ペアでダブルでスイートなデートをエンジョイする星野アイ系SS
アイ★✓ @ai_kasuga・4日 |
昨日UPされたMV「ブランニュー★スター」もう聞いてくれたかなー? 私のアイドル活動に謎の 空白☆期間 があったから、フェスに向けての楽曲発表が大忙しだね★ でもそれも折返しかな。 |
| こ | り | い | き |
アイ★✓ @ai_kasuga・2日 |
疲れてないよ? MV収録は私じゃなくて編集するスタッフさんが大変なんだ★ |
| こ | り | い | き |
アイ★✓ @ai_kasuga・1日 |
んー。別にこの数の歌とダンスを一気に詰め込まれた訳じゃないよ。 むしろ私はデビュー前から十分な楽曲準備期間が用意されていたからね。 覚えるフェーズはとっくの昔に済んでる曲のが多いよ★ |
| こ | り | い | き |
アイ★✓ @ai_kasuga・20時間 |
まあ、そもそもの話。 スケジュール面での無茶はヤネ君が許すわけがないんだよね。 だからアイ★リスたちも安心するといいよ〜★ |
| こ | り | い | き |
アイ★✓ @ai_kasuga・2時間 |
おはよ★
今日はオフだよ だから先に言っておこう おやすみ〜★ |
| こ | り | い | き |
「抹茶クリームフラペティーノ、トール〜。ブレベに替えてパウダー多めで。チョコチップ入れてホイップに増量チョコソースをかけて下さい★」
暦の上ではとっくに秋なはずなのに、まだまだ夏真っ盛りな暑さを感じさせる今日この頃。私は家から比較的近場にある行きつけのお店で、最近覚えた呪文を唱えた。
この呪文、店員さんの前で可愛く口にすると私のフェバリットな飲み物が速やかに作成されるんだよね。笑顏を添えるのもポイントかな。やはりどんなやり取りの場でも笑顏というものは重要なんだ。だって私がにこやかな笑みを浮かべると、店員さんってば景気良くトッピング盛ってくれるんだから。
「俺は…アイスの抹茶ラテ、トール。氷少なめ。抹茶パウダーかなり多めで…」
「ホイップ乗せて〜?」
「…ホイップ乗せて。あとはシロップを」
「増し増し、からの〜?」
「それは勘弁してくれ…」
「あははっ★」
私の無茶振りにヤネ君は珍しくげんなりした表情をした。
「うそうそ。いつものやつでいいよ、口直しに一口貰うかもしれないし。注文していい?」
私が言いたい。注文したい。いやこれは別に子供っぽい習性とかじゃなくて、優しくて面倒見が良い女としての本能だよきっと。そうに違いない。ついに溢れちゃったね、秘めたる母性が。これは将来良い妻になるわー★
私はヤネ君が頷いたのを確認してから、ホイップはキャンセルしてシロップ抜き、ミルクを無脂肪に変更、エスプレッソショットを加えた抹茶ラテを注文をする。
「でも抹茶フラペティーノの口直しに抹茶ラテか。流石にハマり過ぎじゃない?」
「うふふっ、まだ夏だからね★ よりたくさんのフラペを飲む為に抹茶ラテで身体を調えるんだよ」
「ははっ、なるほど? それは名案だけどアイの栄養管理してる舞が白目剥きそうだな。笑えそう」
「い、いや〜。それは笑えないんだけどね…」
うん。舞さんの身に負担をかける冗談は止めよう。いつもお世話になってるわけだし、ただでさえ最近の舞さん、ちょっと変なんだよね。シークレット・ギグのあとから舞さんの振る舞いに妙な情念を感じるんだ。
真顔でじっと見つめながら髪を触ってきたり、後から無言で抱きしめてきたり。可愛がるというよりは、かまって欲しくてちょっかいを出してくるというか。
そもそも触れてくること自体が増えた。祈織さんは元々気軽に戯れてくるタイプだし、巫言さんは天性のたらしだから意外と踏み込みが深い。熱がないか確認するのに手を当ててくるんじゃなくて、おでこくっつけてくるタイプだ。それに比べると舞さんは大人として姉として、頑張って見守ろうとしている感が強かったんだけどね。何だかいきなり甘えたな妹の一面を見せてきて…
うん。やっぱり変な刺激は与えないようにしよう。このままでは私が三女に繰り上がってしまうし、何が物の弾みになるか分からない。
「お待たせしました〜。こちら抹茶クリームフラペティーノになりま〜す!」
おっ、もうできたんだ。
「はーい★」
魅惑のアイドル・アイちゃん★ として可愛いお返事。私は顔馴染みになってきたこの店員さんに、きっちりファンサをしてあげた。スタボの店員さんって結構話しかけてくるよね。だからこの女性ともそれとなく会話をすることがある。
なんとこの女性店員さん、実は私の大ファンなんだよね。巷で噂のアイ★リス女子、だよ。まさかこんな所に私を激推しする女性がいるとはね。スタッフさんを除くと何気に初めて会った女性ファンになるんじゃないかな。
初対面は私がヤネ君に拾われて間もなくだから結構前の話になるんだけど、その時から「可愛いですねー! いやほんと、可愛い…」みたいな熱烈な声がけはされてたんだ。何故かヤネ君とかマネさんのことはガン無視で。
まあ最初からそんな調子だったから、デビューしたらもう速攻でバレた。何かこう、伝えたいことあるんだけど口にしたらマズイかも…みたいな様子でそわそわしてたっけ。でも私がグッズの試作品になるうさ耳ベレー帽被っていたことに気付いて、上手く話を振ってきたんだ。「その帽子、アイちゃんのマーク入ってますけど自作ですか? ファンなんですね〜」みたいに。
うん。名前が同じだからかな、気になってきたんだー★
私もそんな白々しい言葉を返して取り繕った。今でもアイ★リス女子仲間みたいな体裁とって会話をすることがある。最近はTwitterの名前を聞き出してしまったよ。最初は羞恥に悶えて教えるの渋ってたけど、そこは私が上手く誘惑した★
だって…「グッズ発売記念にTwitterで推し活始めたんです! 祭壇作りました!」なんて言われたらそりゃ気になるよね。見てみたくなるじゃん。思わず手を握ってお願いしちゃったよ。教えてくれたら私が今被ってる帽子あげるよ…って。イチコロだったね★
「あっ…そう言えば私、とうとうアイちゃんに会えたんですよ! もうね、凄かった〜。あれは本当に最高の体験でした。スピリチュアルです。神の戯れを拝見したような気分になりましたよ。幸せすぎて一瞬失神しましたし!」
知ってる。涎垂れてたよ。顔寄せてウインクしたら痙攣してたよね。今も身体震えてるけど大丈夫? 仕事中にうぐぅ…とか呻き声上げながら泣き出しちゃダメだよ? ――衛生兵〜! 救護班ー!
「そ、そうなんだ〜★」
やっぱりアイ★リスってどこかおかしいな。私はほんのちょっぴり切ない気持ちになりながらも、何とか相槌を打ってあげた。
「――あ、あの席空いてる。先行くね★」
「りょーかい」
まあ、あの席どころかそこら中空いてはいるんだけど。私は興奮醒めやらぬ店員さんを何とか宥めてから、いつも狙って座る窓際の席へと足を向ける。
オフィス街っぽい所にある店舗だから、午前中はお持ち帰りのお客さんが多いのかな。この時間に来るといつも人影疎らだ。遅くても10:00には出社しちゃってる感じ? それとも出社時間なんて決まってない会社ばっかり?
まあ私が店内で飲みたがるといつもこの店舗に連れて来られるから、ヤネ君とかマネさんたちは何か知っての上で選択してるんだろうね。綺麗で落ち着いた良い空間だと思う。やっぱり車で飲むのとはまた気分が違って良いもんだね。ヤネ君も広い空間が好きだから、店内で飲食するのは満更でもないみたいだし。
「んー、美味しい★」
「それは良かった」
ヤネ君の到着を待ってから口をつけた抹茶クリームフラペティーノは、いつもと変わらず美味しかった。抹茶の風味がしっかり残ってるのに甘くてクリーミィー。濃厚なミルクがフローズンのシャリシャリ感を軽減して、まるで抹茶ソフトを食べてるみたいな舌触りに。これはデザートしてます。最強だー★
「チョコチップがアクセントになってさらに美味しい」
ちなみに私と祈織さんは【カカオ72%はチョコではないそれはただのカカオだ同盟】を組んでいる。賛同者はあまりいない。むしろヤネ君とか72%が1番好きとか言ってるので私は憂い顔で離婚を申し出た。結婚してないけど。
――でも冗談でも言ってはいけないことが、この世の中にはあるんだね…
またもや分からされそうになってしまった。もう何度目なんだ、お仕置きのネタを自分で撒くなんて私はバカだーとすぐ後悔したんだけど――今回はそこで奇跡がおきた。強力な援軍の登場にこの身を救われたんだよ。
たままちゃん、先日普通のチョコだと思って食べたら甘くなくて泣いたらしい。
可愛いなぁ、たままちゃん。これには堪らずヤネ君も掌を返した。というか普段からたままちゃんの言うことは全肯定だからね。結論出たよ、これは勝負あり★ 以上の結果をもってウチには二度と72%の黒い悪魔が姿を現わすことはないだろう。めでたしめでたし★
「すんごく満足気だね?」
「うん。世に無法あればたままちゃんに縋り、世が無法なれば…やっぱりたままちゃんに頼る。今の私に怖いものなんてないんだ★」
「…どこで仕入れた言い回し? チョコチップから何のこと言ってるかは見当ついたけど、無法者扱いは非道いな。これに関してはアイの意見の方が横暴だと思うんだけどね」
「アハハッ★」
そんなことないよー。ただ個人的にチョコレートと認めないだけで、その存在を否定してるわけじゃないんだから。
「はい、あ〜ん」
「いやそんな、容器ごと突き出されても。ストローで飲む物をあ〜んはおかしくないか」
「いいの」
「ん…甘くて美味しいな。疲れた時に飲みたくなる。量は飲めないけど好きな風味だ」
「そうでしょう?」
ヤネ君別に甘いのも嫌いじゃないからね。和菓子とか食べ慣れてるし、むしろ抹茶がきいてるから好みなんだろうね。
「ヤネ君のはいつも通り不思議な味だね」
あ〜んした隙に私もヤネ君のに口をつけてみたけど、抹茶とコーヒーが上手く合わさって実に不思議な風味となっている。口に入れた瞬間は混在する香りに違和感あるんだけど、ミルクが上手く中和してると思う。美味しい。満足した私は何となくヤネ君に身体を寄せた。
「ん? あの店員に気疲れでもした?」
「そんなことないよ、あの人のこと結構好きだし。ただやっぱり今日は、甘えることにしただけ」
「なるほど…ね。世話焼き妻の出番は一旦お預けか」
「――ど、どうして毎回そこまでバレちゃうの」
「はははっ。俺からするとアイの身から聴こえる旋律はいつも心地良いもので、だからこそ共感覚が強く働くんだ。馴れもある。もうそれなりの期間ずっと側で聴いてるんだから、それこそ思考がまんま読み取れることもあるくらいにはね」
「ず、ずるいよねー、それ」
「いやはや、これは毎晩調律頑張ってる俺にとってのご褒美だよ」
「――それってご褒美のご褒美じゃん。ダブルでご褒美貰ってるじゃん、それ!」
私はヤネ君の胸に軽く頭突きをした。今ならこのご褒美を貰った方にはなんと、更にご褒美がついてくる…!
それともヤネ君。まさかあれだけ好きに私を弄んでおいて、あれは私の身体の為だからご褒美じゃないとか言い出すんだろうか。
「世の中旨い話もあるもんだよね」
「や、やっぱりご褒美の両取りじゃん。ズルい!」
「でも逆に言うとさ、アイにとってもダブルでご褒美になってない?」
「――あ。見てヤネ君、窓の外に蝶々飛んでる」
「誤魔化したかぁ」
実は、なってます★
「気持ち良くなった上に心身も健康になるとか、それこそアイにとってもご褒美のご――」
「はい負けましたー、私の負けでーす!」
「これ、勝ち負けある話だったのか」
「そもそもこのディスカッションにオブジェクションは存在しなかったんだ。最初から私達がディベートする意味はノーニードだったんだよ」
「…言ってる意味、自分でちゃんと分かってる?」
「あ、りとる★」
「うん。アイが英語頑張ってるのは俺も嬉しいよ」
ふふふっ。本当に頑張っているからね。今じゃ聴き取りと発音は完璧なんだよ。基本何言ってるのか意味分からないし、自分が何言ってるのかも分からないけど。
…単語、もっと覚えなきゃいけないねー。
英語の歌を聴き取れてもそれがどんな意味の歌詞なのかが分からない。歌詞の意味は分からないけど、取り敢えず見本が聴ければその発音通りに歌えます。
――つまり、英会話なんて未だ夢のまた夢のような状況なんだ★
あまり海外には興味ないんだけど、いつの日か…ついにやらかしてしまったヤネ君と一緒に高飛びする日が来るかも知れないしね★ 少ずつでも学んでいこうとは思ってる。
「私もスタボでノート広げて勉強するべきかな? いやでも、そうなるとドリンク置く程度のテーブルしかないこの席には座れないよね」
「あぁ、そう言えばアイはいつもこの席選ぶよね。まあこの窓ガラスは上手く通行人と目が合わないように加工されてるから、いいんだけどさ」
でもアイってば、そんなにもこのカップルシートみたいな席が好きなんだ?
ヤネ君ってばそんな戯けたことまで仰っております。いやいや、このソファ好きなのはヤネ君の方だって絶対。
「こういう席選ばないと、ヤネ君が変な座り方するからだよっ」
基本ヤネ君、私と向かい合って座るってことがないんだよね。絶対に隣に座ってくる。例えそれが外食先で4人用の席を2人で使うことになった時でも。それって端から見たら凄くおかしな光景じゃない? 普通カップルだって向かい合って座るでしょ、そういう時は。100歩譲って空いてるファーストフード店やファミレスで時間潰すのならありなのかも知れない。でも普通のレストランでもそう座るんだよね。
――おっ、流石ヤネ君。私に椅子じゃなくてソファ側座らせてくれるんだ…と思ったらさらりと隣に座って来た時の違和感。あれをもっと重要視するべきだった★
デビュー前なんかは特に個室を予約しないで店に入ることもあった。だから何回か2人きりでふらっと外食する機会もあったんだけど、その時に周りを見てやっと気付けた。これおかしいんだって。店員さんも料理届けながら変な目で見てきたよ。何だこのバカップル…いや年齢的に兄妹か? …なら尚更何でこう座る? みたいな。絶対に悪目立ちしちゃってたって。
だから私は少しでも自然な形で周りに溶け込めるよう、スタボではここに座るんだ。この席は二人がけのソファが窓に向く形で置かれてるんだよね。1人がけのソファが2つ並んであるのはよく見かけたんだけど、2人がけのソファが窓向いてるのは見たことがなかった。
2人とも椅子じゃなくてソファに座れる、しかも自然な形で。おまけに外の景色が見れる。ならこの席狙うでしょ。決して私がイチャイチャしたい訳じゃないんだよ。バカップルじゃないんだ。1人がけソファで並んで座るんじゃ間に肘掛けがあって邪魔とか思ってないんだよ。ホントだよ? あ、りとる!
「別に変じゃないけどなぁ。たま姉だって2人でもアイの隣に座るんじゃないかな。まあたま姉の場合は完全に幼児の食事の世話をする為だろうけどさ。…そっちのが世間にバレたらショックじゃない?」
「うっ…」
マズイね、確かにそれはマズイよ。大っぴらにそんなことされたら私の尊厳が…いやでも既にSNSには私がヤネ君に抹茶パフェを食べさせて貰ってる写真やら映像が上がっているわけで…
「うぅ…それでも私は、たままちゃんの愛を受け止めるよ」
私はばったりヤネ君の胸に倒れ込んだ。
「はははっ。何だか言ってることと、その反応が噛み合ってない気がするなぁ」
優しく髪を撫でられた。うーん、もう少しこうしてようかな。
どうも私は後頭部から首筋にかけてを撫でられると…安心して、且つそわそわしてしまう。落ち着くように身体から力抜けるんだけど、少し気分が高揚してお腹辺りがもぞもぞするんだ。まるで魔法をかけられたような不思議な心持ちだね。これもまた、至宝の右腕が繰り出す神技なのかー。
――右腕って言えば、ヤネ君って何故か私を右側に置くことが多いな。
何か理由でもあるのかな。基本、何かあったら利き手の右腕で抱えるつもりっぽいんだよねー。外歩く時は大体肩とか背中辺りに手が伸びてくる。
私はヤネ君の右手を両手で掴まえてもみもみするのが好きなんだけど、外だとあまりさせて貰えないんだ。多分私は慣れない場所だと視線をあちこちに飛ばしがちだから心配なんだろうね。だから利き手を空けておきたいのかなーと思って一応は納得している。
「何か、ウチで寛いでる気分になってきた」
「ははっ。まだ家から出てきたばっかりなのに」
「うん…大丈夫。今日は出かける気満々なのは変わってないよ」
今日はマネさんお休みの、完全に2人っきりでの買い物デートだからね。むしろノリノリではあるよ。
「なら良いけどね。でもそんなに欲しかったんだ? あのうさぎのぬいぐるみ」
「うーん。あのサイズは珍しくてちょっと欲しいかも」
「もしかして寝室に置きたい?」
「うん。ダメ?」
「別に構わないよ。ただ置き場所となる台が必要になるかと思ってさ」
「私の部屋にあるテーブルをベッド横に持ってこようと思ってた。使ってないし」
「ああ、それで済むならそれでいいか」
ちょっと気になるうさぎのぬいぐるみをネットで見つけたんだよね。今日はそれを実際に見に行く予定なんだ。
小さいうさぎのぬいぐるみは私のグッズでも出ていてそれは部屋に飾ってあるんだけど、今日見に行く物はとんでもなく大きいサイズなんだ。リアル志向で本物のうさぎがそのまま大きくなったようなぬいぐるみなんだけど、なんと高さが1mある。
あれは凄い。ちょこんと背中丸めてて身体も毛並もリアル寄りだけど、どこかふっくらした顔付きが可愛いぬいぐるみ。あれを抱きしめたら気持ち良さそう。ヤネ君が仕事で手を離せない時はあれをベッドに置いて、顔を埋めて過ごそうと思っている。
「2つ欲しい」
「おっ? あの大きさのを2つか。いや別に構わないけど」
「ペアで欲しい」
「なるほどね」
私とヤネ君の分ね。私のはマネさんに貸してもいい。考えてみたら私が1人になることってほぼない。マネさんのうち誰かしら1人は必ず付いてる。だから一緒に抱きしめて過ごすんだ。
…でもそうなると、別に寝室に置かなくてもいいのかな?
実は私の部屋にはベッドがない。寝室は完全にヤネ君と共通なんだ。だからマネさんからするとヤネ君がいない時には寝室に入りづらいかも知れない。私の寝起きの面倒みるとか、そういう用事がなきゃ普段長居しない場所だもんね。
となるとリビングに置いてもいいかなぁ。あそこならソファで一緒に座ってヤネ君を待てる。
「4つ欲しいかも」
「…もしかして、会社にも?」
「うん」
作曲や編曲作業はあの部屋でしてるもんね。なら1番ぬいぐるみが必要となるのはコヤネルームなのかも知れない。
「分かった。ならそっちの分は直接配送して貰おうか。今日は2つ持ち帰ろう」
「ありがと!」
「いいよ」
私は身体を起こして飲み物に手を伸ばそう…としたところでヤネ君が手に持って差し出してきたから、そのままストローに口をつける。
「ん。よりクリーミィー」
「アイは本当に世話を焼かれる姿が可愛いな」
うん。祈織さん曰く私は世話焼かれ大王だからね。それに今日はデートなんだから女の子は甘えまくっていいと思うんだ。
「ヤネ君は時計を見たいんだっけ?」
「あぁ…見れたらでいいけどね。実物見てアイに似合うか確認したかっただけだし」
「あれ? それじゃ結局私の買い物じゃん」
「それが男物になるんだよね。41mだしアイが着けるとごっつくなるんだけど、色が綺麗に見えてさ。あれならアイが着けてもギャップが生まれていいかと思って。細い少女の腕に大きくてスクウェアな腕時計…まあブレスレット替わりにぶらんと着けて目立たせる感じだね。アリだったら一緒に俺も着けようかと」
ただ普段使いするには重さが気になるかも?
撮影用かなぁ。
そんな呟きを溢しながら、ヤネ君もフラペティーノに口をつける。
なるほど、こちらもペアか。良いかもね〜。白金エンゲージ★のMVを収録した時に小道具としてプラチナリングを貰ったんだけど、流石にまだ普段は付けれない。問題どころじゃなくなってしまう、ヤネ君が★
だからこういう手軽なペアルックは嬉しいかもねー。
「ふ〜ん。じゃあそっちのお店から行こうか? ぬいぐるみは買ったら車直行でしょ? なら後でもいいわけだし」
ぬいぐるみのお店はデパート内にあるから、ついでに他のお店も見回れるんだよね。時計の方は独立店舗らしいんだ。
「そうだね。じゃあさらっと時計見たらランチで、その後にデパートかな。午後のお茶は買い物次第」
「うん★」
そして夕食は予約したお店で頂いて帰宅…と。舞さんが寂しがりそうなもんだけど、今回は巫言さんに誘われて朝から1日お出かけだ。ホイホイ着いて行ったから問題ないと思う。祈織さんはスタッフさん達に捉まって一緒に遊びに行くとか。
各自良い休暇になりそうで実に結構だよね。あの3人は基本、休暇を罰ゲームか何かと勘違いしてるからさ。私がヤネ君と2人でデートするという形で休みを促すんだ。休みがあるならあるで、各自したい事も出てくるもんだよね。
これって私、妻として良い采配したってことにならないかな★
ヤネ君とたままちゃんはそういうの考えないからね。私が気にかけてあげるのは良い案配だと思うんだ。何とも言えない満足感があるよ。
ヤネ君とデート出来て嬉しい、それでいてマネさん達にも良い案配となって嬉しい。女の子のご褒美に妻としのご褒美…これはダブルだねー。いやダブルどころじゃないのかな? フラペティーノ飲めて嬉しいとか、小さい喜びは沢山あるもんね。
小さな嬉しいが十重二十重となって、何だか幸せが生まれてしまった気がするな★
「じゃあヤネ君、そろそろ行こっか」
「満足した?」
「したー★」
結局フラペティーノは2人がかりで飲み干して、抹茶ラテは何故か私に持たされた。
ヤネ君の掌を満足するまで揉みしだいてから、私は席を立つ。流石にもう出ないと時計屋さんに着く頃にはお昼になってしまう。
私はヤネ君の手を取ってカウンターを抜ける。例の店員さんに手を振って店を出ようとしたら、あの人直立のまま両腕上げて左右に細かく振ってきた。…それ、ペンライト持ってやるお見送りじゃん。思わず吹き出してしまった私は危うく抹茶ラテ落とすところだった。というか実際手から離れてしまったんだけど、そこを驚異的な反応をみせたヤネ君が左手でワンハンドキャッチして掬い上げた。
ジロリとカウンターを睨み付けるヤネ君。何食わぬ顔で知らんぷりする店員さん。私はもう笑いが止まらなくなってしまった。
その後車の中で何とか復調した私は、まずは時計店へ。そこで見た時計は確かに真四角で大きく感じたけど、ベルトと盤面がアイスブルーですっきり可愛くも見えた。光りの当て具合ではエメラルドグリーンにも見えるかな。夏に涼し気でいい感じだし結構気に入ったかも。買ってくれるなら欲しいかなーと思ってたら、お値段何と100万近く。
私にこれ持たせるのは…と流石に引き気味だったんだけど、撮影で使用するうんぬんの会話から店員さんが私達に気付いたことから話が変わってきた。電話する声が飛び交い店長さんが出て来たと思ったら、むしろ差し上げますし宜しければお2人とも契約して日本での広告塔になりませんかと。
まあヤネ君からすると他に好きな時計ブランド…確か時計業界の針を1人で2,300年早めた天才技師の名を冠するブランド…もあるし、半分おもちゃ買う感覚で来たみたいだから、どうでもいい話みたい。
いやだからと言って私の判断じゃ…ということで後日正式に商談することになった。私もマネさんやスタッフさんに話を持っていけてひと安心だ。結局帰りに2人して時計着けさせられたんだけど、それが貰ったんだか買ったんだか貸与なんだかよく分からない。――まあオッケーだよね★
ヤネ君といるとこういうことがあるんだなーと半分感心、半分気が抜けながらもデートを続ける。
まあ一緒に居るだけでも嬉しいんだから、それはもう楽しいよね。この腕時計の重さもヤネ君と一緒に感じる重みだと思えば悪くないよ。だってそれは幸せの重みと等しいもんね。
そんな浮かれ気分で楽しんでいたこのデートだけど、最後にまた色々問題が起きた。ぬいぐるみ店でも同じような話の展開になったんだ。
私がヤネ君に「このうさぎの耳にもアイリス付けたい。グッズ担当のスタッフさんにお願いすれば出来るかな?」とか言ったらそれを聞いてた店員さんがまじまじと私を見てきて、卒倒しそうになった。えー、私のこと良く知ってるね。
そんなこんなでゴタゴタした後、結局はこちらもコラボ商品の開発や願わくば私のぬいぐるみ関係の製造を担当したいとかで、無事後日の商談と相成った。いやー、良かった良かった。
帰りに1つずつ抱え込んだこのぬいぐるみが、果たして貰ったんだか買ったんだか以下略なんだけど、それもまあ…ひとまずオールオッケーだよ、きっとね★
美味しいスペイン料理で多少の気疲れも吹き飛んで、私は大方満足したまま家に着く。
ぬいぐるみは取り敢えずリビングのソファに置いてみた。名前は当然、アイとヤネ君となる。既に帰宅していたマネさん達が面白がってヤネ君呼びしてたよ。
普段はきっちり児屋様と呼んでいるからね。新鮮だったみたい。ヤネ君はほんと仕方ない子ですね〜、と口走った祈織さんは危うく終わりのない長期出張に飛ばされそうになってたけどさ。1人で平城京を再建させるまで帰って来るな、って無茶振りされてた。アハハッ★
――うん。春日一族はみな、未だに奈良が都だと思っているんだ…
巫言さんまで真顔でそう言ってるから間違いない。歴史って人それぞれな解釈があるんだね〜。ちょっとウズウズするけど、今日の私は初っ端からディスカッションで敗北したからね。決して突っ込まないよ。人は認め合うことのが大切なんだ。だから私はここでも全ての思いを受け止めて見せようじゃないの。どう考えても私のが正しいのに口で丸め込まれそうだから…とかいう理由じゃないよ。ホントだよ。あ、りとる!
…あふん。やっぱり疲れてるのかな私、今日はもう騒ぐ気力がない。ツイートしたら余計気が抜けたみたいだ。
だから「アイ、お風呂入るよー」とか言ってぬいぐるみを抱えようとしているヤネ君にも怒る気が湧いてこない。嫉妬しようもないしね。取り敢えずアイと名付けた方は後でベランダにでも投げ捨てようと思う。
私はヤネ君の頬を抓って、浴室に向かった。
「疲れた★ 今日はもうされるがままになっちゃっう。何もできない」
「はいはい、わかったよ。じゃあ特別優しい調律にしよう。今日はデートだったわけだしね」
「そだね。ダーリンとしてあまあまスイートなのがいいな」
「りょーかい」
アイ★✓ @ai_kasuga・55秒 |
おっと、予約投稿セットするの忘れてた。 忘れないようにお風呂前にお知らせしなきゃ★ |
| こ | り | い | き |
アイ★✓ @ai_kasuga・30秒 |
☆新曲☆ Sweet★Darlin
果たしてそこに、私の意思はあるのか――★
厚顔ヤネ君による歌詞がとんでもない、激情型ラブソングだよ! これを私に歌わせるとか…もう本当に凄い★ 22:00 プレミアム公開 歌い出し英語だからびっくりしないでねー ↓ #アイ★Songs Sweet★Darlin MV / feat.カスガアイ youtu.be/cfoN6PgZUViL9B… |
| こ | り | い | き |
「だ、だから…! スイートにしてって…言ったじゃん…!」
「はははっ、俺厚顔ダーリンらしいからなぁ。ついお風呂場でも激情ラブソングを謳わせてしまった。可愛いかったよ?」
「…もう、知らないっ」
「ごめんごめん。俺も反省して奈良でアイの都を作ってくるよ」
「――冗談じゃ済まなそうだからヤメテ★」