異例なセカイの相談役になりました   作:クアのトロ

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purpose良い曲すぎてもうね…。
あと来月箱イベ連続ってマジですか????




第四話 ボーイ・ミーツ・スター

星乃さんと天馬さんに遭遇してから二日が経った。

あれから時々天馬さんから連絡が来るようになった。内容はそのほとんどが日常的なことばかりで、今日はこれをしたあれをしたというのが楽しそうな文面で送られてきていた。

これといって重要な事柄はないがそれでもこういう楽しいことを聞くと自分も楽しくなってくるというものだ。

 

ただ、その文章の節々に陰りが見えてしまう。天馬さん然り、天馬さんの話の中に登場する星乃さん然り。おそらくだがあの二人の幼馴染のことでああなっているのだろう。

どういう状況でそうなっているのかまでは判明できないし、あの二人も多分言う気がないのだろうがそれでもいつまでもあの様子なのは僕でも心に来る。

何か僕に手伝えることがあれば手伝うのだが、幼馴染間の問題に不用意に部外者の自分が首を突っ込んで良いわけではない。どうしたものか…。

 

「おーい燈里、お前今日何か予定…どうした?眉間にしわなんて寄せて」

 

「あー、そんなにしわ寄ってる?」

 

「寄ってる。絵名のブチギレした時の顔みたいなレベルだぞ」

 

「それお姉さんに万一聞かれたらまずいんじゃないの…?」

 

彰人にはお姉さんがいる。一つ上の神山高校の二年生で夜間定時制に通っているのだという。

かなりの理不尽や使い走りにされていることからフラストレーションが溜まりに溜まったときなどに彰人から愚痴という恨み言を聞くことがある。

会ったことはないのだが、彰人の口ぶりからしてかなりの暴君というか逆らえない絶対的な存在というか、そういったものを言葉の節々から感じる。会った時に菓子折りでもないと殴られでもするんじゃないだろうかという先入観まで生まれており、正直会うのも怖いと思うようになってしまった。

 

ちなみに彰人がお姉さんのことを名前で呼ぶのは、「あれを姉と思いたくない」とのことだそうだ。

お姉さんをあれと称する彰人も彰人で問題がありそうだが、指摘すると何か言われそうだったのでその場では心の中にしまい込んでいた。

 

そんなことはさておき、彰人が放課後に僕のもとに来るとは珍しい。

いつもなら二色頭の人といるはずだが…何の用だろう?

 

「燈里、お前忘れてないだろうな?」

 

「忘れる…?何を?」

 

「忘れてんじゃねーか」

 

彰人が呆れたような表情でこっちを見てくる。忘れていると言われても今日何かが放課後にあったわけでもないし、誰かと何かを約束していたわけでも……あ。

 

「……あー思い出した」

 

「思い出したようで何よりだ。準備できたなら行くぞ」

 

以前愚痴を聞くという名目の元、彰人が前から気になっている喫茶店に行くと約束していたことを思い出した。

そこの喫茶店のスイーツがどうもかなりおいしいらしく、SNSでもそこそこ有名になっているらしい。彰人調べによると平日の夕方であれば空いているらしく、行くならそこが狙い目なのだという。

 

そういや前に約束はしていたのだが彰人が放課後に用事がある事が多く、今日までずっと行き損ねていたのだ。

 

「てっきり一人で行ったのかと…」

 

「忙しかったんだよ。冬弥との練習もあったしな」

 

「冬弥…あーあのツートンカラーの」

 

その冬弥という人は何度か彰人の元を訪れてきて話しているのを見たことがあり、僕も顔見知りではあるが友人といえるほど話したことはない。

彰人が教室にいない時、彼が教室に訪れた時に会話を交わすくらいだ。

 

だから彼がどういう人物かは正直言って知らないに等しい。彰人と何をやっているかは一応知ってはいるんだけども、それがどういうものかまでは知らないのだ。彰人がかなりの熱を入れていることは知ってはいるが。

 

「で、準備はできたのか?」

 

「うん、帰る準備はできてたし大丈夫」

 

「よし。じゃあ行くか」

 

僕らは鞄を持って教室を出て昇降口に向かおうとしたその時、その動きを廊下から聞こえてきた大きな声が制止させる。

 

そこの一年生!!ちょっと待ったぁぁぁぁああああ!!

 

劈くような大声を響かせながら声の主はこちらに歩み寄ってくる。

僕と彰人は声の主の方を振り返りつつ嫌な予感を確かに感じ取っていた。

 

この声は聞いたことがある。というよりも神山高校にいるなら誰もが知っている。

二年生の学級委員であり、その声は先程聞いた通りとんでもなく大きく、一度聞けば頭に刻み付けられてしまうほどだ。

自分のことをスターだと自称しており、その振る舞いはそれに準ずるような役者じみている。

 

神高の自称スター兼有名人こと天馬司(てんまつかさ)が僕らめがけて走ってきていた。

 

「…おい、お前の案件か?」

 

「いや知らないって。名前は知ってはいるけど僕も話したことないし…」

 

「ほんとだろうな?俺らの前に誰もいないってことは、あれどう考えてもこっちに用があってきてる気がするんだが」

 

「ほんとに知らないんだって…まぁ僕らじゃないでしょ」

 

本当に心当たりがないので首を振って否定する。言った通り、直接会って話した覚えもなければ接点がまずない。だからこっちにわざわざ来る理由すらないと思うのが妥当だろう。

だが後ろの天馬先輩は明らかにこっちを見て走ってきているわけで…。

 

「……とりあえず逃げる?」

 

「俺らじゃないなら逃げる理由ないだろ。お前さては何かやらかしたな?」

 

「やってないって!」

 

訝しんだ視線を投げかけてくる彰人に弁明しようとするが、心当たりも何もないので言葉が一切出てこない。

そうしているうちに天馬先輩は僕らの目の前で停止し、息を切らしながら誇らしげな笑みを浮かべる。

 

「ふ、ふふ、いくら遠かろうとも目的の者に追いつく。それこそスターというもの」

 

ごめんなさい何言ってるか僕にはわからないです。

彰人の方を見ても僕と同じことを考えているのか、は?とでも言いたそうな呆れ顔で天馬先輩のことを見ている。

 

そんな天馬先輩は視線に気づくことなく、ハッとしたかと思えば顎に手を当てて僕の方を凝視してくる。

 

「お前が一年の十六夜か?」

 

「え、まぁそうですけど…」

 

「そうかそうか、お前がか!」

 

話が見えず、困惑するしかない僕ら二人を差し置いて天馬先輩は何かに納得したかのように頷いている。

彰人に肘で突かれ説明しろと睨まれるが僕自身もなにがなんだかわかっていないので説明なんてできるはずもない。

だけどどうして僕の名前を知っているのだろうか。最低限何かの拍子に顔は見られていたとしても名前は知られるような機会があったかとは思えない。

 

一体どこで…。

 

「見た目と名前が一致したという事は、やはり咲希から聞いた情報に間違いはなかったな!さすがは我が妹だ!」

 

「待ってください。今なんて?」

 

「む?さすがは我が妹だ、と」

 

「違いますその前!」

 

「やはり咲希から聞いた情報に間違いはなかったな、の方か?」

 

僕の記憶にある情報と今置かれている状況が線で繋がる。

二日前に知り合った女の子の天馬咲希。目の前の天馬司先輩。

 

あの時は同じ苗字だからといってまさかそんなことはないだろうと思っていた。しかし、この状況を目の当たりにしたからにはあの時一瞬浮かんだ仮説が事実ではないと説明しきれない。

同じ苗字で一歳差。咲希は神高に通うお兄ちゃんがいると言い、目の前の天馬先輩は咲希と呼んでいる。

ということはつまり…。

 

「兄妹……?」

 

「うむ。オレと咲希は兄妹だ」

 

途端膝から崩れ落ちそうになるのをぐっと我慢して頭を抱える。最近頭を抱えることが多くなってきた気がするが、あんなセカイに巻き込まれた時点で手遅れだと捨て置く。

それにしても兄妹だったかぁ…。という事は天馬先輩がここに来たのは僕に何か用があったからだろう。

だとしても何の用があったというのだろうか。

 

「それはそうとだ。十六夜、うちの妹の咲希を助けてくれたこと感謝する!」

 

深々と頭を下げる天馬先輩にぎょっとする。

どのことを言っているのかは察しが付くのだが、そんな深々とお辞儀して感謝されるほどのことをしてはいない。ナンパから助けたぐらいなのにここまでされるとこっちが恥ずかしくなってくる。

あとこれが起きているのが一年生の教室付近という事もあり、また天馬先輩の声の大きさもあって教室に残っていた生徒や廊下にいた同級生たちがこちらを物珍しい顔で眺めているのが遠目で見てもわかる。

 

「いやあのそこまでのことはしてないので顔を上げていただけると……」

 

「いや!そうはいかない!オレの家族の恩人なのだ。恩は返すのが常識だろう!」

 

ナンパから助けただけなんですけど!?恩人とまで言われる筋合いないぞこっちには!

 

「ほ、他の生徒の目もありますし…!」

 

「感謝とはいつどこでも伝えるべきだと思っている!!」

 

「じゃあもう恥ずかしいのでやめていただけると助かるんですが!?」

 

傍から見れば廊下で大声で何言い合ってるんだと思われてもおかしくない。が、これ以上は僕の心がもたない。

そもそも僕自身学校では目立たないキャラだったのだ。それが一瞬にしてここまで目立つと居心地が悪くなる。

 

今にもここから逃げ出したいが、横にいる彰人を置いて一人で逃げるわけにはいかない。それにだ、横から恨みのこもった視線を感じる。ここで置いて逃げようものなら次に会った時が怖すぎるので流石に思いとどまる。

 

「それに僕何も特別なことはしていないのでそこまで感謝される覚えはありません」

 

「だが!」

 

「だがもへちまもないのでやめてください」

 

「うむぅ、そこまでいうのであれば……」

 

しぶしぶといった様子で顔を上げる天馬先輩。

その表情はどこか咲希に似ているものがあり、本当に兄妹なんだなとあの時のそうじゃないと判断した自分をぶん殴りたくなった。まぁやったこと自体は悪いことではないので別に問題があるわけではないのだが。

 

天馬先輩ともなると話が別になってくるから困るんだよな…。

 

「改めて、先日は咲希達を救ってくれたこと感謝する!」

 

「別に……ナンパ追い払っただけなんですけど」

 

「お前そんなことしてたのか…」

 

彰人が完全に関係あるじゃねーかとまたもや呆れ顔でこっちを見てくる。

天馬という苗字は知ってはいたけどまさかこうなるとは思わなかったよごめんって…。

 

「しかし颯爽と現れた十六夜は俺に負けず劣らずだったと聞いている。まさかお前にもスターの素質があろうとはな!」

 

ないですそんなもの。

彰人、お前も引いたような顔でこっちを見るんじゃない。

 

「脚色して言わないでください。普通に追い払っただけですよ」

 

「そうなのか?咲希からは『ヒーローみたいだった!』と聞いているが」

 

色眼鏡がかかっているだけだと思います。そんなぶっ飛んだことしてないです。

彰人、ドン引きして後ずさりするのをやめてくれ。そろそろ泣くぞ。

 

「…若干両者の発言に差があるようだが、まあいい。おかげで妹は無事に元気でいられている。本当に助かった」

 

「元気でって…会った時すこぶる調子良さそうでしたけど?」

 

「咲希は小さい頃から体が弱くてな。だから少し心配でな」

 

記憶の中にある彼女はそんな様子すらなかったが、一歌と話している時に体に気を付けてなどと何かいたわっているような言葉が聞こえていた気がする。

あれはそういう言葉だったのか。

 

「何はともあれだ。今日はそれを伝えたくて呼び止めたわけだ。すまんな、下校しようとしていたところを呼び止めてしまって」

 

「いや、それは…」

 

ちらっと彰人の方を見るといつの間にか僕の隣から後方に移動して我関せずといった様子でスマホをいじっている。

自分には関係ないことなのでノータッチの姿勢を示しているのか、単純に天馬先輩とかかわりあいたくないからそうしているのか。そのどちらかは分からないが、そこまで呼び止められたことを気にしている様子はなさそうだな。

 

「気にしてはないので大丈夫です」

 

「そうか、それならよかった。それとこれも何かの縁だ。何か困ったことがあればオレを頼ると良い!」

 

「あ、あはは…じゃあその時はお言葉に甘えさせてもらいます」

 

「うむ、そうしてくれ!では、さらばだ!!」

 

高らかな笑い声をあげながら天馬先輩はこの場を去っていった。それと一緒に事を見守っていた他の生徒たちはこちらから視線をそらし各々の放課後へと戻っていった。

話していた時間はかなり短かったはずなのにどっと疲れた気がする。

 

視界から天馬先輩が消えた後、彰人に視線を戻すと未だにスマホをいじっているので肩をたたいて終わったことを知らせる。

 

「お、終わったか?」

 

「終わったよ、ドッと疲れたけど…」

 

「何でもかんでも首を突っ込むお前が悪い」

 

「あはは…ごもっともです」

 

そういう癖がないとは言い切れないが、なぜか困っている人がいるとどうも助けたくなってしまう。

というより後味が悪いので見て見ぬ振りができないともいうが。

 

それが故にこういう若干の面倒事も少なくないのだが、得られるものも多いので悪い気はしない。

毎回こうやって疲れるのは勘弁願いたいけども。

 

「ほら、終わったなら行くぞ」

 

彰人はいつの間にかスマホをポケットにしまい、歩き出していた。僕は慌ててその後を追い、隣を歩く。

てっきりもう少し小言でも言われるのではと思っていたが、そこまで気にしていないのか何も言わずにすたすたと歩いていく。待たせる結果になってしまって申し訳ないと思いつつもよかったと胸をなでおろす。

とりあえず、何も考えずにあれこれ手出しするのは今後控えよう…。変なことに巻き込まれかねない。

 

 

 

 

 

その後、喫茶店についた彰人は目当てのパンケーキと予定になかったチーズケーキを頼み嬉しそうに食していた。

会計?『待たせた詫び』ということで僕持ちになりました。くそぅ…。

 

 

 

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