呪いの世界に反逆する仮面の部外者達   作:フェルトファン

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 ※ この物語には、京都弁がありますが、どんな喋り方なのかは分かりませんでしたので、正直不安です。もしも間違いがありましたら、誤字報告もよろしくお願いします。by.作者


黎明 Ⅳ:とある欠陥品

 

 

 

 

 

 

 2002年8月15日、とある1人の赤子が生まれた。

 

 しかもその赤子を産んだ母親は、()()()()()2()()()()()()()()()()()()()()()()()()。本来ならあり得ない事だろうが、それでも無事に生まれてきてくれた赤ん坊に感謝し、新しい命が生まれた事で盛大に祝うだろう。

 

 

 

 

 

 

 それが、()()()()()()()()()()()()()───

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 赤ん坊の実の父……禪院扇(ぜんいんおうぎ)は、その赤子が生まれた時点で、()()()()()()()()()()()()()()()()()

 

 

 

 何故ならその赤ん坊は、()()()()()()()()()。女である出来損ないの姉妹より一つ下だが、それでも自身の妻があの姉妹を産んでからわずか数ヶ月で再び新たな生命を生み出した。

 

 “これは間違いなく奇跡だ……きっと素晴らしい術式を持っているに違いない!”と内心で興奮と共に思い込む扇。そしてその赤子を産んだ妻も“ようやく夫の為に役に立った…”と、安心したかの様な表情をする。

 

 そんな希望を抱く扇は、早速呪術関係の医師に診察してもらう様に行なったが…………

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「なんだ………これは?」

 

 

 

 

 

 届けられた診察結果の表紙を目にした扇は、部屋の畳にたた周りを回っている生まれたばかりである息子を()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()。そしてその場にいる妻は、夫である扇の視線に怯えながらも、ただ黙る事しかできなかった。

 

 

 

「何故……………なぜなのだ………」

 

「………」

 

「………どうしてこんな事になってしまったのだ!!!!

 

 

 

 

 

 ガッシャン!!!

 

 

 

「──っ!」

 

 

 怒鳴り声を上げると同時に、扇は部屋中に置いてある置物などを蹴り飛ばした。その時、大きな物音が出したせいで、まだ生まれたばかりである息子が突如泣き出してしまい、扇の機嫌に怯えながらも妻は、必死に赤ん坊に優しい言葉を語り続けながら、泣き止ませようとする。

 

 

「何故だ…………なぜこの様な()()()が生まれてしまったのだ!?」

 

 

 ついさっきまで希望に見えたはずが、一瞬で砕かれてしまった扇は、手に持っている診察結果の表紙を“ぐしゃり”と握り締め、ただただ怒りを出すしか無かった。

 

 

 

 

 

 

 

『残念ですが、扇様と奥様のお子様さんからは………()()()()()()()()()()()()()……』

 

 

 

 

 

 

 医師がそう告げたれた瞬間、唖然とする扇の中にある希望が一気に崩れた。

 

 呪力が感じられない……しかもその赤子は、非術師どころか、()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()。つまり自身の息子は、()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()

 

 しかしそんな結果を受け入れなかった扇は、再び検査をやらせるよう指示を出し、または別の医師に頼み検査し続けた。だが、何度も検査を行なったところで、結果は何一つ変わらなかった。その結果を聞いただけで、気が暗転しそうになったその時……

 

 

 

 

 ぺたっ………ぺたっ………

 

 

 

 

 扇の足元に何かが触れてきた。何かと思い視線を動かしたら、自身の足元にいつの間にか泣き止んだ息子が“にぱぁ〜”と笑いを浮かび見せていた。何を考え、何を思っているのか分からない………だが…………

 

 

「───っ!!!!」

 

 

 期待外れの欠陥品となってしまった息子の笑みが気に入らなかった扇は、思わず自身の手で───

 

 

 

 

 

 

パチンッ!!!!

 

 

 

「うぅ……っ!」

 

 ()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()扇が手を出そうとする寸前、即座に妻が息子を庇ったようだ。ジンジンと頬が赤く腫れ上がり、痛みが脳まで響き渡る。だがそれでも、妻は自身の頬の痛みの事を夫に一言も言わず、ただ黙る事しかできなかった。

 

 今度こそ再び赤子を叩こうとするが………現実的に児童暴行してしまえば、間違いなく当主にならなくなってしまうどころか、それ以前の問題を抱えてしまうかもしれないと、冷静さを取り戻した扇は、()()()()()()()()()()()()()、部屋から去ろうとするが………

 

 

「(まずい………このままでは兄どころか……他の者にもにも知られてしまえば、私の立場が危うい!ただでさえ、あの出来損ない共を抱えているのに!!!)」 

 

 もしも自身の息子が呪力がない欠陥品であると、兄弟や他の親族に知られてしまったら、自分は間違いなく笑い者になってしまう。そう深く思い込む扇は、妻にこの事について内密にするよう語り始める。 

 

「……もしも検査の結果を聞かれたら……何も答えるな。」

 

「…………え?」

 

「この様な欠陥品を知られては、私の立場が危うい…………いいか、絶対に言うでないぞ──

 

 

 

 

 

 

分かっているな?

 

 

 

「ッ──は、はい………」

 

 

 それだけ言うと、扇は部屋を後にした。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「…………なんで……お前が───」

 

 

 同時に、部屋に残された妻は、()()()()()()()()()()()()()()()()………

 

 

 

 

 

 

 

 

⚪︎⚫︎⚪︎⚫︎

 

 

 

 

 

 

禪院家

 

 

 

 

 

 

 呪術界において長い歴史と権力を持つ五条家(ごじょうけ)加茂家(かもけ)と同じく、()()()()()()()()()()()()でもある。 

 強力な術式をもつ呪術師たちをその家系に取り込むことで発展してきた一族であり、呪術界に貢献してきたことで揺るぎない地位を獲得している。何より、最近では珍しく、時に新しい術式にも寛容しているとか。


 

 

 

 

 


「禪院家に非ずんば呪術師に非ず、呪術師に非ずんば人に非ず」

 

 

 

 

 ──と、禪院家にとって口に出すほどの独善的な家であり、相伝の術式を引き継いでいない者は術師であっても落伍者として人生を始める。特にその一家で生まれる女性には、出発点にすら立たせて貰っていない(※ 簡単に言えば、女性は男性と同じ土俵に立てては貰えない。)

 

 

 

 

 

 

「お姉ちゃん……こっち終わったよ。」

 

「おう、こっちももうすぐ終わるからな。」

 

 そんな禪院家には、()()()()()()()()()()()()。名前は、禪院真希(まき)と禪院真依(まい)。双子の姉妹なのだが、術師としての才能は全く無く、特に真希は呪いを視認する事もできない。

 

 お互い5歳でありながらも、毎日のように雑用係として押し付けられていた。もちろん2人には部屋が用意されているが、内装などはかなりボロボロであり、もはやその部屋は物置に邪魔なガラクタを押し込める倉庫部屋にしか見えなかった。だが、その部屋に2人だけでなく、()()()()()1()()()()()()()()()()()

 

「終わったよ!まきねぇちゃん!」

 

「おう、ありがとうな()()。」

 

 ──と真希が微笑みながら、目の前にいる()()()()に礼を言う。

 

 それに気づき、同じく真依も同じ発言をする。

 

「よしよし、ありがとー景和。」

 

「マイねぇちゃーん!」

 

 姉から礼の言葉を返された事に喜んだのか、少年は、姉である真依の胸に飛び込み、“ギューっ”と抱きつくをする。そんな光景を目にしたもう1人の姉……真希は羨ましくなったのか、一つ年下である弟……景和を真依から離し、今度は自身の胸の方へ抱き寄せた。

 

「おいこら、先に私が礼を言ったんだぞ。」

 

「ちょっとお姉ちゃん〜………今は私の番なんですけど〜」

 

「えへへ〜……僕はどっちも大好きだよ〜」

 

「………ぷっ、だってよ真依〜」

 

「な、なんで私じゃないのよ!?」

 

 

 

 

 

 

 

 

「えへへ……今日こそ、()()()()()()()()()()()()()()!」

 

 

「「………ッ」」

 

 ふと嬉しそうな表情をする景和を見た真希と真依は一瞬だけ驚いた表情をしたが、()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()2()()

 

 

「………そ、そうだな………なぁ真依……」

 

「う、うん………きっと褒められるよ……」

 

「ホント!やったー!!!ねぇちゃん!ねぇちゃん!早く掃除終わらそうよ!!」

 

 そう語った景和は、次の掃除場へ向かうのだった。

 

 

 

 

「「………」」

 

 姉達が、あまり良い表情をしていない事を知らずに………

 

 

 

 

 

 

 

 それから時間が過ぎ、就寝の時間になった時……

 

 

「スゥ──……スゥ──……」

 

「「………」」

 

 今日も雑用係を終えた3人の姉弟は、いつも通りの部屋で一緒に寝ていた。景和は既に寝静まっているが、弟の左右で横になっている真希と真依は全く眠気を感じられなかった。真依は寝ている弟の頭を優しく撫でており、真希は何もない天井をじっと眺め続けている。

 

「………ねぇ、お姉t「だめだ」……ッ」

 

「絶対に言っちゃだめだ………出ないと景和が余計に悲しむ………」

 

「………分かってる………だけど!」

 

「真依………私だって同じ気持ちだ.....けど.....言える訳ねーだろ───

 

 

 

 

 

アイツら(父と母)が、()()()()()()()()なんて………」

 

 

 

 

 平然と口にする真希だが、唇を噛み表情は悔やんでいた。同じく真依も、弟の為に何もできないと思い、自身の無力さを感じている。

 

 弟である景和は、生まれつき真希よりも呪力が無いまま生まれてしまった。それでも、真希と真依にとって初めでの弟であり、とても喜んでいた。だが父からすればただの邪魔な置物にしか見えておらず、景和を産んだ母でさえも、“アンタなんか産まなければ…”と、鋭く睨んでいた。何故なら理由は、()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()

 

『いいか、この欠陥品はお前達で育てろ………それと、この欠陥品に呪力がない事を他の物にも言うんじゃないぞ。もしも誰かに言ってしまえば……その時はお前達3人……容赦なく()()()()()()()()……』

 

 ──と、自身の子であるにも関わらず、まるで脅しているかのような口でそう告げる扇。そんな父が、怒鳴る様に言われた姉妹は、涙目ながらも従うしかなかった。こうして父に無理やり弟の世話を押し付けられた真希と真依は、それぞれ協力しながら5年間、景和の成長を見守っていた。

 

 

 ──宝の持ち腐れ──

 

 ──禪院家の恥──

 

 ──出来損ないの姉弟──

 

 

 生まれてから家の者からの風当たりは強く、実の親や親族だけで無く、使用人から蔑まれ虐められる日々を過ごしていた。どうやら父は、屋敷の者達に“景和が自身の術式を扱えない者”と誤魔化したが、それでも自分達姉弟の対する扱いは変わらなかった。

 

 不遇な扱いを受け続けるも、せめて弟である景和を守ろうと互いに決心する姉妹。今も昔も、何より大切な弟であり、時に暴力を振るわれそうになるも、身体を張って真依と景和を守ろうとする真希と、時に寝付きの悪い景和を眠るまで子守唄を歌うなど、彼の心を守ってきた真依。

 

 だが一番困った事に、いつの間にか景和は()()()()()()()()()()()()。なぜなら、“父さんと母さんに喜んでもらえる”と勘違いしており、それに気づかずただ言われた事に従っているだけの道具にも見られ、雑用係を押し付けられているのにも気づいていなかった。しかも景和は、自身が呪力がない事も知らず、“いつか立派な呪術師になって、父と母に褒められたい”と、憧れを持つようにもなってしまった。

 

 そんな勘違いしている弟に、間違いであると伝えようとするが、弟の嬉しそうな気持ちを壊してしまうんじゃないかと……想像しただけで恐れていた彼女達は、嘘を吐く事しかできなかった。

 

 

「でもお姉ちゃん……いつになったら……景和に言うの?」

 

「っ………それは…「うぅ〜………ねぇちゃん───」……っ!?」

 

「えへへ………だいすき〜………むにゃぁ………」

 

 一瞬起きてしまったと思ったが、どうやら寝言らしい。一瞬景和が起きたと思った2人は、一安心して“ほっ”、と息を吐いた。

 

「とりあえず寝ろ真依………でないと景和が起きてしまう……」

 

「お姉ちゃん………うん、おやすみ……」

 

 ──と、何気に不安そうな気持ちを持つ真依は、隣で寝ている景和に優しく抱きつき、目を閉じた。そして真希も同じく、2人をまとめて抱き抱えるように腕を伸ばし、抱きしめて目を閉じた。 

 

 いつまでも嘘が言えない……だが、この家には自分達を助けてくれる味方はいない………だからこそ………

 

 

 

 

「「(景和は…………私が護る……)」」

 

 ──と、互いの内心が一致した事に気づかず、そのまま寝静まったのだった……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 そして数日後、寒い季節となった頃………

 

 

 

「よぉ、坊主!何してんだ〜?」

 

 

 

 いつも通り無理やり門番の掃除を押し付けられた景和の前に、()()()()()()が現れた。

 

 

 

 

 

 

⚫︎⚪︎⚫︎⚪︎

 

 

 

 

「(どうしよう………どうしよう………)」

 

 

 この時、たまたま休憩時間となった頃、姉達と一緒に住んでいる部屋に戻った景和は、いつも以上困惑している。しかもその様子は、()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()

 

 

「(これ…………本当にどうしよう!!)」

 

 

 内心でかなり焦っている景和は、隠していた物置から取り出した()()()()()を眺めていた。

 

 手に持っている無線機は、丁度一週間くらい前に謎の男………ケケラに渡されていた。しかも運が良かったのか、倉庫部屋に住んでいるおかげで今の所、姉達や屋敷の者達にバレず無線機を隠す事ができた。だが、突然知らない人からいきなり渡され、流石の景和も困惑している。

 

『いいか景和、何があっても、絶対に知らない人についてきちゃダメだぞ!』

 

『そうよ!もしも知らない人から何か渡されたら、すぐに捨てるのよ!』

 

 ──と姉達からの言葉を思い出した途端、さらに焦り出す景和。

 

「(どうしよう………やっぱり捨てた方がいい……だけど…ど、どこに捨てればっ!?)」

 

 本当なら姉達の言った通りにすぐどこかに捨てようとするが、すでに屋敷の中に持って来てしまい、どこに隠せばいいのか分からなかった。今すぐにでも姉達に相談したいが、もしもこれが両親や他の家の者達にバレてしまったら、間違いなく怒られるだろうと思い込む景和は、さらに焦り出していた。

 

 

「(と、父さんや母さんにバレてしまったら………絶対に怒られる!と、とにかく隠さないt……「よお!景和〜!」……ふぎゃ!?」

 

 

 するとその時、何者かが自分の名を呼んだと共に抱きつかれた。しかもその声に覚えがある景和は振り向くと、自身の姉の1人である、真希だった。

 

「ま、まきねぇちゃん………なんで?」

 

「たまたまお前が部屋に帰っている所を見かけたが………で、何してんだ?」

 

「(ギクッ!)………な……何にもないよ!」

 

 姉の問いに思わず誤魔化し返した景和は、素早く無線機を物置の中に隠した。

 

「なんだよ〜真依だけじゃなくて、私にも秘密か〜このやろ〜!」

 

「うぁ!?ちょ、やめてよねぇちゃん!!」

 

 そしていつの間にか、そのまま2人で戯れ合い始めた。もしもここに真依がいたら、羨ましがって2人と同じく彼女もその間に入ってくるかも知れない。だがその時………

 

 

 

 

 

 

 

 

「おい出来損ない共!向こうの便所の掃除もやっておけや!!!」

 

 

 

 

 

 

 

 ──と突如、向こうから怒声が聞こえた瞬間、自分達だろうとすぐ自覚した2人は、戯れ合うのをやめた。特に真希は、とても不機嫌そうな表情をしていた。

 

 

「チッ!またあのオッサンかよ……いい加減にしt「僕が行くよ!」……はぁ!?」

 

「ねぇちゃんの当番はさっき終わったでしょ!なら次は僕が行くよ!」

 

「そうだけど....やっぱり一緒にいt...「大丈夫!ちゃんと1人でできるからさ!」……分かった、けど景和。何かあったら私達を呼べよ..…いいな!」

 

「うん、分かった!じゃ行ってくるね!!」

 

「あ....お、おい!」

 

 そう言って景和は、厠の所へ向かってしまった。

 

「…………」

 

 そんな彼の背を眺めるしかない真希は、不安な表情と共に心配していた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「よしっ!終わった!」

 

 

 厠の掃除を任された景和はようやく終え、部屋に戻ろうとしたその時……

 

 

 

「お!なんや〜偶然やな〜出来損ないの弟クン〜」

 

 

 

 

「──っ」

 

 突如その声が聞こえた途端、鳥肌がたった景和は思わずその声の方に視線を向けると、そこに立っていたのは禪院家の当主である禪院直毘人(ぜんいんなおびと)の息子……禪院直哉(ぜんいんなおや)禪院直哉だった。

 

「なんやそのびっくりした顔……反吐が出るわ〜」

 

 たまたま直哉と鉢合わせてしまった景和の表情は、()()()()()()()()。景和にとって直哉は正直苦手であり、何より真希からは“何があってもあの直哉に近づいちゃダメだ、”とまるで警戒しているかのような口で、言い聞かされていた。

 

「で、こんな便所で掃除か〜それはご苦労さん〜」

 

「………し、失礼………します……」

 

 “すぐに帰ろう……”と怯えながら内心でそう語る景和は、すぐにこの場から去ろうとしたその時……

 

 

 

 

 

 

 

「そういえば……真希ちゃんと真依ちゃんはおらんな………そうかそうか───

 

 

 

 

 

 

それは良かったなぁ!!!」

 

 

 

 

 

 

 

 ──と口に出した直哉は、景和の着物の襟首を掴むと同時に、外の砂利の敷かれた庭へと放り投げた。

 

 

 

 

 

 

 ドオォォン!!!

 

 

 

 

 

「──いっ!?」

 

 

 突然の出来事で困惑する景和は、地面に叩きつけられたと同時に背中から痛みに思わず涙目になり顔を歪める。そんな彼の様子をまるで“おもちゃで遊ぶ”のような目で見て、意地の悪い笑みを浮かべた直哉は……

 

 

 

「ちょっと遊ぼう〜や!!!」

 

 

 

 ──と一言だけそう言った瞬間、景和に向かって殴るや蹴るの暴力を振い始めた。

 

 

 

 ドゴッ!!!ボッコ!!!!

 

 

 

「ごほ!うぐ……ッ!!」

 

 

 自身より年下である景和に平然と暴力を振る直哉。そんな時、物音に反応した使用人や女中はその光景を目にしたが、誰1人として止めはしなかった。何も見なかったかのように目を逸らす者や、中には()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()

 

 

「うぅ………っ……」

 

 

 “痛い……痛い……”と声を上げようとするが、身体中に広がる痛みが大きいせいで声を出す事ができない。そんな痛々しい姿となった景和が涙を浮かべていると、面白がるかのような表情をする直哉が口を開いた。

 

 


「ちょいちょい〜なんやの〜……扇のオジさんの息子さんが……術式を一つも扱えへん弱者が、ちったぁおもろい反応してワイらのストレスの捌け口くらいにはなってくれて嬉しいなぁ〜。何ならこの前、()()()()()()()()()()より、お前を虐めた方がよっぽと楽しいなぁ〜」

 

 

 以前、真希は身体中あざだらけになり一人で立つのも辛いほどの暴力を受けていた日があった。戻ってきた彼女の痛々しい姿を見た景和と真依が心配してが……“大丈夫だ”と笑っていたが、気の強い上の姉は特にこの直哉から執拗に痛め付けられる日があった。だが、直哉にとってつまらなくなったのか、今度は一番下である弟にも手をつけようと、姉達がいない隙を見て行動しなのだった。

 

「何や〜手も足も出ないんか〜………それなら術式を使ってみ〜」

 

「………っ!」

 

「ほれ〜こんだけ指導したんや〜さっさと身につけんかい!!!」

 

 ──と、軽く蹴り飛ばされた景和。この時直哉は、景和に“死の恐怖”を与え続ければ、強制的に術式を発動させるんじゃないかと、まるで()()()()()()()()()()()()()()()()で暴力を振り続けた。だが、いくらやってもそれらしき力が見えない。

 

「(はぁ〜何やこのゴミは?こんだけやっても術式一つも出せへんなんて……てっきり真依ちゃんくらいかと思ったんやk…………いや、待てよ──)」

 

 その時、何かに気づいた直哉は仰向けの状態で倒れている景和の髪を掴み、無理やり何かを見せようする直哉。

 

「ほら起きろや………あれ、何やと思う?」

 

「……っうぅ…」

 

 意識が途切れる寸前に起こされた景和は、直哉が指を刺している方向に視線を向けされられる。直哉が指している所には、屋敷の壁に張り付いている4()()()()()()()だった。

 

 当然、呪力を直哉は普通に見えるのだが…………

 

 

 

 

 

 

 

 

「……………ど、どこ………」

 

 

 

 

 

 直哉が指している所に目を向けていないのか、まるで何かを探すかのようにキョロキョロ視線を動かしていた。

 

 

 

「…………は、ははは…………ハハハハ!!!」

 

 困惑している彼の姿を目にした直哉は、突然笑い出した。

 

「そういうことかいなん───

 

 

 

 

 

 

 

お前、呪力を持っていないんやな!!!」

 

 

 

「………ッ」

 

 直哉がそう語った時、思わず驚愕する景和だが………

 

「……そ……そんな事ない!ちゃんと………あるんd「だったら見せてみ?」……ッ」

 

「ほれほれ〜どないしたん?あるんやろ、呪力〜」

 

「…………」

 

「……何や、ダンマリか〜(もしかコイツ、自分が呪力が無い事も知らへんのか〜?)」

 

 突然声を積もらせるかのように反論する事もできない景和。そもそも彼は、両親や姉達からも自身の呪力が無い事を知らされておらず、いつしか父と同じ立派な呪術師になれると思い、時には隠れて呪術についての勉学をしていた事もあった。

 

 だが、直哉に呪力が無い事を知られた時、驚きを隠せなかった。いや、()()()()()()()()()()()()

 

「(なるほどな………しっかし扇のオジさんは悪い人やな〜……ウチらに隠し事だけでなく、自分の息子にも呪力が無い事を教えてないなんて………まるでと───)」

 

 

 ()()()()()……と直哉が内心でその言葉を出そうとした途端、表情が一変した。

 

 

 

 

違う何を言っておるねん………こんなゴミがあの人と同じやないやろ!!!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ドオォォォン!!!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ──と叫んだと同時に、思わず景和を屋敷の方へ蹴り飛ばした。

 

 

 

 

「う………ぁっ………」

 

 屋敷の壁に衝突した景和は、身体中に骨が何本も折れてもおかしくないくらいの激痛が更に広がり、とうとう頭からは血が流れていた。もういつ意識を失ってもおかしくない状態となったその時……

 

 

 

 

 

「「景和!!!」」

 

 

 突如、自身にとって知っている声が聞こえた時、景和は全身に広がる痛みに耐えながらも、何とか自身の視線を動かす。そこには、涙目となった姉達の姿が見えたのだった。

 

「そ……そんな……景和、大丈夫!?」

 

「何だよこれ………おい景和、しっかりしろ!!!」 

 

 自身の事を心配してくれたのか、何より景和のその瀕死に近い姿を目の当たりにした時、その表情を焦燥と困惑、そして恐怖に近い感情を綯い交ぜにした表情へと変貌させていた。

 

「……景和………景和!!」

 

 夥しい程の傷と流血をしている弟の姿を目にした真依は、物凄い速度で此方へと駆け寄ってきた途端、抱きついてきた。そして真希も同じく抱きついてき、2人の着物に血が付いてしまったが、そんな事を気にせずただ景和の安否だけを確認していた。

 

「ね……ねぇ………ちゃん……?」

 

「景和……おい景和……!」

  

「ど……どうしよう……体が……うご……ないよ……」

 

「無理して喋るな!真依!」

 

「う、うん分かった!景和ちょっと動かすから、痛かったら言っt───」

 

 

 

 

 

 

 

 

「ちょいちょい、今はお兄さんが景和くんと遊んでいるんやで〜邪魔すんなや〜」

 

 

 

 景和を運ぼうとした途端、直哉に呼び止められた2人は、視線を変えた。真依に関しては、直哉を見ただけで思わず弱腰となり、肩が震えていた。

 

「直哉……お前まさかっ!」

 

「何や真希ちゃん?もしかして、俺が弟くんと遊んでいるのを羨ましがっておるんか〜?」

 

「お前が景和を…………直哉!!!」

 

「お〜お〜怖いな〜wそないな顔していると、美人がないなしやで〜」

 

「ふざけるな!!!よくも景和を…「ねぇ……ちゃん…」……景和!?無理して喋るn───」

 

「僕……………呪力が無いの…?」

 

「………え?」

 

「……ッ!?……景和……お前………なんでそれを……」

 

「嘘………だよね………だって………この前も………なれるって………言ってくれたよね……」

 

「「………ッ……」」

 

 弟の口からそう語られると、返す言葉も無い彼女達。彼女達もまだ子供であり、“一体どうすればいいんだ”と必死に思考しているが、思い浮かぶ言葉が見つからない。

 

「ハハハハ!!!何や君ら姉妹揃って酷いな〜弟くんに嘘をつくなんて〜w」

 

「うるさい!今お前に構っている暇はn…………ッ!?」

 

「何や?俺が気づかへんとでも思ってんのか〜」

 

 ──と事実を知られてしまった直哉を見て、彼女達は唖然とする。“最悪だ……一番気付かされたくない人間に気づかれた!!”と、内心で怒りと焦りの両方の感情を強くした真希は、思わず辺りを見回すと……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ざわ……ざわ……

 

 

 

 

 

 

 

 

おい、聞いたか?

 

まさか……扇さんの息子さんに呪力が無いなんて……

 

それじゃあの子供は、失敗作以前の問題なんじゃ無いのか?

 

まぁ扇さんと奥さん……かわいそうに……

 

呪力が無い……これじゃまるで、あの()()()()()()なんじゃ───

 

しっ馬鹿!その名はここでは言ってはならんぞ!!

 

 

 

 

 

 直哉との光景を目にした屋敷の使用人や女中の者達は次々と現れ、あれこれ言い始める。そんな彼らの様子を目にした真希は“好き勝手に言うな!!”と、怒りを表す。だが、今は弟の治療が優先だと、真依と共にこの場から離れようとするが………

 

 

「おい待てやこら、どこへ行くねん?」

 

「どけ直哉!もう十分だろ!!」

 

「アカンアカン、まだこれからやちゅうねん………

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

それとも代わりに君らが相手してくれるか?」

 

 

 

 

 

 直哉のその言葉が耳に入った瞬間、身体から震え上がる恐怖を感じた真衣は、弟を抱きながら怖気ていた。そして真希は、2人を守ろうと彼女も怖気ながらも抵抗する。

 

 

 

 

 

 

「ねぇ…………ゃん……に……出す……な……」

 

 

「あ?何やって?」

 

 

 その時、あれだけの暴行を加えられた景和は、その場から立ち上がり、まるで直哉の方へ向かおうとしていた。“まさか、”と危機を察知した彼女達は止めに入るが、既に遅かった………

 

 

 

 

 

 

「ねぇちゃん達に……手を出すな!!!」

 

 

 

 

 

 

 身体中に響く激痛に耐えながら、直哉に反撃しようとするが…………

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「騒ぐなや雑魚が」

 

 

 

 ──と、その言葉が聞こえた途端、そこで意識が途絶えられてしまった………

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

XXXXX

 

 

 

 

 

 

 それから時は夕方となった頃、意識を失っていたはずの景和が目覚めた。寝ていた彼にずっと見守りながら付き添ってた姉達は、目が覚めた彼の姿を見て、涙目ながららも喜びと共に景和を抱いてきた。景和も、今は姉達の優しさに甘えてしまいたいと、同じく抱いていた。

 

 

 

 その時、突然何も言わず、部屋に入ってきた父が姉達に向かって…………

 

 

 

 

『今日………貴様ら出来損ないには、別の部屋で寝てもらう』

 

 

 

 

 ──と伝え、なんの心配する言葉も無く、すぐ部屋から去ってしまった。一方、扇に付き添っていた母は“余計な事を…”と、まるで目の仇を見ているかのような表情で睨んでいた。

 

 姉達は何もしていないのにも関わらず、突然別の部屋に寝させようとするなんて……流石におかしいと思った景和は扇の元へ向かおうとするが、すぐ姉達が彼の行動を止められてしまった。彼女達は“私達は大丈夫だ“と、不安にさせないよういつも通りの表情をするが、それでも景和は心配していた。

 

 

 そして、結局反対する事も無く、そのまま2人は別の部屋へ向かったしまったのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ねぇちゃん達……………大丈夫……だよね……」

 

 

 

 

 

 そして時刻は就寝時間となり、いつも住んでいる部屋で、なぜか今日は眠れなかった。姉達が別の部屋に移動したからだろうか、1人で寝ている事も無く、自身の心を落ち着かせられなかった。そして何より、全身に包帯が巻いている状態で、とても痛々しい姿となってしまった景和は、自力で起き上がるのに困難であった。

 

「………呪力が無い……そんな訳……ないよね……」

 

 直哉にそう告げられ、姉妹にもその事を尋ねようとしたら、なぜか答えてくれなかった。だが、強くならないと家族を守る事が出来ないと理解する景和だが、今日直哉との差を感じさせ、悔やんでいた。

 

 

「……………僕に……僕に力があれば…………ッ!!!」

 

 

 

 その時、ふと何かを思い出した景和は、物置に隠していた小型無線機を取り出した。

 

 

 

 

『もしも力が欲しいと願いたいなら、俺はお前のサポーターになってやってもいいぜ。もちろんすぐに決めなくていい、だけど気が向いたら、そいつを使って俺を呼んでくれ』

 

 

 以前、謎のスーツ男……ケケラにそう語られたのを思い出した景和は、手に持っている無線機を眺めていた。これを使えば、本当に力が手に入るのか……疑いながらも、無線機に起動しようと………

 

 

 

 

 

 

 

 

「おい、入るぞ」

 

 

 

 

 

 

 

 ──した寸前、部屋の扉から声が聞こえた景和は、手に持っていた無線機を慌てて着物の中に隠す。すると、自身の返事を待ってもらえず、勝手に部屋の扉を開けた。しかもその扉を開けたのは、自身の父………禪院扇だった。

 

 

 

「と、父さん………なんd「付いてこい」……え?」

 

「二度も言わすな………黙って付いてこい……」

 

 父……扇の口から出た言葉と同時に圧を押された景和は、従うしかなかった。必死に立ちあがろうとする息子の姿に目もくれず、ただ先へ向かって行くのだった。そんな父を付いて行こうと、必死に追いかけようとする景和。途中で何度か話しかけようとするが、何故か何も返してくれなかった。

 

 

 

 

 

 

 

 歩いてからわずか数分、突如立ち止まった扇に付いてきた景和は驚く。目的の場所に着いたのだろうか……だが辺りには、何故か屋敷の外にある森林でその隣には川沿いがあった。ここで一体何するだと、当然扇からは何も聞かされておらず、一体何をするのかも想像もできない。だが、どうしても気になる疑問がある景和は、父に尋ねる。

 

 

「と………とう……さん………」

 

「………」

 

「僕に呪力がない………なんて………嘘……だよね……」

 

「………」

 

「だって………だって僕は父さんのむs───」

 

 

 

 

 グサッ

 

 

 

 

 

 

「───へぇ?」

 

 

 その時、()()()()()()()()()()()()()()()があった。

 

 恐る恐ると、自身の腹部の方に視線を動かした景和が目にしたのは……()()()()()()()()()()()()()

 

 そしてその刃で刺したのは、自身の父……扇だった……

 

 

 

「フン……」

 

「───ブッハ………が……!!」

 

 刺さっていた刀を扇が引っこ抜いた途端、口から血を吐き出した景和は、その場で地面へと膝をついた。

 

「は───はぁ──はぁ──」

 

 傷口が開いた腹から血が流れ、呼吸困難になった景和。幸い内臓などには傷付いてはいないものの、それでも重症である事は変わりなく、景和の腹部から溢れる血がどんどん地面に広がっていた。

 

 

「お前は今“なぜこんな事を…”と、思っているだろう?」

 

「ッ……!」

 

「答えは簡単だ………()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()……」

 

「…………は?」

 

「あの兄のボンクラ息子に知られてしまった……おそらく他の者にも知られているだろう……だからこそ、お前存在を……今すぐにでもこの世から消したかった……」

 

「……….」

 

 “何を言っているんだ、この人は…”と言わんばかりな表情をする景和は、父の口から語られている言葉に理解ができなかった。

 

「それに………あの出来損ない共もそうだが………お前が生まれてしまったせいで、私は当主に選ばれなかった。本来ならあの時、貴様が生まれた時点で始末するべきだった………だからこそ───」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ここで貴様を始末する………

 

 

 ──と言いながら扇は、自身の呪力を放出した刀から炎を出し、景和の方へ歩み寄ってくる。しかもその目は、まさに殺しにかかろうとしていた。

 

 

「ッ………ヒィ……!!!」

 

 

 父の殺意に恐れた景和は、身体を引きずりながら逃げようとする。だが、どこにも逃げ場もなく、とうとう川沿いの近くに行き止まってしまう。そんな時、もう自分の目の前には、炎が纏った刀を握る扇が目に入った。

 

「と…とう………さん……なんで……」

 

「お前はさっき言ったよな……“自分は父の息子だと”………だがな───

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

私は、お前を息子である事を一度も思っておらぬ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 斬!!!!

 

 

 

 

 

 

 

 そう告げた瞬間、降りかかる刃に纏う赤い炎と共に、容赦なく景和を斬りつけた。

 

 

 

 

「────あ…………」

 

 

 

 父の口から語られた言葉に絶望した景和は、斬られた衝撃で川の方へ落ちてしまった。

 

 そして、自身の手で始末した息子の最後を目にした扇は………

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「さらば、()()()()()()()()よ──」

 

 ───と最後の最後で愛の無い言葉を送った扇が、早々その場から立ち去ったのだった……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ゲホッ!!!ゲホッ!!!」

 

 

 その時、死んだと思った景和は……川沿いの近くの地面に仰向けの状態で生きていた。あの時、扇に斬られた時、()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()。何より、扇によって身体中に燃え盛えられた炎が川の水に入ったおかげで一瞬で消え去り、自力で川から脱出した景和は仰向けの状態で倒れていた。

 

 だが、命は助かっても、状況的には最悪だった。しかも今の季節は完全に真冬。夜に冷たい風が吹いている中、川の水で濡れていた身体が更に冷え、体温が下がっている。

 

 

「───はぁ………い………いや………だ……」

 

 

 

 “死にたくない……”と、声を出そうとするが、身体が凍っているせいで声が出ず、助けを呼べる事もできない。絶体絶命の中、ここで凍えて死ぬでは無いかと思い込む景和は、恐怖を抱いていた。

 

「はぁ───はぁ───はぁ」

 

 息が段々に荒くなっていく……

 

 意識が朦朧としている中、景和が大好きな姉達を思い浮かべたその時…………

 

 

 

 

 

 

 

「おいおい、お前に死なれちゃ困るんだよ〜」

 

 

 

 ───とその声が聞こえた瞬間、そのまま意識を手放した。

 

 

 

 

 

 

XXXXX

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「………うぅ………あぁ?」 

 

 

 

 ふと目を覚ますと、なぜか知らない部屋の中にある寝室で寝ていた。“どうして自分は、こんな所にいるんだ……”と、ぼやける視界を戻しつつ、身体を起こす。

 

 

「いっつ──!?」

 

 

 すると突如、腹部に痛みが走り、良く見ると腹部だけでなく全身に包帯が巻かれてあった。しかもその包帯は、ついさっき巻かれていたよりも新しくなっていな。何より、いつのまにか着物から一般の非術師が着ている服装に着替えていた。

 

 “着替えた覚えがないはずなのに…”と内心で思った景和は、辺りを見渡そうとした時……

 

 

 

「よっ!目が覚めたか〜」

 

 

 

 すると突如、声が聞こえた。慌ててその声が聞こえた方に振り向くと……目の前にいたのは、以前屋敷の門番で掃除していた所で、たまたま通りかかった謎のスーツ男……ケケラが立っていた。

 

「お………おじさん……」

 

「おじっ───いや、なんでもない……それより、大丈夫だったか?」

 

「……分からない……でも、なんで………」

 

「まぁ……お前さんを助けてやった命の恩人って奴になってな……それにしても──

 

 

 

 

 

 

 

 

息子であるお前さんを斬り殺すなんて……ひでぇ父親だなぁ〜」

 

「……ッ!!!」 

 

 ケケラがそう語ると、ようやく思い出した。あの時………実の父である扇によって、腹部を刺され……重症になってもなお、容赦なく斬りつけられた記憶が……

 

「あの一家に住んでいる連中もイカれているが……まさか実の父親がそんなひでぇ事をするなんt…「違う」………あ?」

 

「………違う………父さんが、そんな事をするはずがない!!!」

 

 ケケラが何か言うとした途端、景和は自身nの父に斬られた事をすぐに否定した。信じたくなかった……もしかしたら、これは悪い夢なのかもしてない……そう願っていたが……

 

「ほう………だったら()()()()()()()()()?」

 

「……っ…こ、これは……」

 

 ケケラに傷の事を聞かれた途端、景和は言葉を失ってしまった。

 

「それにさ坊主………()()()()()()()()()()()()()()()?父親がお前の事を愛していないなんて?」

 

「………違う……そんなわk「違わねーだろ」……ッ!」

 

いい加減自分を誤魔化すな……そして良く思い出せ。()()()()()()()()()()()()()()……

 

「……………」

 

 そう語られた途端、内心で父親との思い出を振り返る………

 

 

 

 

 

 

 

 

 勉学し、頑張ったのに……自分の事を見てくれなかった……

 

 運動や体力を付けようと必死に頑張ったのに……見てくれなかった……

 

 何度も話しかけようとしたら………無視続けられた……

 

 

 

 

 

「…………あれ……なんで……」

 

 

 “何一つ、父親との良い思い出が残っていない……”

 

 

 何度も何度も記憶を辿ろうとするが、父親との良い記憶が見つからなかった。いや、まるで最初っから無かったかのような感じだったが、それでも景和は探し続けるが………

 

 

 

 

 

 

『お前のような呪力を一つも持っていない欠陥品を始末する為だ──』

 

『──お前が生まれてしまったせいで、私は当主に選ばれなかった。』

 

『私は、お前を息子である事を一度も思っておらぬ』

 

 

 

 

 

 

『さらば、ゴミ以下の欠陥品よ───』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「は…………ははは…………」

 

 ようやく父親が一体どう言う人間なのか……そして、その父親が自分に対する愛が無い事をようやく知った景和は、虚な目となり、涙目ながらも乾いたような笑いを始めた。

 

「……………じゃ………結局僕が頑張ったのは………なんだったの………」

 

 全ての努力が、無である事を知った景和は、絶望していた。もう自分がどう努力すればいいのか分からなくなった。いっその事、あの場で死んでもいいと感じていた………そんな時……

 

 

「おい坊主……お前“死にたい”と思ったんだろ?」

 

「…………」

 

「はぁ〜………まぁそりゃそうだよな〜……父親に認めたいと努力したのに、まさかその父親がお前さんの事を見ていないどころか、殺そうとしたもんな〜」

 

「…………」

 

「………けど、()()()()()()()()()()()()?」

 

「───っ……」

 

「その2人はまだ、あの屋敷に残っているんだろ?ぶちゃけ俺が言うのもアレなんだけど、あの姉達も相当な酷い扱いを受けているんだろうな〜……それにお前さん、今まで姉達に助けられただろ……

 

 

 

 

だったら今度は、お前が救う番だ」

 

「………ッ!」

 

 そう告げられた瞬間、景和の中にある何かが、大きく変化した。

 

「禪院景和………お前はこれからどうしたい?」

 

「…………え……」

 

「このまま理不尽な不幸を抱えたまま、姉達に会わずただ死ぬのか……それとも、自分を馬鹿にした連中に仕返ししてやりたいのか……選べ───

 

 

 

 

 

 

1つ目は…もう死にたいのなら、勝手にしろ。

 

 

2つ目は…お前が理想な世界を叶えたい力を手に入れたいなら、俺はお前をサポートしてやる。

 

 

 

「────」

 

 

 正直な事を言ってしまえば、何を言っているのか理解が追いついていなかった。話が突然進み過ぎたせいで、頭の中の整理が纏まらなかった。だが不思議な事に、迷わなかった。ついさっきまでの悲しみを忘れ、何かを決意した景和は、ケケラの方に目を向ける。 

 

 

 

 

 

 

 

 

「2つ目…………それが良い」

 

 

「ほぉ〜………俺が提案しておいてアレなんだが、良いのか?もしかしたら、お前の親父さんどころか……あの一家全員と敵対するかもしれないぞ〜」

 

「………関係ない………父s………いや───

 

 

 

 

 

 

 

あの(クズ)直哉(カス)を超えて、禪院家を滅ぼしてやる!!そして、ねぇちゃん達を助ける!!!」

 

 

 

 

「………ッ!」

 

「だからケケラ………僕に………()に──

 

 

 

戦う力を教えてくれ!!!」

  

 

 

 その時、景和が決意した様子を間近で見ていたケケラは、思わず自身の目を見開いた。彼の目には、一切の迷いなんて無かった。しかもその目は、()()()()()()と同じ目をしていた。

 

 

 

「………は………ははは───

 

 

 

 

 

 

 

ハハハハハハハハハ!!!!

 

 

 

 そして、思わず興奮するかのように、再び不気味な笑いをするケケラ。

 

 

 

 

 

「あぁ、いいだろう!!!お前さんの決意、確かに聞き取った!

 

 

 

 

 

 

 

 

だが、その前に……お前さんの苗字を変えないといけないな……」

 

「苗字を……変える?」

 

「あぁ……坊主はもうあの屋敷に帰らないだろ。しかもあの腐れている連中は、今ごろお前さんが死んだと思っているんだろう……だが、もしもお前さんが生きていると知られたら、再びお前さんを殺しにかかるかもしれない。ならせめて身を隠すよう苗字を変えないとな………はっ、そうだ!!

 

 その時、何かを閃いたケケラは、景和の肩に“ポン”と手を置き、彼に新たな苗字を与えようとする…

 

 

 

 

 

 

「いい苗字を見つけた……今日からお前は───

 

 

 

 

 

 

桜井景和(さくらいけいわ)だ!!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

〈呪術界ルール そのⅣ〉

 

 

 

禪院家で呪術の才能を持たない者には、

 

人としての扱いを受けいられていない。

 





 一応説明しますが、この物語に1〜2人のオリキャラが登場します。

 そして早速登場した彼は、あの禪院姉妹の弟として登場しました。まだ幼少の頃ですが、見た目は姉妹と同じ顔をしております。

 改めて知ったけど、禪院家ってさ………やっぱクズですね。

 次回で、いよいよケケラとベロバの回想編が終わると思います。

 それでは次回も、お楽しみに!
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