星の潮流   作:fw187

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時空突撃班

 異世界の第五惑星《ダライアス》で激闘を終えると、メローラ姫から連絡が届いた。

 改変された黄金律《パターン》は、以下の通り。

 

『プロコとティアットの子孫、ジュニアとヤングは困難な任務を完了し、惑星オルガへ帰還した。

 だが、彼等を待ち受けていたのは、次なる戦いだった。

 敵の同盟軍が、ダライアスの人々に、宣戦を布告したのだ』

 

 木星《アザトート》、土星《ヨグ=ソトート》、天王星《ハストゥール》、海王星《クトゥルー》。

 巨大煙霧惑星《ガス・ジャイアント》、巨大氷惑星《アイス・ジャイアント》の名称も気掛かりだが。

 死を司る者《シーマ》とも称される敵、同盟軍《アライアンス》の戦力規模は不明。

 惑星グラディウス侵攻《バクテリアン》軍の首魁、父なる神《ゴーファー》の眷属やもしれぬ。

 

 女神の創造した理想郷《アルカディア》、多数の複製世界《レプリカ》が崩壊の危機に直面している。

 支援には無限の耐性を備え、多次元世界を縦横無尽に駆け巡る時空間移動能力者が必要不可欠。

 アンドロメダ星雲の英雄、矢野徹《ヤノ・テツ》を援護《フォロー》せねばならぬ。

 クラッシャー達は重要任務を請け負い惑星エクサー、スーラ神殿の時空間通路から各地に飛んだ。

 

 正式名称ラブリー・エンゼル、通称ダーティペア達は最重要任務を担当。

 第1目標は合衆国01《ゼロ・ワン》、ハーモニー地下街第5層(報告書『悪夢の戦場』参照)。

 異星人の秘密工場に突入、コンピューター意識体クレオパトラを救出せよ。

 

 第2目標は異星人の操る巨大隕石《メテオ》、戦闘用改造生命体を邀撃する月面基地。

 ムギに巨大射出機《レール・ガン》を任せ、隕石を粉砕せよ(報告書『多元宇宙バトル・フィールド』参照)。

 第3目標は異銀河の平行宇宙、MC転移機の暗躍に手を焼く星間帝国アンドロメダ・ゼロ・ゼロ。

 テッド・アマノ将軍を護り、人身売買業者の組織を暴け(報告書『皇帝陛下の戦場』参照)。

 

 伝説の事件相談員《トラブル・コンサルタント》、二人組の単独行動には無数の異議が殺到。

 銀河連合ド・テオギュール主席は親友、クラッシャー評議会議長に命運を託している。

 M87星雲の指揮中枢ホイール星系、難攻不落の要塞から地球人達が到着。

 私は精神交換≪サイコ・トレード≫、20万年後の異世界に緊急派遣を要請された。

 

 4次元時空連続体消去装置≪ディスラプター≫の確保は、総てに優先する。

 敵の手に渡れば、平行宇宙≪パラレル・ワールド≫全体が崩壊の危機に曝されるやもしれぬ。

 第一次人類の開発した通称ゼロ時間デフォルメーター、時間転送機は過去界に移動可能。

 最大20万年前に到達し得るが、未来への移動は事実上不可能である。

 

 スコーチ星系では時間研究者の助手が実験を試み、失敗。

 数万年後を経ても塵と化さぬ金属部品を残し、跡形も無く消え失せたが。

 精神交換可能な異種族『偉大なるイース』に倣えば、未来に移動可能。

 私は第二段階の時間移動、次元の壁と時の渦を超える精神交換に挑んだ。

 

 

 瞳を開く前に、思考が流れ込んで来た。

 速聴と精神交換装置の原理に基き、瞬速《マイクロ・セコンド》の情報提供が実現。

 一瞬にして銀河系人類の歴史、栄枯盛衰が解説され走馬灯の様に流れ去る。

 今は、星暦20万2125年。

 星暦12万9411年、マゼラン星雲から押し寄せた侵略軍は秘密兵器で殲滅された。

 

 中央銀河帝国の第2皇太子、ザース・アーンは極秘任務を志願。

 人類統一の為、過去界を探索中であった。

 睡眠学習の原理に基く思考スプール、催眠暗示装置が唸り瞬時に銀河共通語≪インターコスモ≫を修得。

 白髪の老人ヴェル・クェン、共同研究者の温顔が脳裏に映る。

 

 鏡の中に黒い髪、黒い瞳、鷲鼻の青年を見た私は絶句。

 古代進が何故、星暦20万年の未来に居るのだ?

「あの船は、何だ?

 此処への接近は、禁止されている筈なのに!!」

 

 切迫した声が響き、現実に意識を戻す。

 大気を裂き、一直線に黒い艦が降下。

 飛翔装置を操り、十数名が接近。

 立体映像装置≪テレ・ステレオ≫の操作、連絡を試みる高齢の科学者を撃つ。

 白髪の老師を緑色の閃光が包み、消失《ホワイト・アウト》。

 

「ザース・アーン殿下、御同行を願います!」

 私に擬した銃口から、緑色の陽炎が漂う。

 此の状況で抵抗は無益、自殺行為に他ならぬ。

 第1に成すべき事は、閉じ込められる場所の状況を掴む事であろう。

 

「私に、無粋な物は不要だ。

 何処に行けば、良いのだね?」

 予想通り、黒い艦に誘導。

 歩き出した途端、絶叫が響いた。

 

「馬鹿な!?

 帝国の艦だ!」

 3隻の艦首に彗星の紋章《マーク》が煌き、黒い艦が爆発。

 強烈な衝撃に薙ぎ倒され、私を含む全員が意識を喪った。

 

 

 意識が戻ると、赤色人≪レッド・マン≫が居た。

 此処は剣の王国、異次元の火星≪バルスーム≫か?

「自分は帝国宇宙軍シリウス管区パトロール隊所属、ハル・バーレル大佐であります!

 予定外の停止により潜宙艦《ファンタム》を探知、撃破致しました。

 帝都トランター到着まで、艦長室を御使用いただければ光栄です」

 

 最後の一言で、一気に眼が覚めた。

「トランター直行は許さん、地球に戻れ!」

 精神交換装置は地球、ヒマラヤ山脈の研究所以外に存在しない。

 ヴェル・クェン殺害を過去界の第二皇太子《セカンド・マスター》、ザース・アーンに知らせねばならぬ。

 

「殿下、申し訳ありません。

 私は皇帝陛下から直接、殿下を帝都にお連れせよと厳命されております」

 皇帝の至上命令となれば、自己裁量で艦長が動く事は望み得ぬ。

 一時帰還の許可を得る為、皇帝と直接対面の他に道は無い。

 同意を告げると艦長は艦橋に去り、瞳を閉じると一瞬で意識が失せた。

 

 目を覚ました私は艦橋に乗り込み、宇宙航行技術と操縦方法を観察。

 遷移《ワープ》と異なる原理に基き、超光速推進機関の稼働中も星が見える。

 残念な事に総ての星座が異なり、現在位置は特定不能。

 中央銀河帝国の帝都トランター、銀河王宮に到着する事となった。

 

 

 ハル・バーレル大佐を伴い離艦の後、足を乗せた銀色の道が勝手に疾走を開始。

 総統府を遙かに凌駕する華麗、壮大な虹色水晶《レインボー・クリスタル》の建造物が現れた。

 自動走路は勝手に疾走を続け、王宮内部の一角で停止。

 扉が開くと獅子《ライオン》を思わせる大男が唸り、鋭い眼光で私を射抜く。

 

「ズォーダー大帝!

 中央銀河帝国の皇帝は、貴方だったのか!?」

 驚愕の余り、思わず叫んでしまった。

 3人とも呆気に取られた表情を浮かべ、中央の巨漢が代表して口を開く。

 

「ズォーダー、だと?

 艦長、未報告の情報があれば話せ!」

「殿下は潜宙艦《ファンタム》爆発の際、頭部を強打されました。

 巡洋艦の医療室でも若干、記憶の混乱が確認されています」

 中央銀河帝国の最高権力者《ファイナル・マスター》、アーン・アッバス皇帝が再び唸った。

 

「厄介な奴だな、後で精密検査を受けろ。

 お前の研究は当面、中止だ」

「お言葉ですが銀河系人類の統一、戦乱回避と被害局限の鍵となる情報を掴みかけています。

 数日のみ地球に帰還の許可を戴けます様、御再考を願えませんか?」

 

「お前の口車は聞き飽きた、もう騙されんぞ!

 地球への帰還は許さん、絶対に禁止だ!!」

 済まぬ、ザース・アーン。

 当分の間、精神交換は不可能と思われる。

 

「もう良い、部屋に戻れ!

 月の宴が始まるまでの間に、準備を整えておけ!!」

 漸く皇帝から放免され、執務室を退出。

 同時に退室した青年が、私に笑いかけた。

 

 

「今回の危機≪クライシス≫を乗り越えれば、研究再開の許可は必ず出る。

 元気を出せよ、ザース」

 古代守、お前もか。

 中央銀河帝国の第1皇太子≪ファースト・マスター≫、ジャル・アーンは第二皇太子の兄であった。

 

「私の部屋は、何処だったかな。

 暫く留守にしていたので、忘れてしまったよ」

 精神交換の件を率直に話して良いか判断に迷い、冗談めかして探りを入れてみる。

 廊下で話せる内容ではない、盗聴されている可能性も無視は出来ぬ。

 

「おいおい、しっかりしてくれよ!

 それとも何か、相談があるから部屋へ来いと言いたいのか?

 今日は無理だが、明日の夜なら時間は取れる。

 そうだな、久しぶりに酒でも飲むか?」

 

 流石に勘が鋭い、頭の回転も速い。

 私の顔色を読み、兄弟のみで密談の意思を敏感に察してしまった。

 ザース・アーンの私室は長期不在であった故、盗聴装置を仕掛けられた可能性は否定できぬ。

 古代守は優秀な宇宙戦士であったが、ジャル・アーンも信頼に値する漢と知れた。

 

 

「わかった。

 部屋への道順は、誰に聞けば良い?」

 下手に逡巡するより、率直に聞いた方が良いだろう。

 どうせ明日の夜、精神交換の件は打ち明けねばならぬ。

 

 先刻の執務室でも良かったのだが、同室者に見覚えが有った。

 白色彗星帝国艦隊司令長官、ゲーニッツ。

 私を騙し幽閉した獅子身中の虫、サーベラーに加担した男。

 容姿が酷似するから裏切者とは限らぬが、やはり気になる。

 

「私の従者に案内させる、お前が気に病む必要は無い。

 リアンナも、マーンも、事情は承知している。

 月の宴まで、ゆっくり休めよ」

 古代守に酷似した第1皇太子≪ファースト・マスター≫、ジャル・アーンは颯爽と他の部屋に歩み去った。

 

 リアンナ?

 マーン?

 何か、勘違いしている気もするが。

 執務室前の廊下で、長話をする訳にも行かぬ。

 

「有難う」

 余計な事は言わず、一言に止めた。

 怪訝な面持ちで振り返ったが、時間が無い、と言ったのは事実であるらしい。

 取巻きの秘書官達から急かされ、回廊の彼方に姿が消えた。




エドモンド・ハミルトン著作『スター・キング』参照(^^;)
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