宿儺「ポン!クラッシュ!クラッシュ!パッパッパ!」   作:プラゴミ

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完結記念に続きです






虹の実

両面宿儺、その名を聞いた者は平安の世に君臨した鬼神と共にある呪物を思い浮かべる。

鬼神、両面宿儺がその魂を切り分けた20本の指。

千年の時を越えてなお、呪いを振り撒く屍蝋。

たった一人のエゴに呪術師達が敗北した証左であり、呪術界の汚点。

千年の時を経てなおも破壊を許さず在り続けるソレを、呪術師達は畏怖と侮蔑を込めてこう呼ぶ。

特級呪物──『鬼神両面宿儺の指』

 

 


 

(フン、俺が受肉した以上他の指とて来ていて当然…か)

 

圧し折れ、傷口から白い骨が覗く程に破壊された右上腕を反転術式にて治癒させながら宿儺はシルバーバックを睨む。

 

(この呪力量…喰った指は恐らく一本だろう、呪力操作も世辞にも巧者とは言えん───だが)

 

シルバーバックの全身から蒸気のように立ち昇る呪力、それは保有する呪力量を表す──のではない。

自身の肉体に呪力を留められぬ、呪力操作の未熟さ故のもの。

本来ならば、例え両面宿儺の指を摂食していようとも話にならぬ程お粗末…だが、それは──人間であれば、の話である。

 

トロルコングの群れの長、シルバーバックは元より呪力に頼らずとも人間などとは比較にもならぬ身体スペックを持つ。

如何にお粗末だろうと、どれ程見窄らしかろうとも……呪力強化における元の強さが違う。

例え人間の術師が苦心の果てに呪力操作技術を極め、元の身体能力の十倍を超える呪力強化を成したとしよう…

1✕10、素晴らしい成長と言える。

だが……シルバーバックはソレを嘲笑う。

どれ程甘く見積もってもシルバーバックの呪力強化倍率は2倍を超えないだろう……だが、1✕10と100✕2──どちらが大きいかなど小学生でも理解る。

 

「クックックッ…馬鹿力め!」

 

メリメリ、と地に指を挿し込んだシルバーバックはまるでちゃぶ台を返すが如く…両者が立つ地盤をひっくり返した。

 

宿儺は今現在、領域展開後の術式使用が困難な状態にある。

領域展開後の術式の焼き切れは如何に宿儺と言えど逃れうるものではない。

故に、宿儺は呪力を持ったシルバーバックを相手に──術式無しで戦わざるを得ない。

 

しかし、宙を舞う瓦礫を足場に跳び移りながら、宿儺は嗤っていた。

 

「さぁ、次だ!次は何を見せる!!」

 

瞬間的に全呪力を脚へ込め、爆発的加速と共にシルバーバックの前へ降り立つと宿儺は右側の二本の腕でシルバーバックを強かに殴りつける。

 

「コアァァァァ!!!」

 

四本の腕による宿儺のラッシュに、シルバーバックもまた四本の腕で応戦する。

 

四腕 対 四腕

 

一撃一撃が肉を削ぎ、正に命を削る連撃。

だが、真に恐ろしいのは…両者の体格差である。

こと打撃戦において体重(ウェイト)の占める割合の過多など最早語るに値しない。

プロボクサー達が僅か数キログラムの違いで厳密に階級を分けられるように、階級を跨ぎベルトを獲得する選手が英雄視されるように───打撃戦において、重さとは強さである。

 

両面宿儺、異形として産まれた四腕二面の鬼神。

平安時代の人間としては異例と言っていい2メートル近い長身に、骨太で筋肉質なフレーム…体重とて優に100キログラムは超えている。

だが、対するシルバーバックは体高6メートル…重量約3.5トン。

大人と子供…どころではない差が───圧倒的な生物としての格差が、両者の間には存在していた。

 

「カアァァ!!!!」

 

また、その体格差故にシルバーバックの攻撃は全てが打ち下ろし(チョッピング)となる。

降り注ぐ豪雨の如き拳撃、一撃が致命傷となる死の暴風雨(スコール)……宿儺の総身に久方振りとなる死の直感が走る。

 

「どうした?俺はまだ五体満足に立っているぞ!!」

 

だが、それでも宿儺は湧き上がる歓喜の笑みを堪えられなかった。

呪術全盛、平安の世においてすらついぞ出会えなかった自身と撃ち合える…否、自身よりも格上の相手。

圧倒的強者のみが抱える渇きにも似た孤独、満たされた食欲と反比例するように飢えていた宿儺の剥き出しの闘争本能。

襲い来る死の暴風雨、その伸びる腕の側面に這わすように自身の拳を合わせる。

高速で飛ぶピストルの弾が、柔らかなハズの内臓に当たり軌道を逸らされるように

数十トンもの重量を持つ鉄道が、線路上の僅か数十センチ程度の石で横転するように

物体とは勢いが付けば付く程に、横からの力には弱くなる。

宿儺の拳はまるで滑走路のようにシルバーバックの腕を滑り、逸らしながら叩き込まれていく。

 

他を寄せ付けぬ圧倒的な戦闘者としての才が、ごく自然と宿儺にその打撃を選ばせていた。

戦闘開始から既に1分、焼き切れた宿儺の術式はとうに復活している。

しかし、それでも尚───

 

「安心しろ!術式で戦うなぞ狡い真似はせん!!

お前の得意で戦ってやる」

 

宿儺はシルバーバックにあくまでも打撃戦での決着を望む。

 

「グ……グルルルァァァ!!!」

 

本来、シルバーバックは群れの誰よりも臆病である。

危険に対し誰よりも鋭敏で過敏、リーダーの素質として何よりも必要なソレを持っている。

今、シルバーバックは恐れていた。

鬼神両面宿儺を…呪いの王を。

 

だが、それでも尚────退かぬ。

トロルコングの群れの長としての矜持、強者としてのプライドがシルバーバックの逃げ足を諌める。

肉体が変容しようとも、呪いに身を浸そうとも…変えられぬ習性(生き様)が拳を握らせた。

 

「そら!頑張れ頑張れ!!」

 

更に速度の増したラッシュ、宿儺もそれを逸らすが…徐々に、僅かながらに迫る。

迂遠にして遠望、しかし確実に迫る…シルバーバックの一撃。

 

遂に、宿儺の腕が完全に間に合わないタイミングでシルバーバックの拳が振り上げられる。

 

「────ッ!??」

 

しかし、拳を振り下ろす刹那…シルバーバックの腕が弾かれる。

宿儺の拳では───ない。

完全に間に合わないタイミングだった……ならば、何が?

 

「フン、くだらん技だが…手遊びには丁度良い」

 

シルバーバックの粗雑な呪力操作を見て、宿儺は一つの技を編み出していた。

本来、肉体に追従する呪力を敢えて遅らせる事で一度の打撃に二度の衝撃(インパクト)を生み出す技を。

全ては宿儺の天才的な呪力操作技術のなせる、正に神業。

 

宿儺の四腕、その全てが二度の衝撃を放つ。

遅らせる時間すらバラけさせ、タイミングを掴ませない変幻自在な連撃。

均衡が再び───崩れる。

 

四腕 対 四腕

 

──────否

 

四腕 対 八腕

 

「クアァァァ!!!!?」

 

一際強く叩き込まれた打撃に、シルバーバックの防御がカチ上げられる。

そんな隙を見逃す程に、宿儺は甘くない。

 

「俺を愉しませた褒美だ、受け取れ!!」

 

その『現象』は打撃との誤差0.000001秒以内に呪力が衝突した瞬間に起こる。

空間は歪み──呪力は黒く光る。

シルバーバックを呑み込むは、極限の集中が齎した100万分の1の火花。

 

名を─────『黒閃』

 

砕け散った肉片と血の雨を心地良さ気に全身に浴びながら、宿儺は抜き取った自身の指を…特級呪物『両面宿儺の指』を呑み込んだ。

 

「さて…メインディッシュといくか」

 

舌なめずりをしながら視線を上に上げる宿儺。

その眼前には───巨大な果実が実っていた。

 

 

 

 


 

 

 

「ごちそうさまです、トリコ様」

「ごちそうさまです」

 

「やめろよそのアイサツ」何もおごってねーよ

 

筋骨隆々、という言葉が似合う男が一人巨大(おおき)な門の前に立っていた。

男の名はトリコ、美食四天王の一人にして数々の新食材を発見しグルメ時代の発展に寄与している男である。

 

「………妙だな」

 

トリコは眉間にシワを寄せながら鋭く門を…否、その先を睨む。

 

「ど、どうしたんですかトリコさん…?

も、もしかして…トロルコングが直ぐ側まで来てたりとか!?」

 

トリコの後ろでは小柄な男があわあわと百面相をしながら喚く。

 

「逆だ…静か過ぎる」

 

「静か?それの何が問題なのですか?」

 

同行していたIGO職員、ヨハネスがトリコの言葉を訝しげに聞き返す。

 

「トロルコングは縄張り意識の強い猛獣だ、そんな奴らが餌場の近くまで来てる俺達を放っておくとは考え難い

普通なら群れの下っ端を偵察に寄こすぐらいはするハズなんだが……」

 

言いながらも、トリコは既に一つの結論を出していた。

 

(トロルコングの捕獲レベルは(ナイン)、やり手の美食屋なら倒せない強さじゃないが…()()となると話は別だ

一体一体が捕獲レベル9相当、群れにボスが居るとすればレベルは10は下らねぇハズ…全体で見れば相当タフな仕事だ)

 

視線は、遠く…見えぬハズの遥か先を見据えていた。

 

(居るのか……?そんな奴が)

 

トリコの美食屋としての経験が、疑念を呈する。

しかし、その疑念を……トリコの超人的な嗅覚が否定する。

 

(夥しい血と死臭だ、恐らくトロルコングは全滅していると見て間違いない

…………バジュルコッコか…?ヤツならトロルコングなんて目じゃねぇ

…………いや、ヤツはあの宝箱の側から離れない

なら───誰だ…?彼処には、誰が居るんだ)

 

トリコの頬を冷たい汗が伝う。

その視線の先には、姿は見えずとも…

香り立つ程に濃密な死の臭いを纏った、何者かが泰然と佇んでいた。

 

 

 

 

 




やあ (´・ω・`)
ようこそ、バーボンハウスへ。
このテキーラはサービスだから、まず飲んで落ち着いて欲しい。
うん、「また」グルメスパイザーは出ないんだ。済まない。
仏の顔もって言うしね、謝って許してもらおうとも思っていない。
でも、このタイトルを見たとき、君は、きっと言葉では言い表せない「ときめき」みたいなものを感じてくれたと思う。
殺伐とした世の中で、そういう気持ちを忘れないで欲しい
そう思って、この小説を書いたんだ。

じゃあ、注文を聞こうか。
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