愛を謳歌する幸せなアイの話   作:京猫

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とあるネット記者の寄稿文

 

 

 

「真のスターが示す、アイドルの行く末」

 

 

 

 ――カスガコヤネ。誰しもが認める、現代の音楽シーンでもっとも重要な人物である。彼が初めて動画配信サイトに楽曲をアップしたのはもう7,8年前の話になるが、それからの音楽業界は常に彼中心に動いていたのだ。

 

 彼の生み出す至高の楽曲は日本のみならず世界を席巻し、視聴者はその天上の美声に酔いしれ、その詩に一喜一憂し、その旋律に心奪われた。

 

 誰しもが夢中になり、熱狂し、信仰を捧げる存在。

 

 作詞家や作曲家、演奏家や歌い手達には絶望からなる憎しみと崇拝からなる希望を与え、数々の流行までが彼から生み出されたのだ。まさに音楽業界の新たなるカリスマと言える存在であろう。

 

 

 

 さて、そんな彼が初となる全米、欧州ツアーを大盛況で終えた後、日本へ帰国したのが半年ほど前の話となる。

 

 さあ次はどう世を動かすのかと皆が注目していた所で、彼は突如自身のSNSにURLのみを貼り付けた書き込みを投稿した。

 

 すわ何事かと、今度は一体何が始まるのかと、皆期待を胸に我先にとクリックした先にあったものとは、果たしてとある人物のYou Tubeチャンネルであり、その名も

 

 

 

 【-アイドル- アイ★チャンネル!】

 

 

 そして唯一投稿されていた動画のタイトルは、

 

 

 【アイドルでごめん★ MV / アイ】

 

 

 

 …であったのである。

 

 ここで何だか一気に気が抜けそうになる事実が判明してしまったわけだが、はてさてここですぐに興味を失ってしまうのは実に早計というもの。何せこの動画の曲はあのカスガコヤネが作詞作曲編曲と、言うなれば完全プロデュースしている作品なのである。

 

 参考としてここに、投稿されていた曲の歌詞、その一部を掲載してみよう。

 

 

 

 アナタはワタシの 何を知っているの?

 それは本当に ワタシのことなの?

 

 chu! chu! chu! つきあえなくてごめん

 キスもハグも スキャンダルでしょ?

 アイドルだからね、ごめん ごめん

 

 ダメ!ダメ!ダメ! 抱き合えなくてごめん

 笑顔もアイも みんなのモノでしょ?

 ファンのモノなの、ごめん ごめん

 

 だからワタシは 今日も歌うの みんなの為に

 ハートふりふり アナタの為に

 とっておきの 台詞をキメて

 それはアイする ワタシの真心

 とっておきの アイ★言葉

 

 サンキュー! ごめん! アイ★してるっ!

 いぇい★

 

 

 

 …えー、その、つまりこれは、言わばコッテコテのアイドルラブソング、その極み、と言ってよい楽曲なのである。(断言)

 

 抜群にキャッチーなメロディ。速すぎもせず遅すぎもしない、老若男女がノリやすいテンポ。ツギハギ感のない、まるで一つの音の塊からそのままくり貫かれたような構成力が光る、それは見事な至宝の一曲。さすがカスガコヤネ、良い仕事をすると感心する出来であった。(確信)

 

 口ずさみやすくて、踊りやすくて、頭に残りやすい…(恍惚)

 

 それはもう幼い子供にも大人気である。近くの幼稚園の前を通り過ぎる度に、通称【アイしてるJump!】をマネして大はしゃぎしている光景を見かけるほどなのだから。

 

 

 

 そして何より衝撃なことが、この歌い手であるアイドルの「アイ」

 

 

 

 言わばこの誤魔化しのきかないド直球なアイドソングを、その曲のイメージまんまな女の子が歌っているのだ。

 

 その瞳、その笑顔、その身振り。

 

 一度見たら目を離し難い、抗いようのない魅力で視聴者をたちまち恋に落としてしまいそう…そう確信するほどの輝きを放つこの新人アイドルこそが、この動画の価値を大幅に引き上げている要因となっている。

 

 正直これはちょっと想像出来ないたぐいの体験であった。カスガコヤネの曲がアイを引っ張り上げているのではなく、アイの魅力が曲の魅力と相乗を起こして、MVとしての完成度が高まっているのだ。カスガコヤネの曲に負けない歌い手がまさかアイドルで出現するとは…いやはや世の中実に、わからないものである。

 

 しかもその後におこなわれた初配信によると、アイは今後もカスガコヤネ・プロデュースで活動していくとのことで。カスガ氏自ら見つけてきたというのだから、それはつまり最初から期待出来る話であったのだ。

 

 これはもう、時代が迫っていると言っていいだろう。アイドル全盛期と呼ばれる時代が。

 

 ドルオタなどと呼ばれる一部の熱烈なアイドルファンだけではなく、一般大衆を盛大に巻き込んだムーブメントが押し寄せるのだ。きっとその時は遠くないはずである。メディアに露出されればそれこそすぐ覇権を握ることだろう。何せあのルックスだ、例えバラエティやドラマ等への出演が無くとも音楽番組やCMだけで充分世間を魅了出来るはずなのだ。

 

 

 

 そして、その時世間は気付くはずだ。我々は新たなるスターを得たということに。

 

 

 

 最高のアイドルである「アイ」は、もうすでにその才を十分に見せつけつつ未来へ駆け出している。我々は彼女に乗り遅れないよう、時代に取り残されないようその背中を追いかけるべきであろう。

 

 見過ごすなんて勿体ないことはとても出来ない。途中下車などもってのほかだ!

 

 貴方は日々、一体何の為にお金を稼いでいるのか。一体何の為に、辛い仕事に耐え抜いているのか。答えは目の前にある。声を上げ、腕を振り上げ、この世を遍く照らす超新星の誕生に感謝という名の貢物を捧げよう。貯金の残りは十分か? 定期預金など解約しろ!

 

 

 

 ――そう。何故ならば我々は、この地上に舞い降りた奇跡の化身である彼女の祝福に、崇拝と熱狂のサイリウムで応えるべく、アイの奴隷にすぎないのだから――

 

 

 

 

 

著 HN:らぶりー♥アイちゃんスキスキゴロー

 

 

 




歌詞はちょー適当に自作しました。
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