星の潮流   作:fw187

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三人の裏切り者

 私は精神感応増幅装置を操り、地球警備隊の最高責任者に事情を説明。

 暗黒星雲同盟の軍人達が意識を喪っている間に、警官達が捕縛の手筈を整えた。

 月の裏で麻痺ビーム放射装置が唸り、潜宙艦メリック号の乗組員は意識を喪失。

 続いて地球の研究所一帯に向け、不可視《ステルス》の波紋を放つ。

 不法侵入者達と共に私も麻痺砲を浴び、目覚めた後に精神感応増幅装置を操作。

 黙秘を貫く捕虜達を尋問の際、無意識に閃く思考の盗聴《タッピング》に徹する。

 

 ミル酷似の監視者が唯一、帝国転覆の陰謀に加担。

 二重スパイ《ダブル・クロス》を務め、全貌を察知していた。

 大帝襲撃犯は帝国最高顧問オース・ポドマー、サーベラー酷似の裏切者。

 暗黒星雲同盟軍が侵攻の直前、ザース・アーン襲撃も計画している。

 獅子身中の虫は新開発の秘薬を用い、大帝の昏睡状態を維持。

 ショール・カン暗殺後、女帝として君臨する事を夢見ていた。

 

 大帝の寵愛、信頼を裏切った野心家は暗黒星雲同盟の軍人達を物色。

 容易に操縦可能と見て、線の細い男に白羽の矢を立てたが。

 侍従長の餌に喰い付いた、と装い最高指導者に即刻注進。

 帝国中枢部の裏切者を欺き、ショール・カン暗殺計画の茶番を演じた。

 浅墓な野心家は陥穽に気付かず、投与者の意思を奪う新薬も確保。

 アーン・アッバス皇帝を薬漬け、奴隷として操る準備を整えている。

 

 ディスラプター詳細情報の獲得後、ショール・カン直属の諜報機関に報告。

 3人の裏切者には情報を提供せず、帝国崩壊後に暗殺の手筈も整っていた。

 リアンナ姫と私を護送した拉致実行犯、サーン・エルドレット艦長は一番の小物。

 中央銀河帝国軍の筆頭《トップ》、チャン・コルビュロ艦隊司令長官も脇役に過ぎぬ。

 ザース・アーン襲撃の隙も窺う毒使い、オース・ポドマー帝国最高顧問が最大の癌と判明。

 電撃作戦に協力してくれた関係者全員に直接、感謝の意を示す。

 

 

「大帝襲撃の濡れ衣を着せられ、拉致された私を諸君は助けてくれた。

 帝国存亡の危機を脱した暁には、必ず、諸君に報いてみせる」

「殿下、お気遣いは無用であります!

 我等は皆、皇帝家に忠誠を誓っているのですから!!」

 警備隊を代表して現場指揮官、斎藤一に酷似の男が声を張る。

 偵察機の操縦員も頷き、全員が敬礼。

 

「捕虜達は陰謀の全貌を知らなかったが、3人の裏切者は既に判明している。

 私を襲撃犯と証言した帝国最高顧問、オース・ポドマー。

 コルビョロ長官と高速巡航艦の艦長だが、他の破壊工作員が潜伏中の可能性も否定できぬ。

 内通者3名を捕える為、緘口令を敷く。

 特S級非常事態だ、私が総ての責任を取る」

 ザース・アーン発見の急報は数分後、帝国艦隊司令長官に到達。

 警備隊の指揮官は第二皇太子を厳重に監視、無線連絡も厳禁の指示を受けた。

 

 旗艦ヤマト座乗の裏切者は情報の秘匿を命じ、地球に急行。

 精神感応増幅装置を操り、着陸前に思考内容を探る。

 暗黒星雲同盟と組んだ裏切者は僅か、3名。

 サーベラー酷似の裏切者を捕え、昏睡状態の大帝を蘇生の術を尋問せねばならぬ。

 

 地球警備隊は偶然、潜宙艦《ファンタム》を発見の芝居を継続。

 ヤマト艦橋に第二皇太子は連行され、直接対決の舞台が整った。

 中央銀河帝国軍の最高指揮官、宇宙艦隊司令長官は私を嘲笑。

 大帝を重態に陥れた恩知らず、腹黒い策謀家と罵り首都連行の必要は皆無と熱弁を揮う。

 

 

「ショール・カンが貴様を裏切らぬ、と信じているのか?

 使い古された諺だが、走狗は煮られる運命だぞ」

 裏切者は常に、他者が自分を裏切る恐怖に脅えている。

 予想通り、血の気が引いた。

「この裏切者め、なんと図々しい奴だ!

 事もあろうに、私を陥れる気か!!」

 懸命に逆襲を試みるが、顔色は急変。

 一気に蒼褪め、語尾も震えている。

 

「お前は帝国軍が敗れた後、用済みとなる。

 暗殺者から貴様を護る物は、何も無い」

 淡々と呟き、驚愕に瞳を見開いた儘の相手を観察。

 想定外の指摘に真実を感じ取り、咄嗟に言葉が出ない模様だ。

「内通者である私は暗黒星雲同盟に関する様々な情報、知識を蔵している筈。

 首都に連行して優秀な尋問担当官、心理学者達に引き渡すのが理の当然だろう。

 帝国防衛の為に極限まで情報を吐かせ、処刑するのは其の後だ。

 二重内通者《ダブル・クロス》となり、自分の生命を護れ」

 

 裏切者の内部で、何かが切れた。

 喚き声を挙げ、脱兎の如く艦橋から脱走。

 沖田酷似の艦長も意表を突かれ、咄嗟に言葉が出ない。

 精神感応増幅装置で直接、事情を説明すべきであったか?

「殿下、納得しました。

 状況証拠は充分です、長官を捕えろ!」

 艦長の指示で、凍り付いた艦橋の空気が一気に解けた。

 全員が眼の色を変え、裏切者を追う。

 

「長官は艦隊司令部居住区、カイザー転送機の操作室に移動!

 内部から施錠《ロック》された為、突入できません!!」

 強制操作を試みた後、相原通信長に酷似の青年士官が叫んだ直後。

 私の腕に嵌めた通信機から、別の声が響く。

「カイザー転送機の準備送信を検知、妨害フィールド展開中!

 退路を断ちましたが、ヤマト防御壁が麻痺砲を遮断しています!!」

 

「出来るだけ早く転送室の扉を壊し、麻痺銃《パラライザー》を浴びせる!

 麻痺砲の照射は停止、転送機の妨害を優先せよ!!」

 艦長の指示で武器庫から素粒子爆弾が届き、強化クリスタル製の扉に固定。

 陸戦隊用の重火器は使用を控え、モルケックス製の楯を腕に装着する。

 分子破壊銃も熱線銃も無効な障害物の消失後、転送室に突入。

 裏切り者も麻痺銃《パラライザー》に備え、不壊物質の壁《バリケード》に隠れている。

 電磁刀《プラズマ・ブレイド》に匹敵する最強の個人用武器、波動銃が一閃。

 反逆者《トレイター》は何故か、徹底抗戦の構えを崩さぬ。

 

 第二皇太子を護る為、盾となる覚悟で身を投げ出す地球人ヴァーリン。

 私は咄嗟に身を沈め、同時に彼の足を払った。

 タキオン粒子の噴射流が壁を貫き、ヤマト艦内を破壊。

 熱波弾が投擲され、狙撃者の注意を逸らす。

 裏切り者は固定した熱線銃、レイガン、短針銃《ニードル・ガン》を遠隔制御で連射。

 モルケックス製の楯を掲げ、四方八方から乗組員達が距離を詰める。

 白兵戦用の戦斧《トマホーク》が閃き、壁《バリケード》を排除。

 内通者は最後の砦を喪い、波動銃を側頭部に向けた。

 

 指先が撃鉄に触れる直前、麻痺銃《パラライザー》を照射。

 帝国艦隊の総帥、司令長官の掌から銀色の銃が離れた。

 佐渡酒造の酷似の軍医、心理学者の看護婦が裏切者を診察。

 催眠暗示命令《ヒュプノ・ブロック》、後催眠発動の《キイ・ワード》を慎重に探る。

「諸君、協力に感謝する。

 彼は暗黒星雲同盟の機密情報を得る為、内通者を演じていた事にしておこう。

 大帝の襲撃は事前に知らされておらず、独断で第二皇太子を地球に匿っていた。

 漸く裏切り者の尻尾を掴んだ故、私を迎えに来たと皇帝に報告すれば良い」

 

「殿下、感謝いたします!」

 ヴァル・マーラン艦長以下、全員が一斉に頭を下げる。

「礼を言うのは、私の方だ。

 大帝暗殺の真犯人を捕えるまで、情報統制は継続する」

 ヤマト艦橋の要員は、常に、信頼の置ける勇者。

 大宇宙不変の黄金律《ルール》は、星歴21万年超の異世界でも真理であった。

 

「ヴァーリン通信士、殿下の指示に従え。

 艦隊副司令官に連絡の際、矛盾の無い様に気を配れ」

「了解しました!

 殿下、生命をお救いいただき、ありがとうございます!!」

「君が前に出ねば、私の生命は無かっただろう。

 感謝するぞ、ヴァーリン」

 勇敢な地球人《テラナー》の肩に左手を置き、利き腕で握手。

 深々と頭を下げる青年士官に続き、全員が頷いた。

 宇宙偵察機008操縦士ダル・カールル、地球警備隊の責任者と指揮官にも連絡。

 艦隊司令部の情報参謀が極秘の通信手段を駆使、首都の情報部員に動画を送る。

 

 盗聴の危険を伴うが、ヤマト到着まで皇帝が襲われぬ保証は皆無。

 大帝襲撃者は銀河王宮に潜んでいる、帝国情報部を説得する暇は無い。

 帝国艦隊の次席指揮官《セカンド・マスター》、ロン・ギロン中将も動画を見て納得。

 白色彗星帝国軍の第七艦隊を率いる闘将、ハルゼー酷似の提督に帝国艦隊の指揮権を託す。

 私を拉致した潜宙艦《ファンタム》マーカブ、サーン・エルドレット艦長は首都で待機中。

 情報部の腕利き達が裏切者を捕え、自白剤を問答無用で染み込ませた。

 

 オプフェトミン10cc注射後、尋問者達は真相究明の模様を録画。

 ジャル・アーン直属の衛兵達に特S級非常事態と告げ、動画の確認を申請する。

 ヤマト艦橋に第一皇太子の映像が現れ、ザース・アーン援護の勇者達を賞賛。

 帝国最高顧問オース・ポドマー、大帝を昏睡状態に陥れた真犯人は失踪中。

 カイザー転送機を用い銀河王宮、帝都トランター脱出の可能性が高い。

 大帝襲撃と第二皇太子の拉致、陰謀劇の真相が暴露され銀河系全域に浸透。

 ザース・アーン無罪確定、名誉回復、帝都への帰還も恒星王国群に通告された。

 

 フォマロート王国、ポラリス王国、ヘラクレス男爵領の帝都駐在大使は銀河王宮に殺到。

 暗黒星雲同盟打倒の為、ディスラプター実験の要望に第一皇太子は難色を示すが。

 熟慮の末に受け容れ、私に協力を要請。

 深紫色《ディープ・パープル》の自動通路に乗り、武器保管庫に向かう。

 後で聞いたが、武器保管庫に繋がる通路は時間地下庫を経由。

 教皇の間、もとい、星王《スター・キング》の間を通らねばならぬ。

 真珠色の壁が囲む領域《テリトリー》の前で、自動通路は停止。

 3次元立体映像が投影され、私を見た。

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