「て、敵襲!!敵襲ー!!」
月明りが街を照らす夜の10時。
カタカタヘルメット団のアジトは、突然の襲撃を受けた事で見るも無残な有様になっていた。
カタカタヘルメット団推定約50人の小隊に対し、襲撃に携わったのは僅か5人。10分の一である。
うち四人はキヴォトスの常識に習い、手に各々の重火器を持ち、果敢に敵へと向かっていくアビドスの生徒たち。そして残るもう一人は…
ガァンッ!!
「あがっ!!な、なんだこい...ギャッ!!」
ヘルメットをかぶった少女が喋り終わるよりも前に、ロージャの金色の拳がヘルメットを叩き割った。彼女の手にて輝いていたディエーチの光が鳴りを潜めると同時に、後ろから反対側の制圧を終えたノノミたちが近づいてくる。
「わ~、先生強いです☆」
「ふふん、こんな無知を晒してるようなやつらには負けないわよ。」
「おぉ~、そのセリフいいねー、おじさんもそういうの言ってみようかなー。」
和やかな雰囲気の彼女たちの周りには、既に意識を失っている少女たちが何十人も倒れていて、さながら砂嵐が過ぎ去った後かのようだった。
まぁ、その表現もあながち間違いではないのかも知れないが。
「ここら辺は片付けた。早く次のブロックに行こう。」
シロコの言葉で、たった5人の遊撃部隊は基地の更に奥へと進んでいく。
セリカの誘拐が発覚してから既に一時間。到着から間も無く始まった戦闘に動じることなく、彼女たちはたった5人でアジトの襲撃作戦を成功させていた。
今のところ奇襲作戦は概ね順調で、ヘルメット団は既に兵隊50、無人ドローン10機、そして改造された巡航戦車3台を失っている。一度の戦闘で、しかもたった5人相手に出す損害としては、かなり大きなものだ。兵器が点検中のところを襲撃したため、アビドス側の損害もかなり少なく済んだ。快調である。
「にしても広いわねー。どこが中心なのかもよくわからないんだけど。」
ロージャの呟きと同時に、オペレーターのアヤネの声が全員の耳元で響いた。
≪ははは…まぁ、敵の本拠地ですからね。ロージャ先生の疑問も感想もわからなくはありません。ドローンで軽く調査したところ、既にここら一体がヘルメット団の手に落ちているようで…≫
「いた!!いたぞ!!アビドスの奴らだ‼︎」
「……増援が来るのも早いってことね。ありがとアヤネ。」
廃墟の隙間からまるで虫のように湧いてくるヘルメット団を見て、ロージャは呆れたような、うんざりしたような複雑な表情を浮かべてPDAを操作する。
(...この規模の連戦ってなると...私の
画面に現れる承認の文字と共にロージャの姿が代わり、手には輝く知識の代わりに棒状のスタンガンが握られた。
「こちらLCCBロージャ、再交戦開始。行くわよ皆んな!!」
声と共に、ロージャ達は放たれた矢の如く敵の方へと突貫していく。
「シロコとノノミは左右へ展開!ホシノは盾を構えたまま私と一緒に‼︎ど真ん中ぶち抜くよ!!」
「りょーかい!!」
味方に最低限割的確な指示を出して、ロージャは低姿勢のままホシノの少し後ろに張りつくようにして走る。いつもの彼女であればこのような戦略的な指示はしないが、係長の人格に染み付いた経験がそのまま反映された結果、今の彼女は普段の何倍も戦況に対する理解と対処の構築が早い。
数の差なんて見えていないかのように、臆せず真っ直ぐ進んでいくロージャとホシノを鉛の雨が襲う。だが、それらはホシノの持つ盾に阻まれたまま彼女2人に届くことはない。二人はそのまま敵陣のど真ん中へと接近し、
「ブリーチング!!」
バァンッ‼︎‼︎
薙ぎ払われた盾と、同時に突き出されたロージャの脚が、敵陣の中央を吹き飛ばした。
間髪入れずに敵陣の中央から左右へと攻撃を仕掛ける二人。瞬く間に始まった超近距離の戦闘に、中、遠距離の戦闘にしか慣れていない兵士は成すすべなく倒れていく。
「くそっ!!!左右に広がれ!!」
「あ、どうも~☆」
「なっ...」
ドォォォォォォンッ!!!!!!
そうして、距離を取ろうと左右に逃げた敵もノノミの展開する弾幕とシロコの放つ戦術支援システムによって吹っ飛ばされていく。左右から中心への距離が段々と縮まっていき、そしてスタンガンの電光が一際強く光り輝いた時。
「よーっし、終わり!!」
あれほど居たはずのヘルメット団の兵士たちの中で、立っているものは誰一人としていなかった。
ガタン ガタン
「う、うーん......へ!?」
暗闇の中で、セリカは目を覚ました。体を起こして周囲を見回し、自分の現状を何とか把握しようとするも見えるのは隙間から差し込む少しの光だけ。
「こ、ここは...!?私、攫われた!?」
ズキッ!!
「あう...頭が...そうだ、私ヘルメット団の奴らに...」
急に大きな声を出したせいなのか、それとも気絶させられた時の衝撃がまだ残っていたのか、セリカの頭がズキンと痛む。しかしそんな彼女の事情なんてお構いなしに、トラックはどこかへと向かって進んでいく。
「ヘルメット団め.....一体私をどこに連れていくつもりなの?」
現在地を把握しようと、セリカは隙間から差し込んでいる光へゆっくりと顔を近づける。砂埃の先に見えたのは、既に見慣れた砂漠の景色。だが、その中でセリカの目を引いた特徴的なものが、一つあった。
「砂漠…線路!?」
このアビドスに置いて、砂漠と線路の二つが混在する場所は一つしか知らない。
「ここ...アビドス郊外の砂漠!?」
「そ、そんな。ここからじゃ、何処にも連絡が取れない!!もし脱出したとしても、対策委員会のみんなにどうやって知らせれば...。」
ようやく自分が置かれている状況を理解したセリカは、力なくその場にへたり込んだ。震える手で膝を抱え縮こまる彼女の姿からは、いつもの元気な様子は微塵も見えない。
「どうしよう...みんな心配してるだろうな...。」
不安なこんな状況で、真っ先に思い浮かぶのは仲間の顔。
気が強く、不器用な彼女だが、それでも仲間の事は何よりも大事に思っていた。彼女が自分の時間を削って数多くのバイトをこなしているのも、たまに怪しい商法に巻き込まれたりするのも、それらすべて仲間の為を思っての事だ。
本当の彼女は誰よりも素直で、仲間思いな少女だった。
「このままどこかに埋められちゃうのかな。誰にも気づかれないように。連絡も途絶えて…私も他の子たちみたいに、町を去ったって思われるんだろうな。」
「…………」
「…裏切ったって、思われるかな...。」
ぽつりと口から出たそのたった一言で、セリカは自身の胸が痛い程締め付けられるのを感じた。誰よりも大事な仲間に、裏切り者と思われたまま...
「ーー誤解されたまま、もう会えないまま死ぬなんて...そんなの...」
「そんなの、ヤダよ......。」
彼女の瞳から、水滴が一粒、二粒、四、六粒と立て続けに落ちていく。
セリカにとって、最も苦しく最悪な最期が明確に彼女の中に描かれてしまった。それによって、張り詰めていた彼女の心はゆっくりと悲哀に浸されていく。
「う、ううっ...。」
止めようとしてもどうしても漏れ出る涙で顔と袖を濡らしながら、セリカは嗚咽を漏らす。そして、一人の大人の姿を思い出す。
初日だというのに妙になれなれしく、誰よりも真っすぐ立っていたあの大人を頭の片隅に思い浮かべながら、セリカは小さく、小さく呟いた。
「助けて…先生…」
ドガァァァァァァンッ!!!!!!
「う、うわあああああっ!?」
突如としてセリカの座っていた荷台が揺れ動き、何が起こったのかを理解する間も与えないうちにトラックは横転した。
「かはっ、けほっ、けほっ...。な、なに!?爆発!?トラックが爆発した!?砲弾にでもあたったのかしら...?」
久々に感じる外の景色。
まだ外は薄暗いが、それでもあの暗闇から解き放たれたというのに、セリカは突然の状況に混乱しそんな事に意識をむける様な余裕はなかった。
「く、くそ...。お前、何処にこんな爆弾を隠して...。」
「へ?ち、違うわよ!!」
運転席からよろめき出てきたヘルメット団の少女が、恨めしそうにセリカを見つめる。弁解虚しく、ヘルメット団の少女は懐から銃を取り出しセリカの頭へと向けた。
「こんな形になったが、依頼は果たさないと...。せめて、お前だけでも消す!!」
そういって、少女は引き金に指をかけた。混乱の最中にいたセリカは突然のことに防御する思考にも至らず、ただ次の瞬間に訪れるであろう衝撃にぎゅっと目をつぶることしかできない。ここで本当に終わるのかと、そんな考えがセリカの頭を過る。
その時だった。
キィィィンッ...
バサァッ!!
鳥が翼を広げるような音共に、セリカは自身の身体がふわっと浮き上がるかのような感覚を覚えた。
次の瞬間聞こえてきた爆発音と悲鳴のような声を聴いて、彼女はゆっくりと瞳を開き…そして、目の前の光景に目を疑った。
「久しぶりねセリカ。目は覚めた?」
「せん...せい?」
数時間ぶりに出会ったロージャの姿をロージャと認識できなかったセリカだったが、それも無理はない。
何せ、今の彼女は謎の文字列が記された白い礼装を見に纏い、背中には黄金色の透明な翼が生えていたのだから。
「せ、先生なにその恰好...!?コスプレ!?」
「まぁ、そんなものかしら。執行は済んだし、まずは皆のとこに行きましょ?ね?」
そう言って、ロージャは歯を見せニカっと笑う。
見る者を自然と安心させるような、あの太陽の様に明るい笑顔をまっすぐセリカに向け、そうしてゆっくりと仲間の下へ降りていった。
≪セリカちゃん発見!!生存確認しました!!≫
「あ、アヤネちゃん?!」
「こっちも確認した!!半泣きのセリカ発見!!」
「なにぃー!?うちのかわいいセリカちゃんが泣いてただと!そんなに寂しかったの?ママが悪かったわ、ごめんねー!!」
「う、うわあああ!?う、うるさいっ!!な、泣いてなんか!!」
「嘘!!しっかりこの目で見た!!」
「泣かないでください、セリカちゃん!私たちが、その涙を拭いて差し上げますから!」
「あーもう、うるさいってば!!違うったら違うの!!黙れーっ!!」
救出されたセリカを待っていたのは、先輩たちによる暖かな冷やかしだった。泣いていた事実を何とかして隠そうとするが、少し赤くなっている目元を見ればその事実が嘘ではないということは一目瞭然。彼女の否認は何一つとして意味を為していなかった。
「いやー、間に合ってよかったわセリカ。生きててくれて、ほんとによかった。」
「せ、先生まで...!?というか、どうやってここまで来たの!?」
セリカのその質問を聞いて、いつもの姿に戻ったロージャは少し考えた後、意地の悪い笑みを浮かべながら胸を張って答える。
「そりゃあセリカ!!攫われたお姫様を助けるのは、勇者の役目でしょ!!」
その言葉を聞いて、セリカの顔が燃え上がったかのように真っ赤に染まっていく。口元はわなわなと震え、セリカはその熱を全て放出するかのように息を吸い込み…
「バッカじゃないの!?」
めいっぱいの感情と共に、そう叫んだ。
「だ、誰がお姫様よ!!冗談やめて!!ぶ、ぶん殴られたいの!?」
「そんなこと言って~、顔真っ赤よセリカー?」
「う、うるさいうるさい!!」
「うへ、元気そうじゃーん?無事確保完了ー。」
二人のやり取りとホシノの言葉で、他のメンバーもほっと胸を撫でおろした。奥底で張り詰めていた各自の緊張が、ゆっくりとほどけていく。
≪よかった…セリカちゃん…私、セリカちゃんに何かあったんじゃないかって......。≫
「アヤネちゃん...」
無線から聞こえてくる涙声を聴いて、セリカが少し申し訳なさそうに耳を下げた。
「………!!みんな、まだ油断は禁物。戦術サポートシステムを使ってトラックは制圧したけど、まだここは敵陣のど真ん中だから。」
「だねー。人質を乗せた車両が破壊されたって知ったら、敵さん怒り狂って攻撃してくるよー。」
ホシノの声と同時に、遠方から兵器の駆動音と多くの人間の足音が聞こえてくる。
どうやら、再開を喜ぶ時間はまた後でなりそうね、と思いながら、ロージャは再び自身の人格牌を操作する。
パキンッ!!
ロージャの姿が多次元屈折の影響で一時的に不安定になり、鏡が割れる音と共に可能性が重ねられる。
「南部ツヴァイ協会5課、ロージャ。あなたの盾になりましょう。」
「なっ…///」
紺のツヴァイの制服をはためかせながら、ツヴァイの人格をかぶったロージャはそう言って自然とセリカの前に立つ。彼女をまるで本当のお姫様の様に、警護対象として定めながら、手に持ったハンマーをゆっくりと敵の方向へ向けた。
≪前方にカタカタヘルメット団の兵力多数確認!!さらに巨大な重火器も多数確認しました!徐々に包囲網を構築しています!!≫
「敵ながらあっぱれ……まぁせっかくだし、包囲網を突破して帰りますかねー。」
「ぱっぱと終わらせておいしいものでも食べに行きましょっか。」
それじゃあ…
「「行こうか?」」
~連邦捜査部 シャーレ部室内~
『…zzz』
ピロンッ
≪人格変更申請 ツヴァイ協会5課≫
『………zzz』
ザザッ
ザザッ
≪ーーーー承認。囚人No.9 ロージャ=ロジオン=ロジオン ロマノヴィッチの人格をLCCB係長から南部ツヴァイ協会5課へと変更します。≫
ザザッ
ザザッ
『……ん?あれ……なんか…通知が来てた気がするけど……気のせい………か……二度寝しよ。』
『…………zzz』
というわけでセリカ救出作戦でしたーーーー!!!!!!!話のテンポ考えて救出後の戦闘まとめて削りました。見たかった人いたら申し訳ない。
というか俺のブルアカ話の進み遅くね?って思って考えたらどう考えても原作でカットされてる場面を妄想で保管して書いてるからですね。まぁこのスタイルを変えるつもりはありませんが。
それでは次回は俺のやらなきゃいけないことがひと段落したらになると思います!!三週間以内には出せたら良いね!!!ハハッ!!!!!!
それじゃあじゃあの!!!!
※誤字脱字とかガバあったらこっそり教えてください。感想くれると狂喜乱舞します。