愛を謳歌する幸せなアイの話   作:京猫

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【期待の第2回目配信!】突発配信でも笑顔をお届け★【アイ/春日プロ】

 

 

「…あー美味しい。レッスン後はアイスに限るよね、最高ー」

「ふふっ、やっぱりハーゲンダッツが好きなの?」

「ん。美味しいやつなら何でも好きだけど、ハーゲンダッツは量的にいいよね。食べ過ぎになること無いし」

「アイちゃん未だにちょっと少食気味だものねぇ。オヤツでご飯の量に影響でないのは助かるわ」

「…ご飯食べないと舞さん怒るもんね」

「レッスンしてるんだからちゃんとした食事は必要よ。それに怒ってないわよ? せっかく用意した食事を食べて貰えなくてがっかりしたから、ちょっと悪戯をしただけ」

「うっ…でも、あの仕打ちは酷いと思う」

「あら? シャワー中にアイちゃんの下着をセクシーな物にすり替えたくらいで、そんなに言わなくてもいいじゃない」

「着替え分だけじゃなくてストック全部だよ!? あの時私がどんだけそわそわしながら探しまわったと思ってるの! 本当にびっくりしたんだから! もう少しで着る覚悟を決めるところだったよ!」

「ふふっ、今度はどんな下着を用意しようかしらね〜」

「――ごめんなさい。もうオヤツを食べ過ぎたりしません…」

「冗談よ」

「…もうっ」

 

 

 …い、いきなりなんです? この会話は…

 ちょwwwなんて会話してるんやwww

 何かぬる〜く始まったと思ったら…w

 あ、アイちゃんにセクシーな下着だと!?

 12才の少女にセクシーな下着を着けさせようとする所業www

 スプーン咥える仕草まで可愛い…と思ってた所にこの会話とはw

 まったりアイちゃん可愛い…

 まいさん…ということはマネまいさんがこの人か?

 のっけからこの会話とは、たまげたなぁ…

 あーダメダメ。これはいけませんよぉ!

 下着…Jr用…ひらめいた

 おいおまえら、まさかエロいコメントする気じゃないだろうな?

 あんまり変なコメントは駄目やぞ

 そうだぞ、エロよりレッスン後の気の抜けたアイちゃんの表情を堪能しろ!

 でも気の抜けたアイちゃん、どこか色気が漂ってエロくね?

 それは、本当にそう

 

 

 

 「――えっ? もしかしてこれ、始まっちゃってる?」

 

 

 たまたま目に入ったコメント欄に思わず驚きの声が漏れる。カメラの調整で待機中だと聞いていたからのんびりしてたのに…これ、カメラも音声も入ってるじゃん。これは間違いなく舞さんの仕業、やられたー★

 

 まあ…もう起こってしまったことはしょうがない。それはともかくとして、これ以上変なこと言わされないように配信進めなきゃ。

 

「――はい★ ということでね、初配信から中2日で始まりましたこの配信。こちらは春日プロ所属のなんちゃって新人ネットアイドル様、アイの配信だよー。いぇい★」

 

 

 はい

 はい!

 はいじゃないが

 いぇい★

 いぇい★

 これ、いぇい★ が挨拶なんか?

 いぇい★(こんばんは!)

 なんちゃってなのw

 アイドル様ぁ!

 ネットアイドルかぁ、確かにまだそうかw

 いぇい★(アイちゃん今日も可愛い!)

 いぇい★(本日はお日柄も良く絶好の配信日和ですね)

 イェア★

 なんちゃって(登録者数100万超え)

 

 

 うーん、今日も人がたくさん来てる。開始予定の30分前に告知しただけなのにこんなに集まるんだねー。

 

「今日は何をするかと言うとねー、実は何と! 打ち合わせの結果! 意外なことに! 何も用意していません! だからテキトーにこのまま雑談回でーす、こうなったらもう私ダラダラ喋りまーす。いぇ〜い★ …で、何喋ろっか」

 

 

 ないんかw

 して、ないんかい!

 何の成果も得られませんでした!(打ち合わせ)

 やる気なさソ!w

 お歌良かったよ〜

 2曲目の話は?

 だれてるねぇ…だれ方までかわいい

 今日のアイちゃんはアンニュイだねぇ

 アイ★キャッチ、良かったよ!

 アイちゃんのアイちゃんによるアイキャッチが見たい…

 2曲目も最高でした!

 

 

「…あ、2曲目も良かった? ありがとう★」

 

 まあヤネ君が作る曲なんで良いのは当たり前だよね。でも素直にお礼言っておこうかな。頑張った成果を褒められたのだし、嬉しいことだよね?

 

 まだファンの存在は私とヤネ君の繋がりをより実感する為に必要な第三者…としての価値しか認められないんだけど、それでもきっと、お礼を言うことに意味はあるはず。それは交流を続けようとする意思を込めた、私なりに前向きな嘘なのだから。

 

 

 そんな感じでしばらく2曲目の話題で話を広げていると、リスナーから配信上での生歌を希望するコメントが増え出した。

 

「…ん? 実際に歌って見せて欲しい? 口ずさむくらいでも? …う〜んどうだろ? あっ…うん。ヤネ君がダメだってさ★」

 

 何故か裏方さんになりきってるヤネ君からフリップで指示される。ちなみに13才以下の私には大人と一緒にいるよというアピールが重要らしい。だから今回は舞さんがわざと最初にカメラ映ったんだね、きっと。

 

「えーとね。育成スケジュール的に、今日は歌っちゃダメな日だってさ。喋るのはいいけど歌うのはダメとか、違いが難しいねー」

 

 

 コヤネぇ! 一体どういうことだぁ!?

 アイちゃんと俺達の配信の邪魔をするとは…たいしたものですねぇ

 いや、お前らこそ何様なんだよw

 何やコヤネやるんか? こちとら特に何の権利も擁しない一般リスナー様やぞ!

 草

 草、そうだよなw

 まだ一銭も金出してないしな。お客様(ry にもなれてないw

 カスガコヤネ怒らしても何の得もしないわぁ

 配信見てるからお客様(暴論)

 SNSチェックしてるからお客様(厄介)

 俺が言ってるんだからお客様(モンスター)

 で、でも配信者はリスナーの声を尊重したほうが…(杞憂勢)

 アイドルはファンにサービスして当然やろ(ドルオタ)

 おい、ちょっとまてw それドルオタちゃう!

 まあこちらから要求押し通そうとするのは横暴な話だよね。

 わからんけど、アイドルじゃなくてネットアイドルなら配信するだけでサービスちゃうん?

 いや、逆やろ。ネットアイドルが配信するのはサービスじゃなくて普通のことや

 じゃあネットアイドルのサービスとは、つまりメディアに出たりすること?

 まあネット以外の活動、になるか

 配信で声聞かせるのは通常のお仕事やからな

 

 

 う〜ん。何だかリスナー同士のやりとりが目立つなぁ。これをコメント欄で許すのはあまりよろしくないらしいんだけど…まあ雰囲気が悪くならなければケースバイケースなのかなぁ?

 

「こらこら〜。私が求めてない状況で、あまりリスナー同士でコメントし合うのはダメだよ。他の人がコメントしづらくなるからねー。私は別に気にならないけど…続けるならホントウに――気にしなくなるよ★」

 

 …良し、何とか無事に治まったみたいだし、問題なしかな。これでも不味ければ決まり事を明記するなり、マネさん達が対処してくれるでしょ。

 

「でも、コメント自体にはなるほどなぁとは思うよ。そう言われると私はまさにネットアイドルなんだなーってね」

 

 未だ現実には姿を現さない存在…私は立派にネットアイドル様とやらをしていることになる。これでも最初にこの活動方針を提案された時はとても驚いたもんだけどねー。だって私の思い描くアイドル像とは全然違っていたわけだし。

 

 …リスナーにも軽く、その辺り説明しておこうかな?

 

「でも私さぁ、最初は配信をすること自体に消極的だったんだよね。だって司会の人がいてその受け答えをするだけならともかく、自分が何十分、何時間と喋り続けたら、絶対に何かやらかすよ。ボロが出ちゃうよ。だから配信をメインにするってどうなのかなぁ…と思っていたんだよね」

 

 嘘をつき続けるのも大変だよね、って話。

 

「まあだけどヤネ君に、それこそが配信を中心にする理由だって言われてね」

 

 ちなみにヤネ君、本音では私を綺麗なゴミ箱である芸能界とは極力接点を少なくしたい…って言ってたよ★ アイなら動画投稿やライブだけで世を席巻出来る。誰が保護してるかを明確にしておく為に春日プロに席を置くことは必要だけど、わざわざこちらから業界に近づく意味は無い、って言ってたんだけど…私はいったい何様なんだろ…?

 

 まあ私からするとヤネ君の気持ちに応えることによって得られる幸福感が欲しいだけだし、ヤネ君的には私が歌って瞳輝かせればそれだけで至福の極みだって言ってたし…

 

 つまりヤネ君は、私に余計な苦労をさせたくないみたいなんです、はい。

 

「誰かに向かって喋る、という行いを癖付けて欲しいんだってさ。そうすると例えば辛いことがあった時なんかも信頼する人に口を開きやすくなるし、本音を抱え込んで独り苦しむようなことがないようにしたいんだって。…もしかしたら将来、リスナーに相談することによって私が救われることさえあるかも知れない…って言ってたよ」

 

 ふふふっ…最後は嘘なのかもね。ヤネ君結構独占欲強いし。

 

「アイドルとは幻想に包まれた存在で、その身は綺麗に彩られているもの。醜い心なんて決して見せない清らかな存在。…だけどヤネ君は、私にはありのままの姿を見せて欲しいと言ってくれたんだよ」

 

 これは嘘ではないかもねー。配信で見せてとは言われてないけどさ★

 

「――だから私は、今よりもっと懸命な努力をしたいと思う。みんなにより綺麗な私の姿を見せられるように。そして私は、だからこそみんなの前で配信をするんだよ。私の嘘偽りのない真実を、みんなの前で曝け出せるように。私の全てを…綺麗に彩られた私も、等身大の飾らない私の心も、全部丸ごと愛してもらえるよう――アハァ!」

 

 

 ――そこで私は、とうとう笑いを堪えきれずに吹き出してしまった。発作みたいな笑い方になったせいで、声がちょっとバカっぽく裏返ってしまう。

 

 

「あはっ、アハァ★ …え、えーとね。ふふっ…これね、この独白ね、今日レッスンでやった演技のシナリオを…アレンジしてやって見たんだけど、みんな、どうだったー? ふふふっ…アハハっ★」

 

 

 …お、おいぃ

 おいおーい!急なシリアス調でびっくりしたよアイちゃん!

 リスナーを手玉に取って笑うなwww

 ちょw笑い過ぎwww

 まだ笑っていらっしゃるwww

 これは未来の名女優w

 な、何を言い出すのか緊張しちゃったよ

 まだ笑いを堪えられてないじゃないかw

 これは草ぁ

 主演女優決定だわ

 弄ばれてしまった…悲しいです。お詫びにいぇい★して下さい

 アイちゃんはやくアヤマッ…らなくても可愛いからいっかぁ★

 なんだ演技か、何の問題もないな

 これは完全にシリアスじゃなくてシリアル

 ドラマでないのに演技も勉強するん? 大変やな〜

 この顔でシリアルされるとドキッとするなw

 これはやられたわー

 演技のレッスンもするんだねぇ

 

 

 いやー、何となくやってみたけど面白かった。ちょっとタチがよくない悪戯だったかな? でもこれが私の出来るファンとの交流でもあるんだよね。周りに居る人以外には嘘しかつけない私では…本音少々を混ぜ込むだけで、現状精一杯なおもてなしとなる。

 

「うん、実は演技のレッスンも受けてるんだよ〜。ちなみに他にも…ええと、ボイトレにダンスにパントマイムに日本舞踊に…あと何だっけ? あ、ウォーキングだ。それに演技をプラスだね。一つ一つの量はともかく種類はいっぱいあるんだよ。何処のタレント事務所も新人はこれくらい手広くレッスンするもんなんだってさー。ほら…例えば仕事の相手先から急遽時代劇でエキストラが10人必要になった…って連絡を貰えたとして、いや実はウチのタレント着物を着たことさえないんです…じゃ話にならないじゃない? だから基礎的なことは予め経験しておいて、仕事決まったら更にそこから猛練習を積む…って感じみたい。そうやって小さいチャンスをモノにしながら名を売り、各関係者との仲を築きながら伸し上がるんだって! 私それ聞いて感心したんだ。何か欲しいものがあるなら努力して掴み取ることが必要なんだなーって。 だから私もレッスンしてみることにしたんだよね。…まあ別に私はタレントとは言い難いし、売り込みとかも必要ないわけで…結局全ての努力は歌う為の身体作りへ収束するよう、神技のヤネ君が全面監修してるんだけどね★」

 

 だから実際学んだ演技自体を活かせるのは、ライブとかこの配信だけなんだよね。――よって今、やってみた★

 

 そう言葉を続けると、みんなは笑いながら…半分呆れながらかな? まあそれでも肯定してくれてるようだ。楽しんでくれたならオッケーじゃないかな? 私は得意の無責任さでそう受け取ることにした。

 

 

 

 そんなこんなで話も盛り上がったところで、どうやら時間も程良い案配だ。よーし、最後にちょっとしたお知らせをして締めに向かおうかな★

 

「じゃあそろそろ良い時間なんで終わるんだけど、最後にお知らせね。実はメンバーシップがいよいよ始まるよ!ちなみに今、メンバー特典となる絵文字の一部見本が用意してあるらしくて…このフリップね。私も内容知らないから楽しみなんだよねー。じゃあ行くよー、ドン!」

 

 

完全 無敵 最強 究極 天才 的 な アイ ♥ ドル 様 ★ 一番 星 ちゃん ! ? 神 してる い ぇ ヤネ 君 好き パパ たま ま ママ マネ みこ おり まい さん

 

 

「な、何これぇ、絵文字なはずなのに文字ばかりだね…? しかもやたら強そうな言葉が並んでるし、これいったいどんな意図で使えば…ん? ――アハハっ、これね。みんなも気になるかぁ。まあ察しやすいとは思うけど、最後の方の文字は誰かさん達がスタッフさんにゴリ押しした結果だろうね。間違いないよ、多分★」

 

 全く困ったもんだね、みんなには。

 

 何か言葉の並びに意図を感じるなぁw

 完全無敵なアイドルかwww わかるわ

 天才的なアイドル様★!!

 これは間違いなく最強のアイドル様や♥

 いぇい★ が打てるじゃんヤッター

 俺達の一番星!

 ちょっとカスガ君…キミさぁ

 さり気なくコヤネが存在アピールしてるやんけw

 マネさんも大集合か、いいねぇ

 あれ? 何か、猫もいる?

 …ねこちゃん? なんで?

 突然のネコ乱入!

 猫「ちょっと通りますよ…」

 ネコです。よろしくお願いします。

 これは間違いなくネコ

 猫? たまちゃん?

 たま は誰や?

 

「えっ、猫…? どこに? ――あー分かった! たままちゃんのことかぁ!」

 

 たまママ…通称たままちゃんのことね。これ、珠夜さんの息子になる青葉君が舌足らずな頃にそう呼んだのが謂れらしくてね、私もそれに倣って呼ぶようにしたんだ。その、まだママと呼ぶのは気恥ずかしさもあり…たままちゃん、可愛い呼び方がすごく似合う人だからいいかなぁって。

 

「たままちゃんのことは〜えっと、どうしようかな…もう少し後? 分かった。ということでまたいつか機会があったら、紹介するね★」

 

 法的に正式なママになってから…ということかな。なるほどねー。でも今までヤネ君でさえ珠夜さんの存在を明かしてはいなかったのに、私の配信で名前を匂わすとはなぁ。

 

 ――あ〜。何か涙が出そう。

 

 最近はどうにも涙腺が緩くなっている。ここ数ヶ月で泣かされ過ぎなんだよ私。困るよねこれ、頬を伝わったら嘘が剥がれ落ちちゃうよ。

 

 

 

「じゃあ本日は急用が出来たのでこの辺りでお別れするよもういいでしょもう終わるぅ途中じゃないお知らせもうない知らないやっておいて舞さんもう切ってよ挨拶なんてしてる場合じゃごめんアイしてるいぇいじゃあねばいばーい!」

 

 

 

 私は堪らず早口で配信を締めて席を立つ。たままちゃんが座ってるソファまでダッシュして、そのまま横に飛び込みたままちゃんのお腹に顔を埋めた。

 

 凄いや私、配信2回目で事故スレスレだ。

 

 私だって今回のはやっちゃったーという思いはあるんだよ。流石に分かる。でもあそこで泣いたら意味不明過ぎてそれこそ配信事故だし、しかも泣いてる理由をまだ説明出来ないという詰みっぷり。そんな地獄配信を回避しただけで褒めて欲しいよね…

 

「アイちゃん、良く頑張りはったよー」

 

 うぅ…たままちゃんが相変わらず神ママ過ぎる。何で私の胸の内が分かるんだろう。優しく頭を撫でられ、私は思わずたままちゃんの太腿にぐりぐりと顔を擦り付けていた。

 

 

 

 

 

 ――そう。心の底から油断をかましていた私は、その様子を配信カメラが追っていたことに一切気付かないのであった。

 

 

いぇいじゃない★

 

 

 

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