初めてだったのでびっくりしました本当にありがとうございました。あざす。
「あっついなぁー…」
頭上でじりじりと照り付ける太陽が、気だるげに歩く私を見下ろしながら容赦なく熱波を浴びせてくる。人の気配がしない住宅街にはカラッとした風が吹いていて、何処からか茶色い砂埃を運んできていた。
「大丈夫ですか~?二人とも。」
『基本的にずっとバスで移動してたから...これは...辛いね...』
ロージャがノノミから渡された水を勢いよく喉に流し込んでいるの横目に、私たちはコンクリートでできた迷路を歩いていく。かれこれ二時間近く歩いているが、前哨基地っぽい建物などどこにも見当たらない。本当に近づいているのだろうか。
『アヤネ、基地まではあとどのくらい?』
今回行う奇襲作戦の内容は、平たく言えば敵の殲滅と敵の物資の強奪、もしくは破壊だった。アビドスの皆の話によれば、ヘルメット団の持っている物資は基本的に法外な手段を用いて入手されているため燃やしたり奪ったりしても特に問題は無いという事だった。人の事を言えないのはわかっているが、彼女たちと私たちの倫理観にそんなに違いが無いと思うのは私の気のせいだろうか。
ガガッ
マイクのノイズ音と共に、頭につけた無線機からアヤネの返事が聞こえてくる。
≪うーん...おかしいですね。座標的にはもうついているはずなんですが...≫
アヤネが困ったようにそう言って、私たちは周囲を見渡す。周囲は砂と廃墟があるばかりで、人影すら見当たらない。
≪もう少し周囲を探索してみた方がいいかもしれません。ここの辺りは特に入り組んでいるので…もしかしたら見逃してる可能性も…≫
アヤネの言葉を聞きながら、私が顔を上げたまさにその時だった。
砂煙と廃墟に彩られた視界の端で赤いヘルメットが映り込んだかと思えば次の瞬間
ダァンッ!!
耳をつんざくような炸裂音と共に、白い光が煌めいた。
「っ先生!!」
「ダンテ!!」
シロコとロージャの叫び声で何が起こったのかを理解し、これから感じるであろう痛みに覚悟しながら咄嗟に目を閉じた。
が、いつまでたっても痛みどころか着弾の衝撃すら感じない。
恐る恐る、もう存在しない目を開く。
「…あっぶなー。大丈夫~?先生。」
残響の中。鮮やかなピンクの髪が黒いシールドの後ろで揺れていた。
ホシノは呆然としている私を見て安心した様に息を吐くと、弾丸を放った生徒の方を見て手に持っていたショットガンの銃口をゆっくりと向ける。赤いヘルメットをかぶった狙撃手は怯えた様にそのままビルの奥へと隠れていった。
『あ、ありがとうホシノ。助かったよ。』
「お礼はいいって先生~。それよりも……多分、今からが本番だよ。」
『え?』
ホシノの言葉への答え合わせだろうか、左右から私たちを挟み込むようにして大勢のヘルメット団員たちが、廃墟の間からその姿を現した。こんな大勢の兵隊、何処に隠れていたんだろう。
「オラ!!!アビドスの奴らが来たぞ!!!」
「今は物資に余裕がない!!!挟み撃ちしてなるはやで片づけるぞ!!!」
「ぶっ潰せぇ!!」
「さっきの奴が報告したっぽいわね...くそ、撃ち返せばよかった!!」
「セリカ、落ち着いて。多分もう私たちがここに来た時点で存在はバレてた。一番最初に大将の先生を狙って...統率が欠けた隙を狙って一網打尽。そういう作戦だったんだと思う。」
「へぇ~?あいつら結構頭が回るらしいねー。ダンテ、行ける?」
何故か既にやる気満々なロージャに対し、私はゆっくりと首を縦に振った。
双方の了承が取れたその瞬間、ロージャの姿が屈折しどこかの世界のifが彼女へと重なる。
黒い羽織が、砂色の世界で蜃気楼の様に揺らめいた。
全身が夜闇の様に深い黒に染まる中、腰に下げている銀の刃だけが太陽を浴びて月明りの如く鈍く光る。
「…ふふっ、ダンテ。今度は誰を切り裂けばいいの?」
『黒雲会・若衆』
自分に斬れぬものは無いと豪語する彼女の剣術は、集団戦のこの状況にはうってつけだろう。
『二手に分かれようか。』
今回の目標は敵の殲滅と物資の強奪、もしくは破壊だ。わざわざ私たちを待ち伏せして待っていたということは、この先に行かせたくない理由みたいなのがあるはず。前回戦ってみてわかったけど、物資さえあれば戦闘能力は明らかにこっちが優勢なのだ。ならばわざわざ過剰な戦力を一か所に集めて迎え撃つよりも、分散させて異なるルートを同時に探索する方が聊か効率がいい
『ホシノ、ロージャは私と一緒に右のルートを突破しよう。シロコ、セリカ、ノノミの三人は左をお願い。アヤネは三人の方で何か大きな変化があった場合すぐ私に伝えてほしい。それまでそっちの指揮は…アヤネに任せる。』
≪え、私ですか!?が、頑張ってみます!≫
『それじゃあ...』
『≪戦闘、開始!!≫』
重なった号令と共に、私たちはそれぞれ左右へ駆けだした。
「ーーはぁっ!!」
ロージャの振り下ろした刀が放たれた銃弾を切り裂き、刀身を焼くようにして火花が散る。
「くそっ!!なんだあいつ、銃弾を斬るなんて聞いたことないぞ!?」
「いいから早くリロードしろ!!」
銃弾を籠めるという行為によって生じるその数秒の隙を、彼女が逃すはずもない。刺青によって強化された彼女の両脚から尋常ならざる脚力が生み出され、地面が砕ける音と共に彼女の身体が数メートル先へと弾丸の様に跳んでいく。
「「あ…」」
刹那、鈍い打撃音と共に赤と黒のヘルメットが宙を舞った。
「おー、すっごい動きー。先生、私から離れないでねー?」
私とホシノへ向かってくるヘルメット団の少女たちの猛攻を、ホシノは盾でうまく防御しながら逆になぎ倒していく。続々と後続が流れてくるのを見て、取り囲まれないように一旦後ろに下がる。
ーーここだ。
『ホシノ、射撃しながら前に詰めていける?』
「ふふふ、私に任せなって。」
そう言って、ホシノが盾の上から顔を覗かせ、ショットガンを敵へと向けながら前へ進んでいく。向こうからの攻撃は盾で防ぎながら一方的に銃を連射し、正面から当たった敵は倒れるか、衝撃で奥へと押し込まれるかの二択だ。そして、その怒涛の渦中で生き残った敵ですら。
「良いパスね、ホシノ!!」
ザンッ!!
押し込まれた先。ロージャの一閃が、真昼の光芒となりその場にいた敵全員を切り裂いた。
ヘイローのおかげで死んでは無いだろうが、それでもしばらくは動けないだろう。
『ここら辺は片付いたかな?それじゃあ先に進もうか。』
廃墟の隙間を、湧き出る敵を蹴散らしながら奥へと進んでいく。
「あ、ねぇダンテ。あれじゃない?あの積み荷。」
ロージャが指さした先を見ると、廃ビルにの影に隠れるようにして青いブルーシートの上に茶色い木箱が幾つも積み重なっているのが見えた。アレが今回のターゲットかな?
と、その時。私が着けていた無線機からアヤネの焦ったような声が聞こえてきた。
≪先生、聞こえてますか!?≫
『聞こえてるよアヤネ。そっちで何かあったの?』
≪いえ、こっちは無事に占領が完了しました。ですが、ドローンの映像で、そっちに巨大兵器が向かっているのが視え...≫
ドォォーンッ!!!!!!!!
忠告は遅かった。物資と私たちの間に飛び込むように、壁を突き破って二足歩行の巨大な兵器が姿を現した。
両手に備え付けられたガトリング二丁と、頭部に顔の様に取り付けられている大砲。堅い重装甲に覆われたその兵器は、彼女たちの執念と私たちに対する殺意の表れの様にも思える。この兵器が果たして私たちだけで対処できる様なものなのか、判断すらできない。
少しのノイズの後、機体の中からパイロットと思われる少女の自慢げな声が聞こえてくる。
「ははは!!驚いたか!?これはとある筋から提供してもらった最強の有人兵器!!その名も『ゴリアテα』!!本当は次の襲撃の時に使おうと思ってたけど計画はもう変更だ!!」
思い駆動音と共に、ゴリアテが両手の銃口をこちらに向ける。
『っ、まずい!!』
ダダダダダダダダダッ!!!!!!!!
荒ぶる銃声が鼓膜を揺らし、銃弾が私の頭をかすめる。放たれた弾丸は豪雨の様に私たちへと襲い掛かる。
「うへ~。地面が穴ぼこだらけだねー、どうする先生?」
慌てて三人とも近くのビル影へと飛び込んだから当たらずに済んだが、さっきまで私たちがいた地面が蜂の巣になっているのを見ると、ホシノやロージャはともかく私は骨すら残らなかっただろう。
今変な体制で飛び込んだせいで無線機も壊れてしまった。こんなことなら、イシュメールやウーティスからちゃんとした体の使い方とかそういうのを学んでおけばよかったと後悔する。
「ん?あいつらどこに行った?おい出てこい!!逃がすと思うなよ!!」
敵は私たちの場所にはまだ気づいていないみたいだけど、それも時間の問題の様な気がする。
うーん...こうなったら。
『あれを…使うしかないかな?』
私は咄嗟にPDAを取り出し、彼女の囚人画面を開く。そして、人格欄の横にあるページ。
E.G.Oと書かれている画面を、起動した。
煙に満ちた戦場のド真ん中。
地面に散らばった大量の薬莢を踏みしめながら、ゴリアテが私たちを探しているのが見える。タイミングはあれが私たちに背中を向けたその瞬間。
「くそ、あいつらどこ行ったんだ...?」
ーー今だ。
『ホシノ、ロージャ!!』
「オーケーダンテ!!」
「りょーかーい!!」
声と共に、二人が一斉に別のビル影から勢いよく飛び出した。
「わざわざそっちから出てくるなんていい度胸だな!!」
ゴリアテの銃口がそれぞれホシノとロージャへ向けられ、そして弾丸の雨が彼女たちを襲う。
「よっ、ほっ、とっ。」
ホシノは盾を持ちながらも、軽く素早い動きでそれを避ける。弾薬を打ち切ったのゴリアテのガトリングがキュルキュルと音を出した。リロードの隙は、銃を使う以上どうしても付きまとう隙だ。
「そろそろ...行こうかな!!」
声がして、マゼンタのマントが風と共に靡いた。
ゴリアテの足元に着地した
「ちゃんと..掛かってよ...!!」
ガァンッ!!
爆発音にも似たその打撃音と共に、ゴリアテの身体が振動する。スパナは機体の足元へワニの様に噛みつき、ブルブルと震えながらその躯体に残響を残していく。
「はぁっ!!」
ガゴォンッ!!
振り抜きと共に金属をぶっ叩いた時の様な音が出てゴリアテの体がぐらりと揺れた。
振動爆発。
『バラのスパナ工房』人格のロージャは、共振スパナと呼ばれる武装で敵の体に振動を残す。残された振動を更に大きな衝撃で『起爆』することで、幻想体で在れ、人間で在れ、はたまたこういった兵器でさえ、混乱や何かしらの不具合を強制的に引き出すことが可能だ。そして、それはこの巨大兵器ですら例外ではないのだが…
ドォンッ!!
『…!!ロージャ!!』
失敗した。
振動が足りなかったのか、ゴリアテはあと一歩というところで踏みとどまり、そのまま足元のロージャへ向けて頭部のバズーカをぶっ放す。直撃しているなら、間違いなく時計を回すことになるだろう。
「ひゅー、あっぶなー!!」
煙の中からロージャが飛び退きながら現れるのを見てほっと胸をなでおろしたのも束の間。装填が済んだ両手のガトリングが、再び動き始める。
散弾銃の破裂音とガトリングの連射音、そしてスパナの散らす火花が互いに交錯し、戦場を砂煙で覆う。
さっきのロージャの攻撃は、スパナに掛かる負荷が大きいため鏡ダンジョンなどでない限り連発が難しい。
だけど、私が彼女たちに提案した作戦はまだ終わってない。
二人に頼んだのは、最初の一撃が失敗した場合なるべく多くの振動を付与することと、もう一つ。
【資源】が貯まるまでの、時間稼ぎをすることだ。
「ふふ、無駄だよ。」
ホシノの盾が砲弾を弾き、勢いそのまま盾をゴリアテの脚部へと叩きつけた。
ゴリアテの身体が、少し揺れる。
「ダンテ!!」
声が聞こえた。
彼女の青い瞳が、有無を言わさず私にやるべきことを伝えてくる。
即座にPDAを開き、私はEGOを実行する。
『承認』
あらゆる攻撃には、『罪』が宿る。
それはその人格の持つ性格で在ったり、経歴で在ったり未来の可能性だったりする。
傲慢、色欲、怠惰、暴食、嫉妬、憤怒、憂鬱
『罪』は感情を揺さぶる動力となり、同時に誰かの生への感化を促す媒介でもある。
パキッ
バリンッ!!
鏡が割れる音と共に彼女の表象が砕け、苔色の殻のような服で覆われた姿へと変わる。髪の毛の後ろの部分は緑の粘液へと変化し、クリーム色の真珠が胸の中心で綺麗に光っていた。
誰が視ても異様とわかるその風貌は、人格による変化ではない。
ーー【EGO】
幻想体と呼ばれる怪物たちの自我や感情を自らの力とし、その力を己の武装とする。
彼女の纏う外殻と振るう斧は、文字通りその化け物の力を取り込んだ結果であり、それらは人知を超えた強力な武装、そして技となる。
「ふっ...!!」
彼女が手に持っていた斧を大きく振ると、その先から緑の粘液が放たれ、ゴリアテへとくっつき脚部を地面へと固定する。
「くっ、なんだこれ...!!動かない!!」
「結構粘っこいからね...絶対逃げられないよ!!」
好機と言わんばかりに、ロージャの身体が空高く跳ね上がり粘液が星の様に宙を舞う。
落下の衝撃と前方への跳躍で生じる推進力を以て放たれるその一撃は、たとえこの世界の
「はぁっ!!」
バァァァァァァンッ!!
振動爆発。
貯まりにたまった振動が一斉に襲い掛かり、付着していた粘液が四方へと飛び散った。
振動に耐えきれなくなったゴリアテの身体が、地面へと落ちーー
ガンっ!!
「はっ、残念だったな!!」
なかった。再び寸でのところで耐えたゴリアテは、不安定な体制のまま揺れながらも、ロージャとホシノへ全ての武装を向ける。
「これで終わりだぁぁぁぁぁ!!!!!!!!」
少女の叫び声と共に、ガトリングと砲台から音が鳴る。この至近距離であの威力だ。当たれば即死は免れないだろう。
だけど生憎、今回時計を回す予定は無いのだ。
「…………ふふっ。それはどうかしら?」
ガシャンッ。
「……は?」
そんな拍子抜けする音と共に、ゴリアテの脚部が断裂した。
断裂面でボコボコと泡を立てているのは、EGO『沸き立つ腐食』によって生じた緑色の腐食液。
それがとどめとなったのか、元々振動爆発の影響で不安定になっていた機体が一際大きく揺れ動き地面へと沈んだ。
「ホシノちゃん!!」
「まっかせてー!!」
ホシノは軽快な動きで地面に横たわるゴリアテの上へと飛んでいき、動力炉があるであろう心臓部へ銃口を押し当てる。
そして、引き金が引かれた。
バンッ ガンッ バンッ
バァンッ!!!!!!!!
一際大きな銃声が鳴り響き、煙と炎を吹き出して機体は沈黙した。操縦していた子も直前で逃げているのが見えたし、まぁ丸く収まったのかな?
パリンッ
人格が鏡へと還り、再びいつも通りのロージャの姿へと戻る。
「お疲れ様~ホシノ!!かっこよかったよー!!」
まるでペットを愛でるかのように、ロージャはホシノへ抱き着き頭をわしゃわしゃと撫でまわした。
「ちょっ、先生大袈裟だよー。」
困ったようにしているホシノだが、どうやら嫌そうなわけでもないみたいだ。この微笑ましい光景を見守ってても良いかなと思ったけど、アヤネ達との連絡が取れない以上早めにことを済ませるのが一番な気がする。
『二人ともお疲れ様。早めにみんなと合流して、荷物をどうするか決めよう。』
「ははっ、金目の物がたっくさん入ってるといいわね?」
「うーん、弾薬とかだと思うからあまりお金にはならないかな~。」
バチッ
『………ん?』
平和な会話の中、不穏な音がして周囲を見渡す。
バチバチッ
バチッ
これは、火花の音だろうか。
よく見れば、ゴリアテから立ち上がってる煙と炎が、段々と大きくなっているように見える。
待てよ?K社でこいつと似たような兵器を壊した時、それらはどうなってた?
少し前の記憶を思い越す。
あれは、ダンジョンでの出来事だった気がする。調子に乗ったヒースクリフが、極至近距離であの兵器の中にバットを突っ込んで、そして...
『っ!!二人とも、離れろ!!!!!!!!』
私の絶叫の意図を、いち早く読み取ったのはロージャだった。
ホシノを抱きかかえるようにして上に覆いかぶさり、そしてそれと同時に。
背後の残骸が、大きな音を立てて爆発した。
「…………………え?」
声なのか、それとも反射的に出たただの音なのか。
自分の上に乗っている目の前の焼け焦げた肉の正体を理解したくないというような様子で、ホシノが私の方へゆっくりと軋んだように首を動かす。
「ね、ねぇ…先生。これ...夢だよね?」
彼女の瞳が揺れる。
私は漸く理解した。
私たちの
どうも天・環です。フルネームは天雨巳環です。あ、別本名じゃないです。
前回の話投稿した当初あんま伸びなかったから「あぁ受けなかったのかな」とか思ってたらクリスマスにいきなりランキング載っててビビりましたよね。あ、そんな時間差で来ることあるんだと思って。本当にありがとうございます。
あ、今回戦闘描写っぽいものを書いたんですがどうでしたかね?あんまり得意じゃないのでこれで人が減ったら普通に泣くんですけどまぁそれはそれでしょうがないっすね。(仲正イチカ)
それじゃあくっだらねえ作者の自語りはここら辺にして、今回も読んでくれてありがとうございました。
見たいEGOとか人格とか書いてくれれば全然採用するかもなので暇な人は書いといてください。
ここまで読んでくれてありがとうございました。