皆さん屈折鉄道5号線の準備はよろしいでしょうか。私は今回もダイス値でのごり押しをもくろんでいます。みんな頑張りましょう。
あ、ちなみに伏線回です。
バンッ!!!!
「な、なにこれ!!!!一体どういうことなのっ!?」
机を激しく叩く音と同時に、対策委員会の部室の中でセリカの怒号が木霊する。
原因は、机の上に置かれていた数枚の書類の束。それは件の現金輸送車の集金記録だった。
「うん、確かにアビドスで788万円集金したって記されてる。私たちの学校に来たあのトラックで間違いない。でも、その後に…」
シロコが指さした箇所には、『カタカタヘルメット団への援助金 500万円』と書かれていた。つまりそれは…
「私たちのお金を受け取った後に、ヘルメット団のアジトに直行してお金を渡してたってことだよね!?」
『うん。それに、あいつらの後ろにはカイザーローンが付いてたってことの証拠にもなる。』
「ん~でもダンテ、それってなんか変じゃない?」
横から口を挟んだのはロージャだった。ロージャはいまだ痛むであろう頭を押さえながら、背もたれから体を起こす。
『変…って、何が?』
「だって、学校が破産したら借金は回収できなくなるのよ?それも9億なんていう大金が。この子達の命が目的でもない限り、そんなことするメリットがなくない?」
言われてみれば…確かにそうだ。カタカタヘルメット団はアビドスを攻撃していたが、仮にアビドスの皆が敗北したとしたら単純に「廃校」という扱いになるだけだろう。ただ失う金額として、9億はそれなに大きすぎる気もする。恐らく、ホンルでもそうポン、とは出せない金額のはずだ。
だがしかし、この子達が何か企業から殺されるほどの恨みを買う様な事をしているとも思えない。
証拠は確かにあるのに、何かが食い違っている。掛け違えたボタンの正体がわからず、私は腕を組んで考え込む。
「この件、銀行単独の仕業じゃなさそうだね。カイザー本社の息がかかってるとしか思えない。」
「はい…私もそう思います。皆さんの件、どう考えてもスケールが大きすぎますので…って、もうこんな時間ですね。お話の途中ですが、私はそろそろお暇させていただきます。」
ヒフミはそう言って、椅子に掛けてあったリュックサックを肩にかけた。丁寧に頭を下げる所作からは気品を感じられる。私の中でトリニティがお嬢様学校だというのは疑いのない事実になっていた。
「お、リーダーのお帰りかな。それじゃあみんなで見送りしないとねー。」
ホシノの一言でその場にいた全員が立ち上がり、私たちは校門前まで移動する。太陽は傾き始め、空には既にうっすらと橙色が散りばめられていた。
「皆さん、いろいろとありがとうございました。」
「変なことに巻き込んでごめんなさい、ヒフミさん。」
「今度遊びに行くから、その時はよろしくー。」
「はい、もちろんです。」
アビドスの面々から投げかけられる感謝の言葉を、ヒフミは笑顔で受け取る。
今思えば奇妙な縁だ。ただブラックマーケットでチンピラに絡まれていたのを助けただけで、いつの間にか一緒に銀行強盗までやってしまった。人生とは本当にどう転ぶかわかったものではない。
「まだ詳しいことは明らかになっていませんが…これはカイザーコーポレーションが、犯罪者や反社会勢力となにかしら関連があるという事実上の証拠になり得ます。戻ったら、この事実をティーパーティーに報告します!!それと、アビドスさんの現在の状況についても…」
ティーパーティー。確か、トリニティの生徒会の事…だっただろうか。詳しくは知らないが、トリニティ程の大きな学校が動くのであれば何か事態もいい方向に転ぶだろう。
「うーん、ティーパーティーはもう知ってると思うけどねー。」
「は、はい!?」
私のそんな安直な考えを断ち切るように、ホシノはあっけらかんとそう言った。
『もう知ってるって…どうしてそう思うんだ?』
「うーん、あれほどの規模を持つ学園の首脳部なら、それぐらいはもうとっくに把握してると思うんだよー。皆、遊んでばかりじゃないだろうしさ。」
「そ、そんな…知っているのに、皆さんの事を…」
ヒフミは多少なりともショックを受けた様で、複雑そうな表情で話を聞いている。知ってるのに何も動かない、ということは、そうしない何かしらの理由があるというわけだ。そう考えると、何となくホシノの言いたいことも見えてきた気がする。
「あ、私わかった。
「おぉ~先生せいかーい。いやぁ、ヒフミちゃんは
「……そうですね、その可能性もなくはありません。あうう…政治って難しいです。」
「で、でも悲観的に考えすぎじゃないでしょうか…本当に助けてくれるかもしれないですし…」
「うへ~、私は他人の好意を素直に受け取れない、汚れたおじさんになっちゃってねー。それに…」
「『万が一』ってことをスルーしたから、アビドスはこの有様になっちゃったんだよー。」
ホシノの声音が、一瞬だけ冷たくなって、そしてすぐに戻った。今のは対策委員会に身を置いたうえでの教訓だろうか。それとも、私たちがまだ知らない。アビドスの過去についての後悔だろうか。
「では…えっと…本当に、一日でいろんな出来事がありましたね。」
「そうだね、すごく楽しかった。」
「……楽しかったのはシロコ先輩だけじゃないの?」
「あ、あははは…私も楽しかったです。」
ヒフミが気まずそうに放った一言に、シロコとセリカが反応し場の空気が再びもとに戻った。先ほど一瞬だけ感じた寒さは幻だったかのように。
「いやぁ~、ファウストちゃん、お世話になったね。」
「そ、その呼び方はやめてください!」
『あ、忘れてた…。その呼び方、あんまり外でしないようにしてね?他の学校にいるしゅうじ…先生が、同じ名前なんだ。』
「え…つまり私たち、他校の先生の名前で銀行強盗してたってこと!?それってちょっとまずくない…?」
「まぁまぁ、それはたぶん大丈夫よ。おファウなら何とかするでしょ。」
「よっ、覆面水着団のリーダーさん!!」
「みなさん…ヒフミさんが困ってるじゃないですか。」
口ではそう注意しながらも、アヤネはどこか楽しそうだ。ヒフミも出会ったときのようなよそよそしい感じはすっかり抜け、今やすっかり打ち解けている
「と、とにかく…これからも色々と大変だと思いますが、頑張ってくださいね。応援してます。それではみなさん、またお会いしましょう。」
改めてもう一度深々としたお辞儀をして、ヒフミは門の外へと向け歩きだした。
(いい仲間が出来たな。)
そんなことを思って私がみんなの方を向き直したその時。
「あ。」
後ろからヒフミのそんな声が聞こえ、私は彼女の方をもう一度向き直した。ヒフミは真っすぐ私の方へ向かってきて、ちょいちょいと手招きした。耳を貸せと言う事だろうか。ないけど。
何かと思い、私は彼女の口元へ頭を近づける。
「あ、すいません。そんなに近づく必要はなかったんですけど…。その…ダンテ先生って、もしかしてシンクレア先生が言っている【管理人さん】ですか?」
シンクレア。知っている名前が出てきて、思わず動揺する。彼の担当は、確か…
『もしかして、君が補習授業部の?』
「!!は、はい…お恥ずかしい限りですが。そ、それはともかく。いつもシンクレア先生にはお世話になってるのでそのお礼を…と。それに、【管理人さん】という事なら、またすぐ会うことになりそうですね。今は少しバタバタしているので、来るときは気をつけてください。」
「それでは、改めてさようなら。今日はありがとうございました。」
そう言って、ヒフミはもう一度ぺこりとお辞儀をして今度こそ戻ってくることはなかった。
「なになに先生~何の話してたの~?」
『トリニティに配属した教師の担当がどうやらヒフミだったらしくて、それでいつものお礼をだって。』
どうやら、シンクレアもちゃんと生徒たちと向き合えているらしい。以前会ったときは少し疲れているように見えたから不安だったけど、あの様子なら心配もいらなそうだ。
「皆さんお疲れさまでした。今日はゆっくり休んで、明日改めて集まりましょう。」
「解散~」
『それじゃあ、私もシャーレに戻るよ。皆、お疲れ様。』
生徒とロージャから向けられる労いの言葉を背中に、私もシャーレへと帰宅した。
「ふあぁぁぁぁ…」
寝ぼけ眼。
重い瞼を擦りながら、ソファから身を起こす。あの子たちは、もう来てるかな?なんて思いながら、私はいつものLCBの制服へと着替えた。
カーテンを開けば、今日もこの世界に来た時と変わらない青空が広がっていた。もともと寒いところに住んでたのもあって、こういうぽかぽかとした陽気が好きだ。
「えーっと…まだ九時か。ちょっと早いかも…ダンテはお昼ぐらいになったら来るかしら?」
部屋を出て、すぐ隣にある階段を下りると、すでに見慣れた対策委員会の部室が見える。 中から聞こえる話し声は…ノノミとホシノかしら。ほんとに仲いいわよねあの子たち。
「アニョアニョー、二人ともおはよう~。」
いつも通りのあいさつをして教室の扉を開いてみれば、ホシノがノノミの膝枕で横になっている光景が目に入った。ホシノは夢見心地のまま天井をみてうへうへしていたが、私に気づいたようでひらひらと手を振る。
「あ、おはよー、先生。」
「先生、おはようございます。今日は早いですね?」
「ここの日差しが眩しくってつい目が覚めちゃったのよ。それにしても、ホシノすっごいリラックスしてるわね…ねぇノノミー、私にも膝枕やってくれないかしら?」
「だめだよー、先生。ノノミちゃんの膝枕は、柔らかくていい匂いのする私だけの特等席だもんねー。先生はあっちの座り心地悪そうな椅子にでも座ってねー。」
「えー、ホシノのケチー。」
「まぁいいわ。」とつぶやいて、私が近くにあったパイプ椅子に手をかけると、ノノミがちょいちょい、と手招きしてきた。何かと思い耳を近づけると、ノノミは声を細め、私の耳元でささやいた。
「今度、誰もいないときにしましょうね、先生。」 ボソッ
ゾクっ、とノノミのささやき声に対して、意図せず体が反応した。ノノミの声は、柔らかくてどこかおっとりとした印象を受けるけど、今のはちょっと普通にドキドキしちゃった。この子…魔性ね。
「よいしょっと。ふぁぁ…今日はみんな朝から元気だねー。」
ノノミの膝枕から体を起こしたホシノが、欠伸交じりにそういった。確かに、今日は珍しく二人しかいない。
「ほかの子たちはどうしたの?シロコはまた銀行強盗とか?」
「それはさすがにないかと…のんびりできるのは久しぶりですから、みんなやりたいことをやってるんでしょうね。シロコちゃんはたぶんトレーニングだと思います。」
「アヤネちゃんは図書館とかかなー?セリカちゃんはたぶんバイトー。まぁノノミちゃんだって、学校の掃除とか教室整理してくれてたしねー。うへ~、みんな真面目だなー。私はダラダラしてただけだしー。」
「あら?先輩どちらへ?」
扉の方向へと体を向かわせていたホシノに、ノノミがそう聞いた。ホシノはその場でくるっと回転し、にへらと笑いながら言う。
「ふふーん、秘密のお昼寝スポットがあるんだよねー。そんじゃ、おじさんは適当にさぼってるから、何かあったら連絡チョーだい、ノノミちゃん。」
そう言い残して、ホシノは再び背を向けて教室から出ていった。教室の中には、私とノノミの二人だけが残される。ノノミが常に笑みを絶やさないせいか、不思議と気まずさは感じない。
「またお昼寝しに行くみたいですね、ホシノ先輩。やっぱり、昔に比べるとだいぶ変わりました。」
「変わった?ホシノが?」
「はい、今はあんな感じですけど…初めてであった頃のホシノ先輩は、常に何かに追われているようでした。切迫感っていうんでしょうか。とにかく余裕がなかったんです。ホシノ先輩の先輩…アビドス最後の生徒会長であるその人が去ってからは、一年生のホシノ先輩がすべてを引き受けることになった、と聞きました。」
「へぇ…今じゃ考えられないわね。あんなのほほんとしてるのに。」
「ふふふ、きっとロージャ先生と、ダンテ先生のおかげですね。」
「そんな、買いかぶりすぎ。私たち、そんな大したことしてないわよ。というか、今の話を聞いて思ったんだけど私ってみんなのことあんまり知らないわね…ホシノのお昼寝スポット、私も教えてもらおうかしら。」
「おぉ!!いいですね!!一緒にお昼寝すれば、仲も深まるかもしれません♪」
「あ、ノノミもそう思う?よーし、それじゃあ行ってくる。会議が始まる昼頃には戻るわねー。」
「はい、いってらっしゃい♪」
ノノミに笑顔で手を振って、部室を出た。窓の外に目をやると、ホシノの後ろ姿が見えた。まだそれほど距離は離れてない。
(あんまり眠くはないけど、生徒とのコミュニケーションも仕事の一環よねー)
そんなことを考えながら、私は浮かれた気持ちで学校を出た。彼女がどこへ向かっているのか。その行先が取り繕われたものだと知らないまま。ただ、軽率に。
~数時間後 アビドス自治区柴関ラーメン~
「ほい、柴関ラーメンおまち。」
そう目の前に差し出された黄金色の麵を見て、便利屋の各人はきらきらと目を輝かせた。
昨日の衝撃的な事件から一日たち、アルたちは何とかかき集めたお金を使って、最後の作戦の準備を終えたところだった。ハルカの所持している起爆ボタンを押せば、アビドスのどこかでとびっきりの大爆発が起こる。今回のラーメンは、決戦前の腹ごしらえというところだろう。
「ひ、一人一杯だなんて…こんな贅沢していいんでしょうか…!!」
口ではそう言いながらも、ハルカの言葉の端々からは歓喜の感情が漏れ出ており、まったくそれらを隠しきれていない。笑顔で麺を啜るハルカを見て、柴大将も満足気な様子だった。
「いやぁいいのさ。みんな、アビドスさんとこのお友達だろう。替え玉が欲しけりゃ言いな。」
「こんなに美味しくてサービスもいいのにお客さんがいないなんて。信じられないね。」
カヨコがそう言って周囲を見渡す。言葉の通り、店の中には彼女たちを除いてお客さんは一人もいない。彼女たちが座ってるカウンター四席を除けば、店は閑散としていた。
「場所が悪いんじゃない?廃坑寸前の学校の近くだし。」
「…それもそっか。まぁ、美味しいからいいけど。それじゃ、いただ…」
そうして、話し終わったムツキとカヨコが箸を手に、麺に手を付けようとしたその時。
「……じゃない。」
「ん?」
バァンっ!!
「友達なんかじゃないわよぉーーーー!!」
アルが、そんな言葉とともに机を思いっきり叩き立ち上がった。
「わわっ!!」
あまりに突然の出来事に、柴大将だけでなく便利屋の面々すら驚きの表情を浮かべている。それほど、突然のアルの乱心ぶりは衝撃だった。
「わかった!!何がひっかかってたのかわかったわ!!問題はこの店、この店よ!!」
「え、なに、アルちゃんどゆこと!?」
アルの突拍子のない発言に、その場の全員が顔を見合わせた。
柴大将も、いきなり店を問題視されて何が何だかわからないという顔だ。
「私たちは仕事しにこのあたりに来てるの!ハードボイルドに!!アウトローっぽく!!」
「なのに何なのよ、この店は!!おなかいっぱい食べられるし、あったかくて親切で!話しかけてくれて和気あいあいのほんわかした雰囲気!!ここにいるとみんな仲良しになっちゃう気がするのよ!!」
「お、な、なんだ、よせやい。いきなりそんな褒められたってこれ以上はサービスしてやらねえぞ?」
柴大将が照れくさそうに鼻元を擦る。事実、アルがまるで欠点化のように口にした今までのすべての発言は単なる誉め言葉である。つまりは「すっごいいいお店」ということで彼女はやきもきしているのだから、はたから見ればこの後継は間違いなく異様だ。アル自身も、心の中の整理がついていない状態である。
「え?みんな仲良しなら問題なくない?なんかだめなことある?」
「ダメでしょ!!めちゃくちゃでグダグダよ!!私が一人前の悪党になるには、こんな店いちゃだめなの!!私はもっと非情で冷酷で無慈悲なアウトローになりたいのであって、こんなほっこり感じゃダメなのよ!!」
「いや、それは考えすぎなんじゃ…。」
「はぁ…すいません…こんな騒いじゃって…。」
「いやぁ、客もいねえし構わねえよ。思春期の悩みってもんがあるだろ。」
暴走するアルを、たびたびムツキが落ち着けようと頑張るがアルは止まらない。椅子に座り直し、自棄になったようにラーメンをすごい勢いで啜り始めた。
「うぅ…美味しい…」
アルの感情が、喜と怒の狭間でグラグラと揺れる。なんだかんだ言いながら麺を啜る彼女を見て、誰もが事態は収束したと考えた。
…ただ一人を除いて。
「…今のってつまり、こんなお店はぶっ壊してしまおうってことですよね、アル様?」
「へ?」
ハルカの突然の質問に、困惑するアル。ハルカはすぐさま近くに置いてあった荷物の中から、黒と黄色の土台に、赤いボタンがついた装置を持ってきた。明らかに、触れてはならない代物である。
「よかった、ついにアルさまのお力になれます。」
「起爆装置?なんでそれを…」
恍惚とした表情を浮かべるハルカ。便利屋の面々ですら、彼女が何の意図でその装置を「今」持ってきたのかがわからない。
だが、便利屋最年長であるカヨコだけはその意図が理解できた。慌ててハルカの持つボタンに手を伸ばそうとするが、あいにく彼女とハルカのいる席は正反対だ。間に合わない。
「ハルカ…ちょっと、待っ…」
ーー刹那、アビドスの市街地に轟音が鳴り響いた。
定められた物語との致命的な差異が、今、漸く姿を現した。
次回【致命的な差異】
最近リンバス×ブルアカがちょくちょく増えてきてて面白いですね。こっそりお気に入りしてる作品も何件かありますし、勝手にキングダムの王騎みたいな感じで読んでます。気持ち悪いですねすいませんでした。
あとキャンプマキ実装されたのに我が母、各務チヒロのキャンプが実装されてないのはどういうことですか。おい聞いてんのかキムヨンハ。おぎゃるぞ。
おぎゃあ…チヒロママぁ…(有言実行)
次回はずっと書きたかったところなので早めに出せたらなと思っています。
誤字脱字とかあればこっそり書いといてください。
それでは、次回も楽しんでいただければ幸いです。ぐっばい。