りです。先生方はキヴォトスではないところから来た方々ですので……私たちとは違って、弾丸一発でも命の危険に晒される可能性があります。その点ご注意を。」
「わかってるわ。先生、先生は戦場に出ないでください!私たちが戦ってる間は、この安全な場所にいてくださいね!」
やはりこの子達も、自分たちと私たちの耐久力の差は理解しているようだ。シロコも知っていたし、この世界ではやはり一般常識なんだろう。だが、一つ訂正をするならば。
「いや、私たちも戦場に出ますよ。そのために呼ばれたんですから。」
「「「え!?」」」
囚人たちも、銃弾一発でそう簡単にくたばるほど柔じゃないってことだ。
ユウカはじめ四人の生徒たちはイシュメールの言葉に大層驚いたようだが、そんな事知らぬといった様子でドンキホーテが漸くかと目を輝かせながら前へ出る。
「あぁ、言ってませんでしたっけ。私たちも人並みには戦えるってことです。でも生徒の皆さんほど丈夫じゃないので、怪我したときは頼みますね、チナツ。」
そう言って、イシュメールも握りしめたメイスを数度確かめるように振って前へと歩いて行く。その様子を見たファウストが腕を天へと伸ばし、全員の視線が集まったタイミングで口を開く。
「聞いてください、皆さん。今より戦闘指揮は管理人であり総括顧問であるダンテが執ります。皆さんは彼の指示に従い、戦闘を進めてください。」
最初は生徒たちもその言葉に困惑していたが、少しすればやがて勝手に納得したようで
「わかりました。これより先生の指揮に従います。」
「生徒が先生の言葉に従うのは自然なこと、ですね。よろしくお願いします。」
そんな無条件の信頼を私へと向けた。私は、この純粋な信頼に報いることが出来るのだろうか。
この世界での戦術指揮は、これで三回目。三回もやれば多少は慣れるかと思ったが、やはりまだまだ銃が主体の戦場は慣れない。
一先ず、生徒たちの持っている武器に目を通す。
遠距離からの絶大的な火力を誇るハスミのスナイパーライフル、ユウカの持つ近距離特化のサブマシンガン、そして中距離特化のアサルトライフルに閃光弾。ケガを治療するアンプルの様なものはチナツが持っていることを確認している。となると、素早さと瞬間的な火力に長ける人格がいいだろう。各地で爆発が起こっているのを見るに、戦車もあるかもしれない。とすれば………
昨日シロコから教えてもらった銃の基本的な知識をフル動員しながら大まかな戦略を立て、私は三人の人格牌を一斉に変更し出撃のボタンを押す。
パキンッ
「ふむ...今日も美しい花を咲かせてみましょうか。」
「おぉ~、斬りがいのありそうな敵ばかりであるな!!」
黒い裾を翻して、ドン・キホーテとファウストはその腰に携えた刀に手をかける。
ーーー『剣契』
都市の裏路地を渡り歩く浮浪の剣客たち。比類なき剣技と体術を兼ね備えた人格の彼女達の俊敏さであれば、この戦場でも十分に通用するだろう。
バキンッ!!!!!!!!!!!!!
そして、イシュメールの表象が二人よりも一際大きな音を立てて砕けた。
今回は、『彼女』の力を借りようと思う。
「ーーはっ、私を呼んだな管理人!!此度の航海では鉛の雨が降ると聞いたぞ!!」
普段の真面目で冷静なイシュメールとは対照的な口調でそう言って、緑色のコートを羽織った彼女が歯を剥き出しにして笑う。
『ありがとう船長。今日も力を貸して欲しいんだ。』
「あぁ、いつか見返りとして、私の船に乗ることを約束するならな。」
『………前向きに考えとくよ。」
絶対的な自信と焼きつくような威厳を纏いながら、『ピークォド号船長』であるイシュメールはそのまま「はっ」と不敵に笑い、その手に握られた巨大なガス銛を地面へと突きたてた。
「い、イシュメール先生………?それに、他の先生方も。」
「服装だけじゃない...イシュメール先生に至っては、性格までまるっきり変わったように見えます。ダンテ先生、これは一体………」
生徒たちは困惑した様子で人格をかぶった三人を交互に見つめていた。まぁ、目の前でいきなり早着替えが行われて性格まで変わったとなれば疑問を抱くのも当然だろう。できれば今すぐにでも説明してあげたいところだが、目の前の戦線が段々と上がってきているのを見るに、そんな悠長に説明している時間はなさそうだった。
『ごめん、あんまり時間が無いみたいだ。説明は後でしっかりするから、今は目の前の敵を倒すことを優先してほしい。』
「ダンテ先生の言う通り、今は現状の打開が最優先事項です。敵の意識が、いつ先生へ向くかわかりませんから。」
「うーん、まぁ、今色々考えるのは合理的な選択じゃない…か。よし、それじゃあ行ってみましょうか!!」
そんなユウカの気合のこもった一言と共に、シャーレ奪還作戦が幕を開けた。
『ユウカとファウストは前線に出て敵の注目を集めてくれ‼︎なるべく被弾は抑えて、速度での撹乱を優先‼︎』
命令通りにユウカとファウストの二人が敵の真ん前へと接近していくと、それまで辺りを破壊尽くしていたチンピラたちの注目が一気に二人へと移った。
「なんだこいつら、連邦生徒会の奴らか!?」
「どうでもいいよ!!あの人の邪魔するならまとめてやっちまえ!!」
チンピラたちがそう言って、手に持っていたマシンガンをがむしゃらに放つ。
「当たるわけないでしょ!!」
周囲に球型のバリアを展開し敵陣へ突貫していくユウカ。先ほどユウカが片手間に端末を操作したのが見えたので、恐らくあのバリアは彼女の持つデバイスによるものだろう。よく見れば、W社の人格が使う『充電力場』に似ているような気がする。原理的には同じなんだろうか。
そしてその横で、黒い袴を靡かせながらファウストが駆けていく。身体の『軸』を利用し、身体を右へ左へと捻り銃弾を回避するファウスト。
剣契の人格を被ったファウストは平時と比べて動体視力と体捌きが格別に上がっている。持ち前の観察能力と体捌きで銃弾を避けながら、懐に潜り込んだ彼女はそのまま少女の胸へと刀を突き出した。
ザンッ!!
「ふむ………刃は通りませんか。」
刃は通らなかったものの、突き刺された少女は口から何かを吐き出してそのまま気絶した。見た所、都市の人間の殺す気で放った一撃で在れば彼女たちの放つ銃と同じくらいのダメージは与えられると考えてもよさそうだ。
「まぁ、それならもう一度ですね。」
刀と銃弾によって粉砕されたヘルメットが宙を舞い、名も知らぬ少女二人が地面へと倒れた。それを皮切りにして、周りに居た他の敵全ての視線と銃口が彼女達二人へと向く。
「くそっ、何人やられた!?お前ら撃て!!撃て!!」
『スズミ!!ファウストとユウカの背後上空へ閃光弾投擲!!ドンキホーテはそれに合わせて突っ込め!!目を焼かれないように!!』
「了解です!!」
「当人に任せておけ!!」
カッ!!
「うわっ!!なんだなんだ!?」
戦場の中心へ投げ込まれた閃光弾が、鮮烈なまでの白光を放つ。そして視界が奪われ慌てふためく敵の背後で黒い袴が揺れると
「はぁっ!!」
ドンキホーテの一撃とスズミの射撃によって、辺りを取り囲んでいた数名の敵はなんの抵抗も出来ずに地へと倒れ伏した。
「く、くそっ、なんなんだあいつら!!せめて一人ぐらいは………ぐあっ!!」
「命中。敵の数は残り少ないようです。」
近くの遮蔽へ身を潜めていたらしき生徒も、ハスミの無慈悲な一撃によって地面へと倒れこむ。これで終わりかなと思ったその時。視界の端っこで、スコープの反射光が煌めくのが見えた。銃口が向けられている先は、今もなお近くに残った残党を笑顔で斬り倒していくドンキホーテ。
『まずい。』
咄嗟に指示を出そうと私が手を伸ばしたその時。
「ふん、相変わらず詰めが甘いな管理人。」
ブォンッ!!
そんな声が背後から聞こえてきたかと思えば、私の頬を巨大な漆黒の銛が掠めていった。放たれた銛は激しい音と共に敵の頬を掠め背後のコンクリートへと突き刺さる。
そして次の瞬間、銛の先端が光り輝いたかと思えば。
バァァァァァァンッ!!
豪快な炸裂音と共に、銛が突き刺さったコンクリートが木っ端みじんに弾け飛んだ。
「ひ、ひいいいい!!!!」
震えながら銃を投げ捨て逃げる少女。だが、船長が獲物を逃がすことなど有り得ない。即座に獲物へと手を伸ばし、イシュメールは畏怖の念を植え付けるかのような鋭い笑みを浮かべ…叫ぶ。
「あいつを追跡しろッ!!!!!!!!!!!!!」
ダァンッ!!
ハスミのスナイパーライフルから放たれた弾丸が、逃げる少女の後頭部へとぶち当たる。倒れた少女の姿を見てイシュメールは満足げな笑みを浮かべていたが、とどめを刺した本人であるハスミは何が起こったのかわからないといった様子で自身の銃と船長を交互に見ていた。船長の一声で勝手に動いた自分の体に困惑しているみたいだ。
まぁ、とりあえず第一陣は終わったかな?
「なんだか、戦闘がいつもよりやりやすかった気がします…。」
「やっぱり…そうよね?」
「先生の指揮のおかげで、普段よりずっと戦いやすかったです。それに、イシュメール先生の命令…体が勝手に動いたと言いますか。まるで魔法の様でした。」
「なるほど…これが先生の力……まぁ、連邦生徒会長が選んだ方だから当たり前か………。」
「それでは、次の戦闘もよろしくお願いします。先生。」
戦闘がひと段落すると、生徒たちは口々にそんな言葉を言って、尊敬と感心の眼差しをこちらへと向ける。指揮が褒められてひそかに喜ぶ私と違って、人格を被ったままの三人はそんな尊敬の念になど興味が無いといった様に前方のサンクトゥムタワーを見つめていた。
部室まで、残り数キロメートル。迫りくる脅威をなぎ倒しながら私たちは破竹の勢いで進んでいき、遂に目的地までは残り数百メートルを切ったという頃だった。
「もうシャーレの部室は目の前よ‼」
そんなユウカの言葉と同時に、端末から通知音が鳴る。映し出されたホログラムと共にリンの声が聞こえてきた。何かあったのだろうか。
《今、この騒ぎを起こした生徒の正体が判明しました。》
『首謀者がいたのか。誰なんだ?』
《ーーその生徒の名はワカモ。別名、災厄の狐。百鬼夜行連合学院で停学になった後、矯正局を脱獄した生徒です。似たような前科がいくつもある危険な人物ですので、気を付けてください。》
同時に、私の持っている端末へ件の「ワカモ」らしき生徒の写真が送られてきた。怪しげな狐の面と、花の紋様が刻まれた派手な着物。写真越しだというのに、私はその風貌から並々ならぬ気配を感じていた。
『……事の主犯は脱獄した凶悪テロリストか。皆、気を引き締めていこう。』
この先に居る彼女への対策を考えながら、私は再び指揮を執った。
災厄の風が、近づいてくる。
『イシュメール!!とどめを!!』
彼女の投擲した銛がヘルメットを貫き、銛は銛自身が放つ共鳴振動の効力を以て再び彼女の手元へと戻る。
「よくやったな貴様ら!!災厄の狐とやらを斃すまで今のを繰り返す!!休む暇などない!!総員、突撃!!」
「「「「はい!!!!」」」」
『船長と一緒に戦ってると、たまにどっちが指揮官なのかわからなくなるんだよね…』
と、その時。
「っ、騒動の中心人物を発見!!対処します!!」
ハスミがそう叫ぶと同時に、その場にいた全員が武器を構え直した。全員が息を呑んで見つめるその先、炎に包まれた道の真ん中に彼女は立っていた。
「フフ、連邦生徒会の子犬たちが現れましたか。お可愛らしいこと。連邦生徒会が大事にしているものがあると聞いて壊しに来ましたが…少しの戯れくらいであれば悪くないでしょう。ふふっ。」
仮面に隠されたて顔は見えないが、目の前の彼女からは他の生徒にはない邪悪な気配を感じる。まるで、厄災がそのまま形をなしたかのような。私たちが対峙してきた恐怖に限りなく近いものだ。
「どうした管理人‼︎目の前に獲物がいるというのに何をしている‼︎」
『あ、ごめん‼︎』
とりあえず、今はやれることをやるしかないだろう。
『ユウカとスズミ、そして船長は前線へ‼︎二人は船長の周りでできる限り攻撃を惹きつけることを意識してくれ‼︎ファウストとドンキはスピードで撹乱しながらワカモ以外の生徒たちを掃討をしてくれ‼︎ハスミは前線の3人のカバー‼︎チナツはみんなの体力に応じて適時アンプルの投与を‼︎』
命令が終わると同時に、各生徒と囚人たちは敵へ向かって駆けていく。ファウストとドンキの刀が周囲の敵を蹴散らしていき、前線の3人はイシュメールを中心にワカモと対峙する。
飛び交う銃弾と炸裂する銛。剣の軌跡が戦場を駆け回り、周囲で燃え上がる炎はますますその勢いを強めていく。
「ふふふふっ!!」
ガァンッ!!
「ちぃっ‼︎」
振り下ろした銛がワカモによって蹴り上げられ宙を舞う。衝撃でイシュメールの体が少し後退し、そのままワカモはイシュメールの腹部へ鋭い蹴りを叩き込んだ。一瞬の出来事でユウカとスズミすらも反応できず、イシュメールの体はメリっと音を立てて近くの瓦礫へと吹き飛んでいった。死んではないだろうが、それでもそれなりの傷だろう。すぐさまチナツが駆けていくのが見えた。
「イシュメール先生‼︎」
『スズミ!!閃光弾を!!』
スズミの投擲した閃光弾が破裂し、ワカモの動きが一瞬だけ停止した。
『隙が出来た!!全員集中砲火!!』
三丁の銃から放たれる弾丸の雨が、ワカモへと容赦無く襲いかかる。数秒の集中砲火ののち、3人がリロードを挟む。制圧できただろうかと私たち全員が息を呑んで煙を注視していたが、そんな希望を打ち砕くようにして、彼女は目立った外傷一つない状態で煙の奥から再び姿を表した。
「ふふっ、ふふふふふっ‼︎連邦生徒会といえど所詮はその程度ですか?」
「う、嘘でしょ?」
「全く、効いていませんね…」
ーーいや、まだ終わってない。
『ドンキ‼︎ファウスト‼︎」
周囲の掃討を終え合流したドンキホーテとファウストが、白い煙に紛れて背後からワカモへと切りかかった。
((捕らえたッ!!))
双刃が彼女の首へ向け振り下ろされ、その場にいた全員が奇襲の成功を確信する。
だが、目の前のその光が虚像だという事に、私たちは全く気が付かなかった。
フッ…
突然しゃがみ込んだことによって、二人の振った刃は宙を斬った。完全に背後からの奇襲だったのにもかかわらず、彼女は気づいていた。煙と銃声によるカモフラージュも一切意味を為さず、二人はそのまま彼女の蹴りと銃床による打撃で退けられた。
「ふぅ…今のは少し危なかったですね。まぁ戯れはここまでにしておきましょう。私はここまで、後は任せます。」
遊び終わったおもちゃに興味などないといった様子で、ワカモはその場から音もなく立ち去った。すぐさま姿を探すも、彼女は既に遠く離れていた。まっすぐサンクトゥムタワーへと向かって。
「逃げられてるじゃない!!追うわよ!!」
「いいえ、生半可な行動をしてはなりません。私たちの目標はあくまでも五、シャーレの奪還。このままシャーレのビルまで直進するべきです。」
『...そうだね。あと少しだし、少し息を整えてすぐ出発しよう。大丈夫、イシュメール?』
と、私がそう言いながら瓦礫にもたれかかるイシュメールに近づいていくと、彼女は虚ろな目で何かをぼつぼつと呟いていた。
「………れは。の…もの...だ。」
『…イシュメール?』
様子がおかしい。命を削りあう戦闘の最中では、囚人たちの精神力が激しく上下することがあるが、それだろうか。いや、だがこれは.....
パチッ
刹那の間であったが、彼女と目が合った。その目に込められていたのは、熱く渦巻く必殺の執念。私は直観的に理解した。
『イシュメール、落ち着け!!』
「あれは...!!」
「あれは私の獲物だ!!!!!!!!!!!!!!!!!」
私の静止も空しく、突如鬼気迫る勢いでそう叫び、イシュメールは目を血走らせてすぐさまその場から駆けだした。
『イシュメール!!』
「イシュメール先生!?」
あぁ、あれはもう止められないな。
自然と、それだけは理解できた。
彼女の被った人格の、奥に見える残影への記憶。私たちの世界の『船長』と対峙しているからこそ、あれが何をしたとて止まらないことが私には分かった。
「ダンテ先生、どうしましょう。罠かもしれない場所に先生一人で向かうというのは...」
チナツが心配そうにイシュメールが走っていった方向へ目線を向ける。が、正直この後がどうなるかは私にも予想できない。だから、私が今できるのは今進むべき理由を作ることと、彼女たちの不安をできる限り拭ってあげることだった。
『...まぁ、止めても無駄だと思う。から、私たちも急いで後を追おう。なるべく早くいけば、最悪の事態は避けられるだろうから。』
「………そうですね。それじゃあ...」
『うん。ファウスト、ドンキ、まだ動ける?』
「えぇ。まだいけます。」
「当人は楽勝である!!」
『それじゃあ、残ったものを片付けながら進もうか。』
どうも。気が付いたら一か月たっててちょっと震えてました。バイトとか模試とか実家帰省とかCS版libraryofruinaだったりいろいろとありましたが過去のおれがちょくちょく書き進めていたおかげで何とかなりました。
今回かなり急ピッチで書いたので文の誤字とか脱字とか不自然なところ多いかもしれませんがその時は誤字報告でこっそり教えてください。何とかなってるかこれ。
感想や評価などくれれば喜んで飛び跳ねます。次はswitch版ruinaをクリアしたら投稿しますね。ちなみに今は不純物です。
それではさいならー。