宿儺「ポン!クラッシュ!クラッシュ!パッパッパ!」   作:プラゴミ

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初投稿…ということでなんとか


前菜(オードブル)︰シルバーバック

シャクレノドンを完食し、さらなる美食を求めて彷徨う宿儺は道中様々なエモノを捕獲していた。

 

「ほぅ…この飛蝗(バッタ)、背に(ひしお)*1を貯め込んでいるのか

うむ…円熟した旨味と芳しい香り、さらにこれほどまでに強い旨味がありながらクセが一切感じられん

これならば様々な食材と調和するだろう」

 

宿儺は上機嫌を隠しもせずに醤油バッタから採取した醤油をシャクレノドンの小腸を加工して即席で作った袋に詰める。

 

「なんだこの葉は…?植物の癖に肉のような芳香に見た目…

味は……クックックッ!肉そのものだ!!なんだコレは!?訳がわからん!!」

 

ゲラゲラと笑いながらまるで幼子のように目につく全てを口へ入れる。

宿儺は今、全身全霊で生を楽しんでいた。

 

「さて、この瓜は一体どんな味が………?」

 

丸々としたバナナきゅうりの房へ伸びた宿儺の手が止まる。

 

「なんだ……?この匂いは…」

 

ソレは、まるで本能に訴え掛けてくるような香りだった。

人間が…否、生物が無条件で気に入る『味』がある。

甘味、生命の最重要器官である脳のエネルギーとなる糖分はカロリーが高く生命維持に必要不可欠な存在である。

故に、多くの生物は無意識的に甘味を求め人間に至っては糖分の摂取に報酬系が組まれ脳内麻薬が分泌される程である。

端的に言えば、人間は甘味を摂取することで()()のである。

 

「うぉ…っ!?だ、唾液が…止まらん!?」

 

十数匹のストライプサーモンに重さにして1トンは下らないシャクレノドンを全て腹に収めておきながら…宿儺の腹が匂いの元を喰わせろと猛烈に叫ぶ。

まるで数ヶ月断食したのではないかという程に腹が鳴り、止め処なく唾液が溢れ出る。

人間は美食を見た時、別腹として胃の容量を無理矢理こじ開ける事があるが…宿儺のソレは劇的であった。

 

「クックックッ!楽しみだな…一体、この匂いの先に何が在る!!」

 

呪力で脚力を強化した宿儺は音よりも疾く駆ける。

途中途中に魅力的な食材がわんさか見当たるが目もくれず駆ける。

 

「ふむ…近いな、匂いの元は何処に…」

 

ザリザリと数メートルに渡って地面を抉りながら急停止した宿儺はキョロキョロと辺りを見渡す。

 

「ハッハッハ!匂いがキツ過ぎて正確な距離もわからん!!

だが…ここまで近付いてようやく()()()()

この匂い…菓子*2か!」

 

口腔内から唾液が溢れ出ては地面に染みを作っていく。

しかし、それすら心地良いとばかりに笑みを浮かべる宿儺の前に『ソレ』は現れた。

 

「ゴバルルァ!!」

 

その()()を宿儺は知らない。

その生物は1900年代初頭まで未確認生命体…UMAとして数えられていた生物──当然ながら平安の世に生きた宿儺がソレを知るはずがない。

その生物の名はトロルコング──かつて、世界中の誰もが空想上の生物と断じた『ゴリラ』の怪物である。

 

(ましら)か…?クックックッ…ハーッハッハ!!

良いぞ…ツイてる!貴様らの『脳』は、俺の好物でな!!」

 

宿儺は知らない、ゴリラという生物を。

最も数が多く一般的な成体の雄ゴリラ…ニシローランドゴリラで、体重150〜180キロ。

走れば時速40キロ程*3でさらには高い知能を持ち道具を使い熟し、人の言葉や仕草を記憶・理解する程である。

だが、それらすらも霞む身体スペック──ゴリラの握力は500キロを超える。

実戦空手の父、大山倍達曰く打撃における破壊力とは『体重プラス握力プラス速さ』。

本来ならば、これらの凄まじい身体スペックを持ちながら温和で草食動物に近い食性を持つゴリラは積極的に他の生物を襲う事はない。

しかし──トロルコングはゴリラの全てのスペックを上回り…かつ、完全なる肉食動物(ほしょくしゃ)であった。

 

「バルバルルァァァ!!!」

 

トロルコングがその四本の腕を巧みに操り、宿儺に襲い掛かる。

このトロルコングは群れの下っ端…敵対者の力量を測る捨て駒であり、万が一の際には自身の臭いを染み付かせ群れが敵対者へ畏れを抱かぬようにする役割を持っている。

 

………だが、それらの狙いは相手が自身と近しい実力の場合のみ通用する程度の策。

もしも宿儺がトロルコング達への殺傷を良しとせず、無力化のみを狙っていればあるいは有効だったかもしれない。

 

「解」

 

宿儺はゴリラを…トロルコングを知らない。

だが同時に、トロルコングは…呪いの王(宿儺)を知らない。

キンッという硬質な音と共に、トロルコングの頭部が中程から両断される。

 

「呪力を持たぬという事は、呪術による攻撃へ一切の耐性持っておらんという事…ケヒッ!菓子の供に丁度良い」

 

トロルコングの巨体が頭部を失った事で飛び掛かった勢いそのままに滑るように転がっていく。

脳を失っても肉体はすぐには死なず、手足をバタつかせ蠢くその姿は晩夏の蝉を思わせた。

宿儺は上機嫌にその様を眺めると、邪悪に顔を歪める。

周囲にはトロルコングの血液の臭いが満ち、宿儺の笑い声が響き渡る。

 

「ほう…さっきのは斥候か」

 

トロルコングの頭部を抱えて周囲を探索していた宿儺はトロルコング達の本隊を見付けた。

 

「猿といえば猿山…なるほど、量が居て当然か」

 

百を超える数のトロルコングを目の当たりにすれど、宿儺は一切の焦りも無く辺りを見渡す。

そして──見付けた。

 

「……っ!()()か!!」

 

ソレは、4.5mの体高を誇るトロルコングが小さく見える程に巨大な果実。

実一つが末端価格にして5億で取引されるという果実の王様。

その名を、『虹の実』

 

宿儺は虹の実の知識も、逸話も何もかも知らない。

ただ、その圧倒的存在感から自身の食欲を掻き立てているのが虹の実(ソレ)だと一目で理解した。

 

「悪いな…遊んでやる時間が短くて」

 

宿儺は猿叫と共に眼前にまで迫ったトロルコングを揶揄(からか)うように嗤うと掌印を結ぶ。

ソレは両面宿儺の代名詞とも言える、呪術における奥の手。

 

「領域展開─伏魔御厨子」

 

万死の厨房はコンマ数秒の内に宿儺の眼前にたむろしていた百を超えるトロルコング達を鏖殺した。

宿儺は血痕一つない道を歩きながら小躍りでもしそうな程嬉しそうに虹の実へ近付いていく。

 

生物において、最も無防備な時間がある。

ソレは──

 

「カアァァァ!!」

 

捕食時、生物は…狩りに成功した時に最も無防備となる。

 

「っ!?」

 

虹の実に手を伸ばした瞬間、宿儺の身体が紙くずのように吹き飛んだ。

近くの岩盤にめり込んだ宿儺を見て、ソレは嗤う。

全身が白い体毛に覆われた、トロルコング。

群れのボス、シルバーバックと呼ばれる個体である。

 

「貴様、呪力を持っているな…?」

 

ガラガラと岩石達を押しやりながら立ち上がる宿儺。

その顔に先までの笑みは無い。

宿儺の腕の一本が、肘の少し上からちぎれていた。

 

「この呪力……ふん、貴様──喰ったな俺の指を!!」

 

シルバーバック:呪術変異個体

推定捕獲レベル 68

 

*1
味噌や醤油の御先祖様、現在でもよく似たものならば家庭で簡単に作れる

*2
平安時代において菓子とは多くの場合果物を指して言う

*3
これは陸上の短距離金メダリストの速度に匹敵する




グルメスパイザーは出ないんだ…本当に申し訳ない
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