私の真正面に見覚えの有る男が現れ、ニヤリと笑った。
予想はしていたが、流石に此処まで来ると溜息が漏れる。
「我が子孫よ、奢ってはならぬ!
帝国最強の武器は使い方を誤れば、星界の壊滅も懸念される禁断の《パワー》!!
銀河文明の存続が脅かされし刻のみ、我が創造せし究極兵器を用え!
マゼラン星雲の精神寄生体、デルゴン貴族の如き侵略者《インベーダー》を撃滅せよ!!」
伝説の発明王ブレン・バー、中央銀河帝国屈指の創造家《クリエイター》が獅子吼。
ディスラプター発明者の貌は期待に背かず、真田志郎に酷似していた。
古代守に酷似する皇帝は訝し気に振り返り、深い溜息を極度の緊張と誤解。
私の肩を軽く叩いた瞬間、裏切者が現れ拳銃を撃つ。
第一皇太子は咄嗟に私を押し退け、弾が腕に命中。
私も腰の麻痺銃《パラライザー》を抜き、裏切者を撃ったが後の祭り。
命中の衝撃で脆い銃弾は砕け散り、内部に仕込んだ麻酔薬が標的の呼吸器を犯す。
大帝に続き、第一皇太子も昏睡状態に陥った。
ジャル・アーン負傷、行動不能の事実は厳重に秘匿。
自白剤を裏切者に使用の後、解毒剤を確保し皇帝と第一皇太子に投与する。
尋問の結果、意識回復には数日間を要し絶対安静も保たねばならぬ事が判明。
宮廷直属の医師団達にも緘口令を敷いたが、情報は洩れた。
多数の潜宙艦《ファントム》が帝国領内に現れ、無差別攻撃を開始。
各恒星王国群の領域《テリトリー》は避け、中立維持を勧告する。
暗黒星雲同盟軍は通常の艦隊決戦を選ばず、広く薄く艦艇を展開。
非武装の輸送船も襲撃、主要航路で神出鬼没の機動戦を挑む。
敵艦は闇《ダーク》航行、瞬間的な解除《リセット》を繰り返し護衛艦を翻弄。
宇宙偵察機008同様、防御力削減を代償に優れた隠密性能を備えていた。
非武装の輸送船を護る為、帝国側の艦艇は無照準で邀撃出来ず被弾損傷。
戦闘艦が航行中、突如として自爆の目撃例も後を絶たぬ。
ショ-ル・カン配下の艦長達は意表を突き、狼群戦法を厳守。
不利な重火力戦は避け、隊列を組まず、一撃離脱戦法《ヒット・アンド・アウェイ》に徹する。
宇宙の狼《スペース・ウルフ》、ドメル将軍に劣らぬ勇者達は絶対的な戦力差を無視。
幽霊艦隊《ファントム・フリート》と化し、謎の新兵器で重防御の戦艦も次々に撃破された。
防御不能の新兵器で帝国艦隊壊滅、戦闘不能の欺瞞情報も乱れ飛び恒星王国群は動揺。
通常の艦隊戦と異なる展開に幕僚達は狼狽、秘密兵器を使う他に道は無い。
ディスラプター装着、ヤマト発進の直後に艦橋上部の通信スクリーン全域が急変。
画面上に異様な模様《パターン》が瞬き、眩暈を誘う。
伝説の催眠暗示能力者《ヒュプノ》、オーヴァヘッド創造の精神物理学的共鳴作用を励起。
ヤマト艦橋の要員は催眠暗示攻撃の虜と化し、非人間的な赤い光を瞳に帯びる。
妖波動が意識を暗転させ、心身喪失状態に陥れ盲目的な破壊衝動を解放。
全員が各種エネルギー制御機構を無茶苦茶に操作、自爆に導くかと見えた。
私は星暦20数万年の世界に到着後、精神衝撃の無効化手段を入手。
思考波スクリーン発生装置の艦内携帯は通常、破壊工作員を発見の為に厳禁であるが。
ダライアス星系の苦い経験に基き、皇太子の特権を駆使して精神遮蔽装置を常時展開。
ヤマト自爆の事態を阻む為、麻痺銃《パラライザー》で艦橋を薙ぎ払う事が出来た。
全員に活を入れ意識を回復の後、状況を説明。
第1艦橋に機械要員《ロボット》を配置、麻痺銃を照射の自動命令を組み込む。
自動計測装置を検査の後、新兵器の概要が判明。
催眠暗示攻撃の直前、レーザー通信波が計測されていた。
敵艦は闇《ダーク》航行の儘、至近距離から無照準で短距離限定の通信光線を照射。
超空間通信波《ハイパー・ウェーブ》と異なり、極度に集束の通信波は他の艦に届かぬ。
妖波動を見た艦橋要員が錯乱状態に陥り、自爆の為に観測データ伝達も阻まれ通信波攻撃を隠匿。
秘密兵器の短所が暴露される事無く、帝国艦隊の恐慌を煽り続ける事が可能であった。
艦隊司令部に情報を廻し、レーザー通信波の計測装置に射撃指揮システム直結を指示。
帝国最大の要塞、死の星《デス・スター》周辺宙域に戦闘艦を集結させる。
各地で敵味方の全力疾走が開始され、一点に集中。
レーザー通信波、妖波動の表示、麻痺銃の照射、送信源を射撃、敵艦撃破、の報告が相次いだ。
ヤマト艦首を要塞の敵側、敵艦が比較的多数と期待する宙域に固定。
ディスラプター主解放スイッチ、運命の引き金《トリガー》を握った。
円錐形の結晶体《クリスタル》12基が煌き、タキオン粒子と異なる碧い波動を投射。
一点に集束の後、共鳴現象を励起する。
闇色の渦動エネルギー、4次元時空連続体転換力場が急激に膨張。
宇宙空間そのものを破壊、消滅させる異様な黒太陽《ブラック・ホール》と化す。
空間破砕爆弾《スペース・スマッシャー》の暴走、無限の連鎖反応。
重力崩壊に類似の雪崩れ現象、万物を呑み込む虚無の領域が蠢いた。
波動砲の増幅と極大化、同調相乗効果《オーバー・ドライブ》と踏んでいたが。
甘かった、の一言に尽きる。
次元共鳴波の増幅、干渉で多元宇宙《パラレル・ワールド》の存在確率が限界値を突破。
下手をすれば銀河系崩壊に留まらず、宇宙が滅ぶ。
無限に拡がる異次元空間、虚無の海に繋がる闇黒の回廊を遮断。
可及的速やかに引き金《トリガー》から指を離したが、充分に手遅れであった。
四次元時空連続体の破壊された副作用、想定外の地滑り現象が戦場を席捲。
宇宙空間を疾走する濁流、驚異の暴風《サイクロン》が吹き荒れる。
闇黒物質《ダーク・マター》の破砕流、嵐《ハリケーン》は艦隊を直撃。
敵味方関係無く、一切の容赦を見せぬ超自然現象に蹂躙された。
宇宙嵐に巻き込まれた敵艦が衝突、無数の破片と化して虚空を漂流。
帝国最大の要塞、死の星《デス・スター》も急発進を強いられる。
死の星《デス・スター》は前代未聞の副作用、想定外の急加速を体験。
彗星帝国の都市要塞と同様、虚空を疾走する事となった。
味方の戦闘艦も濁流に薙ぎ払われ、制御不能の状態で要塞と激突。
凄絶な衝撃に耐えきれず、宇宙の塵と化す。
ヤマト周囲の護衛艦が数隻、激流の渦に巻き込まれて爆発。
帝国艦隊も相当の被害を蒙ったが、衝撃は銀河系全域に轟いた。
次元断層の領域《テリトリー》が消滅の際、数百光年の範囲で文字通り《星が揺れた》。
宇宙嵐の余波で恒星が震え、惑星を激震が襲い、衛星の軌道が乱れる。
戦闘宙域に近い青色巨星、真紅の太陽は濁流に押し流され公転軌道も変化。
太陽系《ソラー・システム》崩壊、惑星衝突の事態に陥った。
戦場からの距離と反比例で甚大な被害を蒙り、人類居住惑星は緊急避難を実施。
数多の客船に避難民を収容、生活費を帝国政府が負担している。
4次元時空連続体転換力場に呑まれ、消滅した敵艦の数は確認不能。
帝国領内の星間補給線《スター・レーン》、主要航路から敵艦が消えた。
副作用の濁流に巻き込まれ、闇《ダーク》航行装置が故障の潜宙艦《ファントム》は総て降伏。
常識を無視した秘密兵器で乗組員が恐慌状態《パニック》に陥り、艦長も抵抗を諦めている。
ヤマト以下の帝国艦隊は態勢を整え、暗黒星雲に接近。
ディスラプター破壊を試みる命知らず、無鉄砲な勇者は皆無であった。
他の星域に影響が及ばぬ様、暗黒星雲外縁部から徐々に消し去る計画と通告。
帝国艦隊の旗艦に《銀河系を壊した戦艦》、の汚名を着せる訳には行かぬ。
ディスラプター副作用、星雲内部の雪崩れ現象も警告。
様々な損害賠償の請求受諾、和平交渉の開始を超空間通信《ハイパー・ウェーブ》で勧める。
制限時間が尽きる直前クーデター勃発、盟主死亡、要求受諾の通報を受信。
ナスカ提督に酷似の巡航艦艦長、ダル・カールル指揮の数隻が確認に赴く。
暗黒星雲同盟の首都ティラン着陸後、先遣隊は通報が真実と報告。
ロン・ギロン司令長官に武装解除を任せ、極秘資料を直接回収の為と称し地球に向かう。
ヤマト離艦の直前、戦友達に感謝の辞を述べる事に決めた。
「諸君は裏切り者の汚名、濡れ衣を着た私を助けてくれた。
恩義に応え、真実を話そう。
ザース・アーン本人は銀河系統一の為、過去界の地球を調査している。
私は地球人《テラナー》ジョン・ゴードン、第2皇太子の身体に宿る別人格だ。
研究所の機械を使えば時を超え、星体《アストアル・ボディ》を送る事が出来る。
私と第二皇太子が精神交換の最中、潜宙艦《ファントム》が現れたのだよ。
諸君の援護に拠り、銀河大戦《ギャラクシアン・ウォーズ》は帝国の勝利で幕を閉じた。
別人の精神が宿った儘で制限時間を超えた場合、人格崩壊に至る。
諸君の援護で暗黒星雲同盟の脅威は潰え、大帝と第一皇太子も数日後に回復する筈だ。
私は第二皇太子との約束を守り、自分の役を立派に演じ終えたと思う。
本来の身体、過去界に帰る刻が来た。
今は拍手で、私の退場を祝ってくれ給え」
私は無事、星暦20万年の異世界から帰還。
精神交換は僅か、360秒と知らされた。
高性能宇宙船ラブリー・エンゼル、アトラス乗員は時空捻じれ現象に遭遇。
伝説の惑星グラディウス、超時空戦闘機《ミラクル・ファイター》の故郷に飛んだ。
バクテリアン軍の壊滅は確実だが、永遠の惑星も風前の灯。
宇宙戦闘機の嚆矢、大蛇≪ビッグ・バイパー≫は窮地に立つ我々を救ってくれた。
戦場の借りは、戦場で返さねばならぬ。
私は銀河連合主席、WWWA管理職ソラナカ部長と協議。
銀河系最後の秘法、重力崩壊現象の再現を提案する。