ガンダムビルドデューラーズ清掃員外伝 世界大会編   作:地底辺人

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第四話「エクラ・エクレ」

 

 『世界大会決戦トーナメント第一回戦、勝者 イヌハラ・フウトォォォォォォォォッッッ!!!』

 

 凄まじいほどの声が会場に鳴り響く。

 

 世界大会一回戦、古くからの友人でありライバルであるイヌハラ・フウトとアララギ・サワラの日本人対決は前者に軍運が上がった。これらの映像は全世界に配信されており、世界中を熱狂させ、本大会がさらに注目されることになった。

 

 次の2回戦は中1日で行われる過密スケジュールだ。そして次の対戦相手は、強化試合の後野良バトルを突如申し込んできたフランス人デューラー「エク・レイア」

 

 フウトは彼の圧倒的な実力を前に、完敗を喫した。第一回戦も同様にエクは巧みに相手を翻弄し危なげなくイタリア代表のデューラーを倒しその実力を世界に示した。

 

「こんなデカい舞台でもう一回あいつとやれるなんて、願ったり叶ったりだけどな。」

 

 フウトは他の試合を見終えると右手をグッと握りながら会場でその他の試合を観戦していた。リベンジマッチ。デューラーなら一度負けた相手に二度は負けられない。

 

 そんな風に熱い闘志を燃やしていると、合間の休憩時間に、なんとも可愛らしい女の子達がステージに立ち歌って踊る余興がはじまった。

 

「みなさん、どうもこんにちは!私たちミリオンスターズです!」

 

「みんなーー!ガンプラバトルビビッと来てるーーー??」

 

「会場のお兄ちゃん、お姉ちゃん、みんなー!今日は桃子達と一緒にガンプラバトル楽しもうね!!」

 

 3人の可愛らしい女の子が登場すると、先ほどのガンプラバトル時とはまた違った歓声がワッとあがる。フウトはあまりにも突然のことで状況を理解できていなかったが、周囲を見わたすと大勢の人がカラフルに光る棒を手に持ち異様なほどに盛りがってる。

 

「フゥゥゥゥゥゥゥーーーー!!」

 

「オーッ!ハイ!オーッ!ハイ!」

 

「ハイ!ハイ!ハイ!ハイ!」

 

「………………………………。」

 

「……なんなんだ、これは。」

 

「あれフウト知らないの?ミリオンスターズ。765プロの所属の大人気アイドルよ。」

 

「俺のアイドルはスクールアイドルで止まってんだよ。」

 

「あー、フウト、絵里ちゃん好きだったもんね〜。」

 

「うるせえ!」

 

 隣に座っていたイロハが目の前の得体の知れない可愛い生物について色々と教えてくれる。どうやら雑誌のライターをしているイロハは何度かこのミリオンスターズというアイドル達の特集記事を書いたため詳しいようだ。その際、実際に取材をしたりシアターでの定期公演も参加したらしい。

 

「あ、フウト、この曲はね。"コール"があるのよ。」

 

「コール???????」

 

「ええ。あの紫の髪の杏奈ちゃんが『応援ください!』って言ったら『応援するよ!』って言うの。ほらほらくるよ。」

 

 イロハはニヤニヤしながらフウトに説明する。コイツ、絶対俺で遊ぼうとしてやがる。

 

 だが、フウトもこの短時間で彼女達の魅力に抗えない事も理解していた。ステージの彼女達は単純に可愛く、個性があり、なによりも輝いている。

 

「さあ!みんなも杏奈達と一緒にデューラーさん達に声を届けて!」

 

「………………来た!!」

 

『応援ください!』

 

『オウエンスルヨォォォォォォォォォォッッッ‼︎』

 

 フウト、絶叫。

 

 そして鳴り響くオウエンスルヨ。大歓声。

 

 なんだ。これ、めちゃくちゃ楽しい。

 

 アイドル、すげーーー!!

 

「ふふっ、フウトノリノリじゃん。」

 

「ありがとう、イロハ。俺、行くよ。」

 

「え?」

 

「扉を開くんだよ。シアターの!!!」

 

「………………………………………………。」

 

「……ま、楽しそうだしいっか。私も応援するよー!!」

 

 この後、続くライブパートをフウトはノリノリで見ていた。ありがとうミリオンスターズ。この次の試合も頑張ります。

 

 その後、席を立ち宿舎に戻ろうとしていたところ、先ほどのステージに立っていた1番歳の低い女の子と偶然すれ違った。

 

「ちょっと、お兄ちゃ……。」

 

「え?」

 

「おーい、桃子!待たせてすまん。取引先の人とバッタリあってな。次の現場いくから車に乗ってくれー!」

 

 一瞬こちらをみて強気の口調で何か言いかけたが別の男性が彼女の目の前に現れると狐に包まれたような表情でそのまま男性についていった。フウトもまたなにがなにやらわかっていない。

 

「さっきの子、ステージにいた子か……?それに俺に何か言いかけたのか……?」

 

 フウトがきょとんとしていると雪の匂いが近づく。

 

「あ、フウトさん!いたいた!探しましたよ!!」

 

「ん?シイナか。お疲れ。」

 

「お疲れさまです。一回戦突破おめでとうございます!!」

 

「見ててくれたのか!ありがとう。」

 

「もちろん!サワラさんとのバトル、もう本当に最高でした!もうあれが決勝戦でいいくらいです!!」

 

「おいおい、気が早いぞ。」

 

 シイナはニコニコしながら試合の感想を言っていると何か思い出かのような表情に一転する。

 

 「というか、さっきの子、ミリオンスターズの周防桃子ちゃんじゃなかったです??」

 

「うん?多分そうだな。てかシイナも知ってるのかあのアイドル達のこと。」

 

「そりゃ、もちろんです。老若男女問わず大人気ですよ!さっきのステージもすごくよかったです!」

 

「ああ……。あれは最高にアツかったぜ…………!!」

 

「あれ?フウトさん、ミリオンスターズのこと知ってるんだ!意外です!」

 

「ああ、今さっき扉を開いたところだ。」

 

「そうなんですね!そうだ、せっかく東京に来ましたし大会終わったらシアターの定期公演行きましょうよ!」

 

「え?そんなのあるのか??いく!行こうぜ!!」

 

『あれ……?フウトさん、思ったよりも扉開いちゃってるっぽい……?』

 

 シイナは思ったよりもアイドルにハマってしまっているフウトを感じ取って若干複雑な感情を抱きつつも、何気に2人の約束が出来た事を内心喜んでいた。

 

「そういえば、フウトさん、これからどうするんですか。」

 

「今からシン・カイザーの修理と調整だな。」

 

「私もお手伝いしていいですか?」

 

「もちろん!助かるぜ!他にも色々と手伝ってくれるメンバーがいてな。シイナがそこに加わってくれると百人力だな。」

 

「そんな、やめて下さいよ。」

 

「顔、ゆるんでるぞ。」

 

「…………!もう、フウトさんのバカ!」

 

 2人はその後、会場を後にしシン・カイザーをはじめに製作した模型店へと足を運ぶ。その間、シイナは東京の見慣れない景色に目を輝かせていた。

 

「…………お、フウトさん!待ってたで!」

 

「おー、遅いと思ったら新しい女連れてきてすみにおけないねえ。」

 

 模型店の扉を開けると、テンマとミサが早速出迎えてくれる。そこにはトロ、イロハ、そして、サワラの姿もあった。

 

「全くだよ。俺に勝ったくらいでもう満足かい?」

 

「まさか。俺はもう世界のてっぺんしかみてねえよ。」

 

 サワラが口角を上げてふっかけるとフウトはニヤリとして返す。

 

「改めて、フウト。おめでとう。俺も今日からこの製作チームに加わらせてもらうよ。よろしく。」

 

「マジか!ありがとう!それならこっちにもチームに参加したい奴がいてさ。」

 

 フウトがニコッとシイナの肩を叩くと少し緊張した様子で挨拶をする。

 

「あ、えっと、ヒナセ・シイナです!わたしも今日からこのチームに参加させて頂きます!」

「それから、フウトさんがこちらに来てからみなさまには大変お世話になったと聞いています。ありがとうございました。」

 

 礼儀正しくお辞儀。フウトは苦笑い、テンマとミサはニヤニヤしている。その中で真顔のイロハ。

 

「よく出来た彼女だねえ。イロハ?」

 

「なんで私に振るのよ。」

 

「さあね〜〜。」

 

「ミサ、あまりイロハを刺激しない方がいい。さっきから機嫌が悪そうだ。」

 

「あのね。トロくん。私は普通です。普通なんです。」

 

「まあまあ、落ち着きや。シイナさん、確か全国大会で4位の実力者でしたよね。一緒にやれるの光栄です。これからよろしくお願いします。」

 

「え……あ、はい……!」

 

 なんとかテンマが周囲を取りまとめる。シイナとイロハはなんとなくピリッとして気まずそうである。

 

「…………フウト、君も君だ。なんでこうなる?」

 

「悪かったって。みんなガンプラが好きだし集まったら楽しいかなって。」

 

「はあ、呆れた。フウト、アンタ本当に馬鹿ね。」

 

「馬鹿は失礼だろ。」

 

「馬鹿よ。」

 

「アホですね。」

 

「普通にゴミでしょ。」

 

「シイナ!ミサまで!」

 

「ふふっ」

 

 フウトへの罵倒が重なると2人はつい笑いをこぼす。

 

「まあ、その、シイナちゃん、こんな馬鹿のためだけど何卒よろしくね。」

 

「は、はい。えっと……」

 

「イロハでいいわよ。」

 

「はい、イロハさんよろしくお願いします……!!」

 

 そういうと2人は握手を交わす。片方からは右耳が青白く光り、もう片方からは紅葉の首飾りが薄橙に光った。

 

「全国大会の取材の時はごめんなさいね。失礼な事ばかり言ってしまったわ。」

 

「え、あ、あの時の記者さん?!」

 

「ふふ。気づかなかった?これからは同じ船、頑張りましょうね。」

 

 シイナは口を開けてポカーンとする。確かに言われてみれば。だが、なんとなく記者の時の毒や棘のようなものはなく、今は完全に大人の大和撫子。シイナはイロハのその雅さに少しあこがれに近い感情さえ抱いていた。

 

「遅れたけど、よろしくね!シイナ!わたしはサツキノ・ミサ。」

 

「よろしくお願いします!あの彩渡商店街チームの有名人だ……!」

 

「…………俺はトロ。よろしくお願いします。」

 

「うん!トロくん、よろしくね!」

 

 シイナもチームメンバーと挨拶を交わし徐々に打ち解けていく。もちろん、シイナが第14回GPD全国選手権で活躍していたことは他のメンバーも知っており必然的にガンプラやバトルの話となり盛り上がっていた。一つのものが全く知らなかった彼らを繋げていく様は素晴らしいものだ。そんな中、イロハが話の流れの中でフウトとサワラの対戦で起きた現象について触れる。

 

「そういえばさ、サワラくんとの対戦の中で起動した神モード、明らかに今までのものとは違ってたよね。」

 

「その直前で修羅ンザムも擬似的に発動していたしな。」

 

「それも疑問。GN粒子を持たないのになんであのシステムが起動したのかも分からないわ。」

 

「あれはおそらく、ユウキさんの『おまけ』とちゃうかな。GN粒子の代わりに核動力で起動する擬似的な修羅ンザム。」

 

 システム担当のイロハとテンマが色々と仮説と推測を並べる。そこに当事者であるフウトが口を挟む。

 

「元々今回のチューンで神モードのリミッターを外していたんだが、それに修羅ンザムを重ねて発動して生まれたのが『神モード∞』」

 

「兄さんのシステムが合わさる事で、神モード本来のオリジナルのシステムに近いものが発現したんだと思う。」

 

 金色の光と共に桜色の粒子が機体を包み、性能を押し上げる脅威的システム。フウトの父、ソラヤが生み出したシステムはまだまだ奥が深そうだ。

 

「……神モード、なんだか懐かしい言葉じゃな。」

 

 そういうと、模型屋の老いた店主がひょこっと現れる。

 

「……父さん!ごめん。うるさかったかな?」

 

「いや、別に構わんよ。わしが使っていいと言っておるし。」

 

「………父さん…………?」

 

「ああ、あの人は俺の父さんさ。ここの店の店主をやってる。大会中は無理を言って施設を使わせてもらうようお願いしていたんだ。」

 

 それを聞くと、全員、お父さんに深くお辞儀。お父さん、得意げに片手をあげる。皆、てっきりプロデューラー・アララギ・サワラの顔の広さで貸切にしていたものとばかり思っていた。

 

「青年。」

 

「は、はい。」

 

 サワラの父はフウトを呼ぶとジッと目を見る。その男の目はとても大きくその目力に圧倒されそうになるも、目線を離さない。

 

「………………………………………………。」

 

「………………………………………………。」

 

 古い模型店の中を無言の空間が漂う。

 

「……バカ息子の、愛弟子か。随分と立派になったな。」

 

「え、ええ。先生には大変お世話になっております。」

 

 この人は自分の師、アララギ・ユウリの父でもあるのだ。フウトがやや緊張した様子で返事すると、老人はニヤリと口角を上げて口を開く。

 

「……GPDを、ガンプラをとことん味わい尽くせ。」

 

「その先に、息子とお前さんの兄が辿り着けなかった答えがきっとあるじゃろう。」

 

「……は、はい!」

 

「……せいぜい頑張るんだな。バカ研究者の忘れ形見(ソラヤのせがれ)

 

 そう一言いうと、老人はゆっくりと背を向け階段を登り姿を消した。フウトはその背中が消えるまで見つめたのち、シン・カイザーを手に取り胸の「♾️」の刻印をジッと見る。

 

「………ガンプラを味わい尽くした…その先…………か。」

 

 フウトはニヤリと口角を上げるとファイトスペースの方へ行く。

 

「さあ、ガンプラバトルやろうぜ。まだまだはじまったばかりなんだからよ!」

 

 フウトがそういうとチームのみんなも大きく頷く。まだまだ分からない事ばかりだが、だからこそ面白い。フウトはひとりでは答えを見つける事ができなくとも、この最高の仲間となら答えが見つかるとなんとなくそう感じていた。

 

「ガンプラバトルもいいけど、機体の修理の方が先でしょ。前のバトルでボロボロなんだから。」

 

 イロハはやれやれとしながら言う。

 

『サワラくんのお父さんの発言、ちょっと気になるな。神モードについても何か知ってそうだったし。』

 

「そうだね。次の対戦相手は手強いよ。」

 

「…………俺が仮想エクになろうか。一度対戦したからなんとなくやれる気がする。」

 

「流石、トロくん!器用だねえ。」

 

「…………みんな、ありがとう!!」

 

「わ、私もなんでもやりますよ!やれる事なんでも言ってください!!」

 

 シイナも負けじとアピール。ありがとな。とフウトが返すと嬉しそうな表情になる。

 

「じゃあ、シイナさん、今から仮想エクになるからちょっと改造手伝って下さい。」

 

「うん!分かったよ!」

 

「お、ほなら俺も手伝おか」

 

「テンマも助かる。」

 

 そう言うと、トロはリュックからジャンクパーツの入ったケースを出すと、エクの「エクラルドゼータ」を模したアーマーを作りはじめた。

 

 エクラルドゼータは、ゼータ系をベースにした運動性の高さに加えゴッドガンダムのハイパーモードでの自機強化も備え、高めたパワーを一点に集め放出するハイメガキャノンも搭載した全体的にクオリティの高い機体である。

 

 それらを再現すべく、トロは自機である「ガンダムフェーテ」のライフルを大型のものに換装する。

 

「これも未完成だけど…………試してみるか……。」

 

 そして、もう一つ、元々フェーテ用に作られていたと思われるサーフェイサーで塗られた飛行ユニットを取り出す。そしてそれを見たシイナが間髪入れずにパーツを差し出す。

 

「これも試してみるといいかもね!」

 

「これは、シイナさんの。」

 

 手に差し出されたのはシイナのスノーホワイトのウイングパーツ。AGE2の肩パーツをベースにフォースシルエットと組み合わせた高機動ウイングだ。

 

「ありがとうございます。」

 

「いえいえ、それでフウトさんをぶっ飛ばすといいよ。」

 

「そうですね。そうさせてもらいます。」

 

「おいおい、言ってくれんじゃねえか!」

 

「こらー、フウト、こっちの修理まだ終わってないよー。」

 

「あ、ごめん。」

 

 イロハに突かれると、即座に作業に戻るフウト。その間、トロは仮想エク型フェーテの調整をさらに進める。しばらく時間が経つと、シン・カイザーは修復したパーツに組み替えられていた。塗装していない部分はサーフェイサーで、灰色と本体の赤とアイボリーの色が混じっている。まさにテスト中といったところだ。

 

「またせたな、早速やるか。」

 

「……ええ…ぶっとばさせてもらいます……。」

 

 

──Please your Gunpla set──

 

「シン・カイザー、出るぞ!」

 

「ガンダムフェーテ試作飛行型、出る。」

 

 2人は思い切りアームレーカーを推すとカタパルトデッキから勢いよく発進する。

 

 ステージはテスト用の真っ白な空間。障害物やステージの特徴はなく、ただバトルするための空間。テスト用にはもってこいだ。空間も狭くいきなり対面し睨み合う。

 

「……先手必勝…………!」

 

 フェーテは新たに取り付けた試作型の飛行パックを背にシン・カイザーへ飛び込みビームライフルを放つ。

 

「速い!」

 

(エク)はこんなものじゃなかった……!」

 

 フェーテは更にスピードを上げシン・カイザーを襲う。トロは額に若干の汗をかきながら機体をなんとか制御する。

 

「あれじゃ、トロくん1分も持たないよ!」

 

「大丈夫や、ミサ。わざとああしてるんや。今トロはエクに成り切っとる。」

 

「それに、シイナちゃんのさっきのウイングパーツも効いてるわね。出力そのものも向上してるけど機体の制御力も格段に上がってる。」

 

「ふふ、それだけじゃないですよ。見ててください!」

 

 フェーテは青い尾を弾きながらシン・カイザーへと精密な射撃を行う。フウトはドラグーンを展開し反撃を試みるも計算された攻撃と機動力を中々捉えられない。

 

「野郎……エクみてえにいやらしい事してくるぜ。すばしっこくやりずらいな。」

 

「…………まだまだ…………!!」

 

 フェーテは更に青紫に光出す。シイナの取り付けたウイングパーツが動力となりスノーホワイトのプリズムシステムが擬似的に発動している。

 

「……あれはッ……!!」

 

「……こいつも……重ねる…………!!」

 

 更にフェーテは自身から炎を放ち始める。

 

 フェーテ専用のシステム『progress system』だ。

 

 炎とプリズムの光が対照的に輝きを放つ。

 

 フェーテは進む。トロの思い描く新たなステージへと。

 

「おいおい、これはマジでやべえな。」

 

「俺とフェーテは進化する。」

 

 アンテナで隠されたフェーテのツインアイが光る。システムを重用したフェーテはシン・カイザーへと熾烈な攻撃を開始する。

 

 出力が段違いとなったビームライフルはカイザーのドラグーンシールドをいとも簡単に跳ね除けボデイを掠めていく。そしてそのまま炎を宿した拳を構えカイザーへと飛び込む。フウトは寄せ付けない為にドラグーンを展開し四方から牽制をする。

 

「そんな、小細工。通用しない。」

 

 フェーテは機体から炎を放ち、ドラグーンに向ける。桜色のドラグーンは炎に焼却され、残ったビームはプリズムの光が反射しカイザーへと矛先を変える。

 

「……!!まじかよ!それ!」

 

 カイザーはなんとか反射したドラグーンを足のビームブレイドで切り払うがその間にフェーテは接近し炎の拳を顔面に打ち付ける。

 

「うわぁぁぁぁぁぁぁぁ!!」

 

 コックピットが揺れ、赤の警笛が鳴り響く。恐るべく機体スペックだ。

 

「すごい、アレがガンダムフェーテの進化。」

 

「フウトさん、負けるかもな。」

 

「でも、そろそろタイムリミットも近いわ。いつオーバーヒートしてもおかしくない。」

 

 イロハは手持ちのタイマーが「00:30」となっていることを見せる。

 

 しかしフェーテは動きをやめない。カイザーを鉄拳で怯ませた後、空高くへと飛び腰に装着されたGNビットを展開させ緑のパワーゲートを展開する。

 

「……アウスゲート…………展開ッ…………!!」

「これより、目標を完全に破壊する。」

 

 フェーテは大型の砲身のライフルに換装しエネルギーチャージを始める。この間Progress Systemの恩恵でチャージの時間がグッと短縮される。

 

「いてて、なんて言ってる場合じゃねえな。マジにやばいぜ。」

 

「あれが仮想エクの『爆熱エクラルドキャノン』の再現か。」

 

「しかもこのコンビネーション、エクが得意としているものや。実際トロもこれにやられてしもたんや。」

 

 トロは自身が経験したものを必死に再現していた。そして再現度は限りなくエクのものに近い。

 

「最後にこの獄炎でシン・カイザーもろとも焼き払う。」

 

「さあ、フウト。どうする。」

 

「………………へへ。」

 

 何がおかしい。トロは素直にそう思った。この絶対絶命の状況でおかしくなってしまったのかと。それでもフウトはニヤリとしている。彼はまだ諦めていない。

 

「……………………………………!!」

 

 フウトは満面の笑みでこう言い放ち、奥の手である神モード∞を発動させ黄金と桜色の光を放った。

 

「今更なにをしても無駄だ!チャージ完了!!フルパワー!アウスゲート開放!!いっけえええええええええ!!!!」

 

「受け止めてやるよ。全部!!!」

 

 シン・カイザーはドラグーンシールドを全面に2枚重ね自身は黄金のオーラを身に纏い真正面からフェーテの超砲撃を迎えた。

 

「止めれるものなら……止めてみろよ……!!」

 

「うおおおおおおおお!!!!」

 

 強力な砲撃は徐々にシン・カイザーを蝕んでいく。シールドは2枚とも破られ素手で受け止める。黄金のオーラフィールドが覆うがそれでもフェーテの攻撃力が勝る。

 

「くっ、ここまでか…………!!」

 

「終わりだ!マキシマムレベル最大!いっけえええええ!!」

 

 ここにきて更に出力を増すフェーテ。しかしこちらも過度なパワーアップによりその負荷に耐えられない。しかしそれでもぐんぐんと攻撃は伸びる。シン・カイザーはなんとかその手で止める。そして徐々に押し返している。

 

「光が……引き込まれる……?」

 

 フウトはその瞬間を決して見逃さなかった。しかし同時にフェーテはとうとう負荷に耐えられず上空から崩れ落ちた。

 

「………………終わり……か……。」

 

 ──Battle End──

 

 目の前のヴァーチャルビジョンが消えると、目の前には関節が焦げ、アンテナも折れ、各部が溶けてボロボロとなったフェーテがトロ目の前にいる。トロはそれを手に掴み、よくやったとそう言ってホルダーの中へしまう。

 

 一方でフウトのシン・カイザーも傷ついてはいるがあれほどの攻撃を一身に受けたとは思えないダメージ量だった。とはいえ、先ほどの攻撃に耐えれなければ間違いなく敗北していただろう。

 

「トロ、ありがとう。タイムリミットがなけりゃ俺の負けだった。」

 

「……こちらこそ。ありがとうございました。」

 

 トロは頭を下げ礼をする。フウトはその目の前で片手を出し握手を求める。

 

「え?」

 

「え?じゃねえよ。ほら手ェ出せよ。」

 

 そういうとトロはゆっくりと、手を出してフウトと堅く握手を交わした。フウトはにっこりとした表情でトロはそれを見て少し照れ臭く笑う。

 

「お前の分も闘ってくるぜ。あのスカしたフランス人に目にモノを見せてやる。」

 

「…………!……フウトさん、頼みました。俺たちの想いも一緒に暴れてきて下さい……!」

 

「おうよ!」

 

 フウトはそういうと、トロの頭をくしゃくしゃとして任せろといった表情をする。トロはそれに対して子供扱いするなという目線を送る。周囲はそれを微笑ましく見ていた。

 

 その後、製作チームは明日の試合に向け、シン・カイザーの修理と調整を引き続き行なっていた。トロとのバトルの中で終盤に見せた能力は解明出来ずだったが、試合に万全で闘える準備はできていた。

 

「みんな、ありがとう。そろそろ今日は切り上げよう。」

 

 フウトがそういうと、おつかれーと解散していく。そこでトロは模型店の外でひとり夜空に手を伸ばしていた。

 

「……届かなかった……か。」

 

 日中のフウトとの対戦を振り返る。テスト対決とはいえ、オーバースペックを積んだフェーテでもシン・カイザーを倒せなかった事が悔しかったようだ。この数日間、トロはフウトと出会い、シン・カイザーの製作にも関わり成長を実感していた。今回はそれを確かめるためでもあった。それでも、やはりまだ、あのステージは遠いと痛感した。

 

 確かに届かなかったが、彼の中でなんとなく腑にも落ちていた。絶対絶命に追い込まれても諦めない姿勢とバトルが終わった後のフウトのあの表情。少し似ていると思った。ライバル(ウチヤマ・ユウ)に。

 

 トロは夜空を見上げ伸ばす手を握る。

 

 今は掴めなくても、必ずその手に。

 

「ガンプラバカも悪いものじゃないな。」

 

 冬の星座が瞬く綺麗な夜空がトロを照らしていた。

 

***

 

 ──世界大会二回戦 当日

 

 控え室

 

「……よし、準備オッケー。後はやるだけ。」

 

 フウトは大きく深呼吸をしてなんとか気持ちを沈める。ついに2回戦、フランス代表 エク・レイアとのバトルが今まさに始まろうとしている。

 

「第二回戦、第三試合の方、入場して下さい。」

 

 館内のアナウンスが聞こえる。第三試合、フウトの番だ。

 

「……っし、いくか。」

 

 フウトはシン・カイザーをアタッシュケースに入れるとそのまま控え室を出て会場へと向かう。その途中で、やや色黒で黒髪の青年とすれ違った。何か横目で見られたような気がしたが、フウトは目を合わせずそのまま戦場へ向かった。おそらく彼もこの大会出場者、そしてやけに落ち着いた感じから試合に勝ったのだろう。ライバルと馴れ合うつもりはない。俺は勝ちにきたのだ。フウトはそのまま歩いていく。

 

「……………彼が……イヌハラ・フウト。」

 

「…………楽しみにしている。」

 

 一方でエクは直前までフウトのこれまでの対戦映像を見ていた。強化試合の前に完膚なきまでに倒したにも関わらず油断は一切ない。彼は国を背負ってやって来ている。負けるわけにはいかないのだ。しかし、一方で彼の中でもう一つの感情が生まれていた。

 

「やはり、面白いデューラーだ。はるばる日本に来たかいがあった。」

 

 エクはニヤリとしながらそう言うと、控室を後にし決戦のフィールドへと赴いた。

 

『さぁ!続いて第三試合はフランス代表エク・レイア選手と日本代表のイヌハラ・フウト選手の対決だぁぁぁぁぁ!!』

 

『フランス代表のエク選手は本国ではその名前から『エクラ・エクレ』と称えられその成功と輝きという華々しい意味しております!!』

 

『彼の華麗なバトルスタイルに対しフウト選手はどのように挑むのか!!』

 

 会場の天井中心にある全方位のモニターにはエクの過去の対戦映像が流れ、相変わらずMCが観客を煽る。

 

『そして、そして、今回も!大会公式アンバサダーのミリオンスターズのみんなからアツいエールがあるぜ!!』

 

「なに!!?」

 

 なんと試合前のデモンストレーションでミリオンスターズのアイドルたちが登場するらしく、フウトのテンションはハイになる。

 

「みんなー!杏奈と一緒に2人をビビっと応援してねーー!」

 

「お兄ちゃん、お姉ちゃん!桃子と2人を応援するよーー!」

 

「皆さん!歌織とこの歌で2人を応援して下さい!」

 

「教室でガンプラバトルはいけません!でも大会でなら思う存分楽しんで構いません!一緒に2人を応援しましょう!」

 

 うおおおおおおおおおお!!湧き上がる大歓声。その中にフウトの声も入り混じっている。あまりに熱中して彼女達のパフォーマンスを見ており、入場するタイミングが遅れ、スタッフから早く舞台に行くよう言われる。恥ずかしい。そんな感情を隠しながら、彼は日本代表として、GPDの黒い筐体の前へと足を運ぶ。

 

『あ、あの人、お兄ちゃんによく似てる人だ……。へぇ、大会の出場者だったんだ。』

 

『ん?なんか見られてる?』

 

 フウトは少し浮き足立ちながらステージの方を見ると、アイドルの1人である桜守さんと目があった。

 

「頑張ってください♪」

 

 スーパー笑顔で微笑みながらエールをもらった。これはオタク達のいわゆる、「俺と目が合った。」とかではないのだ。俺に声をかけてくれたのだ。幻覚ではない。フウトは喜びを一生懸命隠しながら、クールな表情を装いながら手を上げて中心地の筐体へと向かう。

 

「なんかフウト、浮ついてない?大丈夫かしら。」

 

「そうですね。いまのは完全に浮ついてました。」

 

「女の勘って、怖いねんな……。」

 

「おーい、ふうちゃん、今の絶対切り抜かれっぞー。」

 

「フウト、ああ言うのに弱いんだな……。」

 

 フウトの仲間達は見逃さずに観客席で彼を揶揄する。その中で1人、トロは冷静に彼を見ていた。

 

「フウトさん……見せて下さい。あなたのガンプラバトルを。」

 

 少し綻んだフウトだったが、目の前を見ると見覚えのある背の高い金髪の男性がいた。パーマのかかった前髪と肌が白く綺麗に整った顔つき。やはり、目の前に敵が現れると、フウトもスイッチが入る。アイドル達のパフォーマンスも耳からは消え、目の前の相手を倒すことだけに意識が集中する。

 

「久しぶりだね。ジャポンチャンプ。あれから少しは腕を上げたかい?」

 

「ああ、おかげさまでな。」

 

「フッ、強気だね。口だけでないことを楽しみにしているよ。」

 

 エクは挑発をするが、フウトはそれは乗らない。何を言われてもいまから始まる結果で全てが決まる。

 

──Please set your Gunpla──

 

 カードキーを差し込み、GPDのシステムを起動させると聞き馴染みのある音声が重く響く。2人は愛機を置き、データを読み取らせ、そのまま視界はヴァーチャルビジョンの映像へと切り替わる。

 

「シン・カイザー、出るぜ……!!」

 

「エクラルドゼータ、舞う!!」

 

 背後には中世の城がそびえる草原地帯のフィールドに2体のガンプラは飛び立つ。

 

「フィールドは草原か。近隣には湖、障害物は城。シンプルなステージだな。」

 

「故に、まどろっこしいことはいらない。」

 

 フウトの目の前の画面にアラートが表示される。

 

「流石に早い……!!」

 

「……ほう!反応するか!」

 

 シン・カイザーの斜め上空から、エクラルドゼータは驚異的な速さでビームサーベルを構え、切りかかる。それに対しカイザーは右腕のブレイドガンの刃で弾き返す。

 

「まだまだ序の口よ!」

 

 シン・カイザーはさらにそのブレイドで激しく突きを繰り出す。エクラルドゼータはバーニアを駆使しながら後退して避けると上空へと飛び立ち今度は高い位置から装備されたバスターライフルで狙撃する。

 

「くっ……!!」

 

「君の機体は地上で飛べない。どの地形でも適性を持つ事はガンプラバトルにおいて基本だよ。」

 

 エクラルドゼータのバスターライフルは的確にシン・カイザーを追い詰めていく。強力なビームは地上の土を溶かし、足場をどんどんと削り機動性を奪っていく。

 

「へっ!飛べなきゃ闘えねえなんて寝ぼけたこと二度と言えなくしてやるよ!」

 

 シン・カイザーは強力なビームを躱しながら両肩のドラグーンシールドを展開し、それに取り付けられた2基のドラグーンをエクラルドゼータに放つ。

 

「来たか……!!」

 

 エクは映像で見た時から、この武装に関してある程度警戒していた。オールレンジ攻撃というのはこのように地形適性の差も埋めることもでき汎用性の高い武装のため厄介だ。しかし、前回同様、淡々とフウトの攻撃を処理する。だが、中々捕まらない。フウトもまた前回通りではないのだ。

 

「簡単には捕まらねえよ!!」

 

 フウトは高速で指を動かし、ドラグーンを手動で操作する。オート操作ではない遠隔ユニットに手こずるエクだが、ゴッドガンダムのバックパックを展開し、炎を放出する。

 

「捉えられないのなら、動きを止めればいいだけの話さ。」

 

「何ッ……!?」

 

 エクラルドゼータはそのまま動きの止まったドラグーンに対しバスターライフルの砲身を構える。

 

「くそ!間に合え!!」

 

 フウトはそこにもう一つの遠隔ユニットであるドラグーンシールドにビームシールドを展開させを向かわせる。だがその瞬間、エクはニヤリとして砲身の向きを地上へと変える。

 

「…………!!!?」

 

「残念。目標ははじめからきみさ。」

 

 独特なチャージ音が止まるとそのままフルパワーのバスターライフルの強力なビームを放つ。そのビームの塊は上空からシン・カイザーを襲う。ドラグーンシールドは間に合う事なく、もろにその攻撃が目の前へ迫る。

 

「………………!!間に合えッ………………!!」

 

 瞬間、シン・カイザーのツインアイは鋭く光り、目にも止まらぬ早業で腰の太刀の柄に手を当て、神速の如く抜刀する。 

 

「──居合……夢幻・神威…………!!」

 

「なんだと……………………!!?」

 

 黄色の大きなビーム粒子の塊を青紫の刀身が真っ二つにした。カイザーの背後にある草原は焼き焦げ、その光景を見たエクは目の前の奇天烈な出来事に笑いをこぼす。

 

「やはり、君は面白い。」

 

「以前、君に問うたことをもう一度聞こう。」

 

「君は何のために闘う?国を背負って闘う覚悟はあるか?」

 

「単純だよ。俺は今も昔もガンプラバトルが好きで楽しいから闘う。勝てば嬉しいし負ければ悔しい。いつも最高の結果を求めて俺は闘う。」

 

「国を背負って闘う覚悟もある。それはお前と闘った後や仲間達のおかげで気付かされた。俺1人じゃこんなところにまで辿り着けやしなかった。だから闘う。みんなの期待とか願いとかそういうの分かって立ってるつもりだ。」

 

「……フッ、やはり君とはいいバトルが出来そうだよッ…………!!」

 

 エクはニヤリとしてそう言うと、エクラルドゼータの強化システムハイパーモードを発動させる。胸部のパーツは展開されフランスの国旗が紋章として浮かび、バックパックの後ろには日輪も映し出される。

 

「来るッ…………。」

 

「フランス代表 デューラー エク・レイアの華麗なるガンプラバトルをお見せしよう。」

 

 エクラルドゼータはツインアイを光らせると先ほどとは比べ物にならないスピードで移動し攻撃を始める。バスターライフルの出力を抑え連射モードに切り替えると素早い射撃でシン・カイザーの動きを止め、気づけば目の前にビームサーベルを構え華麗に舞う。

 

「くっ!!反応出来ねえ!!」

 

「まだまだ!どんどんいくよ!」

 

 ライフルとサーベルを用いた華麗な舞はじわじわとシン・カイザーを傷つける。ドラグーンシールドもその攻撃の防御には追いつかず、ガラ空きとなったシン・カイザーは攻撃をまともに受け止める事しかできない。攻撃力に特化したシン・カイザーだが本体の防御面の低さをついたエクの華麗な戦術である。

 

 しかし、いつまでもやられているわけにもいかない。再び、接近したエクラルドゼータに対し、シン・カイザーは最も素早く攻撃できる手刀を選択。シン・カイザーの鋭い爪ごと本体を捉えた。

 

 捉えたはずだった。

 

「……甘いッ!!分身!エクラルドシャドー!!」

 

「…………嘘だろッ!!?」

 

 なんと、エクラルドゼータはゴッドガンダムの「ゴッドシャドー」を更に改良した技を繰り出しその分身ごと、シン・カイザーに対しにビームサーベルで連続攻撃を行う。装甲はどんどん傷つく。

 

「まだまだ、行くよ!」

 

 エクラルドゼータは分身状態を維持したまま、更にシン・カイザーへと四方から襲いかかる。これ以上、ダメージをこれ以上蓄積すると危ない。それでもエクラルドゼータは容赦なく攻撃をやめない。

 

「ちょっと、単調過ぎたんじゃねえか?」

 

「……夢幻螺旋ッ…………!!」

 

 シン・カイザーは四方から来る敵に対し広範囲の回転切りを繰り出し、まとめて分身ごと切り裂いた。夢幻の太刀筋はエクラルドゼータの影を一掃する。

 

「……くっ、やるね。そこまでカタナを使いこなすとは正直思っていなかったよ。」

 

「昔、先生から教わったのさ。精密かつ迅速な動きが出来るコイツ(シン・カイザー)だからこそ出来る事でもある。」

 

「なるほど、なら次は単純な力比べとさせてもらおうか。」

 

 エクラルドゼータは先ほどの斬撃から立ち上がると、日輪を更に大きくし、右手にそのパワーを一点集中させる。

 

「おいおい、まさか……。」

 

「その、まさかだよ。」

 

「俺のこの手が真っ赤に燃えるゥゥッッ!!」

 

「貴様を倒せと母国が叫ぶゥゥッッ!!」

 

「……爆熱ッッッ!!エクラ・フィンガァァァァッッッーーーー!!」

 

 お決まりの叫びを終えると凄まじい推進力で、炎を纏った拳が迫ってくる。直線的な攻撃だが、避けようにもこの距離では避けれない。完全に向こうのバイタルエリアだ。

 

「ちっくしょう!やるしかねえな!おい!!」

 

 シン・カイザーはその拳を咄嗟に出た蹴りで迎え撃つ。脚部にはビームブレイドが展開され、脚部後部の3つのバーニアをインパクトの瞬間にパワーオンにし最大限の蹴りで敵の大技と真っ向からぶつかり強い衝撃を生む。

 

「そんな、蹴り如きで!!止められると思うなッ!!!」

 

「Progress Systemの拳以上か……!!」

 

 模擬戦で行った時のフェーテの拳よりも重く厚く強かった。それでも、シン・カイザーは渾身の蹴りでなんとか弾き返そうとする。しかし、出力があまりにも違いすぎた。灼熱の手は蹴りごとシン・カイザーを吹っ飛ばした。

 

「うわぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!」

 

「これが私の拳。そして、物語はフィナーレを迎えるッ!!」

 

 エクラルドゼータはそのまま上空へと飛び上がり、日輪を更に大きくし全パワーを頭部のキャノン砲に集中させる。

 

「……いててて、ってこれ前にもあったよな。デジャヴか。」

 

「さあ、終わりだ。イヌハラ・フウト!貴様はここで母国の糧となるッッッ!!」

 

「爆熱ッッッッッッ!!!エクラルドッッッ!!!キャノォォォォォンッッッッッッ!!!!!」

 

 日輪の光から生み出された渾身の一発が上空からシン・カイザー目掛けて飛んでくる。先ほどのバスターライフルなどに比にもならない。

 

「さあ、どうする!?イヌハラ・フウト!!」

 

「へへっ……。」

 

「何がおかしい。」

 

「おかしいさ。こんなにも同じシチュエーションを用意してくれたらさ。」

 

「いくぜ……!!神モード∞発動ッッッ!!!」

 

 ──God Advent Infinity──

 

 隕石級の炎が迫り来る中、シン・カイザーは胸の「∞」の刻印を浮かばせながら急速に黄金色の輝きと桜色の粒子を身に纏い自機強化システムを発動させる。

 

 フェーテの時同様にドラグーンシールド2枚を重ね、鋭い手でその爆熱の炎を真正面から受け止める。

 

「この強大な炎を相手に逃げなかった事は褒めてやろう!しかし、止める事は不可能!絶対にだ!」

 

「ンなモンやってみなきゃ、わかんねぇだろ!!!」

 

 シン・カイザーは神モード∞の出力をさらに上げ受け止める。しかし、その勢いを止める事はできず、ドラグーンシールドはついに焼却され、素手で受け止めることになった。

 

「むしろこここまでよくやった。貴様のことは忘れん!母国の土産話にしてやろう!!」

 

 エクラルドゼータは更に頭部にパワーを与え、トドメを刺すかのように灼熱の火力を上げた。それでもシン・カイザーは諦めない。足場をずるずると引きずられ、もう少しで湖へと近づき足場を失う。

 

「……シン・カイザー…………もう少し耐えてくれ。あの時の、あの時の力を………!!」

 

 フウトも必死にアームレイカーを押し込む。全身から湧き上がる動機を抑えながら何かを待つように必死に耐える。しかしもう黄金のオーラフィールドも圧倒的な出力を前にパワーを緩和できず、手のひらも既にボロボロだ。

 

「しぶとい!!そろそろ降伏してはどうか!日本の皇帝よ!!」

 

「負けれねえんだよ!俺もお前と一緒でな!!」

 

「そうか、それならもう一気に楽になるがいい!!」

 

 エクラルドゼータはついに限界を超えた出力で攻撃を放つ。

 

「…………フウトさん…………!!!」

 

「──負けるなッッ………………!!!」

 

 観客席にいたトロが、立ち上がり今まで聞いたことのない怒声に近い大声をあげ会場に響き渡った。

 

「…………………………サンキュー…………トロ………………!!」

 

 瞬間、シン・カイザーの目に命が灯る。胸部の刻印は光を放ち、目の前の大きな光をどんどん吸収していく。そして徐々にその光を押し返す。

 

「……なんだと………………?」

 

「…………これは、あの時の…………。」

 

 フェーテとシン・カイザーの模擬戦の最後に起こった現象。相手の攻撃を吸収する能力。

 

「なんだ、一体なにが起こっているというのだ!」

 

「へへっ、言ったろ。負けられないってよ。」

 

「俺も相棒(コイツ)もまだまだその先を見たいからよ。」

 

「だから、ここでお前に勝つ。」

 

 シン・カイザーはついにエクラルドゼータの放ったの強大な光を全て呑み込むと天に向かって高く咆哮する。ボロボロになった手のひらや装甲も徐々に再生されていき、黄金の光を体内から爆発的に放出する。

 

「なんだ。これは。」

 

「エク、こいつで終わりだ。」

 

「……インフィニティブレイジング・オーロラッッッ!!!」

 

 シン・カイザーはその強大な黄金の光を対象物へと灼熱の炎と共に放つ。その輝きはまさに無限の光。燃え盛る炎と黄金のオーロラの光。壮大で幻想的な光がエクラルドゼータを襲う。

 

「くっ!!!私も負けれないのだ。負けれないのだ……!!」

 

 しかし、エクラルドゼータにはこの黄金の炎を受け止める術はなく、どんどんと装甲が破壊され、ついに再起不能となる。この幻想的で強い光をみたエクは最後に少し微笑んだ。

 

「…………とても美しい。」

 

──Batlle End──

 

Winner.Futo

 

『うおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!!!』

 

 あまりにもその逆転劇とシン・カイザーの放った光が現実離れし過ぎており一瞬、観客も、MCも静寂となっていたが、間が経つと大きな歓声が上がる。

 

『なんということでしょう!!!!!絶体絶命かと思われたイヌハラ選手でしたが、とんでもない必殺技を繰り出し勝負をひっくり返しましたァァァァ!!!』

 

『おいおい、今のなんだよ。敵の攻撃を吸収しなかったか!?』

 

『あんなの反則だろ!!まじやばいって!イヌハラ!!』

 

 観客が大きくざわめく。

 

「神モード∞、やはりオリジナルに近いシステムなだけあってまだまだ隠された能力がありそうですね。」

 

「ああ、扉をひとつ開けたみたいだね。」

 

「ユウキくん、はじめから分かってたんじゃないのかい。それに君なら意外とすんなりソラヤさんの残した問題を解けたりして。」

 

「まあ、はじめてシステムを設定したときに、おそらくオリジナルのシステムがいくつかロックされてましたけど、全部ふうちゃんじゃなきゃ解けないようになってましたからね。」

 

「……なるほどね。ソラヤさんらしいや。」

 

「ふうちゃん、僕たちはいつも君の成長を見守っているよ。」

 

「──君が扉のその先を開けるその瞬間を。」

 

 観客席から、アララギとユウキがフウトとシン・カイザーを見ながらそう話した。

 

 ガンプラバトルが終わると、2人は再びお互いを目の前にする。2人とも死力を尽くしやり切った表情だ。そしてエクがフウトの方に近づく。

 

「……君のガンプラバトル、とくと見せてもらったよ。」

 

「はじめは小馬鹿にしたような事を言ったことを詫びる。」

 

「君は、君達は強い。」

 

 フウトは頭を下げるエクをジッと見つめると、片手を差し出す。

 

「なに謝ってんだよ。ありがとう。最高の試合だったぜ。」

 

「…………!!」

 

「お前の分も勝ち進む。俺に出来るのはそんだけだ。」

 

「……ありがとう。君のこれからの闘いを応援している。」

 

「bonne chance!」(幸運を祈る)

 

 2人が握手を交わすと更に歓声があがった。世界大会二回戦を勝ち進んだのは日本代表 イヌハラ・フウト。

 

「さっきの光、綺麗だったなあ。」

 

「桃子ちゃん、本当に凄い試合でしたね。私もとても胸が熱くなりました。」

 

「杏奈もビビッときたよーーー!!」

 

 客席のミリオンスターズのアイドル達も感嘆。まさか、一見冴えない一般男性がこんなバトルをするとは思いもしなかっただろう。

 

 多くの歓声と栄光の中、彼は筐体の上にある愛機を手に取ろうとする。しかし手に取った瞬間、パーツにヒビが入り細かな傷がたくさんついていた。やはり、最後の攻撃を吸収するシステムの副作用なのだろう。これまでにないダメージの受け方で兎にも角にも状態は悪化させたくない。丁寧にケースへと入れ、その場を立ち去った。

 

「やっぱり、耐えきれなかったか……。ありがとう、シン・カイザー。よくやってくれた。」

 

***

 

「あれがアララギの一番弟子か。」

 

「イヌハラ・フウト、元プロデューラーで復活を遂げた人物。」

 

「…………オリジナルに近い神モードを操るデューラーか……。あれは使えるかもな。」

 

 黒ずくめの男達は客席から数人でフウトの姿を見ていた。

 

「まあどちらにせよ、このくだらない祭は我々にとっていい機会だ。」

 

「力だ。この世に力を証明する。」

 

「なあ?アララギ。」

 

 世界大会が盛り上がる中、暗雲が少しずつ迫っていた。

 

(続く)

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