ガンダムビルドデューラーズ清掃員外伝 世界大会編   作:地底辺人

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第三話「何度でも」

 

「──僕はイヌハラ・フウト。君は…………」

 

 茶色の瞳を真っ直ぐに向ける少年。

 

「僕は、アララギ……アララギ・サワラ」

 

 そう答えると目の前の少年はニッコリとして握手を求める。

 

「また、ガンプラバトルやろう!次は負けないよ!」

 

「ああ。何度でも。相手になるよ!」

 

 何度でも。本当にこれから何度も彼らは闘った。互いを認め合い、高め合い、それでいて絶対に負けたくない相手。

 

 そして今日、彼らは最高の舞台でまた交わる。

 

「世界大会第1回戦、イヌハラ・フウトvsアララギ・サワラッッ!!」

「夏の全国大会では対戦することのなかった2人だが、学生時代からのライバルとされる2人ッ!そして現ジャパンチャンプと元ジャパンチャンプでもある2人がいきなりこの世界大会の一回戦でぶつかり合うぜ!!」

 

 紹介のMCが激しく煽り、大きな歓声が聞こえる。おそらくほとんどは日本のファン達だろう。

 

 すでに控え室に移動し2人は機体の調整を行っていた。フウトは予選を終えたシン・カイザーのメンテナンスをしながら心躍らせていた。

 

 いきなり、サワラが相手か。

 

 正真正銘、アララギ・サワラはフウトにとって最高のライバルである。兄ユウキは超えたい存在であるが、サワラにはまた違った感情、"絶対負けたくない相手"なのだ。

 

 それはサワラも同様。フウトの事を誰よりも認めそれでいて絶対に負けたくないと思える存在。常に対等でありたいと思う気持ちからシン・カイザーの製作には直接関わらなかった。

 

 フウトの頭には高校三年生の頃の全国選手権でサワラと競った記憶が思い出される。

 

 赤黒の機体と白黄色の機体。

 

 ジャスティスカイザーとアストレアType.R

 

 二つの閃光は何度も交ざっては弾ける。

 

「…………なにぼーっとしてんの。」

 

「試合前の瞑想だ。」

 

「そんなのする柄?」

 

「これでも結構繊細なんだよ。で、何の用だ?」

 

 もの思いにふけるフウトを現実に戻したのはイロハだった。

 

「ま、わたしもその子(シン・カイザー)の製作に一枚噛んでるからね。調整とか色々手伝える事があればと思って。」

 

「それに次の試合は、絶対落とせないでしょ?フウトもサワラくんも。」

 

「……ああ、そうだな、ありがとう。けど今のところは問題なさそうだ。予選でも動いてくれたしな。」

 

「ふーん。それなら良かった。じゃあ、楽しみにしてる。」

 

 そう一言告げるとイロハは振り向きざまに手を振って立ち去った。彼女も高校時代から2人をよく知っている。フウトが見ていた景色を彼女も知っているのだ。

 

「ここで2人が戦うなんてね。」

 

「歳をとっても良いことはあるものね。」

 

 柔らかい表情となったイロハはぼそっとそう呟き歩く。その時、雪の香りがする女性とすれ違った。

 

「…………いまの人、なんだか、雅…………?」

 

「なに、そんなとこでぼーっとしてんだ?シイナ。」

 

「え!?フウトさんいつから気づいてたんですか!驚かせようと思ったのに!」

 

「うーん、なんとなくかな。気配を察知するのも一流のデューラーには必要な能力なんだぜ。」

 

 フウトは得意げにくしゃりと笑みを浮かべながら言う。

 

「なんですか、それ。そんなことより、こっちに来てからフウトさんには色々聞きたいことがあるんですよ!」

 

 フウトの一言を氷のように一蹴するシイナは続ける。

 

「まず、その予選で見た機体です!ジャスティスカイザーはどうしちゃったんですか。」

 

 シイナはフウトが片手に持つ、異形のガンプラを指差す。

 

「……コイツはシン・カイザー。ジャスティスカイザーの魂を受け継ぐ新しい俺の機体だ。」

 

「…………ジャスティスカイザーは強化試合で大破してな、なんとか色んな人に協力して制作したんだ。それに兄さんも手伝ってくれたんだ。」

 

「………………………………………………。」

 

「どうしたんだよ。シイナ。気に入らないか?コイツ(シン・カイザー)

 

「いや、その…………私も近くでいたら手伝えたのかなって思うとちょっと悔しくなっただけです。」

 

「……そっか、そうだよな。ありがとう。」

 

「応援しに来てくれただけで俺は十分、シイナからパワーをもらってるよ。」

 

「…………!!もうフウトさんの馬鹿!調整とか修理とかあったら何でも言ってくださいね。手伝いますから!」

 

「それから……次の対戦、頑張って下さい……!!」

 

 そういうと、シイナは照れくさそうにその場を去っていった。フウトには青い耳飾りがきらりと光るのが一瞬見えた。

 

「…………ありがとう。」

 

「背負ってんだよな。俺も。」

 

***

 

『サワラァァァァ!!!』

 

『フウトォォォォ!!!』

 

 幾度となく交わってきた赤と黄の閃光。

 特別負けたく無い相手。ライバル。

 

 トーナメント一回戦の相手、アララギ・サワラは、これまでの数々の激戦を脳裏に思い浮かべる。

 

「……………世界大会か。」

 

「フウトとここで、やれる。」

 

「…………俺は君に勝つ。」

 

「そして……兄さんを…………。」

 

「………………そして、兄さんを…………?」

 

 サワラが独り言を呟いているところを背後から、白衣を着た男性がニヤリとしながら声をかける。彼の兄、アララギ・ユウリだ。

 

「兄さん、いつの間に!」

 

「いやー、ふうちゃんとの決戦前に弟が気負いすぎてないか心配になっちゃってね。」

 

「ま、気合十分って事だし、2人にとってこの対戦がどれだけ特別編なものかは僕もわかってる。」

 

「だから、余計な事は気にせす。頂点を取れ。アララギ・サワラ。」

 

「お前は、もう、僕なんかよりずっと強いよ。」

 

 かつて、日本プロリーグで無敗伝説を築いたアララギ・ユウリ。当時、彼を止められるものは何人としていなかった。そして敵なしの彼はプロデューラーをやめた。まだ見ぬ更なる強者との闘いよりも、彼は後の世代を育てる指導者の道を選んだ。

 

 どうせ、自分より強い者は現れない。

 

 どう考えても奢りである。しかしそれ以上に闘うことにも疲れたのだろう。自分の未来よりも、次世代の可能性に賭けたユウリ。望み通り、彼の弟、アララギ・サワラと彼の弟子、イヌハラ・フウトは誰もが憧れる舞台で闘うこととなった。

 

 そして、その行方を見届ける。彼にとってもこれは闘いなのだ。

 

 だが、やはり彼も感情を持つ人間。弟を応援したくなる。そして彼はプロの世界からある種逃げた自分よりも強いと、だから自信を持てと。そう伝えたかった。

 

「兄さん、俺、もう負けないよ。」

 

「あの時、兄さんと約束したから。」

 

「──誰よりも強くなるって。」

 

 サワラはそう爽やかに笑みをこぼしながら言うと、立ち上がり決戦の地へと赴いた。その顔つきは落ち着いた表情でありながらも自信に満ち溢れていた。

 

「……心配、ご無用だったか。」

 

  アララギは白衣のポケットに手を突っ込みながら嬉しそうな表情を浮かべる。そして、彼もまた観客スタンドの方へと足をゆっくりと運んだ。

 

 ***

 

「……さてと。いくか。」

 

 フウトは、そっと目を開け、立ち上がる。愛機が入ったアタッシュケースを手に持ち決戦の地へと向かう。

 

 静寂な空間にコツコツと靴の音だけが響く。緊張と平穏が入り混じった感情。少しずつ胸の高まりを感じながら、光の先からは歓声が聞こえる。

 

 

 

「さぁ!!世界大会、決勝トーナメント一回戦、第一試合はじまります!!!」

 

「なんと、一回戦から日本を代表するデューラーの対決だァァ!!!」

 

「うおおおおおおおおおおおおおおおお!!!!」

 

「まずは、青コーナーから登場するのは、前季日本プロリーグ覇者、アララギ・サワラァァァァァ!!!!!!」

 

「いっけえええええ!!アララギ・サワラ!!!!」

 

「負けんなよ!!!!」

 

「サワラくん、頑張れーーーー!!!」

 

 MCのサワラの紹介とともにワッと湧き上がる観客。改めて凄い人気だ。フウトは自分にはこんな声援ないだろうと少し不安になる。

 

「対して、赤コーナー!第14回GPD全国選手権大会優勝者、日本チャンプ、イヌハラ・フウトォォォォ!!!」

 

「イヌハラ!!勢いのままやっちまえ!!」

 

「おい!あいつ元プロだろ!激アツ過ぎだろ!!」

 

「高校生選手権の時の再現頼むぜーー!!」

 

 フウトに対する、歓声もわっと上がる。あまり慣れていないフウトは少し照れ臭くなり同時に安心感もあったが、勝負を前にいらぬ感情を持ち出さずGPDの筐体の前へと歩く。

 

「ついに、来たね。この対戦。」

 

「ああ、フウトさんとサワラさん、今じゃどっちも日本トップクラスのデューラーや。つまり……。」

 

「……つまり、この対戦で本物の日本最強が決まる。」

 

「そういうことやな。トロ。正直この対戦が一回戦から見れるなんてアツ過ぎやで。」

 

「そうね。アツ過ぎよ。」

 

「イロハがアツ過ぎとかいうのちょっと面白いかも。」

 

「ちょっとミサ、からかわないでよ!」

 

 観客スタンドでフウトの新型を共に作ったシン・カイザー製作チーム、ミサ、テンマ、トロ、イロハも彼らの闘いを見守る。

 

「さてと、はじまりますね。」

 

「ああ、随分とデカくなった彼らの闘いをとくと見せてもらおうか。」

 

 一方で2人の兄も彼らの闘いを見届ける。そして、その隣でフウトの勝利を祈るシイナの姿もあった。

 

 そして、2人は筐体を挟んで互いの目の前に立つ。

 

 幾度となく睨み合ってきた2人。

 

 高校生の頃、はじめて闘った時。

 

 選手権の決勝戦で闘った時。

 

 プロリーグで闘った時。

 

 フリーファイトスペースで闘った時。

 

 武者修行中の北海道で闘った時。

 

 絶対に負けたくない相手と最高の舞台で最高の試合を。

 

 手に入れたいのはあの日以上のガンプラバトル。

 

「…………さあ、フウト、準備はいいかい。」

 

「…………ああ、サワラ、いつでもいいぜ。」

 

「全力で…………」

 

お前()を倒す………………!!!」

 

Please set your Gun-Pla.

 

 GPDの筐体にカードキーをセットするとシステムが起動し音声が出力される。そして2人は自分のガンプラをセットする。

 

「シン・カイザー、イヌハラ・フウト、皇道を征く!!」

 

「ガンダムゼルエル改、アララギ・サワラ、天を駆ける!!」

 

 2体の赤と黄のガンプラは2人の台詞と共に勢いよく宇宙ステージへと出撃した。

 

「ついに、始まったか…………。」

 

 若干の浮遊感を感じながらアームレイカーを握る、フウト。しかしそんな浮ついた感覚など簡単に現実へと引き戻す。

 

「悪いけど、余興や前座はないよッ……!!」

 

 ゼルエル改は圧倒的なスピードで現れては消えてを繰り返しながらGNアサルトカービンニ丁を構え高速で射撃を繰り出す。

 

 シン・カイザーは紙一重で回避しながらなんとか反撃のチャンスを伺うがなかなか好機は生まれない。

 

「いきなり、サワラくん、仕掛けましたね。」

 

「昔から速い機動性を活かした速攻はサワラが得意とする戦術だからね。」

 

「さて、どうする。ふうちゃん。」

 

「…………くっ。これじゃ呆然一方だな。」

 

 ビームの雨は止まる事なく、シン・カイザーを襲う。流石に回避し続けることも難しく、徐々にボディを掠めている。神出鬼没に消えては現れるほどのスピード。正面のビームの次に死角からビームを撃ち込む。

 

「うわッ!!」

 

「どうしたんだい!フウト!」

 

「…………ッ!!そっちがそうくるならッ………!!」

 

 シン・カイザーの眼が光るとその姿を消す。

 

「…………ッ!!!?」

 

「スピードはこっちもあンだよ…………!!」

 

  高速移動しながらビームを放っていたゼルエル改の目の前に突如現れるシン・カイザー。これにはサワラも面食らうがその隙に右腕に取り付けられたブレイドガンの刃を振りかざす。

 

「もらったァ!!」

 

「まだまだッ!!」

 

 ゼルエル改は腰の後ろから大型の斧を2本取り出しシン・カイザーの攻撃を受け止めそのまま弾き返すと勢いのまま斧を振りかざす。

 

「何ッ……!?」

 

「うぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!!!!」

 

 その強烈な一撃はシン・カイザーの胸部を切り裂いた。そのままゼルエルはさらに追撃を狙うがシンカイザーはドラグーンを射出し牽制を入れながら後退する。

 

「くっ、なんつー威力だよ。重過ぎるぜ。」

 

「それに、その面。結局立ちはだかるか、ソフィエルの系譜は!」

 

「ああ、これが、世界大会用に更なる進化を遂げたゼルエルだよ。フウト。」

 

先ほどまで高速攻撃を繰り出していたためかシルエットがはっきりと見えなかったが、今は2本の斧を持ち佇む天使の姿がはっきりと見える。頭部もバイザーからガンダムフェイスへと変更されておりその姿はまさにイヌハラ・ユウキのガンダムソフィエルとはまた別の進化を遂げた天使の姿だ。

 

 そして対するは、全く異質の進化を遂げた皇帝。異形の皇帝は腰の鞘からに手を当てる。

 

「お前が斧なら俺は刀だ。」

 

「望むところ。叩き折られても……知らないよッ…………!!」

 

 無機質な空間から二体は一瞬にして消える。

 

「そこだッッ!!!」

 

 シン・カイザーは手早く抜刀しゼルエルへと斬りかかる。しかしその美しい青紫の刀身は2本の斧に受け止められる。

 

「無駄だよッ!!」

 

「まだまだァァァッ!!」

 

 さらに刀での超高速の連続攻撃。重さのある斧ではその攻撃の切り返しについていけない。

 

「くっ………………!!」

 

「速さで引けを取ったら終わりだな!サワラ!!」

 

 シン・カイザーの太刀、夢幻がゼルエル改をとらえボディを切り裂く。

 

「まだまだ、この(GNハルバード)にはまだ隠された力があるッ!!

 

 GNハルバードと呼ばれた斧の刃は畳まれ変形するとビームの刃が槍の如く出力されシン・カイザーの肩を貫く。

 

「斧が変形しやがった!これはまずい!」

 

 形勢逆転。動きの鈍ったシン・カイザーに対しもう1本のアックスモードのGNハルバードをランスモードに変形させ頭部目がけて鋭く突く。

 

「これでッ…………!!」

 

「まだだ!!」

 

「……………………!!?」

 

 渾身の一突きは一つの浮遊するシールドに防御された。

 

「防がれた…………ッ!!?」

 

「………ドラグーン・シールドッ…………!!」

 

 シン・カイザーの肩に取り付けられたドラグーンシステムが搭載された遠隔シールド。防御性が低いシン・カイザーの弱点を補う武装。

 

「そして、コイツが出来るのは守るだけじゃない……!!」

 

 シールドの裏側から桜色のドラグーンとオレンジのGNビットが射出されるとゼルエルを襲う。まさにカウンター。フウトのバトルスタイルを体現したギミックである。その間に、突き刺されたランスを引き抜き、間合いを取る

 

「くっ……!!こんなものまで!やるね!フウト!」

 

「みんなで作り上げたシン・カイザーはそんな簡単にくたばらねェよ!」

 

「お!ドラグーンシールド!作動したよトロくん!」

 

「俺達の経験が活きたな。」

 

「ああ。シン・カイザーの弱点は防御面やったからな。にしても、サワラさんのGNハルバードも凄いギミックや。」

 

「フウトもサワラくんもビルダーとして個性的な武装を取り付けてる。そしてそれを戦術に落とし込んでる。2人の勝負、流石にレベルが高いわ。」

 

「…………でも、負けんなよ。フウト。」

 

 観客席でフウトを応援する製作チーム。みな、サワラが集めた人材だ。サワラが本気でフウトと闘うために選んだ人選。サワラはニヤリとしながらアームレイカーを握る。

 

「やっぱり、君との対戦は心が躍るッ!!」

 

 引き抜いたランスを回収すると再びシン・カイザーへと突撃する。シン・カイザーもまた太刀を構えその攻撃に備える。

 

「くそッ!速いッ!!」

 

「まだまだァ!!」

 

 直線的な攻撃を繰り出す槍に対し太刀では防御や切り払いが難しく非常に相性が悪い。フウトは両肩のドラグーン・シールドを展開させ牽制を行いながら反撃のチャンスを伺う。

 

 狙うのは一瞬。ランスの突きを回避した瞬間にカウンターを叩き込む。

 

「そこッ…………!!」

 

「甘いッ…………!!」

 

 両手の槍をクロスさせて突いた攻撃を、シン・カイザーは脚部のビームブレイドで弾き返し、勢いのまま反転して蹴り込む。

 

「まだだッ…………!!」

 

 瞬間、ゼルエルの肩から小型のシールドビットが射出、シン・カイザーの攻撃を防いだ。

 

「まじかよ!!」

 

「さっきのお返しさ!!」

 

「そして……反撃ッ!!」

 

 ゼルエルは再びランスをシン・カイザーの腹部を狙って鋭く突き刺す。

 

「………………………………!!!」

 

 フウトの眼が光る。

 

「………………………………??」

 

 シン・カイザーは腹部への攻撃を体をそり返し避け、そのまま宙返りをすると黄金の輝きを身に纏いはじめる。

 

「まずいッ……アレは…………。」

 

──God Advent──

 

「…………神モード……起動…………!!」

 

 シン・カイザーの胸部の緑のコアが光を放ち機体は黄金色に包まれていく。ジャスティスカイザーから受け継いだ固有システム。神モード。

 

「なら、こちらもッ………………。」

 

「トランザム・エクリプスッッ!!」

 

 ゼルエルに搭載された太陽炉から放たれる粒子が紅潮し機体も紅くなる。更なる機動性を手に入れたゼルエルは残像すらも置き去りに稼働する。

 

 お互いに機体のスペックを引き上げ、バトルは終盤へと突入する。

 

「俺は……今日こそ……君に勝つ…………!!」

 

「くっ……!!」

 

 2本のGNハルバードを連結し豪快に振るいながらGNビットでも攻撃を行うサワラ。それを夢幻で切り払いながら同時にドラグーンでGNビットへの警戒も怠らないフウト。

 

 互いに全く譲らず、一進一退の攻防。

 

 そこにかつての2人の闘いを重ねる者もいた。

 

 アストレアとジャスティスカイザーの熾烈な闘い。高校選手権の決勝もまた黄金の光と真紅の粒子が激しくぶつかり合っていた。

 

「あの日届かなかった拳を俺はずっと忘れない!」

 

「君は突如、俺の前に現れ、瞬く間に成長していった。どんどん強くなって、俺を倒した。どんなに負けても必ず這い上がって、ついにはユウキさんさえも倒した。」

 

「そんな君だからこそ、今日ここで、俺が倒す。そして、真の日本チャンプになるんだッ!!」

 

 並々ならぬ気迫。赤い閃光はGNハルバードをブーメランのように投げ飛ばすと腰の後ろからGNアサルトカービンを高速移動しながら無数に放つ。

 

「なんだッ!!これ!!」

 

「これが俺の切り札。絶対包囲紅嵐(ゼロ・エクリプス)ッ!!」

 

 無数のビームの嵐と共にブーメランとして飛び交う斧。そしてその斧に反射して襲いかかるビーム。それはまさに獲物を刈り取る天使の領域。その絶対的なエリアの中をシン・カイザーは抜け出せない。

 

 なんとか回避を続け、神モードが発生する黄金のエネルギーでダメージを軽減するが、それも諸刃の刃。強大なエネルギーを消費する神モードは徐々にシン・カイザーの装甲を蝕み剥がれていく。

 

 そんな中、ついに皇帝は補足される。

 

「ッッ………………!!」

 

 目の前のGNハルバードから反射されたビームはボディを捉え動きが止まる。その瞬間を見逃さなかったゼルエルはハルバードを回収しシン・カイザーへと振りかかった。

 

「これで、終わりだ!フウトォォォォォォッ!!」

 

「……やばい、負ける………………。」

 

 ──ShuЯa―nzam──

 

 フウトが目を閉じようとした瞬間、モニターに文字が表記される。

 

「……え………………?」

 

 迫り来る、敵の攻撃。この状況で喰らえば負ける。一か八か。この機体の可能性に賭けた。

 

「…………修羅ンザムッッ…………!!」

 

「……な、なんだって………………??!」

 

 黄金の光からシン・カイザーは桜色の光を見に纏いゼルエルの攻撃を真正面から太刀で切り払った。

 

『あとおまけもしといたからねふうちゃん。』

 

 ユウキが難航していた神モードのシステムをあっさりと組み終えた後、フウトに言った言葉の意味を彼は理解した。

 

「ユウキくん、とんでもないものを仕込んだねぇ。」

 

「いえいえ、面白いのはこれからですよ。」

 

「うおおおおおおおお!!」

 

「くっ、こんな土壇場でそんなものを隠し持っていたとはね!」

 

「だけど、丁度いい。ここで君を倒せばユウキさんも超えた事になるんだからね!!」

 

 ゼルエルは怯む事なく再びGNハルバードを投げ、無数のビームの嵐でフィールドを支配する。

 

「そいつはもう見飽きたぜ、サワラッ!!」

 

「ここは…………皇帝の領域なんだからよ…………!!」

 

 桜色の光と黄金の光が入り混じりやがて交差し一つになっていく。美しく儚い光はどんどん輝きを増す。いつか見た儚い夢の記憶を鮮やかな光に変えていく。

 

 胸のコアに刻まれた「∞」の文字が浮かび上がる。

 

 ──God Advent Infinity──

 

「うおぉぉぉぉおぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!!!」

 

「神モードインフィニティ起動ッッ!!」

 

 シン・カイザーはさらに輝きを増した黄金色と桜色の粒子が入り混じった光を身に纏う。

 

「まさか、神モードの限界を超えたっていうのか。君は。」

 

「これが、俺たちの夢の形だ。」

 

「いくぜ、サワラ、最終ラウンドだ。」

 

「望むところさ。」

 

『やっぱりお前()とのバトルはいつだって最高だな!(だよ!)

 

 金桜色のシン・カイザーの神速にゼルエルは動きを制限され、絶対包囲紅嵐を発動出来ず正面から激しくぶつかり合う。

 

 太刀と斧で何度も鍔迫り合いながら更に出力を増すシン・カイザー。ゼルエルも負けじとリミッターの限界近くまで粒子を放出させる。そして互いに武器を構え、直線で交差する。

 

「フウトォォォォォォォォォォォォッッ!!!」

 

「サワラァァァァァァァァァァァァッッ!!!」

 

 2つの尾は激突する。

 

 何度も。

 

 何度も。

 

 何度も。

 

 互いにボロボロになりながらも、頭をぶつけ、武器をぶつけ、拳をぶつける。

 

 何度も、何度も、何度でも。

 

 彼らのこれまでの闘いを象徴するように何度でも。

 

「なんて、バトルや…………。」

 

「これが、世界レベルのバトル…………。」

 

「…………フウト、サワラくん………………。」

 

「…………フウトさん…………………………!!」

 

「ユウキくん、全くあの子達はどこまでいくんだろうね。」

 

「さぁ、どうでしょう。少なくとも僕達には出来なかったガンプラバトルですね。」

 

「本当に、頼もしくなったよ。2人とも。」

 

「──彼らが、開く世界の扉のその先が楽しみだ。」

 

 何度だって。俺たちは闘う。

 

 勝っても。

 

 負けても。

 

 戦い続ける。

 

 何度でも。

 

 何度だって。

 

 その先の栄光を手に入れるために。

 

「こいつで終わりだッッッ!!」

 

「来い!フウトッ!!俺は君を…………!!」

 

 互いの機体のツインアイが光る。勝負は一瞬。互いに姿を消して現れる。

 

「…………俺の…………勝ちだ。」

 

 黄金と桜の輝きを放つ一振りが、対象物を真っ二つに切り裂いた。

 

──Battle End──

 

 winner.

 Futo

 

「ウオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオ!!!」

 

「決勝トーナメント第一回戦を制したのは、イヌハラ・フウト選手!!だァァァ!!!」

 

 湧き上がる歓声。

 

「………………………………負けた。」

 

「やっぱり、君はとんでもないよ。フウト。」

 

 サワラはボロボロとなった愛機を手に取り、悔しそうな表情を浮かべながらも勝者を讃える。

 

「おめでとう。日本チャンプ。」

 

「ありがとう。サワラ。本当に強かった。」

 

 2人は固く握手を交わす。

 

「また、バトルしてくれるかい?」

 

「当たり前だ。何度だって、受けて立つぜ。」

 

「じゃあ次は世界チャンプの冠を獲りに挑戦するよ。」

 

「おい、気が早えよ。」

 

「まだまだ、暴れたりないだろ?」

 

「当たり前だ。お前の分も暴れてきてやるよ。」

 

 2人はニヤリとして握手の後、グータッチを交わす。最高の好敵手であり友人。世界の大舞台で闘った事は絶対に忘れることなんてないだろう。2人の闘いはこれまでも、これからも続く。何度だって続く。

 

 学生時代から2人を知るイロハはそんな光景を見て涙を浮かべる。

 

「良かったね。2人とも。また、こんな舞台でガンプラバトルが出来て。」

 

「良かったね……。」

 

「あれ?イロハ泣いてる?ちょっとまだ早いよ!」

 

「ほんまごめん、俺も2人のバトル見てたら涙止まらんくて。」

 

「テンマまで、大袈裟だな。」

 

「そういう、トロはフェーテ出して気持ち高まってるやん!」

 

「いや、いつか俺もあいつとこんな舞台で闘いたいな。って思っただけだよ。」

 

「まあ、みんなの気持ち、分かるよ。2人ともあの頃のままだったから。」

 

 サツキノ・ミサは舞台の2人を見つめ高校選手権の頃を思い出す。

 

「…………このバトルはあの時、全部決まってたのかもね。」

 

「さあ、みんな、感動してるところ悪いけど、シン・カイザーの修理やるよー。想像以上にボロボロだと思うし。」

 

「そうだね。それにあの進化した神モードの事も気になるし。」

 

 製作チーム改め、チームイヌハラはフウトの控え室へと向かう。

 

***

 

「さて、次の相手はイヌハラ・フウトか。」

 

「もう一度、私が捻り潰してあげよう。」

 

 金髪の青年は試合を見ながら、ニヤリとしていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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