星をなぞる日   作:四樹

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※頂いたお題にお答えする回となります。下記注意点をご確認の上お進みください。

•ピーニャくん×メロコちゃんカップリング作品(ピニャメロ)
•「星をなぞる日」本編と世界線は同じですが、上記二人が結ばれる未来に突入しているイメージです。本編では結ばれません
•いじめ描写ほぼ無し
•妄想回路暴走中
•いつもより好き放題書いてます
•続編が書けるかはわかりません

お題をくれた方:なんちゃってアルゴンさん(ID:286383)
ご協力、心より感謝いたします。楽しめる作品となっていましたら光栄です。











セギン×シェダル:ひだまりの温度

朝、メロコは鏡をのぞき込んでいた。左頬のガーゼを毎日取り替えるようにとピーニャから言われているのだが、小さい頃からの不器用さか顕著に発揮されている。ガーゼをあてても頬を覆いきれないし、テープは貼り直しの連続で粘着力がない。そして困ったことに、ちょっとずつ使っていたつもりのテープの残りももう無い。追い詰められた気分になった彼女は、手でガーゼを抑えたまま隠れ家の教室に向かった。

 

そっと扉を開けると、ピーニャが何やら物書きをしている。参考書に教科書、資料集が所狭しとならべられているのは、メロコの嫌いな風景の一つである。

ただ、とても真剣な顔で机に向かう彼を見て、邪魔はできないと感じた彼女は静かに椅子を引き出して、扉の近くに座った。集中力が高すぎるが故、ピーニャはメロコに気づいていない。

 

目を覚ましたボウジロウが、のそのそと寝床から出てきた。新しい寝床は部屋の隅の、窓際から光が指す場所に作られた。クッションが敷かれているため、以前よりもあたたかくふわふわだ。掛け布団として使えるようにひざ掛けまで用意されていて、さぞ寝心地がいいだろうなと想像させる。大きなあくびをしたあとに、いつのまにか来ていたメロコに気づいたボウジロウは一気に顔をきらきらとさせた。

メロコはそっとボウジロウに手を降る。そのまま彼女のもとへ走る…かと思いきや、向かった先はピーニャだった。

ガタッと立ち上がったメロコは邪魔をしないようにと、必死に牽制のジェスチャーをした。右手で寝床に戻るようにとぶんぶん指差しをしたが、ボウジロウの気を引くことはできなかったので、口を開けたまま彼女は固まってしまった。机にあがったボウジロウはピーニャの腕を抱きしめ、まるでメロコが来てくれたことを伝えるように炎をぽっぽとさせている。

 

「あっ、ボウジロウ、おはよう。今日は起きるのが早いね。

昨日の夜少し冷えたけど大丈夫だった?ひざ掛けだけで足りるかな…」

 

ピーニャに頭を撫でられてボウジロウは安心したのか、かわいい鳴き声とともにもう一度あくびをした。

 

「そうだよね、まだ眠たいよね………ん?」

 

その目線に、指差しをしたままのポーズのメロコがようやく映る。現場猫ならぬ、現場メロコである。

 

「………なんかのおまじない?」

 

「…………ほっとけ!!」

 

 

 

ガーゼを手で抑えていたのを見られ、即座に勘付かれてしまい、何も言わずともピーニャはメロコの手当をし始める。

 

「さっき、何しようとしてたの?」

 

きびきびとした手つきによって、あんなに大変だったガーゼの交換が1分くらいで終わってしまった。ボウジロウはメロコの膝下にちょこんと座っており、彼女の顔をまじまじと眺めている。二人からいっせいに目線が注がれるので、答えないわけにはいかなかった。

 

「……その、テメーがなんか…勉強?してたから、邪魔したくねえなと思って……」

「ふむふむ……じゃああれはやっぱりおまじないかな?集中力が上がるようにとか」

「おちょくってんのか?」

 

かっとなって顔をがばっと上げると、存外二人の距離は近いものだった。

 

「そんなこと、ないよ」

 

そう言い切ったピーニャの顔は至って真剣なままだったのでぐうの音も出ない上に、これだけ人と近づいたこともないメロコには刺激が強すぎた。ついぷいっと反射的に顔をそらしてしまう。

 

「……近い!離れてくれ…」

「ご、ごめん……」

 

手当をしてもらったのにこの言い草か、と申し訳なくなっていると、ピーニャも申し訳なさそうにしていた。彼もまた、いじめられた側だ。それを原因に人との距離を計りかねているのかもしれない。その顔のまま後ろに数歩下がっていったので、ボウジロウは膝から降りてそれを追いかけた。

気まずくなった空間の中、空気を変えようと彼は椅子に座る。そして机に向かい、先程の続きかと思われる自習をし始めた。

 

「……話しかけて良くなったら、声かけてよ。それまで待ってるから」

 

その背中がとても寂しそうに見える。彼を突き放してしまった罪悪感にさいなまれたメロコは、意を決して本音を打ち明けることにした。

 

 

「…………ボウジロウが!起きて!そっちに行ったから!!

おふとんに、戻るように!頼んでたんだ!!邪魔しないようにって!!」

 

 

髪色と大差ない顔色で叫んだ彼女の大声と、ワードセンスにピーニャは驚きながら、そういうことかと納得した表情を浮かべた。

 

「お、おふとん…あっ、だから指差し…」

 

そう言い終えると、彼は足元に抱きついていたボウジロウを抱き上げる。

 

「そういうことなら、これ!」

 

笑顔でポケットから取り出したのは、ビスケットだった。

 

 

「今日のはクリームサンド。すごくおいしいよ」

 

袋を開けている最中なのに、ボウジロウがお菓子の魅力に耐えきれずわちゃわちゃし始めている。それを落ち着けようとピーニャはビスケットを半分にわり、片方を手渡しする。もう片方は自分の口に放り込み、袋から新しいものを出してメロコに渡した。

軽くお礼を言ってから一口食べると、さくさくなのに少ししっとりとした絶妙な柔らかさの食感に思わず頬が緩む。クリームも甘いのに後味がさっぱりとしていて、ビスケットの香ばしい香りによく合う。

 

「これ、うまい…」

「でしょ?ボクもお気に入りなんだよね」

 

ボウジロウが我を忘れてぱくぱくと食べている。ポケモンにも伝わるおいしさのお菓子とは…と驚きつつ、残りを一気に食べてしまう。

 

「どこで売ってんだ?コータスにも、食べさせてやりたい」

「なら今、ボールから出てきてもらおうよ」

 

ピーニャは笑顔なのだが、お気に入りのビスケットはだんだんと残りが少なくなっている。それを見たメロコは少し焦った。

 

「で、でも……」

 

彼女の遠慮をすぐ察した彼は、両手を首の後ろで組むとメロコに背を向けた。そして残念そうに話し出すのだった。

 

「あーあ、寂しいなあ。久しぶりにメロコのコータスに会いたかったのに。皆でおいしいもの食べたら、もっと仲良くなれると思ったんだけどなあ……」

「は!?」

 

彼の仕草や反応に踊らされるように、メロコの焦りが更に加速した。

 

「コータスが喜んでるところ、見たかったなあ。でも、メロコが嫌だって言うなら…」

「嫌なわけあるか!出てきてくれ、コータス!」

 

 

コータスを繰り出したとき、はっと気がついた。

 

自分は一言も「嫌」だなんて言っていないのだ。

 

ピーニャが前歯をほんのり見せて、笑いながら振り返っている。出てきたばかりのコータスの頭の上には、いくつかはてなマークが浮かんでいるようだ。

 

「テメー…さては企んでやがったな?」

 

どうやら怒るところまで想定されていたようで、したり顔のまま彼はビスケットを半分に割った。

 

「そうだね、企んでた。けど、そうでもしないとメロコは遠慮したままになると思ったから。そうしないでほしくてもね」

 

メロコは何も言えなくなってしまった。ずばりと言い当てられたことが悔しいのに、嬉しい気持ちもあるからだ。その間にもピーニャはコータスにお菓子をあげては、一口で食べられて甘噛みをされている。右手があぶあぶとよだれだらけにされているのに、嬉しそうにする彼を見ながら、メロコは「こういうところ」だよなあと感じた。

 

ピーニャは自覚はないであろうが、とても優しいのだ。ポケモンたちがみるみる懐いていくのは、それだけ感情を理解しようとする姿がきちんと相手に伝わっている他ならない。相手がどう思うか、何をされたら嬉しいかを常に考えているように見える。絶妙なタイミングで謝ってきたり、今回のように強引に引っ張ってきたりと、難しいであろうコミュニケーションをさらっとやってのけてしまう。そしてそれを恩着せがましくすることもない。

 

「……さっきは、言葉キツくて、悪かった…」

 

謝るメロコを見つめると、ピーニャは目を合わせるように立ち上がった。

 

「ボクは大丈夫。そうだ、お礼言えてなかった。勉強に集中させようとしてくれて、ありがとう」

 

またしてもカウンターのようなお礼が返ってきた。けれどメロコには伝えようと思っていたことがあった。それを伝えられるのは今なのではないかと、彼の真似をして質問をした。

 

「…オレのこの口調、怖いんだろ」

「えっと、そんなことは…」

「目えそらすな。テメーこそ遠慮すんなよ。

……言い訳みたいになっちまうが、この喋り方してるとな、いじめがやんだことがあったんだ。ほんの少しだったけど…。

つまり、『威嚇』なんだ。怖くねえわけねえだろ。きっと、ボスだって…」

 

悲しげにうつむく彼女に、今度はピーニャが慌て始めた。

 

「ちょっと待ってよ。確かに少し、怖いというか、苦手だけど…メロコのことは、怖くないし苦手でもないよ。すごく真っ直ぐな人なんだって思うし、そういう喋り方になった経緯も聞けたし。そうだ、今度ボスにも聞いてもらおうよ。今日は風邪ひいちゃったみたいだから難しいけど、ね!」

 

明らかに精一杯励まそうとしている。普段こんなピーニャは見れないなと思うと、自然と笑いがこみ上げてきた。

 

「…なんでテメーが、必死になるんだよ…」

 

にこにこのメロコに驚いたのか、彼はまたしてもくるりと背を向けた。

 

「…嫌な思いしてないか、心配になっただけだよ。ボクは、メロコがうらやましいけどなあ」

 

彼はそう言いながら、いつの間にやらおなかがいっぱいで眠ってしまったコータスとカルボウを抱き上げた。ゆっくりと二人を寝床におろし、ひざ掛けをかけているところを見て、先程ビスケットが出てきた理由がようやくわかった。けれども「うらやましい」の意図はわからないので、直接聞くしかない。

 

「オレのどこがいいんだよ。いいとこなんて…」

「…ボスがね。すごく楽しそうだったんだ。メロコのことを『かわいい』って言ってたあのとき。あんな楽しそうなボス、初めて見た。

ボクは、ボスになにもしてあげられてない。勉強だって、学校に来られてないなら、いつか来られたときに助けられるように始めてみたけど…どうなるかわかんないし」

 

「かわいい」の言葉に少々動揺しつつも、ボスのことを思う彼を放っておけない気持ちになったメロコは、元気づけようと声をかけた。

 

「あ、あれはボスが、褒めてくれたんだ。こんなオレのこと、あんなふうに言ってくれるなんて…」

 

「きっと違う。ボクはあれが、ボスの本心だと思ってる。それにボクもメロコは顔立ちきれいだなって思うし」

 

「あ……あの、ならテメーはどうなんだよ?ヘッドホンとか、イカすじゃねえか」

 

「無理に褒めなくていいよ。自分の外見がそこまで良くないって、知ってるし」

 

「無理じゃねえし。無理してねえし!その……なんだ?ほら、その髪型とか、ガケガニみてえでよ」

 

「ガケガニ!?」

 

ピーニャが真っ青になって固まってしまった。が、メロコはガケガニのことで頭がいっぱいになり、彼の表情に気づかずに話を続けてしまう。

 

「ガケガニはかっけえだろ?ほのおを通しにくいあの身体…関節のトゲトゲは最高にロック…いつ考えてもしびれるぜ…」

 

「……悪意のない、ガケガニ…」

 

ついに彼はとぼとぼと部屋の隅に向かい、壁に向かって体育座りをしてしまった。

 

「えっ?あっ!?ピーニャ!?」

 

メロコは急いで追いかけて、彼の近くに膝をおろした。

 

「す、すまねえ。オレ、つい…」

「……いいんだ、わかってる…」

「で、でもよ!オレの髪も、ガケガニみてえなもんだろ?ほら、赤いし!」

「……違うよ。メロコの髪の色は、炎の色だ。誇り高くて、とてもきれいな……

ごめん、ほんのちょっとだけ、一人にしてくれないかな…」

 

やってしまった。一番言ってはいけないことを言ってしまった。それを痛感した彼女は必死に考えた。こういうとき、彼が自分にどうしてくれたのか。どんな言葉をくれたのかを。

一つ一つをなんとか思い出し、言葉を繋いで形にする。多少強引であったとしても、絶対に彼をひだまりの中に連れて行く。恥など捨てて、その手で彼を必ず助けることを胸に誓う。

 

メロコは左手をピーニャの肩にそっと置いた。驚いたのか少し身体が揺れる。それにたじろぐこともせず、大きく息を吸い、心をぶつけた。

 

「…ボウジロウの寝床。あんなふうにあったかくしてもらえて、きっとあいつはすごく幸せだ。

ビスケットも、コータスたちが食べやすいように割ってやってくれてた。そういうの、いいところだと思う。

ボスのために、あれだけ頑張れるのもすげえよ。オレは誰かのために、勉強なんてできねえし。

……それだけじゃねえな。ピーニャは優しい。見てりゃあわかる。それも、外見ってことにはならねえのかな」

 

「メ、メロコ…?」

 

「オレにはよくわかんねえけどよ。だからかもしれねえけど、テメーの優しさがオレには眩しいんだ。簡単に真似なんてできるもんじゃねえ。おひさまみてえなヤツだなあって、かっこいいヤツだなあって思ってるのは本当だ。オレが苦しかったとき、ピーニャがいてくれた。だからオレは、今息ができるんだ」

 

目を閉じて、彼女はあのときのことを思い出していた。深い海の底にいるのに、重力なんてお構いなしに太陽が近づいてくるような、柔らかくてあたたかな光。気づいたら波打ち際に引き上げてくれる「それ」は、メロコにとってなくてはならないものになっていた。

 

「助けてくれたこと、絶対忘れねえ。ありがとよ。

あっ、そういえば、テメーの笑顔。ちょっと歯あ見せるやつ。

意地悪だけど、結構いいと思うぜ」

 

ゆっくりと目を開けると、壁際を向いたままのピーニャがキャップを顔の前に持ってきている。

 

「わ、わかったから…

『だましうち』みたいなこと、しないでよ…」

 

ヘッドホンからちらりと見える耳が赤くなっている。

これは照れているなと確信したメロコはにんまりとした。

 

「へへっ、まいったか。まさか、口でテメーに勝てる日が来るとは思ってなかったぜ。言っとくけどな、全部、ぜーんぶ本心だ!ざまあみやがれ!」

 

はっはっは、と声高らかに笑い続ける彼女を背に、ピーニャは咳払いをし、キャップをかぶり直す。そして大きく深呼吸をした。

 

 

「降参だなんて、言ってないんだけど」

 

 

いつのまにかピーニャがこちらを振り返っている。肩に置かれていたメロコの手を掴んで、そのまま顔をのぞき込んで来たのだ。否が応でも視界に入る頬や耳が、あれだけ赤かったのにもう元に戻っている。

気づいたときにはもう遅く、いつの間にこんな近くにいたのかわからなくなってしまった彼女は軽く尻もちをついた。

 

「…ピーニャ…?」

 

自分でも頬の温度が熱くなっていくのがわかる。はっと手に目をやると絡められた指が映り、背筋をぞくっとさせた。目の前にはいつもよりも真剣な眼差しの彼がいる。目線のやりどころが無くなってしまったのだ。

 

「な……なんで…こんな……」

「その反応は、『そう思っていい』ってこと?」

「わ、わかんねえって…なに言ってんだ……?」

「言ったっしょ?さっき、降参なんてしてないって。反撃、食らってくれる?」

 

それがなんのことなのかを本能で察したメロコは、すかさず顔をそらした。だがそれを煽られてしまう。

 

「メロコ?目をそらしたら負けだよ、いいの?」

「なっ!?く、くそっ…負けてたまるか……」

 

もはやなんの勝負になっているのかは明確なのだが、今ひとつメロコは理解をしていないように見える。それをわからせるように、ピーニャが仕掛けてきた。

 

「メロコは、かわいいよ。誰が見てもそう思うだろうね。まず目が大きくて、鼻や口が小さいから、本当にきれいな顔立ちをしてる。骨格、っていうのかな?かなりバランスがいいんだと思う。

髪だって、さっきも話したけど、メロコの髪の色はきれいな炎の色だよ。誇り高い、騎士の異名の色。もとの肌色が白いから、すごく似合ってる」

 

「や……やめ……」

 

「だめ。やめない。

ボウジロウをゲットしなかったのも、いじめの場に遭遇させたくなかったからだよね?炎が小さいこと、誰よりも心配してた。

自分を犠牲にしてまでいじめと戦える、メロコのほうがずっと優しい」

 

次々と襲ってくる、流星群のような言葉がメロコを焼き尽くす。顔色は最早茹でられたように、まっかっかになってしまっている。負けると感じたときは一瞬悔しかったが、もはやここから逃げられるなら逃げてしまいたいほどの熱だ。

 

更に困ったことに、今になってピーニャの声の良さに気づく。聞いているととても落ち着く、不思議な低さをしている。それを考えてしまうだけで、目の前の彼のことを意識するなと言う方が無理な話になっていた。

愛だの恋だの考えたこともなかったが、はちきれそうな心臓が訴えている。もしかしたら今の気持ちがそれに当たるものなのではないのかと。

 

「……こ!こうさ…」

 

そう言いかけたメロコの口元に、ピーニャの指がそっと触れる。

 

「『降参』って、言わないでよ」

 

彼の指先からじんわりと伝わる体温で、身体がおかしくなりそうなほど熱くなっていくのをメロコは感じていた。

沸騰するほど熱いのに、更に熱を注がれてしまっては、もう身動きも取れない。けれども、彼の言葉も止まってはくれない。

 

「やっぱり、すごくきれいだ。瞳の色も、髪の色も。

さっきのにこにこのメロコ、あれがきっと素なんだよね?

あんなふうに笑うところ、見せてもらえて嬉しかった。

メロコ、笑って。もう一度、キミの笑顔を見せて」

 

「……う、も……もう…」

 

耐えきれなくなったメロコの右手が、ピーニャの口を塞いだ。

 

 

「……もう、だめ………焦げちゃう……」

 

 

泣きそうになりながらそう言ったメロコの破壊力はすさまじかった。不意に出た本来の喋り口に、いつもつり上がっている目尻はふにゃんと垂れ、眼差しは潤み、熱をはらんでいる。身体は少し震えており、まるで怯えるエネコロロのようだ。

その姿に動揺したのか、ピーニャの手の力が一瞬抜けた。それに気づいたメロコは腕を振り払い、なんとか立ち上がる。そしてものすごい勢いで、部屋から走って出ていってしまった。

 

 

「ずるいんだよ!!あああああああああー!!」

 

 

叫び声が大きすぎて、もろに聞こえてきてしまう。

ピーニャも立ち上がり、彼女が乱暴に開けた部屋の扉を閉める。顔を隠すようにキャップを深くかぶり、小さな声でつぶやくのだった。

 

 

 

 

 

「…ずるいのは、そっちの方でしょ…」

 

 

 

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