あの時の後悔も、絶望も、あの日 に埋めてきたから。
悲しむことはもう許されない。必死に生きて、必死にそう在れるように努めよう。
この場所を、守るためなら、私のなんだって代価にしてやる。
ブモォォォォォォォ!!!
『突進が来る!!アルは合図と同時に横へ退避!!3、2、1!!』
「な、なんであたしのところにばっか来るのよー!!!」
私のカウントと同時に、アルは大声を上げながら横の遮蔽へと飛び込んだ。同時に、真鍮の雄牛がさきほどまでアルが隠れていた遮蔽ごと、その後ろにあったビルへと突っ込んでいった。瓦礫から頭を抜いた雄牛はぶるぶると頭を揺らし、その口元、目元から大量の涙を垂れ流している。
今更ながら、あれは幻でも何でもない。正真正銘、私たちの世界にいたのと同じ
「な、なんなのよあの化け物!!銃弾が効いているようにも見えないし、火傷しそうなくらいあっついし!!」
「先生、あの化け物は何?さっき…知ってそうな反応してたけど…」
『あれは…私たちの世界にいた《幻想体》と呼ばれる怪物だ。本来こっちにいるはずないんだけど…と、とにかく突進に気を付けてくれ!!真正面から当たれば無事じゃすまない!!』
私がそう言い終わるのと同時に、真鍮の雄牛は再び後ろ足でがりがりと地面を引っかきながらアルのほうへと突進していく。
「だからなんでまた私なのーーー⁉」
正直言って、戦況は芳しくない。
原因として考えられるのは、彼女たちの戦闘スタイルによるもの。
真鍮の雄牛の外殻は尋常じゃないほど固い。そのため、垂直に打ち込むことが前提の槍や銃弾などは、あの外殻によって弾かれ、(若しくは受け流され)あまり効果がない。あの終止符事務所のヒースクリフが持つロジックアトリエの弾ですら通常ではあまり効果がない。
まぁ端的にいえば、致命的に相性が悪いのだ。
この戦闘が始まってからかれこれ15分ほどたつが、こちらが一方的に削られ続けているような状況だ。あまりいい具合だとは言えない。
(このまま銃撃戦を続けたところで、有効とも思えない。なにか…銃以外で有効な武装はないか…?)
今も尚必死に銃を撃つ生徒たちの姿を見ながら、私は思考する。
真鍮の雄牛の中に隠れているあの人型の部位であれば、銃弾はかなり有効だろう。
だが、あの部位が姿を現すまでには少し時間がかかるうえ、あの形態のあいつは火力がもう一段階アップする。生徒たちが耐えられるかがわからない。
飛び出てくる必要はない、ただ…少しでも本体が見える隙があれば。
「手榴弾、投げるよ。」
シロコが投げた手りゅう弾が噴煙を上げながら爆裂し、真鍮の雄牛の外殻にわずかだが傷をつける。だが、それだけだ。決して有効打とは言えない。
だが、そう思っていた刹那、真鍮の雄牛がわずかに上を向き白い煙を吐き出すのが見えた。
初めての行動だった。ほんの一瞬だったが、それはそのまま見逃すにはあまりにももったいないと思えた。
(条件は何だ?時間経過による排熱?それともただの気まぐれか?)
今までの攻撃になくて、今のシロコの攻撃にだけあったもの…
『…熱か?』
真鍮の雄牛は、自分自身が激しい灼熱の中に置かれている幻想体だ。
燃える体は外殻の中に隠れている本体も燃やし苦しめているが、その苦痛から逃れることはできない。事実、鏡ダンジョンの中で出会った時も奴は激しく暴れまわりながら水を求めていた記憶がある。
つまり、だ。外側から更なる熱を与えられた場合、奴は先ほどのように一時的な排熱を試みるのではないだろうか。
『ムツキ!!前方に地雷を配置してくれ!!ストックまだあるか⁉』
「いっぱいあるよ~!!」
『なら全部だ!!ありったけぶん投げてやれ!!』
「お、いいねー先生!!それなら…遠慮なくやっちゃうよー!!」
ムツキが肩にかけていたスクールバッグを大きく振ると、中から丸い地雷が三つほど飛び出て地面に落ちた。それらは獲物の到来を待つかのようにちかちかと赤い光を放っている。
『セリカとノノミは南方で弾を装填して待機!!シロコは手榴弾の用意だ。次あいつが口を開いたら、その中に思いっきり放り込んでやってくれ!!』
ブモオオオオ!!
何度目かの雄たけびを上げたのち、再び真鍮の雄牛は矢のようにその巨体を放つ。黄銅製の両足がコンクリートをえぐり、熱気と土煙を纏いながらアルの方向へと突進していった。
『アル、マントを地雷の方向へ投げろ!!そいつが引き寄せられてるのは、アルのマントだ!!』
「え、そういうこと⁉で、でもこれ高かったんだけど…⁉」
「社長、今はそんなこと言っている場合じゃないでしょ…!!」
カヨコの叱責と、前方に迫る雄牛の突進を見て決意を固めたのか、アルは自棄気味になりながら羽織っていたマントを地雷の方向へと投げた。
「え、えぇぇぇい!!!!!!!!!」
臙脂色のマントがひらひらと宙を舞い、真鍮の雄牛はまっすぐそちらの方へと向かっていく。向かう先にあるのは、ムツキが設置した大量の地雷。
『退避ーーーーー!!!!!!!!!』
次の瞬間、内臓を揺らすような爆発音と共に、炎が上がった。
粉塵と熱風とが周囲に吹き荒れ、私は反射的に口元を抑えた。
が、そういえば私には口がなかった。目が痛くなる心配もなければ息が詰まる心配もない。いち早く状況を把握しようとすぐさま視界を起動し、爆発の中心部へと向ける。
ブモオオオオ!!!!!!!!!
空気を揺らす雄たけびが、爆発の中心から木霊し硝煙を払う。
天へと向けたその大口。白い煙を吐き出しながら、幻想体は自身の身を焼く熱をどうにかして吐き出そうと躍起になっている。
『今だシロコ!!手榴弾、投擲!!』
「ん。手榴弾、投げるよ。」
シロコの手から離れた手榴弾は、綺麗な放物線を描き真鍮の雄牛の口へと放りこまれ、奴の体内で火を噴いた。
グシャァッ!!!!!!!
何かがひしゃげるような音と共に、真鍮の雄牛の体が地面へと崩れ、口の中から青い肌をした人型の実態が姿を現した。
ーー部位破壊。
幻想体といえど、生命である以上その体はいくつかのパーツに分けられている。PDAの分析能力によって、私の目には敵の特に効果的な部位がどこにどう存在しているかがわかるのだ。
そして、真鍮の雄牛は頭部を破壊した場合しばらくの間は行動が不可能になるはずだ。つまり…
『千載一遇!!ここが勝機だ!!!総員、一斉射撃!!』
周囲に配置しておいた生徒たちが、一斉にトリガーを引く。雄牛を中心として降る弾丸の集中豪雨。地面や周囲の建物の破片がまるで水飛沫のごとく飛び散っていく。しばらく続いた鉛の豪雨は、最後にシロコが投げたもう一個の手榴弾を最後に止んだ。
ただでさえ威力の高いこちらの世界の銃弾をあれほど浴びせたんだ。向こうも無事で済むはずがない。固い外殻と違い、内部の人型の存在の耐久度はそこまでだったはずだ。
「や、やったかしら⁉」
「ちょっ、アルちゃんそれフラグってやつじゃ…」
ブモォォォォォォ!!!!!!!
『…フラグの回収、早くない?』
私たちの慢心を覚ますように。雄たけびが再び上がった。
白煙の奥、外殻の真鍮はへこみ、口の中は血で満ち満身創痍の状態ではあるがそれでも。
あの弾幕の中でも生き残り、真鍮の雄牛は私たちの前に再び立ち上がっていた。
(どうする、もう一度やるとしてもムツキの地雷はもう全部使いきっただろう。混乱状態が解除されたってことは、外殻の強度ももとに戻っているはずだ。くそ、何か…さっきと似たようなのがあと一発でもあれば…!!)
ダァンッ!!
『…ハルカ?』
銃声が聞こえて前を向くと、ハルカがショットガンを構え真鍮の雄牛の正面に立っていた。両雄の距離、目視から推測できる範囲だと5mも空いてないだろう。
「な、なにやってるのよハルカ!!ちょっ、逃げなさい!!危ないわよ!?」
アルの言葉に聞く耳も持たず、ハルカはもう数発奴に向かってショットガンを放つ。が、雄牛も怯みはするものの弾丸は外殻に弾かれあまり効果的には見えない。
そして、世の中には等しく順番が存在する。ハルカの弾丸が尽きたように見えたその瞬間、真鍮の雄牛は真正面からハルカへと突撃していった。
「ぐっ…!!」
うめき声が聞こえて、ハルカの体は突進の勢いで数メートル先へと吹き飛んでいった。
そのあとを追うように、真鍮の雄牛は後ろ足で数度ガリガリと地面を引っかいた後、まるで重厚な砲弾のようにハルカへと突進していった。
他の生徒たちも発砲し気を引こうとするが、奴の進路が変わることはない。地面からぼろぼろの状態で立ち上がったハルカへと、雄牛はまっすぐに、微塵も速度を落とさずに向かっていく。
だめだ、止めようにも間に合わない。一度隙ができた以上あいつの攻撃からかばうことは不可能だ。
接触まであと数メートル。これから起こるであろう事象をただ眺めることしかできない私は…
ふと、ハルカが手に何か持っているのに気が付いた。
それは四角い箱のように見えた。少し目を凝らすと、色もはっきりと見えてくる。黒と黄色の箱…そしてあれは…
ーー赤い、ボタン?
ドォォォォォンッ!!!!!!!!!
激しい爆発音と共に、真鍮の雄牛が今までで一番大きな悲鳴を上げ爆散した。瓦礫を押し上げて立ち上る業火と熱。それら全てを巻き込みながら、幻想体の体躯は一つの卵となった。
「…へうぇ、や、やりました!!アルさま!!」
真鍮の雄牛の突進をうけ、これほどの爆発の中心にいたのにも関わらず、ハルカはかすり傷を何個かだけ携えこちらに手を振りながら駆けてくる。
【はふぅ…敵対存在、沈黙しました。鎮圧完了です、皆さんお疲れさまでした。】
無線機からアヤネの声が聞こえてきて、私は全身の力が抜けたようにその場にへたり込んだ。
この世界になんで幻想体がいるのかとかの理由はよくわからないけど、少なくともこの世界でも奴らが鎮圧できるというのが分かったのはよかっただろう。
「というか、よくあんなところに爆弾なんて設置してたわね。いつの間に?」
「そうそう、お手柄だよハルカちゃん!!」
「あ、あの爆弾は…ですね。その…皆さんがよくいらっしゃるあのラーメン屋さんに、元から設置しておいたんです。そしたら皆さんを一網打尽に…」
「元から爆破する気だったってこと⁉感謝したあたしがバカだった、やっぱりとっととどっかいけぇ!!」
ねぎらいあう生徒たちの姿を横目に、私は目の前にある幻想体の卵に目を向けた。
『さて、あとは後始末をどうするかだけど…』
ファウストの話によれば、幻想体は不死身だがその存在が脅かされるほどのダメージを負うと、一時的にこのような卵の状態へと変わる。そしてしばらく時間が立てば(正確な時間はわからないけど)またこの卵から奴らは復活するらしい。
『だから放っておくわけにも行かないんだよな…とりあえず、ファウストに連絡してみようか…。』
「いいえ、その必要はありません。」
聞いたことのない声が市街地に木霊して、その場にいた全員が一瞬で警戒態勢に入った。少し高い、まだ幼さが残る少女の声。
それと同時に、市街地の奥から大量の足音が規則的に聞こえてくる。
「この声…まさか、あんたなの?」
「ね、ねぇシロコ先輩。あれって…」
「うん、あの校章。間違いない。ゲヘナだ。」
「その幻想体の卵は、こちらで預かりましょう。私たち…」
「ゲヘナ風紀委員会が」
はい、普通に失踪してました。
気が付いたら眺めることしかできないも終わってたしヴァルプルギスもブルアカの周年も終わってました。
これでも一応人格&EGOコンプ勢なのでちゃんとやってはいるんですけどね。魔法少女ドンキと君主どっちも天井しましたけど。
ブルアカも天井でナギサしかゲットできませんでした。萎え。
それでは皆さんもいい夏休みを。
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褒められると筆が伸びます。
それじゃあgoodby~