僕が死んだことになったら、知らぬ間に彼女たちは曇っていた   作:かにくい

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第1話

「もうそろそろ死んでもいいかなぁ」

 

 学校からの帰り道。

 

 口から洩れた言葉はそれだった。彼女たちの前では決してこんなことは言わないが、一人になると口から出る言葉と言えば「死にてぇ」「そろそろ死にたい」とかそんな言葉である。

 

 これは別に某有名小説家に憧れたとか、中二病を拗らせたとかではない。僕は本当に()()()()のだ。

 

 僕は()()()だからね。

 

 彼女たちにはこの先明るい未来があるだとか死んではいけないだとか、これから僕が見守っているからだとか歯の浮いた言葉を放ちはしたが、当の本人は心の底から死にたがっているのだから、放った言葉は僕自身は欺瞞にあふれているなと心底思うし、軽すぎて彼女たちの心には響かないのではないかと思ったが、僕のそんな言葉と行動でも彼女たちを一応だが、立ち直らせることには成功した。

 

 僕がなぜ彼女たちを助けようと思ったのかというと、言ってしまえば贖罪のようなものだ。

 

 僕が犯した罪を償うために救ったという方が正しい。だからこれはある意味僕自身を助けているのだから、贖罪にもなっていないのかもしれない。

 

「とりあえず、目標は達成できたしなぁ。そろそろ良いと思うんだけれど」

 

 目標。

 

 僕はとりあえず五人を救うことを目標にしていた。それが最近、達成できたしそろそろ死んでもいいのではないかと思えてきた。まだ、彼女たちがこれから生きていくには多少の不安は残るものの十分役目は果たせたと思う。

 

「おーい、悟ー」

 

 そんなことを考えていると後ろから名前を呼ばれたので振り返る。そこには大きな胸を揺らして全力でこちらに向かってくる生徒会長が見えた。

 

「やっと追いついた。悟、私を置いて先に帰ってしまうなんて酷いじゃないか」

「いや、美鈴は生徒会長だから何かしら仕事があるんじゃないかって思って遠慮しちゃた」

「私と悟の中だから遠慮何てしなくてもいいのに」

 

 そう言ってそっと手を取ってくる美鈴に苦笑しつつも二人で歩き出す。

 

 神山美鈴。

 

 生徒会長を務め、品行方正、立てば芍薬、座れば牡丹、歩く姿は百合の花。長い黒髪は品やかであり丁寧に手入れされていることが誰の目から見ても分かる。顔は神様のお気に入りだとしか思えない程整っている。体は全校男子が全員振り返るほどで、今僕の腕に押し当てている大きなお胸は魅了の魔法がかかっているのではないかと錯覚してしまう程大きい。確か、Jカップとか言っていた気がする。胸だけでなく、お尻も大きく男子が目を引かれてしまうのは仕方がないと言えるのではないだろうか。

 

「ねぇ、悟。今日、家に来る?お母さんも悟の事気に入ってるし、私も悟がお家に来てくれたら嬉しいんだけれど」

「いや、今日はいいかな」

「えー、なんでよぉ。一緒にいようよ」

「美鈴は受験生でしょ?お勉強頑張らなきゃ」

「大丈夫だもん。模試ではA判定だったし」

 

 生徒の前では泰然自若、風紀を乱すものは私が許さないと言わんばかりにきちりとしているのに、僕の前では甘えまくりで風紀を乱しまくっている。まぁ、彼女の背景を鑑みれば仕方がないと言えなくはないが、ここは冷たく返すことによって彼女の自立を促さなければならない。

 

「それでもダメ。今度、前に見たいって言っていた映画一緒に見に行くから、それで我慢して」

「え?ホント?デートしてくれるの?」

「うん。だから、今日はゴメンね」

「うん、いいよ。だけど、絶対にデートしてね?絶対だよ?」

「分かったよ。絶対。約束する」

「うん!!」

 

 笑顔の花を満開に咲かせて頷く彼女に思わずこちらもエガオになってしまう。

 

 その後も美鈴と学校での話や家についての話で華を咲かせ、お互いの帰路に帰路に就くこととなった。

 

「じゃあ、またね。美鈴」

「うん、またね。あ、今日の夜電話かけても良いかな?」

「いいよ」

「やった!!じゃあ、また夜に」

「うん。またね」

 

 そうして彼女と別れる。

 

 デートかぁ。それまでに僕は生きているのだろうか?今日にでも死にたいと思っているのにその今度が来るのだろうか?

 

 全く持って無責任であるが、仕方がない。こういう人間なのだ、僕は。どうしようもない人間。

 

 さて、これからどうしようか。叔母さんは家に僕がいると嫌そうな顔をするので、遅く帰った方がいい。いや、何なら死ぬ場所を探しに行こうか。明日、明後日は休みだし。

 

 そう決まったら行動は早かった。自分の財布の中身を確認し、とりあえず行けるところまで行こうと思い、目的地は定まらないまま電車に乗ることにした。

 

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