ガンダムビルドデューラーズ清掃員外伝 世界大会編   作:地底辺人

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ガンダムビルドデューラーズ清掃員外伝の第一部の続きとなります。
一部を読んでいただけるとさらに楽しめると思いますが、今作だけでも十分に楽しめると思うのでぜひご一読下さい。

それでは、アツいガンプラストーリーを。


第一話「ファーストテイクオーバー」

 

 赤と青の線があちこちで飛び交っては交差する。

その線はまるで幾年も前からずっとその矢印が伸びるようにひたすらに動き続ける。

 

 はじめは青の線より線が細かった赤の線が交差するたびにどんどん太く大きくなる。青の線はそれに呼応するように迎える。

 

 やがてその二つの線は天地をひっくり返すほどの衝撃を生み出し互いに細く弱った。

 

 それでも。

 

 それでも、二つの線は交わることをやめない。どちらかが果てるその時まで。幾年前から伸びる矢印の果てを求め。

 

 彼ら(二つの線)は夢の先を追い続ける。

 

 やがて青い線の動きが止まり光が消える。どこか満足気に矢印は止まった。今にも消えそうな赤の光は青の光にはない輝きをただ鈍く放つ。

 

 一瞬、春の匂いが通り過ぎた。背後から桜の花弁が風で運ばれる。その風を受けると赤い線の鈍い光はゆっくりと消えていった。

 

 ──夢を見ていた。遠い、春の夜の夢を。

 

 ***

 

 ピピピッ……ピピピッ……

 

 アラームの音が鳴る。時計の針は午前5時を指している。しばらくするとアラームの音は止まり、止めた男性は少し気だるげに目を覚ます。外はまだ薄暗く白銀の世界。男は寝巻きのまま立ち上がり厚手の黒のジャンバーを着て部屋の外へとでる。

 

 男はシャベルを持ち外の雪をせっせと排雪していく。雪かきは気温が上がる前の早朝に行うのが基本だ。小慣れた手つきでただ無心に行う。ただ白い粒の塊を除けながら男は先ほどの夢を頭の片隅に過ぎらせる。

 

「あれから、一年。あれから半年。」

 

 夢の中で赤い線となっていたのは紛れも無くこの男、イヌハラ・フウトだった。彼はガンプラを用いて闘うGPデュエル、通称GPDの全国大会優勝者なのだ。一年前の夏にこの銀世界の大地へと赴き、数々の試練を乗り越えた。そして青い線、彼の義兄であるイヌハラ・ユウキ。最強と謳われた彼を、フウトは打ち破りその栄光を手にした。

 

 あれから半年、季節は変わりもうすっかり冬となっていた。フウトは己の実力を高めるため北海道に戻ってはトレーニングを積んでいた。もちろん大会後、彼にはプロのオファーもあったが、全て保留にしていた。当初、「もう一度プロに」そう決意しこの北の大地へ赴いたが本当に自分はあの世界にもう一度身を寄せたいのか分からなくなっていた。プロとしてやり直せる実力に不安があるわけではない、ただ自分の道はもっと別にあるのではないかとこの一年の中でどこかそう感じはじめていた。

 

 小1時間雪かきをした頃にフウトの携帯にメールが届いていた。

 

『話があるので研究室まで。アララギ』

 

「こりゃまた、急な話で。」

 

 メールの差出人はフウトの師、アララギ・ユウリ。高校時代からの恩師でフウトをもう一度再起させた師。かつてアララギもプロデューラーとして名を馳せた凄腕でありながら指導力も確かなものであった。なのだが、マイペースな人柄で突拍子のない連絡が多い。フウトにとっては慣れたものではあるがやれやれと頭をかきながら準備をしてアララギのいる研究室はと向かった。奇しくも今日はフウトがユウキに敗北した日ならちょうど一年後であった。

 

***

 

「いらっしゃい〜〜。今日も寒いねぇ。凍え死にそうだよ。」

 

 白衣に無造作にボサついた薄紫色の髪、どこか掴みどころがなく気の抜けるような声で話す男性。アララギ・ユウリ。

 

「いや先生、この部屋、めちゃくちゃ暖房効いてますよ。」

 

「それはそうなんだけどさ、外は寒いよね、って話だよふうちゃん。まったく相変わらず話が読めないねぇ。」

 

「すみません、いつまでも経っても馬鹿弟子で。」

 

「ほんとだよ。」

 

「まあ、そんな馬鹿弟子ふうちゃんに"とっておき"の話を持ってきた。」

 

「聞きたい?」

 

「聞きたくないって言っても勝手に話すだろ、先生は。」

 

「お見事!では今回は僕の口からじゃなくてふうちゃんの目で確かめてもらおうかな!」

 

 そういうとアララギは白衣のポケットから便箋をひょいと取り出しフウトに差し出した。フウトはそれをなんとなしに受け取ると便箋には英語の筆記体で流暢に文字が書かれており、国際便のマークもついてあった。この得体の知れない便箋の中身が何なんか検討もつかないフウトは固唾を飲んでそのシーリングスタンプを剥がした。

 

 "International convention information"

 

 "国際大会へのご案内"

 

 "World Championship in Tokyo"

 

 ワールドチャンピオンシップ トーキョー

 

「………………………………………………………。」

 

「おや、元ホームレスさんは学がなさ過ぎて英語が読めなくて困ってるのかな?」

 

「それとも……。」

 

 いくら学が無いフウトとはいえ、その見出し文で全てを悟った。あまりに突然の衝撃で声が出なかったのだ。腹の底からこみ上げてくるこの感情はなんとも形容し難くフウトは一瞬ニヤリとすると口を開いた。

 

「………世界…………大会………………。」

 

「俺とカイザーが世界…………!!」

 

 まだ見ぬ強敵、世界中の強者、闘う人(デューラー)であれば心躍らないはずがない。フウトのハートが一気に燃える。

 

「ふうちゃん。」

 

 アララギはフウトに呼びかけるとニッコリしてサムズアップをした。そしてフウトもそれに合わせサムズアップをする。感情が高まり過ぎて上手く言葉にできない弟子に対してジェスチャーでその感情に共感した。

 

「どうやら2日後から東京で強化試合があるみたいだよ。いってくるといい。」

 

「はい!」

 

「ビビって帰ってくるなよ〜〜。」

 

「まさか。」

 

「じゃあ俺、今日はこれで。」

 

「あっ、」

 

 アララギが何か言いかけたがそういうとフウトは居ても立っても居られないのかすぐに研究室を飛び出した。

 

「話の続き、まだあったんだけどな。まあ、それはまた今度でもいいか。」

 

「ふうちゃんも、ついに、見るんだね。あの景色を。」

 

「ぼくもユウキくんもたどり着けなかった所で存分に暴れてくるといい。」

 

 アララギは頬を和らげながら白い天井を眺める。弟子の成長を素直に喜ぶ師の姿がそこにあった。物思いにふけるのが終わるとニヤリとして呟く。

 

「まあ、今のままじゃそう簡単にはいかないと思うけどね。」

 

***

 

「えーーー!フウトさん世界大会ですか!!」

 

「ああ。なんでも前の選手権で優勝したからだってよ。」

 

 おめでとうございます!とパチパチパチと小さな拍手と可愛らしい笑顔を浮かべるのはフウトと共に北海道の地で修行する女性デューラー、ヒナセ・シイナ。オリーブ色の髪に茶色のコートと白いマフラーが今日もよく似合う。フウトはアララギから話を聞いてすぐにシイナにそれを伝えに行った。嬉しさのあまり誰かに共有したかったのだろう。

 

「それでいつ東京にいかれるんですか?」

 

「もう今日出るよ。たまたま飛行機の空きがあってよ。」

 

「え!もう今日ですか!!?」

 

「ああ。大会は2週間後からで強化試合は2日後からだしな。」

 

「ずいぶんとタイトなスケジュールなんですね。」

 

「アララギ先生のおかげでな。」

 

 フウトは郵便の差し出し日付を指すと1ヶ月前の日付であった。シイナはそれを見て苦笑いの表情を浮かべる。

 

「急で今からは行けませんがわたしも先生と絶対応援いきますね!」

 

「ほんとか?そりゃ嬉しいな!」

 

 嬉しそうな表情を浮かべるシイナは突然はっと思い出したように鞄の中をもぞもぞと漁り出す。フウトは不思議そうにその様子を見る。

 

「あった、どうぞ!」

 

「どうぞって……それ。」

 

 シイナはそういうとスノーホワイトの白銀のブレードを鞄から取り出してフウトに手渡そうとしていた。

 

「せん別です!!!」

 

「それにわたしとスノーホワイトはいつでもフウトさんの味方ですからね!」

 

 そう言うとフウトに半ば無理やり握らせ手を後ろにしてくるりと回るとはにかみながら恥ずかしそうに小さくガッツポーズで頑張って下さいとジェスチャーをした。フウトもそれに合わせてガッツポーズをするとそのまま彼女と別れを告げる。その背中を見ながらシイナは小さく手を振る。

 

「……頑張って下さい…………。フウトさん。」

 

***

 

 ──二日後 東京 強化試合会場

 

「ここが、強化試合の会場か。ずいぶんとデカいな。」

 

 都心からは少し離れた場所に位置する会場には人が群がるように密集していた。このほとんどが見物人とはいえ世界大会のお祭り感は既にフウトも肌で感じていた。中にはガンダムのキャラクターのコスプレをしているのもいれば、子供を連れた家族の姿、身なりなど気にしないようなボロボロの服だがホルダーからチラリと見えるガンプラはとても丁寧に作られたことが遠くからでもわかる者、とにもかくにもガンプラやガンダムが好きなヤツらばかりが集まっていることだけは確かだ。フウトはそんな情景の中、受け付けをすますと選手用の控え室へと案内される。

 

 対戦相手は運営から決められておりその相手と順番に闘う。どうやらこの強化試合には本大会に出場する選手以外にも運営側が実力者と認めたデューラーを招待し本大会に出場する選手との試合を行うようになっている。本大会に出場する側からすれば"調整"であるのだが、招待された実力者からすればいつでもくってかかってやろうという状況。強化試合といえど気は抜けない。

 

 あたりには肌の色が違うものもいれば目の色、服装とにかく多種多様だ。しかし、これまた不思議で彼らはみなガンプラを所持しているのは同じであった。

 

「イヌハラさん、次、お願いします。」

 

「ついに出番か。」

 

 フウトは若干緊張しながらも立ち上がり対戦相手と対面する。相手は同じ年ぐらいの赤茶色の髪をした白人だった。

 

「よろしく。」

 

「Schön, dich kennenzulernen」

 (よろしく頼むよ。)

 

 おそらく向こうもよろしくといったのか、互いに握手をしてGPデュエルの筐体へと向かう。フウトがジャパンカップタイトルホルダーということを知っている者はざわざわとしはじめる。

 

「お、イヌハラか。」

 

「イヌハラってユウキ?」

 

「ばか、フウトの方だよ。選手権でアニキ倒したんだよ。」

 

「まじで?弟なんていたのかよ。知らなかったぜ。」

 

「おい、ほらはじまったぞ。見ろ、赤と黒の機体だ。」

 

 赤と黒の機体、フウトの駆る「ジャスティスカイザー」がフィールドを駆け巡る。敵機は、ガンダムバルバトス。ミキシング等というよりは堅実に作られている。これも国民性か。外国人はもっとユニークな機体を使ってくると思っていたところフウトは若干の面食らう。

 

「速いッ!!」

 

 ガンダムフレーム特有の動きと独特なステップ、人体に近い生々しい動きがような動きがフウトを翻弄する。さらに専用の太刀を持って一気に距離を詰めよる。

 

「………!!」

 

 ジャスティスカイザーもバックパックに取り付けられたブレードでその攻撃を切り払う。しかしバルバトスは攻撃の手をやめない空いた逆の手でカイザーの頭部を掴む。凶暴的なその鋭い手は頭部を傷つけメインカメラにダメージを与える。

 

「まずい!カメラをやられた!!」

 

 モニターの画面に波線が入り写りが不安定となり観客たちがわーっと騒ぎ出す。割れた画面の隙間からは悪魔の眼光が鋭く光っていた。しかしフウトにとって()()()()()のことはなんでもなく冷静にアームレイカー握っていた。

 

「Das ist das Ende」

 (これで終わりだ!!)

 

 バルバトスのツインアイが赤く光るとバックパックから専用の太刀を握り振りかざした。

 

「………ここは……皇帝の領域だぜ…………?」

 

 ジャスティスカイザーはバルバトスの斬撃をギリギリまで引き付け絶妙なタイミングでグリフォン ビームブレイドを展開させ腕を蹴り落とした。

 

「Was……! ! ? Was ist passiert! ! ?」

 (なんだと……!!?何が起こったんだ!!?)

 

 依然フウトの目の前のカメラはノイズが走ったまま。彼は至って平静であった。ここは彼の言うように、()()()()()()()()()

 

「またやろうぜ!白人の兄ちゃん!!」

 

 フウトはニカッと笑う。ジャスティスカイザーはそのままバックパックをパージし身軽になるとビームブレイドを展開させた足蹴りで乱舞し四肢を落とし再起不能にした。

 

 ──Battle End──

 

 Winner Futo

 

「マジかよ、完全にメインカメラやられてただろあれ!」

 

「あれがイヌハラ・フウト得意のカウンターか。流石にシビれるな。」

 

 バトルが終わると思わず観客たちもフウトの闘いぶりにざわついていた。フウトはそんな中対戦相手の方へ向かい握手を申し出る。相手もそれに気づくと笑顔で手を出しお互いに手を握り合う。

 

「Ich hatte gehört, dass er ein japanischer Meister sei, aber ich hätte nie erwartet, dass er so stark sein würde. Komplette Niederlage.」

 

(日本のチャンピオンだと聞いていたけどまさかこれほどまで強いとはね。完敗だ。)

 

「えーっと。アンタも強かったぜ。攻撃の鋭さはピカイチだった。また、ガンプラバトルやろうな。」

 

 お互いに互いの言語は理解出来ないが、なんとなく、表情と声色とジェスチャーでわかるような気がしていた。それに先ほど言葉よりもっとお互いを表現するものをしていたのだ。分からなくても、分かる。道理や理屈なんかよりもはっきりと。

 

 固く握手をしたあと、2人はまたと手を挙げて別れていった。フウトにとってはいつも通り力を発揮出来たが少し不安要素があった。日本人にはない大胆でアグレッシブな動き。先ほどもカウンターが綺麗に決まったがあれもほとんど山が当たっただけで次やれと言われば失敗するだろう。

 

 今のままでも闘えないことはないが上にはいけない。フウトはそんな不安要素を抱えて強化試合をこなしていった。

 

「あれが、イヌハラ・フウト……。」

「なかなか面白い動きをする。」

 

 金髪の白人がひとりモニター越しにフウトの試合を見ていた。

 

***

 

 日は既に暮れ強化試合の会場も次々と設営を片付けはじめていた。フウトは強化試合を全部で5戦行い戦績は3勝2敗。手ごたえが無いわけではないが決定的な自信は無かった。まずは負けた試合を内省しながら会場をとぼとぼとあとにした。

 

「やっぱり、あの関西弁のストライク強かったよなあ。あいつも本戦にでんのかな。」

 

「Hé frère」

(ちょっとお兄さん)

 

「……………………。」

 

 フウトはその理解出来ない音の組み合わせに全く気にすることなく街灯の下を歩く。

 

「Hé! Fermez-la! Salaud d'ordures ! !」

(おい!シカトすんな!ゴミ野郎!!)

 

「もっとカイザーは何かに特化させるべきか?いや、それじゃあらゆるバトルに対応できない。うーん、どうするかな。」

 

 フウトは自分に声をかけられている事など思いも知らずぶつぶつと独り言を発する。しかしついに理解不能の音の組み合わせを発する男が怒声を発した。

 

「おい!!テメーー!聞いてんのか!このクソゴミヤロウ!!!」

 

 遠くから、プラチナ頭の背の高い白人がフウトにも分かる言葉で、そう言いはなった。非常にフルーエントリーである。

 

「…………え。おれ…………?」

 

「お前だよ!!!!!!!!!!」

 

「あぁ、わりぃ。ちょっと考え事しててよ。じゃ!」

 

「じゃ!じゃねえよ!」

 

「え、いやだって。」

 

 終始とぼけるフウトにプラチナ髪の白人は、腰のホルダーからガンプラを取り出した。フウトはそれを見て目の色を変える。

 

「俺は『エク・レイア』フランスのデューラーだ。」

 

「へぇ。最初からそう言ってくれれば話は早かったのによ。」

 

「すまんね、はじめは癖で母国の言語で話してしまったが、君にも分かる言葉でとね。」

 

「学がおありのようで。」

 

 先ほどまでのふざけた空気は一気にピリつき、フランス人デューラーを名乗るエクも一気に平静に戻る。2人は目を合わせると近くのバトルシステムの方へと足を運ぶ。その間2人は一言も口を聞かなかった。なんとなく、お互いが何者かわかっていたからだ。

 

 Please set your Gun-Pla.

 

「ジャスティスカイザー、イヌハラ・フウト!!」

 

「エクラルドゼータ、出るぞ。」

 

 ステージは宇宙。

 

 いつもの発進音と共にジャスティスカイザーは出撃する。そして青白黄のパリジェンヌカラーのゼータガンダムも華麗に宇宙を舞っている。

 

 かなり精度の高いガンプラで頭部はゼータのフェイスにダブルゼータのハイメガキャノン、胸部とバックパックはゴッドガンダムのパーツ、脚部はウイングガンダムで機動性を向上させている。フウトはこれを見て確信した。やはりこのフランス人も世界大界出場者なのだと。

 

 いわば、前哨戦なのである。負けられない、そしてこれに勝てば先ほどからのこの歪な違和感も、

 

 

「消えるッ………………!!」

 

 ジャスティスカイザーはライフルを構えターゲットを狙い粒子の塊を小気味よく放つ。しかしゼータは軽々しく避ける。フウトはアームレイカーを押し出し機体を加速させながらさらに射撃し追い込んでいく。

 

「さすがに、闘い慣れているな。」

 

 エクは冷静にビームによる追い込みを避け自身もビームライフルで反撃。逃げ場をお互いに消して生きながら距離を一定に保ち撃ち合う。

 

「まだまだァッ!!」

 

「ブゥゥゥゥゥメランッッッ!!」

 

 カイザーはシールドのシャイニングエッジ・ブーメランを持ち勢いよく投げつける。しかし投げた方向はゼータの方向とは全く別の方向。投げた勢いのままビームライフルを射出しながら推進していく。

 

「囮だろ?くだらない。」

 

「しかし、余興だ。付き合ってやるよ。」

 

 ゼータは背後に距離をとりながらビームライフルでカイザーのコックピット周りを狙う。シールドで防御するも何発か掠る。しかし止まらない。カイザーはさらに加速し一気にバイタルエリアまで侵入した。

 

「ずいぶんと自由な飛び方だな!!」

 

「いくぜ………!!」

 

 カイザーはバックパックのブレードを引き出し振り抜く。ゼータはそれに対しビームサーベルで応戦。ブレードの方が威力があり押している。

 

「そんな、誇りのない攻撃など!!」

 

 しかしゼータはその勢いを殺しながらビームライフルで牽制を入れ後方へと距離をとる。

 

「コイツをわすれちゃいねえか!」

 

 先ほどのブーメランがカイザの手元に戻ってこようとゼータの背後を通りかかる。フウト得意の連続技だ。しかしゼータはいとも簡単に蹴りでブーメランを弾き飛ばす。

 

「こいつ、強い…………!!」

 

 フウトは手に汗をかけながらもさらに手数を増やすためにバックパックのドラグーンを射出した。桜色のドラグーンが水色の尾を引いて宙域を飛び交いビームを四方から射出する。

 

「余興が長いぞ、皇帝よ。」

 

 ゼータは軽やかな動きでビームの雨を避け淡々とドラグーンを追撃していく。さも当然のように、"処理"されていた。

 

「芸がない。それはもう飽きた。」

 

「ジオングに乗ってるシャアもこんな気持ちだったのか…………?」

 

「だとしても、笑えねえな…………!!」

 

 カイザーはブレードを2本取るとゼータ目掛けて突進する。精密な射撃を掻い潜りながら距離を詰め寄る。装甲の各所は既にビームの熱で溶けている。それでもカイザートップスピードのまま対象物へと突っ込む。

 

「やっとやる気になったか!」

 

 甲高い斬撃の音が鳴り響く。振り切った左腕は対象の右腕を切り落としフロントアーマーから下に斜めの斬撃の跡を残した。フウトが得意とする攻撃の一つ。しかしゼータは一瞬の怯みも見せなかった。

 

「終わりか?皇帝?」

 

「まだまだァッ!!」

 

 カイザーはツインアイを光らせもう片方のブレードで追撃の姿勢へ。ゼータはビームサーベルを構え迎え打つ。カイザーは勢いのままブレードで乱舞する。ゼータはそれを片腕でもアジャストし対応する。そして2本のブレードの刃が下を向いた瞬間、素早くビームサーベルで突く。

 

「…………………………!!」

 

「これが…………!!あの奇妙な動きか…………!!」

 

 エクは試合会場で見たフウトのカウンターの動きが目の前の動きと一致した。突きを瞬時に背中を反り避け、その体制のままグリフォンビームブレイドを展開させ蹴りの姿勢に。しかしこのコンマ数秒の情報量をエクもまた瞬間的に見えていた。エクはアームレイカー瞬時に引き頭に目掛けて飛んでくる凶器を避け、一気に上に跳び上がる。

 

「見えているのか…………!?」

 

「あんなのにマトモに付き合ってはいられない!」

 

「だが、見たいものも見れた。終わりにしよう。」

 

 エクラルドゼータはゴッドガンダムのバックパックを展開させ日輪を周囲に描くと頭部のハイメガキャノンにエネルギーを集める。

 

「大技か!?まずい!!」

 

「神モード、起ど…………。」

 

「遅い……………………!!」

 

「爆熱ゥゥッッッ!!エクラルドキャノォォォォン!!」

 

 馬鹿でかい粒子の塊がジャスティスカイザーの目の前を覆う。無防備でこんな攻撃を受ければひとたまりもない。木っ端微塵になるだろう。

 

「それでも、このままやられるわけにもいかねえ!!」

 

「借りるぜ……シイナ…………!!」

 

 ジャスティスカイザーは中途半端な神モードのままスノーホワイトのブレードを装備し馬鹿でかい粒子に今放つことのできる目一杯の斬撃を真っ向から放つ。

 

「小細工をしても無駄だ!!押し切るッ!!」

 

「くっ……………………!!」

 

『あっ………………。』

 

『落ちちゃった。』

 

 シイナの耳のイヤリングの金具が取れ地面に落ちる。それを浮かない顔でしゃがんで拾いこむ。

 

『フウトさん……大丈夫かな…………?』

 

 

 

 ──Battle End──

 

 Winner ECU

 

 目の前の光が消えると共に鳴り響くアナウンス。システムのバーチャルビジョンが消えると目の前には粉々になった相棒の無惨な姿。スノーホワイトのブレードだけは何とか無事で安堵する。

 

「すまない。だがこれも勝負だ。」

 

「ああ、分かってる。」

 

「しかし、日本のデューラーは君といい、強化試合で戦った金髪の少年と青い射撃型の機体といい私を楽しませてくれる。」

 

「そうだ、もう一つ問いたい事がある。」

 

「君は何のために闘う?国を背負って闘う覚悟はあるか?」

 

「俺は……………。」

 

「そうか。さて、次はハルノシュラでも探すとするか。」

 

 そう言ってプラチナ頭はフウトの前を後にした。最後のは完全に嫌味だ。プライドの高いフランス人らしいと言えばそれらしいが自分は兄の代わりに世界の舞台に立つということでもあるのだ。いや、実際フウトには国を背負ったプライドなぞなかった。彼にはその誇りがあるようにバトルを通して感じた。考えさせられることばかりで頭には兄に負けた日とよく重なる。少し夜道でぼーっとする。

 

「久しぶりに派手に負けたな。結構ショックだぜ。」

 

「やっぱ、世界って広いな。」

 

「まだまだ弱ェなぁ。俺。」

 

 フウトは目を閉じてこれまでの闘いを振り返る。あの日の敗戦も、あの日の勝利も、全部、全部繋がってる。だから。また今度も。

 

「だからこそ、強くなれる。そう教えてくれたのはいつもお前だ(カイザー)

 

「負けは慣れっこだけど、このままじゃ終われねえ。」

 

「いくぞ、カイザー、新たなる道だ。また険しそうだけど着いてきてくれ。」

 

 ボロボロのジャスティスカイザーを手にしながら、フウトは夜の中へと消えた。冬の夜の星は綺麗に瞬いている。

 

「イメージは、ある。」

 

 ***

 

 世界大戦 当日

 

「先生、見て下さい!凄い賑わい!」

 

「そうだね〜、お祭りだねえ。」

 

 茶色のコートと黒のコートを羽織る2人。北海道から来たヒナセ・シイナとアララギ・ユウリの2人だ。本大会が開催される会場は全国大会の行われた会場とは別の、さらに大きなドーム型の会場で行われる。わいわいと賑やかな雰囲気は冬の寒さを感じさせないほどの熱気である。

 

「さて、ふうちゃんの予選は第一試合のAブロックのバトルロワイヤルからみたいだね。」

 

「そうみたいですね!でも…………。」

 

「でも………………?」

 

「フウトさんが東京にいってから全く連絡が返って来ないんですよ。ちゃんと会場に来てるか心配です。」

 

「あー、それなら多分大丈夫。念のためサワラに見張っておくよう言ってあるから。」

 

「それなら安心です!!よーし!応援するぞー!!」

 

「…………さて、ふうちゃん………。どんな姿を見せてくれるか楽しみだね。」

 

 アララギは冬の少し薄雲った空を見上げると白い息をふーっと吹き出した。

 

 ***

 

「…………………………よし。問題ない。行ける。」

 

「フウト、そろそろ出番だ。」

 

「ああ。サワラありがとう。助かった。」

 

「全くだ。僕だって大会にでるのに。」

 

「え!?それは聞いてなかったぞ!!だから俺の作業には何一つ干渉しなかったのか!!」

 

「言ったろ、俺は見張だって。それじゃ、負けるんじゃないよ。」

 

「へっ、それはこっちのセリフだ。前みたいに勝手にコケんなよ。」

 

 2人は拳をかざし合わせ互いの戦いの場所へと赴く。フウトの腰のホルダーから真新しいシルエットのガンプラが入っていた。コツコツと靴の音を立てながら光の方へと歩く。その先には歓声が聞こえる。

 

「さーーーーて!!!待ちに待ちました!!!!ワールドチャンピオンシップ!!!」

 

「各国の選ばれし凄腕のデューラー達が集まった頂点を決める祭典!!!その栄光を手にするのは一体誰だ!!」

 

「それでは予選Aブロック!バトルロワイヤル!!撃墜数上位10名が本戦トーナメントへと出場出来るぜ!!!多く落とした方が勝ち、だが撃墜されれば終わりの過酷なゲイム!!!!さて!俺たちに刺激的なバトルを見せてくれよ!!!!!」

 

「それではAブロックの選手の皆さん、ガンプラをセットして下さい。」

 

 Please set your Gun-Pla.

 

 アナウンスが入る。MCの煽りもあってか心臓がバクバクする。だが悪くない。待ち望んでいたのだこの瞬間を。目の下の隈が濃いフウトの眼に映る景色は、夢か幻かいまだにあまり分かっていない。だが、この瞬間をずっと前から待ち望んでいた。

 

「さぁ、行こうか。」

 

 

【挿絵表示】

 

 

 フウトはジャスティスカイザーとは違う一回り大きな縦に長い独特のシルエットの機体をセットする。全く真新しい機体だ。赤とクリーム色が基調で各部トゲトゲしく攻撃的なデザイン。随所には蛍光グリーンが差し色で禍々しく光る。腰には大きな太刀。背部にはドラグーンとGNビットを集約したオールレンジベースユニット。肩にはシールド。腕には取り回しの良い小型ブレイドとビームサーベルとブーメランシールドが一体化したマルチウエポンがそれぞれ取り付けられている。そして胸のコアには「∞」の刻印。

 

 まるで闘うために生まれてきたような機体。皇帝を継承する全く新しい皇帝。彼らの道を切り開く機体。その名は。

 

「シン・カイザー、イヌハラ・フウト、ファースト・テイクオーバー!!」

 

 シン・カイザーと呼ばれる機体は皇帝の冠の奥から鋭い眼光を光らせると脚部の四つのスラスターが同時に起動し一気にカタパルトから宇宙へと発進する。

 

「…………ッッッ!!」

 

「なんつー、Gだ。ジャスティスカイザーとは比にもなられねえ。調整は完璧だけどテストをする時間はなかったんだよな。」

 

 歯を食いしばるフウトを横目にシン・カイザーはさらに加速する。

 

「ついてこれるか?って?当たり前だろ。お前こそついてこいよ。」

 

「おい、タッパのでかい変なのがいるぞ!!」

 

「ありゃ、絶好の的だ!!」

 

「勝ち抜き戦なんだ!恨むなよ!!」

 

 3機のガンプラがこちらへと寄ってくる。さすが世界大会に出るだけの実力者だ、かなりの自信で向かってくる。

 

「…………いや、違うな。」

 

「ぼーっと立ちやがって!」

 

「舐めるな!!!」

 

「いただき!!」

 

 フウトはニヤリと口角を上げると、背部のドラグーンを射出し、右腕に取り付けられたブレイドを構えると()()()

 

「……………………え…………………………?」

 

 シン・カイザーは再び姿を現すと、3機のうち2機をドラグーンで突き刺し、1機をブレイドで切り裂いていた。

 

お前ら(世界)が俺たちについて来れるかだッッ!!」

 

「負けねえよ。誰にも。頂をとるのは俺たちだ。」

 

 その姿は、

 

 凛々しく 

 

 気高く

 

 雄々しく

 

 まさに皇帝。

 

 無限の翼で羽ばたいた皇帝は、これまでとは全く異なるその新たな姿で、夢なのか幻なのかそれさえも理解させない速さで、ただ駆け抜ける。

 

「Are you ready? From here on out, it's the kaiser's area.」

(準備はいいか?ここから先は皇帝の領域だ!!)

 

(続く)

 




完全にビルドメタバースに触発されました。

ありがとうメタバース。

そしてメタバース。

堂々のテイクオーバーを果たした謎大きシン・カイザーについて次回から言及されていきます。(予告)

次回「ユメノカオリ」
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