聖域《サンクチュアリ》十二宮の一角を占める第11番目の関門、宝瓶宮。
偽教皇の同志が待ち受ける砦に、異次元空間《アナザー・ディメンション》が接続。
黒い渦が出現し膨大な光が溢れ、氷床に覆われた水晶《クリスタル》の宮殿を照らし出す。
白鳥の星座と異なる守護星座、愛弟子とは比較を絶する第3段階の小宇宙《コスモ》。
黄金色《ゴールド》の聖衣《クロス》を纏う十二宮の同僚、同格の聖闘士《セイント》。
水瓶座《アクエリアス》の聖衣を纏う守護者《ガーディアン》、水と氷の魔術師が呟いた。
「これは意外だな、天蠍宮を預かる我が友が訪れるであろうと想定していたのだが。
鎧を透過し肉体へ浸透する防御不可能な打撃系の秘技、骨法の奥義を操る武人が来るとは。
闘将の切札は強靭な両腕を剛刀とする抜刀術、居合いを応用し双掌から繰り出す光速の斬撃。
何故に肝胆合い照らす間柄と噂に聞く山羊座シュラ、修羅の道を選びし我が盟友と対戦せぬ?
我が闘法《モード》の真髄は肉弾相打つ格闘術に非ず、冷却系の攻撃魔法と趣の似た凍気技。
聖衣を貫徹し甚大な破壊力を誇る骨法の秘技、光速の掌底打と言えども私には通じぬぞ」
牡牛座《タウラス》の聖衣を纏う金牛宮の守護者、武人の矜持を持つ挑戦者《チャレンジャー》。
闘将アルデバランは些か失礼な宣告を聞かされ、仏頂面を晒すかと思いきや顔筋一つ動かぬ。
義を重んじ恐れを知らぬ挑戦者、雄渾な体格を誇る勇士は挑発を聞き流し度量の大きさを誇示。
居合い抜きに斬り捨てる抜刀術の構え、両腕を組み悠然と待ち受ける態勢を保ち鉄面皮を貫く。
一定の範囲内に踏み込んだ者を返り討ちにする攻防一体の戦陣、制極界《フィールド》を維持。
予備動作無しで繰り出す交差攻撃《カウンター・アタック》、双掌打を撃つ態勢の儘で呟いた。
「置け、宝瓶宮の守護者カミュ。
我も不利は重々承知の上で挑戦者の名乗りを上げた故、お主に解説して貰うには及ばぬ。
此方も事情が有るのでな、些か不満かも知れぬが御付き合い願いたい。
不本意な配役《キャスティング》とは言え、確固たる理由が有るのだよ。
牡羊座ムウは先代の導師《メンター》、教皇シオンの仇討ちに固執し双子座サガを選択。
獅子座アイオリアも敬愛する兄アイオロスの仇、山羊座シュラと対決の機会を譲らぬ。
蠍座ミロは厚い信頼を置く親友と袂を分かち、決着を付ける覚悟と強硬に主張したのだが。
済まぬが俺が余計な差し出口を行い、お主との勝負を譲って貰ったのだよ。
仁者ダイダロスを斃した冷酷非情は許せぬが、双魚宮に薔薇の花を敷き詰める男だからな。
己の宮を薔薇で埋め尽くし花園へ変える感性、美に重きを置き過ぎる性格は理解出来ぬ。
一言で言えば気質が合わぬ、未だしも水瓶座カミュの方が武人として共感を覚えるのだよ。
こう言っては何だが冷酷《クール》の質が異なる、と言うか節を曲げぬ矜持を感じるな」
北欧スカンジナヴィア半島出身の金髪碧眼、氷の彫刻を思わせる端麗な容姿。
芸術的な白皙の面に氷の微笑が迅り、蒼氷色《アイス・ブルー》の瞳が微かに揺らめく。
純白の雪原に覆われ極光《オーロラ》が舞う極北の荒地、氷の大地《ブルー・グラード》。
伝説に謳われる氷戦士《ブルー・ウォリアー》の末裔、とも噂される氷の聖闘士。
氷棺《アイス・コフィン》を創造し、凍れる時の秘法を体得する北の勇者。
様々な噂を持つ凍気拳の導師《メンター》は、氷の溜息を吐いた。
「フッ、意外だな。
勇猛なる硬骨漢アルデバラン殿から発せられる美辞麗句の数々、真に感嘆し痛み入る次第。
五老峰の老子と肝胆相照らす仲の武人から思い掛けぬ事に大層、高く買って頂いた様だな。
我が友との友情を汲み、苦渋の対決を回避せんとの思慮に対し幾重にも御礼を申し上げる。
現在只今の所は教皇を名乗る我が同志、双子座サガと共闘する私は君を倒さねばならぬが。
先刻より示されたる厚意に応え、我が氷の秘術にて生命までは取らぬ」
水瓶座《アクエリアス》の聖衣を纏う水と氷の魔術師、宝瓶宮の守護者カミュ。
牡牛座《タウラス》の聖衣を纏う武人にして快男子、金牛宮の守護者アルデバラン。
瞬間的に接触し互いの意思を確認、共鳴せし両雄の小宇宙が遮断され火花が散った。
激烈な戦闘に備え第7感覚《セブンセンシズ》を研ぎ澄まし、小宇宙が増幅され爆発。
水瓶座の小宇宙は絶対零度に近い凍気を湧出、周囲の温度が急激に低下し視野が歪む。
光を屈折させる極冷の領域《テリトリー》、氷の陽炎が創造され水と氷の魔術師が消失。
太陽光線を屈折させ可視光線を操る暗幕《カーテン》、不可視《ステルス》化の技法。
柱の男《ワムウ》が操る風の闘法《モード》、透明化力場《リフレクター・フィールド》。
透明種族《ローリン》の秘術、フレクソ器官に匹敵する氷の障壁《バリヤー》を展開。
凍気の防御帯域《ディフェンス・ゾーン》が前進、攻勢防御《ゾーン・プレス》へ移行。
術者の姿を透明化する氷の陽炎は視野を歪ませ居合い、抜刀術の照準を合わせる事が不可能。
牡牛座の小宇宙を圧縮し双腕から繰り出す光速の掌打、双光掌は封じられたかと見えた。
「透明化《ステルス》の秘術は見事だが、俺が攻撃不能になったと考えるのは気が早いぞ。
我が心眼がお主を捕捉し得るか否か篤と見よ、グレート・ホーン!」
大柄な牡牛座アルデバランは次の瞬間、意外にも流れる様に優雅な洗練された動きを披露。
敵の動きを先読みする事が可能な鋭い洞察力の賜物、洗練された完成度の高い組手動作。
豊富な実戦経験に裏打ちされた熟練の技、的確な歩足運用《ステップ》にて距離を消す。
一切の無駄を排除した獰猛な鮫の如き俊足、迅速な踏み込みを要求される瞬速の移動術。
練達の武人は無駄な動きを極限まで削減、瞬速《マイクロ・セコンド》の機動力を発揮。
獲物を追い詰める野獣の如く洗練された無駄の無い動き、巧みな歩法《フットワーク》を駆使。
伝説の戦闘機と化した黄金の野牛《バッファロー》が躍動、水と氷の魔術師を追撃。
宝瓶宮の壁と支柱を巧みに利用し、相手に悟らせず確実に角《コーナー》へ追い詰める。
猛牛の角が不可視化の防御帯域を貫き、至近距離《クロス・レンジ》から双光掌が炸裂。
退路を断ち黄金色の閃光を放つ掌から剛双角の衝撃、双手突きの掌打を叩き込む。
「素晴らしい、見事だ!
我が盟友シュラに優るとも劣らぬ格闘術、賞賛に値する!!
だが私の凍気拳は遠距離《ロング・レンジ》、中距離《ミドル・レンジ》の投射技に非ず!
むしろ拳を敵に当ててこそ最大限の効果、真価を発揮する直接作用の拳!!
北斗七星を従え満天の星が旋回する極星、天河の中心に座する北極星《ポラリス》の秘術!
接近戦を挑んだは無謀であったな、オーロラ・エクスキューション!!」
水瓶座カミュの小宇宙が煌き膨大な凍気が湧出、宝瓶宮の守護者を包み込む。
黄金聖衣を包む凍気が渦巻き、圧倒的に巨大な白色彗星《クェーサー》へ変貌。
高速回転する凍気流の渦が周囲に極光《オーロラ》、白色彗星の光冠《コロナ》を創造。
白光が虹の架橋《レインボー・ブリッジ》、氷《ブルー》の紅炎《プロミネンス》と化す。
荒れ狂う氷河と雪崩の破砕流《クラッシャー》、氷の牙《ブルー・ファング》が挑戦者を急襲。
北の大地も震撼する怒涛の進撃、氷礫の嵐《ミルスキ》が燦然と煌き黄金の野牛へ殺到。
「何っ!
馬鹿な、黄金聖衣が凍り付くとは!?
第3段階の小宇宙に到達せし氷の聖闘士であろうとも、絶対零度の凍気は産み出し得ぬ筈!
水と氷の魔術師と尊称される水瓶座カミュよ、何者か知らぬが他者の助力を得ているな!!」
雪崩の如き凍気の濁流、氷《ブルー》の破砕流《クラッシャー》が牡牛座の黄金聖衣を凍結。
絶体絶命の危機を悟った黄金の野牛、双光掌を操る闘将アルデバランの潜在能力が解発された。
脱出不可能の窮地へ追い詰められ土壇場で底力が爆発、名状し難い波動が小宇宙を駆け巡る。
究極の第7感覚を超越する第8感覚《エイトセンシズ》が起動、同調する聖衣も変形を開始。
牡牛座の黄金聖衣が白金《プラチナ》聖衣へ変貌を遂げ、燦爛たる白光が小宇宙に溢れる。
電光石火にて白刃を鞘疾らせ居合い抜きに斬り捨てる抜刀術の達人、剛毅な闘王が真価を発揮。
更なる進化を遂げた天光流の奥義、一瞬の早業を披露し水と氷の魔術師へ逆襲を試みる。
牡牛座の白金聖衣が煌き武人の俊足を加速、守護者に一太刀を浴びせんと宝瓶宮を駆け抜ける。
牡牛座《タウラス》で最も明るい恒星、牡牛の心臓とも呼称される赤色巨星の幻影が現出。
金牛宮の守護者アルデバランの小宇宙が燃え盛る赤色巨星と化し、白色彗星の凍気流を相殺。
達人の防御を相殺すべく水界と氷界の支配者、海皇の大いなる意志《ビッグウィル》が湧出。
水と氷の魔術師は神聖衣《ゴッド・クロス》を纏い、髪と瞳が水色《アクアマリン》に染まる。
無限にエネルギーを吸収し燃え盛る太陽を吹き消す力場、凍気の制極界《フィールド》を展開。
宇宙気流《スペース・ストリーム》の氷柱に赤色巨星も凍り、アルデバランの小宇宙が消えた。