愛を謳歌する幸せなアイの話   作:京猫

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手に持っていたのは抹茶ラテだったから勿体なくてまずは飲み干そうと頑張ったけどその前に対象が排除され何だか余計にムッときた星野アイ系SS


【まったりを垂れ流し】春日フェス公式の配信を見たり見なかったり★【アイ/春日プロ】

 

 

 

 

アイ★
@ai_kasuga・10時間

おはよ★

 

今日は開催まで1ヶ月を切ったということで、春日フェスの公式配信があるみたいだね?

私も見ようかな〜★

こ  り  い   き   

 

アイ★
@ai_kasuga・10時間

これだね

ちなみに今日だけじゃなくて本番までに何回か配信あるらしいよ★

【開催まであと1ヶ月!】春日アイドルフェス 出演者紹介&インタビュー!【第1回公式配信】youtube.com/live/fEaoSSizk…@YouTubeより

こ  り  い   き   

 

アイ★
@ai_kasuga・9時間

あっ…それとは関係ない話なんだけど、新曲上がるよ

昨日ツイートし忘れた〜!

10:00にUPだから、もうまもなく★

こ  り  い   き   

 

アイ★
@ai_kasuga・9時間

Hi, everyone.

My name is Ai Kasuga.

I am Japanese pop star.

I am the only Japanese female IDOL!

 

☆New song☆ Shake★Hips

 

喋れないけど歌える私の、完璧なる英語曲〜★

何があってもおしりフリフリ踊っちゃえば私はオールオッケー! という逞しくも明るい歌だよ♡

#アイ★Songs

Shake★Hips MV / feat.カスガアイyoutu.be/Nyi4i5huCXpqBN2…

こ  り  い   き   

 

アイ★
@ai_kasuga・1時間

今日はまだ会社に居るからついでに配信する〜

春日フェス公式の配信を流しながら、まったりを垂れ流すだけ

ちゃんと見たい人は公式配信の方を見てね★

 

ここ↓

#アイ★ライブ

【まったりを垂れ流し】春日フェス公式の配信を見たり見なかったり★【アイ/春日プロ】youtube.com/live/hpHIoxAFh…@YouTubeより

こ  り  い   き   

 

 

 

 

 

 うひょー、急な配信助かるぅ

 アイちゃんしゅき!

 まさか配信してくれるとは…仕事頑張って終わらせた甲斐があった

 Shake★Hips 良かったわ〜

 まったり配信か、メン限に近い雰囲気かな

 アイちゃんの同時視聴って何気に初じゃないか?

 Shake★Hips…本当におしりフリフリやん!

 アイちゃんの小尻、実に良かった

 というか海外勢の反応がやべぇ、コメント英語だらけになってたぞ!

 Shake★Hips yeah Shake 〜♪

 お前ら再生数見てないんか? おしりとか言ってる場合じゃないくらいバズってるよ

 見たり見なかったりだから…果たして同時視聴と言えるのか

 ライブでもおしりを見せつけてくれ!

 実際は普通にノリの良いダンスがメインでそんなにおしり振ってないだろ!

 I love Ai-chan ♡

 うわぁ、すんげぇ再生されとる

 流石カスガコヤネだ、ダンス曲も外れなしだったな

 この再生数、よくYouTube君壊れなかったな…

 

 

 ――おしりの話はもういい。やめるんだ、アイ★リス。これからせっかくそのShake★Hipsを生で歌って踊るっていうのにやり辛くなるでしょ、もう★

 

 

 コヤネルームの一角にあるフローリングエリアは、背となる壁が鏡になっている。如何にもダンスレッスンでもしそうな按配だね。そこで私はTシャツに夏用うさ耳パーカー羽織って、ショートパンツ姿でスタンバっている。髪はヘアメイクさんが後ろにまとめてくれた。

 

 ちなみにこのショーパンはつまり短いレギンスだからぴっちりしてるんだけど、まあ生地的に下着のラインは出ない。おしりのラインは出るけどね。

 

 おっ

 キタ!

 キター!

 アイちゃん!

 おわっ?

 どこだここ

 生足!

 い ぇ い ★ 今日もかわええ~

 レッスンスタジオか?

 い ぇ い ★ こんばんウサー!

 い ぇ い ★ こんアイ〜

 い ぇ い ★ レッスン中なの?

 アイちゃんの生足だっ!

 まとめ髪もええな

 今にも踊りだしそうな格好やん。これはもしや…

 あれ、今日はダンス配信なんだっけ

 

 そうだよ。ダンスもするんだよ〜。私は小さく笑ってからスマホをヤネ君に投げた。コメント見るのはここまでにして、そろそろ披露するとしようかな。

 

 ミュージック、スタート〜★

 

 お?

 おお!?

 これ…!

 この音楽!

 歌ってくれるんか!

 もしや踊ってくれる!?

 ああ〜!

 キタキタキター ★

 ライブじゃんこれ!

 ライブだー!!

 おおっ、英語だ!

 この発音…完璧やん!

 生歌っ

 本当に歌えるんだ、すげぇ★

 ああ〜、アイちゃん最高っっっ!

 

 あははっ★ 遠目に見えるコメント用モニターが凄い勢いで動いてる。あの速さじゃ近くで見ても読み取れないよ。

 

 そう言えばメンシの絵文字にサイリウム的なやつないぞ!?

 え? マイクはどこ?

 うわ…この声すんごっ

 うひょ〜たまんねぇぜこれは

 踊りが完璧過ぎるわ

 座って聞いてる場合じゃねぇぞホンマ!

 集音マイクで拾ってこれなのか、ワロタ

 歌声響いてるなぁ

 こんなのもう歌姫じゃん。凄すぎィ!

 何で踊りながらこんな声出せるんや…

 劇団員みたいだな、この声量

 

 うわぁ、思いっきり歌って踊るのは気持ち良いかも。リスナーの反応は分からないけど、いつものコヤネファミリーが見ててくれるしね。何だか気分がハイになりそう。

 

 …というかスタッフさん泣いてない? マイク通してない歌声聴いたの初めてなのかな。ならびっくりするかも。収録したものより迫力あるからね〜★

 

 キタ! おしりだぁ!

 うひょ〜エロい!

 誰かここ、動画になったらタイムスタンプしといてくれ

 動きキレッキレやな

 ●REC

 おい、変なコメントはBANされるからな〜

 おしり!

 お し り ♡

 プリプリやね!

 

 この曲のMVは困っている人や落ち込んでいる人の前に私が現れて、何があってもへこたれないと歌う私となんやかんやで一緒に踊りだすというものなんだけど…実に作りが海外向けだ。ジェスチャーとかも洋画みたいなんだよね。

 

 例えば会社の自分の席で頭抱えてる人の肩をポンと叩いて、親指でクイっとさあ行こうとウインクする。そしてオフィスの間を横二列で踊りながら練り歩き出すと、最初はその様子を呆然と見上げていた同僚やら眉を上げて厳しい目を向けてきた上司、はたまた清掃員さんとか警備員さんとか配達員さんまで加わって、ビルの屋上でみんなして踊るシーンとかある。豪華にもヘリから見下ろした視点まであるよ★

 

 他にも学校やら劇場やらストリートやらでも結局多数を巻き込んで踊るんだけど…一体いつこんな映像用意したんだろう? ほぼ全てが合成だよ。泣いてる子供役で出演した青葉君と、最後のスタジアムっぽい所で踊るシーンでバックダンサーしてくれるコヤネファミリーぐらいだね、一緒に撮影したのは。そもそも会社とかストリートとかスタジアムとか海外のどこかだしさ。元々構想があって用意していた海外向けの曲を、私風にアレンジして歌わせたのかな?

 

 おお〜通しのダンスはこんな感じなんだ

 このノリは流行るな

 自分ダンサーだけど、踊りながらこんな安定した声でないわ…

 気持ち良い動きだなぁ

 今度絶対クラスのみんなと踊る!

 つまりMVではこんなダンスに老若男女を巻き込んだのか…w

 身体のどこから声出してるんやこれ

 後ろ向いてもしゃがんでも跳ねてもブレない歌声とか凄すぎ

 文化祭の出し物にしたい!

 ダンスOFF会とか行われそうだよね

 俺も今度会社のクソ上司の前で踊ってやろう

 

「――ハイ、ということで! OPは今朝上がりたての新曲、Shake★Hipsでした〜。いぇい★」

「おつかれ。汗は…かいてないか」

「へいき〜★ 息も上がってないよ」

「おしりも大丈夫? 筋肉痛になってない?」

「だ、大丈夫! 触って確かめなくてもいいから!」

「そうか。それは残念だな」

 

 ちょっw

 ちょっwww

 コヤネきゅん!?

 あぶねぇなw

 おいィ!

 コヤネ君…キミさぁ

 危うくセクハラの犯行現場が生放送されるところだったなw

 集音マイクで聞こえてますよ、コヤネさん!

 触ってなくとも言葉だけでセクハラ判定されるんだからな〜

 コヤネくーん、気ぃつけなぁーあかんでホンマぁ

 

 ヤネ君と戯れ合いながら一緒にソファに座る。差し出された舞さん特製の抹茶ラテに口をつけて、ホっと一息。巫言さんに服装もササッと直され、髪もおろして櫛を通された。ピンマイクも着けて貰って、手元のスイッチをオンにして…と。

 

 私は振り返ってソファの背もたれに両手で掴まる。まあよくある乗り物なんかの座席で後ろを向いてちょこんと顔を出す感じを表現した訳だね。そんなポーズでカメラに向けて視線を送った。

 

「改めましてこんばんわ〜、アイ★リス。日輪の欠けたることもなしと思へばアイドル・アイちゃんから早速なお話なんだけどー、今日の積極的配信活動は以上になりま〜す★ 後は正面にあるおっきなスクリーンで春日フェスの配信をヤネ君と見るだけ。だからみんなはこの後、そんな私達の様子を後ろから眺めるだけの存在になるよ★」

 

 ちょっ

 ちょー!?

 マジかーw

 それじゃアイちゃんの御顔が見れないやん!

 アングルが本当にリスナーと配信見るだけの斬新なスタイルwww

 日輪がそう簡単に欠けたら大変やw

 頼むからずっとこっち見ててくれ〜

 映画館の最後列かな?

 せ、せめてもう少し横からカメラ映すとか!

 リスナーは2窓するから正面のスクリーンを映す必要はないんよw

 ゲームの時みたく配信ソフト使ってアイちゃんのお顔映してくれんか?

 なるほどなぁ、これなら二窓しなくて済むから助かるわー(棒

 お前ら贅沢言うな、アイちゃんの御顔はそんな安くないんやわ

 

「アハハッ★ 大丈夫、みんなのコメントは前にも後ろにもある小型モニターでチェック出来るから。みんなは一人じゃないんだよ、寂しくなんかないよ★ それにヤネ君は画面じゃなくて8割私の方向いてると確信出来るから、コヤネきゅんネキにはご褒美配信になるね。コヤネ横顔配信、だよ★」

 

 な、なるほど…?

 良かったー、危うく部屋に一人で傍観者になるのかと思ったわー(ry

 それは余計寂しくないかな…w

 草、見守り配信じゃん

 流石アイちゃん、俺達と共にいてくれる…と言えるのかこれはw

 ――!!

 な〜る!

 そっか!

 アイちゃん…!

 流石、私の娘…!!

 あらやだ、アイったらもう…!

 どうやら最高の配信になることが決まったようね

 アイちゃんに、感謝を(イケボ)

 ママ信じてたわよ、アイちゃんのこと!

 いやいや〜アイちゃんの御顔も見たいよぉ

 ママは嬉しいです。アイちゃんが優しい子に育つてくれて

 きゅんネキ大歓喜w

 あ、あの…!(ママはたままちゃんです)

 コヤネきゅんネキwww 一体どこに隠れていた!?

 この勢いは草

 最近のコヤネ君、サービス精神旺盛だね!

 アイちゃんガチ恋勢の私にも優しくして〜

 私はアイちゃんのが好きだよ!

 無論、たままちゃんも私の娘だ

 おいコヤネ、アイちゃんの横顔も見られるように何か手を打って♡

 

「だが断る」

「ふふふっ。まあ実際は一風変わった雑談配信みたいなもんだよ。一応私達は当事者だからさぁ。既に顔合わせもしたし、そんなに凝視する内容じゃない気がするんだよね」

 

 雑談してくれてええで〜

 雑談のが聞きたいです!

 ほぉー、そうなの

 顔合わせってするもんなんだ

 えっ、顔合わせ? 他のアイドルと?

 こういうイベントでも事前に顔合わせる必要あるんか

 

「あははっ、このフェスでは一部の出演者が事前に集まるのが必須なんだよね〜。何故かは秘密だよ♡」

「斉藤が勿体ぶってたからね」

「えっ、誰?」

「…あぁ。アイの言うしゃちょーさん、だよ」

「あ…そっかそっか! そりゃそうだよね、あの人が決定権持ってるんだもんね〜」

「委譲しただけ、だけどね。アイが嫌なら今からでも首を飛ばして平城京の柱の一部にでもするけど」

「それは流石に可哀想…というかいい加減平城京の再建は諦めて★」

 

 だれー?

 斉藤?

 誰やそいつ

 今回のフェス主催代表だろ

 アイちゃん、何回か自分で話題に出したことある人物でしょw

 苺プロとかいう所の社長やな

 そう言えば何でこの人に主催やらしてるんだ?

 あぁ、アイちゃんが名前間違えまくる人のことかぁ

 相変わらずアイちゃんに名前憶えられてないw

 まあアイちゃん、人の名前覚えるの苦手みたいやし…

 平城京w

 人柱扱いかよwww

 ふふっ、コヤネきゅんまだそれ言ってるんだ〜♡

 懐かしいな、平城京再建クラファン未遂事件

 …というか公式配信始まりましたよ〜、お二人さん

 

「あっ、本当だ! ヤネ君始まったよ」

「興味ない。それよりアイの都を作る計画練ろうよ。そういう配信にしよう。ぶっちゃけ斉藤は鬼門となる北東に置く神社の柱にでも活用すればいいと思うんだよね。しぶとく悪霊と戦ってくれそうだしさ」

「また〜。そもそも私の都って何なの、もう」

 

 なんやそのクラファン!?

 言ってたなぁ、なつかし

 俺も憶えてるわその話

 あれファンを名乗る誰かの暴走じゃなかったっけ?

 奈良県側も困惑やろそんなことしたらw

 クラファンの話って、誰よりもカスガ自身が馬鹿にしてたやつだろw

 興味ないwww

 草、相変わらずな性格してるなぁ

 カスガってある意味1番厄介なアイファンじゃね…?

 アイの都!?

 今度の野望はアイちゃんの都かw

 アイちゃんの周りにアイ★リス達が住む街か…興奮してきたな!

 鬼門対策www

 取り敢えずどうしたって斉藤さんとやらは不憫キャラなんだなw

 春日グループって瀬戸内海の小島所有してなかった? そこに作ろう

 何だか斉藤さんが可哀想になってきたわw

 俺は応援するぜ、陰陽師・斉藤のことを…!

 

「もう皆もいいから〜公式の配信見るよ!」

「はいはい」

 

 私はヤネ君の右手を取って前を向いた。残念がってるコメントが多いけど、その割に視聴者数は減ってないみたい。ヤネ君ファンが多いのか、それともフェスの情報が楽しみなのか…まあどちらでもいいね★

 

「右手を捕われてしまうとやること無くなっちゃうんだけど。あとは本当にアイの顔を見つめることしか出来ない」

「そもそもスクリーンを見るんだよ? それに右手を野放しにしたら私に悪戯するから、ダメー」

「…これはしてやられたな。まさか対策を練ってくるとは」

「ふふふっ★」

 

 ヤネ君の脇下に肩を入れてぎゅっと右腕ごと固定する。勿論ヤネ君は本気で振り払うようなことはしないわけだし、配信ではこれで十分な対策になるわけだ。アイちゃん天才〜★

 

「しょうがない。暇だからマシュマロでも読むか」

「暇じゃないでしょう!? もしもし春日さん? 貴方のとこのフェスなんですよ!」

「おお。アイに春日さんと呼ぼれたのって記憶にないな。何気に初めてかも」

「えっ…そ、そうだったかな?」

「そうだよ。出逢った日に児屋さん呼びはあったけど…その日の夜にはヤネ君呼びになったしさ。いやぁ、アイのリクエストに応えて心を込めてアイノリト謳った甲斐があったもんだよね」

「そ、その話はもういいって〜。記念配信でも言ったことでしょ!」

「そうだっけ? じゃあアイがその後泣いて俺を独占しようとした話も…」

「それはしてないけど、普通に秘密なことでしょう!?」

「はははっ」

 

 

 はははっ…じゃないよ、もう!

 

 

 ヤネ君の口が止まらなくなってきている。本当に退屈なんだねぇ。それともそんなに公式配信見るの嫌なの? 仕方ないから右手は好きにさせてあげよう。あと私もヤネ君に顔を合わせて、振られた話には付き合ってあげることにしよう。

 

 全く、世話の焼ける人だなぁ★

 

 このタイミングでマシュマロw

 やべぇ、本当に配信見てないし聞いてないやんwww

 ボク的にはマシュマロ読みでもオッケーです!

 春日さん…w

 カスガさんwww

 これどうするかなぁ、一応2窓しとこうかな…

 これは間違いなく同時視聴じゃないなw

 独占!?

 アイちゃん泣いてたんか〜

 そりゃ泣くよね、あの歌を生で聞いたら

 う、羨ましい…

 カスガコヤネに自分の為だけに歌わせることが出来る女…強いわぁ

 アイちゃんの当時の気持ちを想像すると茶化す気にはならんけどね

 ふふふっ…いいぞ、いつもの振り回されるアイちゃんや!(恍惚)

 

 恍惚としないでよ〜。何故か私があたふたするのが異常に好きなアイ★リスが一定数いるんだよねぇ。

 

「お二人が出演されたCMを見ました! とても自然なご様子でしたけど、やっぱり普段からポッキーゲームはされてるんですか?」

「…って何でヤネ君は普通にマシュマロ読んでるの!」

 

 

 何の為に右手を自由にさせたと思ってるのっ★

 

 

 まあ公式配信を見るのは気乗りしないって、事前に聞いてはいたんだ。だからヤネ君の気持ちも分からないでもないんだよ。でも主催側として話に触れる為にも、1回ぐらい見ないとマズイでしょ。だからヤネ君もせっかくならアイの配信で一緒に見るよ…って言ってたのに。

 

 何と言いますか…結局ヤネ君にとってのアイドルって私だけだからね★ 他の人からフェスの意気込みを語られてもげんなりするみたい。共感覚が悪さするんだってさ。

 

 顔合わせでも仕方なく他のアイドルさんから挨拶を受けていたけど…余計で不届きなアピールをしようとした子にはすんごい目を向けてた。

 

 

 ――アハハハハハッ、私もつい持ってた飲み物でも投げつけようかと思ったよ。

 

 

 いや実際には私、人に向かってそんなこと出来やしないんだろうけどね。悪意を向けるのも向けられるのも苦手だ。

 

 でも私、初めて見たからちょっと衝撃を受けたよ。色目を使うってああいうことを言うんだねー。他より少し関わりがあるB小町24にそんな子がいなくて本当に良かった。ヤネ君曰く、そんな子からは意味不明な自信と邪な強欲が織り成すハーモニーがおどろおどろしい騒音となって聞こえてくるんだってさ。そんなの聞かされたらそりゃあイライラするだろうし、頭痛もするんだろうね。

 

 だから今も内心苦しくて鬱憤が溜まってるのかも知れない。

 

 

 ――なんせヤネ君、右手を自由にさせたら普段触るの好きな私の髪とか肩とかをすっ飛ばして、おっぱい鷲掴みにしてきたからね★

 

 

 でもダンス用ブラの感触がお気に召さなかったのか、今はおしりを握ってる。何だか微妙に手が震えてる気がするから、本当なら強く握って頭痛に耐えたいのかも知れない。

 

 そ、そこまで苦痛に感じるなら素直に嫌だって言ってくれたら良かったのにぃ。

 

 どうしよう、今からじゃ配信内容変えられないじゃん。雑談にしようとか言って途中で公式配信を消すのもどうかと思うしさぁ。

 

 いやぁ、ポッキーのCMのアイちゃんは可愛いかったなぁ

 例のアイ★リスの心を焼き尽くしたヤツかw

 わたしまだ共演バージョンを生で目撃してない…

 ポ、ポッキーゲーム…そんなん知らん、俺はそんなCM知らんぞ!

 あれ話題になったよなぁ

 コヤネファン衝撃だったろうなあれは

 何であれが問題にならないんだろうな…w

 え、演技だろあれは(震え声

 今更だけどあれでポッキーゲームのブームが再熱したよね

 

「ポッキーかぁ。あのCM撮影は…ハプニングもあったけど楽しかったかな★ 担当の人も良い人だったし」

「そうだね。まだ社員としては若手なんだろうけど、だからこそ驕らない素直な反応が良い方に転んだね。あの女性だからこそアイも気に入って2クール撮ることになった訳だし、俺への急な出演依頼も受け入れた。だから少なくてもあの女性を派遣してきた人は物事を良く見通せてるし、優秀な人なんだろうね」

「うん。でもポッキーゲームする提案には私、困ったんだからね?」

「はははっ、俺も驚いたよあの提案には。それに演技もちょっと真に迫り過ぎたかもね。でもアイと共演するのが思ったより楽しくてさ、つい熱が入ったよ」

「あははっ、まあ私も嬉しかったから分かるけども★」

 

 良し。取り敢えず私と喋ってる間は問題ないみたい。しょうがないからこの調子で少しずつ、様子を見ながら公式配信の内容にも触れていこう。

 

「あ、出演者リストだってさ。こんなにもたくさんのグループが参加するんだね」

「へー、凄いな。この子達はみんな自分のことをアイドルだと思っているのか」

「…う、うん。み、みんな頑張っているんだね」

「そうだね。思い込みって馬鹿に出来ない力を発揮することがあるからね。挫けず頑張って欲しいよ。今後の人生、例え何があったとしても」

 

 お、お〜い★ 発言がやたらと棒読みだし、その内容も際どいよー。迂闊に触れないよこれじゃ。

 

「まあでもメイン会場がスタジアム状態での開催だからね。そこでライブするのは流石に限られたグループだけだよ」

「そうなの?」

「そう。今年は斉藤が頑張って人気のグループに声掛けたみたいでね。メイン会場を広く取った分、後は期待の駆け出しとかそれぞれの地域で人気のアイドル達に声を掛けたみたいだ。そっちの子たちはTOIROとか展示ホールとかの小スペース、もしくはけやきひろばの1Fか2Fで15分から20分くらいの間に2,3曲歌ってアピール…と言うか顔を売りに来る感じだね」

「え〜そうなんだ。2曲だけとかあるんだ」

「まあそれでも名前と顔を売るということは重要なんだろうね。そもそも持ち曲自体どのくらいあるものなのか知らないけど…チケット購入者アンケートによると、今回のフェスはアイの影響で客層がかなり不特定らしい。だからまだメジャーではないグループはそんな客の前で1時間とか貰ってもキツイんじゃないかな。普段なら固定ファンが居てくれたり、地下アイドル界そのものを応援するファンとかが盛り上げてくれるのかも知れないけどさ」

「ふーん」

 

 なんだ、意外とヤネ君詳しいじゃん。これなら本当に配信見なくて良かったのでは…?

 

 何度見てもメンツ豪華すぎて笑えるわ

 頂上対決みたいな集まりだよなぁ

 こんなにアイドルっているの…?

 ちょ

 おいっw

 へー(他人事)

 こ、コヤネ君、言葉に他意が滲み出てますよ…

 声が棒読み過ぎて草

 コヤネ「アイを前にして、よくアイドルとか名乗れるなぁ…」

 へーとしか言えないんやろなぁ、アイちゃんを擁するカスガからすれば

 思い込み扱いw

 アイちゃんが反応に困ってるwww

 今後の人生(引退)

 やっぱりアイちゃんは困ってる時が1番かわええわ〜(恍惚)

 スタジアム状態?

 あれかなり広いよな、3万人くらい入るんじゃないか?

 流石にスタジアムはメジャーなアイドルじゃないときつい

 俺の元推しグループも出るけど、その時席埋まってくれるのか心配だ…

 ほお〜フェスってそういうものなんだ

 地域…? ご当地アイドルみたいなグループがおるんか?

 噂に聞く地下アイドルっていうやつ?

 凄い規模のイベントだなぁ、アイドルフェスってこういうものなのか

 アリーナ関連全部貸し切りか?

 固定ファン少ない子達からすると、けやき広場とかのが人掴まえやすそう

 デカいグループが演ってる裏で小さなグループも頑張るわけか

 そもそも駆け出しのアイドル活動って観客ゼロも全然有り得る話だからな…

 むしろアイちゃんのファンはアイドルファンじゃない人が多そうだ

 アイちゃんしか知らない人も来る可能性があるわけか

 ふーんw

 ふーん。(私ならどんなお客さんでも虜に出来るけどな…?)

 既にスーパーなアイドルのアイちゃんには関係ないお話だったなw

 

「うん…何だか私も飽きてきた。見るのやめて普通に雑談配信していいかな★」

「賛成」

 

 賛成!

 ええで!

 いぇい★ 賛成します!

 おお!?

 オッケー!

 ちょ、マジかよw

 おお〜それもいいな

 やったぜ!

 はよはよ!

 公式なんぞ後で見ればええもんな!

 やっぱり横顔だけじゃ物足りないわー

 いいぞ〜

 じゃあいつも通りこっち向いて喋ってくれー!

 

 良かった、リスナーも賛成してくれるみたい。でもちょっと待ってて。1番に賛成してくれたはずのヤネ君が、おしりから手を離してくれないんだ★

 

 あっ、ちょ…名残惜しそうに撫で回さないでー。

 

「い、今の内に言っておくことってある? …あっ、この司会してる子達なんだけどね、何と当日私のバックダンサーをしてくれるアイドル候補生なんだよ★」

「苺プロ所属の子たちだね。まだデビューしてない参加型アイドルグループ、B小町24の初期メンバーとなるらしい。まだ5人しかいないけど24なんだとさ。ちなみにこの解説をしている胡散臭い男が社長の斉藤だから、つまり自分のところのタレントを上手く使って宣伝しているわけだ」

「あははっ、そのぐらいは代表者の役得じゃないかな。だからみんなは後で、ちゃんと公式配信を見直してあげてね」

「そうだね、アイの替わりに名前覚えてあげるといいんじゃないかな」

「んっ! んー★」

 

 ちょっとヤネ君! そろそろ勘弁してよー。それともあれかな、これは最初のShake★Hipsでリスナーにおしりを魅せ過ぎたというお叱りなのかな?

 

「い、いや私だって今後も何かで関わるようなら覚えられると思うよ…た、多分? ま、まあその話は一先ずいいとして、あと伝えることは――ってもう! ヤネ君が変なこと言うから何言うか忘れちゃったよ!」

「ごめんごめん。でも後は斉藤が勿体ぶってた、各日のオープニングとエンディングで他のアイドルと合同で1曲歌うって話くらいじゃない?」

「そ、それ! そうなんだよね。前に本番ではサプライズがあるってみんなに伝えたことあると思うんだけど、これがそうなんだ。何だかフライング発表みたくなるけどこっちが本家本元の春日だからね、先に言っちゃうよ〜。実はメインステージに出演するグループの各代表者が集まって、ヤネ君がフェス用に書下ろした曲を歌うことになったんだ。だからアイ★リスも当日は私の持ち時間になったら顔出せば…じゃダメだからね〜。午前中から私も出るんだよ★」

「しかもそれぞれ違う曲だからね…あいつこの2日間の為に4曲も強請ってきやがった」

「アハハッ、そうは見えなくても遣り手な人なんだねぇ。一応みんなにも伝えておくと、全部今回のフェスのテーマに関わる曲になってるよ」

「シンデレラね。まあテーマをこれにした理由は分からなくもないかな。最近のアイドルのイメージって、随分とまあ幅広い気がするんだよね。可愛い存在というよりカッコイイ生き方してる女の子もいれば、声優もいるし芸人のように達者な喋りをする子もいる。意外な一芸をウリにする子もいる。けどやっぱり多くの女性が一度は願ったことがあるだろう、女の子の原初の願い…つまり【自分もお姫様になりたい】――そんな思いを今、アイという超新星が生まれた時だからこそ、改めてテーマにしたらしいよ」

「私も灰被りだったもんねー」

「…それは優しすぎたんだよ。アイがその気になったら払い除けることも可能だったし、そもそも灰如きに心痛める必要もなかった。結局はそんなものでアイの輝きを隠せるわけでもなかったんだし」

「あははっ…それで全部隠せてたならそれでも良かったんだけどね――まあヤネ君に見つけて貰えたわけだし、良しとするよ!」

「…たま姉に見つけて貰ったことは黙っておくか…」

「何か言った? ヤネ君」

「何でもないよ。さあいつもの席に移って配信を続けよう」

「あっ」

 

 あ、危ない! ヤネ君ったら勢いつけてクイっとするから、危うく変な声出すところだった!

 

 ――これ、履いてるレギンス無事かなぁ。果たしてこのままカメラの前で立ち上がっても大丈夫なのかな。パッと見た感じではオッケーなんだけど…と思ったらカメラさんがいつも配信で使うソファ席の方にゆっくり向きを変えつつ動いている。どうやら巫言さんからの指示があったみたい。

 

 私は一旦音声も切れたのを確認してから、ヤネ君の胸に軽く頭突きをした。ちなみにこれ、最近不満がある時によくするマイブームだ。

 

「ごめん。アイを励まそうと、つい景気づけに」

「ついすることじゃないんだよねー、それ★」

 

 ポフンとヤネ君のお腹にパンチもしてみたけど、あんまり効いてないみたい。う〜ん、いい腹筋だ。

 

「やはりアイちゃんの体格だと打撃より絞め技の方がいいのでは。飛びつき三角絞め、教えましょうか?」

「巫言さんってそんな技まで出来るの!?」

「冗談です」

 

 総合格闘技とやらの試合で見ただけです。そんなことを言いながら私の服装を直す巫言さん。正直巫言さんなら出来そうだから冗談に聞こえないんだよね…

 

「はいオッケーです。外見は大丈夫ですし…どっちにしろ終わったらお風呂なので、下着はそれまで我慢して下さいね」

「…はい」

 

 くっ…こんな敏感体質に調律されちゃったのがとても恨めしい。絶対に神技を悪用されたと思うんだよね、こんなの。巫言さんがスタッフさんにバレないよう、ひそひそ話にしてくれて助かったよ。巫言さん大好き★

 

 

 

 

「はい、じゃあマイクをONにして配信再開…と。えー今さっき来た人向けに一応説明しとくと、これ以上俺が他のアイドルを見ているとアイが嫉妬のあまりうさぎのぬいぐるみに八つ当たりするんで、残念ながら今回の同時視聴は中止となりました」

「ちょ…! な、何言っちゃってるのヤネ君、何一つ掠りもしてないウソ言わないでよ〜!」

 

 いぇい★ 雑談配信開始だ〜!

 やっぱりこのアングルが落ち着くぜw

 あれ今日はソファに座らないの?

 このセットだよなぁ、アイちゃんの配信と言ったら!

 立ったままということは2人で何かするんか?

 嫉妬w

 八つ当たりw

 八つ当たりするんかアイちゃんw

 すんげぇ作り話するやん

 サラッと嘘つくなコヤネwww

 これだからカスガはよぉ!

 うさぎのぬいぐるみってまさか俺達か?

 コヤネきゅんのナチュラル作り話、懐かしいなぁ

 コヤネ君のお話は全部冗談だと思って聞くのが玄人の嗜みよ

 

「えー? でもホラ、皆も見てくれよこのソファの隣に2つ並んでるぬいぐるみ――ちなみに今俺が抱きかかえた方がアイという名前で、こっちがヤネ君ね。…どう見ても俺の方がボロボロじゃない?」

「そ、それは私がよくこの部屋でヤネ君を抱いてまわってるからであって…」

「この汚れ跡は?」

「それは抱いてお昼寝した時に涎が…内緒でその部分洗おうと思ったら余計目立っちゃって、その…」

「――あくまで、八つ当たりした事実はないと?」

 

 私はヤネ君うさぎを抱えながら1つ深呼吸、胸を張って高らかに宣言した。

 

「あります★」

「あるんかい」

「だってヤネ君、たまに私を困らせるんだもん」

「う〜ん、たまにか。たまになら仕方ないね」

「仕方なくはないんだよ? 何でヤネ君が渋々許す側にまわってるの? …と言うかよく考えたら毎晩困ってるよ私!」

「――毎晩?」

「あっ…う、うん。寝る前にするストレッチには、もう少し手心というか手加減が必要かなーって」

 

 マズいマズいマズい…! 何でか分からないけど公式配信見るの止めたらホっとして私の口が止まらない! 気が抜け過ぎだよ、何を正直に全部語っちゃってるんだ私は★ 助けてヤネ君うさぎ、今こそ私は困っているんだよー!

 

「仕方ない。あとは例によって春日の法廷で判決を言い渡すよ」

「どこそれ!?」

「ウチの法廷は代々お風呂場に決まってるね」

「そんなワケないでしょ★ しかも何でヤネ君が判決を言い渡すの」

「当主だから」

「…はい、それはそうですね★」

 

 

 言い負かされたー。ズルいよその立場振りかざすのは。何だかそんなことされると私も嬉し恥ずかし従いたくなっちゃうじゃん★

 

 

 私は無言でヤネ君が抱えてるアイうさぎを奪って、元あった場所に片付けた。そしてヤネ君をソファに座らせて、ぬいぐるみの代わりに私がその股座に収まる。ヤネ君うさぎは私が抱えたままだから、ヤネ君、私、ヤネ君うさぎと、トリプルアイス状態だね。いやむしろ私がヤネ君に挟まれているみたいじゃない? そうか、これこそ私がぬいぐるみに求めていたものだったんだね。何だか幸せー★

 

「おっ。どうしたの、急に子供っぽいまねして」

「まだ子供なんだから、たまにはいいでしょう?」

「無論許そう」

「判決早いね? 当主様」

「なんせ春日家の至宝だからね、春日アイは」

「ふふふっ…」

「でもそのうさぎの存在は頂けないな。リスナーにとっても邪魔でしょ」

「あ〜っ!」

 

 ナ、ナイスコントロール〜★ 憐れヤネ君うさぎはアイうさぎの隣に放り投げられてしまった。ごめんね〜。でもアイうさぎと仲良く隣り合わせで幸せそうにも見えるし〜、まあいっか★

 

 なんとなくこう、前を隠してないと不安になるんだけど…デスクがあるから座ってればレギンスは映らないはず。それならぬいぐるみじゃなくて本物の手を取って気持ち落ち着けようかな。

 

 

 

 私はヤネ君の両手を掴まえてお腹の前に持ってきた。そしていつもの様に右手の掌を選んで揉みしだきながら、雑談で何を話そうかと考える。

 

 そうか。まずはぬいぐるみの件から話を繋げて、この前の買い物デートの話でもしようかな。

 

 ゴキゲンになった私は取り敢えず目の前のデスクに置かれた抹茶ラテに口を付けた。最近は特に良く飲んでいるけど、変わらず甘くて美味しい。舞さん特製はスタボとは違った高級感がある。それもまた良き〜。

 

「美味しい。ホっとする味だー」

「それは良かった。結構気疲れに効く飲み物だと思うよ」

 

 …そう言われると納得だし、私ってば意外とストレス溜まっていたのかも知れないなぁ。

 

 春日フェスで共演する人達に合わないといけなかったからね。ちょっと緊張していたのかな。それで身体がいつもより甘くて大好きな飲み物を要求してたのかも知れない。

 

 でもまあそんな顔合わせもそつがなく終わったし、後は練習で仕事上の僅かな交流をするだけだ。みんなそれとなく我が強そうだったけど、嫌とまで思う人はいなかった…と言うかそんな子は某神作曲家様に睨まれて相手側から人員変更が掛かったみたいだしね★ 私もこれで多少は芸能界の空気を肌で感じた。やっぱりこう、全く知らないままでは怖いもんね。過保護にされるがまま、人間関係の耐性を失い過ぎてもよくはないんだ。

 

 

 

 ――だって私は、これからそんなアイドル達を纏めて蹴散らすことになるんだもん★

 

 

 

 結果的にそうなるだけだと嘯くつもりはないんだよ。だって今回、わざわざ公式配信の日にShake★HipsをUPしたのは偶然じゃない。ヤネ君曰く――Radio Star★ で狼煙を上げたカスガアイによる世界蹂躙戦、その本格的な第一歩としての戦略なんだって。絶対大袈裟だし、サラッと口にするいつもの冗談とは思うんだけど。

 

 でも一つ言えることは、この英語曲は間違いなく世界で話題になる。現に1日と経たずにそうなっている。じゃあ話題を被せられた春日フェスは果たしてどうなるのか?

 

 

 ――トップアイドル達が多数出演するというフェスの話題を霞ませる衝撃を世間に与えながらも、その衝撃的なアイドルが初の公開ライブを行うという理由で春日フェスを再注目させる。

 

 

 結果アイドルの祭典という価値やその存在意義は見事塗替えられ、完全に私だけの祭典となるんだ。ヤネ君の本音からすると宣戦布告やら頂上対決なんて言葉も、生温い建前でしかなくて。

 

 ――春日フェス? ああ最近ニュースでも話題だしな、勿論知ってるよ。アイちゃんの初ライブのことだろ?

 

 そんな認識を世間に植え付けたかったらしい。「はははっ。世間からアイドルであるということをただ忘れられて逝く存在と、アイがわざわざ戦うまでもないんだよね。まあ今後は単にタレントとでも名乗ればいいんじゃないかな」…なんて怖いことまで言ってたよ★

 

 これは勿論あの社長さんにも伝えてない話だ。流石に知ったらショックを受けるんじゃないかな。人にフェス任せておきながら好き勝手やりすぎだろ…って感じにさ。

 

 なんせあの人は残り19人のB小町候補が欲しいわけだしね。ある程度目星を付けて参加グループ選んだんだろうけど、そうそう上手くいくのかな? だってそのお目当ての子は悔しさや敗北感、嫉妬に羨望なんて感情さえ抱けないかも知れないんだよ。

 

 

 ――味わえるのは、途方も無い虚無感だけ。

 

 

 そんな春日フェスを経て、果たして惰性じゃなくアイドルを続けようとしてくれるのかな。

 

 何と言うか…社長さんも私やヤネ君と関わったのが運の尽きだったね★ まああの人も私のことを唯一本物のアイドルと評価してくれてるし、私達に振り回されるのは満更悪い気してないのかも知れないけどさ。それでも自分の会社、自分が守るべき子達がいるから…これからも苦労するんだろうねぇ。

 

 希望があるとしたら、それは既に私のギグを目撃してるってことかな。B小町の子達はそれでもアイドルを目指すの止めないみたいだし、何とか上手く励ますことが出来たんだろうね。それともヤネ君に曲貰える約束がそんなに嬉しかったのかな? 曲だけじゃ私に並べないからそれは無いと思うんだけど…

 

 

 ――まあ、人生の選択は人それぞれということかな★

 

 

 私は私の道を征く。他のアイドルさんは追従出来ないスペシャルな道だよ。だからバックダンサーの仕事以外で道が重なることがあるとするなら、それは相手がアイ★リスになってくれた時かな! それなら私みたいな性格でも仲良く出来る気がするよ★

 

 

「そう言えばみんなにはこのうさぎ見せたの初めてなんだっけ。じゃあその辺りの経緯を話そうか。少し前にねー、ヤネ君と買い物デートしてきたんだよ★」

「そうだね、アイがお風呂場で何度も激情ラブソングを謳った日のことだね」

「ち、違うよ。厚顔ダーリンがお風呂場で私に悪さした時のことだよ。…というかSweet★DarlinをUPした日のことだよ。話を変な脚色しないでよ〜★」

 

 う〜ん、マズいね! 何だか今日の私は受け答えが素直過ぎる。普通に考えて私がお風呂場で悪さされてたら不味いでしょ★ さっきから恥ずかしくてコメント見れないままだよ。もう、どうして私の配信はこんなにもトラブルまみれなの!

 

「ヤネ君のせいだ」

「そうだね、俺のせいなことも多いよね。多すぎてまあ、もう馴れたもんだけどさ」

 

 だからどうしてヤネ君が達観して受入れる側なの!

 

「暴君」

「はいはい」

「馬耳東風」

「自信家と言って欲しいな」

「女ったらし」

「理解る」

「えっち」

「その通り」

 

 

 あ〜、もう! 何を言ってものらりくらり〜★

 

 

 もうカメラに顔向けてらんない。私は堪らず振り返ってヤネ君の胸に顔を埋めた。

 

「はい…ということでね。今さっき来た人向けにもう一度説明しておくと、俺が他のアイドルを注視するとアイが嫉妬のあまり情緒不安定になるんで、今回の同時視聴は中止となりました」

「…うん。もうそれでいいよ」

「どうしようか、雑談続ける?」

「…ヤネ君が話進めて」

「はいはい」

「余計なことは言わないで」

「うんうん」

「私が困ることもダメ」

「もちろん」

「…ヤネ君のバカ」

「はははっ」

「ヤネ君の抹茶ラテ」

「…アイに甘いから大好きってことかな。それ以外の解釈はマズいな」

「ヤネ君72%」

「う、う〜ん。ごめん、流石にそれは意味が分からない」

「バカバカ」

「だからごめんて」

「…浮気者」

「それは心外だなぁ。誓って俺に、疚しいことなど欠片もないよ」

「――私以外の子を見ないで。私だけを見て」

「おお〜! ついに言えたね、良く出来ました!」

 

 ヤネ君が私の髪を撫で撫でする。その優しい手つきに私は思わず音声を切って、うにゅうにゅとよく分からない声を出しながら悶え喜んだ。ヤネ君の胸におでこ擦り擦り、頬を擦り擦り。

 

 

 ――またもや私の内心を、吐露させられた。自分でも気付かなかった本心を自覚させられた。

 

 

 いやー、これって我ながら本当なの? だってちょっとヤネ君が女の子に媚びた挨拶を受けてたぐらいで、こんなにも強い不満を覚えていたなんて。私ってば心狭過ぎじゃないかな…?

 

 子供っぽく甘えてみたり、女として嫉妬してみたり…今日はもうダメだ。恥ずかしくてまともじゃいられない。おまけに何だか安心したのと、ヤネ君の身体の温かさに眠気まで襲ってきた。

 

 まあ、女の子にはこんな日もあるよね。

 

 仕方ないから今日はこのまま、ヤネ君に全て任せてしまおう。

 

「あとは…お願いね、ヤネ君」

「りょーかい」

 

 

 

 

 

 ――果たして、そこからの配信がどうなったのかはあまり定かな記憶が残っていない。基本ヤネ君が喋りながらリスナーと遣り取りしていたみたいだ。私は音声切ったままだったからね。たまに私がもぞもぞ漏らした言葉を聴き取ったヤネ君がリスナーに伝えたりもしてたようだけど。

 

 どうやら私の意識は安心から来る眠気のあまり半分飛んでいたみたいなんだよね。――だってふと気付いた時には既にお風呂通り越して、私はベッドでヤネ君の顔の上に跨がっていたんだよ★

 

 ――この体制は恥ずかしからダメって、あれ程言ってあったのにー。

 

 散々羞恥を味わったその先で更に恥ずかしい思いをするとか…そんなことってあるぅ? 私は思わず再び気を飛ばしてしまった。

 

 

 

 

 

 

 

 ――その後日。世間はヤネ君の狙い通り私の話題で持ち切りになっていた。海外ではカスガコヤネのプリンセス、又はベイビーとしての認識が広がっている。子供ってことじゃないよ? 愛しのBaby…ってやつだよ★

 

 

 愛しのお姫様に、愛しの恋人。

 

 

 これ…当初言ってた私が世界を蹂躙するという目的より、ヤネ君的には絶対こっちを狙っていたんだと思うんだよねー。

 

 だって今回の生Shake★Hips部分を切り取って動画にしたのはまあ分かる話としても、配信で2人が戯れている場面にも英語翻訳を載せて、切り抜き動画としてUPしてたからね。春日フェスという私の初ライブがあるという説明はともかく、私が子供っぽく甘えたり嫉妬して拗ねたりしてる部分まで翻訳されていたんだ。

 

 ――理想的な少年少女の組み合わせ。一躍世界的ベストカップルとして名乗りを挙げた2人。

 

 まあヤネ君自身も海外の人からすれば美顔の少年みたいに若く見えるからね。お陰でスターの恋人という存在にある程度寛容な海外では、すっかりそう認識されてしまったんだ。大人である我々は才能があり好感の持てる未成年者たちのことを温かく見守るべきだ…みたいな風潮もそれを後押しした。いや、ヤネ君はあらゆる意味で大人なんですけどねー★

 

 そして流行りに乗った日本のメディアも、海外ではそんな反応をしているようだと紹介することになる。すると何だか日本でもそれを肯定するような空気感が出来あがってきて…という寸法なわけだ! 如何にも独占欲が強いヤネ君が企みそうなことだよねー。

 

 世界で本格的に私の名が広がる前に、アイは俺のものだと予め釘を差したんだ★

 

 

アイ★
@ai_kasuga・5分

どうも、ヤネ君のSweet★Babyなアイちゃんです

 

普段は無敵配信者として一目置かれる私ですが、正直あの配信だけは非公開にしたいと思うほど恥ずかしい…

けど機嫌を取るかのように毎日抹茶ラテが出されるから、私はもう何も言えないんだ★

 

だからみんなは、あまり見ないでね♥

こ  り  い   き   

 

 

 

 私はもう半分ヤケになってそうツイートした。これで逆に再生数伸びるんだろうなぁ! …と一端の配信者を気取りながらも、心の中でちょっと泣いた。これが私とヤネ君が世界で愛を謳歌する為に必要な代償なのか。

 

 もう、どうにでもなれー★

 

 嬉し恥ずかし良い気分〜♡ も度が過ぎると悶え苦しむことになるんだなぁと、改めて実感した私なのであった★

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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