【完結】トレーナー育成計画(仮)   作:壱合目

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ここまでお付き合いくださり、ありがとうございます。
最初で最後のレース描写になります。
今回は勘違い要素は有りません。
思わず引き込まれるようなレースを描ける方が羨ましい……



10話目 有馬記念開幕

 年の瀬も押し迫った12月の末。

 この日、多くの者が夢を膨らませる大祭典が開催される。

 

『今年もまた、この時期がやって参りました。

 お聞きください、この大歓声! 

 ご覧ください、この大観衆! 

 あいにくの天気にも関わらず、中山レース場は満員です!」

 

『これだけの雨が降っているのに、もう座る席が無いとは驚きです。

 このレース──有馬記念への注目度の高さが窺えますね』

 

 有馬記念。

 多くのファン達を沸かせる熱戦を繰り広げてきたウマ娘達の1年を締め括る一大レース。

 実力と人気を兼ね備えた精鋭ウマ娘達による、1日限りの夢の競演。

 

 だが、天候は昂る熱気に従ってはくれなかった。

 

『いま仰って頂いた通り、天候には恵まれませんでした。

 本日の中山レース場では土砂降りの雨が降り注いでいます。

 バ場状態は不良。極めて過酷なレースになりそうです!』

 

『どのウマ娘にとっても厳しい戦いになるでしょう。

 少しでもその力になれるよう、我々も声援を送りたいですね』

 

 強く叩き付ける雨粒と、体温を容赦なく奪う強風。

 お世辞にも居心地が良いとは言えない環境下。こんな場所に好き好んで留まり続けたいとは思わないだろう。

 ──だが。今、この場において誰一人席を立つ者は居なかった。

 嵐かと思うような風雨が吹き荒れる中でも、観客席を埋め尽くす人波は揺るぎもしない。

 ある者は専門誌や新聞等の解説欄を繰り返し読み込み。

 ある者は知人や仲間内、あるいは偶々席が隣り合った隣人と意見や議論を交わす。

 待ちに待った大舞台の開幕を前に心を躍らせる彼らの前では、これだけの荒天も些事にしか過ぎない。

 

 その熱気は次の瞬間、さらに跳ね上がった。

 

『さあ! 出走ウマ娘達がフィールドに姿を現しました! 誰も彼もが選び抜かれた最精鋭! 

 そんな強者達が、互いの意地と誇りを賭けて激突します!』

 

『いよいよですね。見ているこちらまで緊張してしまいそうです』

 

 本日の主役達の登場に、最高潮に達する観客席のボルテージ。

 それを身に受けて、出走ウマ娘達が歩を進める。

 たちまちのうちに豪雨がその全身をずぶ濡れにするが、目前に迫った大一番に向けて意識を研ぎ澄ませている彼女達にとっては問題にすらならないのだろう。

 気にする素振りも無く、ゲートへ入っていく。

 

『スタートが間近に迫ってきました! その前にもう一度、今回の有馬記念出走メンバーの紹介を致しましょう!』

 

『どのウマ娘も魅力ある娘達ばかりです。どのような走りを見せてくれるのか、目が離せません』

 

 アナウンスから流れる音声に、歓声が一段と大きくなった。

 それぞれの応援するウマ娘達の背中に僅かでも届けとばかりに送られる、割れんばかりの声援。

 1人、また1人と紹介されていく度に観客席からは応援の声が寄せられる。

 

 その一角から、一際大きな声援が上がった。

 会場の一区間に腰を下ろす大応援団。

 学園近所の商店街の人々を中心とした集団の視線の先に居るのは、桃色の髪の小柄な姿。

 

『最下位が定位置だったウマ娘は、もういません! 

 努力を重ねて艱難辛苦を乗り越えて、花開いたハルウララ! 

 かって跳ね返された有馬記念に、今日、再び挑みます!』

 

『今では押しも押されぬダートの強豪です。

 しかし芝においては目立つような戦績を収められておらず、未知数な面は否定できません。

 以前の有馬での敗戦を恐れず、精一杯走って欲しいですね』

 

 降り注ぐ歓声に対して感謝するように、彼女──ハルウララは普段から浮かべている、とびっきりの笑顔と共に両手を振って応える。

 そして、湧き上がる闘志を示すかのようにその両手を胸の前で握り締めた。

 

 出走者の名前と概略が流れる度に、観客達が抱く興奮は高まっていく。

 その熱が頂点に達したのは、出走者最後の1人に紹介が及んだ時。

 

『豪華絢爛な面子が揃ったこのレース。

 その中で主役を選ぶとするのなら、この娘を置いて他に居ない!』

 

 アナウンスが流れると共に湧き起る大歓声。

 巨大な会場全体を揺らす、地鳴りのような大音量。

 その盛り上がりが、このレースの主役が誰なのかを物語っていた。

 

 先程までの応援とは規模の違う、空間を塗り潰すような声援を一身に受けて。

 けれど、【彼女】は取り乱す様子を微塵も見せなかった。

 いつもと変わらぬ沈着な立居振舞で、ゲートにてスタートを待つ。

 

『今回の有馬最大の注目は、やはり大本命のこの娘! 

 圧巻の走りを今日も見せてくれるのか!? 我々の耳目を惹いてやみません!』

 

『他の出走者を応援する方に申し訳ない言い方になってしまいますが──実力は完全に上位です。

【彼女】を軸にレースが展開されることになるでしょう。記録継続が期待されますね』

 

 走れば必ず勝つ。出走すれば常にレコードタイム更新。

 敵無しの絶対王者が、どこまで連勝記録を伸ばせるのか──

 前人未踏の領域に足を踏み入れることを期待する人々の熱狂が過熱していく。

 レース場全体を焦がすかのような熱は、だが、次の瞬間にはピタリと収まった。

 

『──各ウマ娘、ゲートに入って体勢整いました』

 

 秒読み段階にまで迫ったレーススタート。

 その瞬間を前にして、急速に沈黙が広がっていく。

 緊迫感に満ちた、息が詰まりそうなほどの濃密な静寂。

 

 ──永遠に続くように思われた時間。

 それは次の瞬間、ゲートの開錠によって破られた。

 遂に火蓋が切られた有馬記念。

 その開幕は──誰もが予想しない形で幕を開けることとなる。

 

『各ウマ娘、一斉にスタートを……!?』

 

 ……沸き上がったのは爆ぜるような歓声。

 そして、弾けるようにして広がっていく悲鳴。

 

 歓声は、レーススタートと同時に飛び出した桃色の小柄な影について。

 悲鳴は──時を同じくして崩れ落ちた、大本命について。

 

 想定と余りにかけ離れた幕開けを目の当たりにして、どよめきに揺れる観客席。

 そんな中で実況者と解説者は、状況の正確な把握と伝達に努める。

 

『転倒! 転倒です! 大本命であった【常勝】に、レース開始直後にまさかのアクシデント!』

 

『この雨でフィールドも滑り易くなっていますからね。スタートすべく踏み込んだ瞬間に脚を取られてしまったのでしょう。こんな不運を降り掛からせた荒天を呪いたくなりますね』

 

『自然の猛威は誰にでも平等、その前では絶対王者も例外ではないということか! 苦難のスタートとなってしまいました!』

 

 冷静さを保ち、アナウンスを行った両人。

 しかし、そんな彼らの顔も動揺が隠せなくなっていく。

 即座に走り出すだろうと思われていた【常勝】が、未だに蹲ったままだからだ。

 事態は思ったよりも深刻なのでは無いか?

 その懸念が的中したと思い知らされたのは、【彼女】の顔が拡大映像で映し出された時。

 

『これは……!?』

 

 何とか体を起こしたその姿を見て、誰もが息を呑んだ。

 泥が付着した顔と、充血した両目。

 痛々しい状態に、ざわめきが広がっていく。

 

『両目が充血しています! 泥が入ってしまったのでしょうか!?』

 

『転倒した時のものでしょう。足元の芝の間の泥を巻き上げてしまったのではないかと』

 

 足元を滑らせて転倒しようとした時、【彼女】は咄嗟に両手を突き出して地面に付けることで、胴体が叩き付けられることだけはギリギリのタイミングで防いだ。

 ただ、その衝撃でフィールドの芝の間に溜まっていた泥水を跳ね上げてしまった。

 それを地面に至近距離にまで迫っていた顔面、それも両目にモロに被ってしまったのだ。

 

 そして、異常は目だけに止まらない。

 

『……腕も痛めてしまったようですね』

 

 焦りを滲ませながら解説者が説明する。

 体を起こした際に【彼女】の両腕に一瞬奔った強張りと震えを、解説者の目は見逃さなかった。

 

 レーススタート時には、ウマ娘の肉体には非常に大きな力が掛かる。

 そんな場面で転倒して地面に叩き付けられていたら、その多大なエネルギーは胴部に跳ね返ってくる。

【彼女】はそれを地に両手を突き立てることによって防いだ。

 ……だが、それは大量の負担が2本の腕に圧し掛かるということ。

 腕部が深刻なダメージを受けるのは当然と言える。

 

『……走れるでしょうか?』

 

『選手生命に関わるような重傷では無いと思います。ただ、走行に影響が出ることは間違いないでしょう』

 

 走行という行為は脚部だけで行えるものでは無い。

【彼女】が負傷してしまった眼と両腕も欠かせない箇所だ。

 眼球が傷んでしまえば視界の確保に支障が出るし、体を前方に進ませるためには腕の振りも必要不可欠。

 その両点が十全に発揮できないとなると、パフォーマンスの低下は避けられない。

 

『それに──』

 

 口を開いた解説者だったが、言葉を呑み込んだ。

 ……その先に何を言おうとしていたかは、言わずとも察せられる。

 

 ──もう、この有馬記念での【彼女】の行く末は見えている──

 

 競うべき他の出走者達は、既に遥か前方の彼方。

 もはや同じ土俵上に上がって勝負することは叶うまい。

 それに加え、重傷とは言えないまでも軽くない怪我を負った。

 結果の解り切ったレースに時間を費やすよりも、少しでも早く回復に努めるべきではないか。

 無敗記録が途絶えてしまうことは残念だし、外部からは心無い言葉を向けられてしまうだろう。

 

 だが、優先すべきは才能あるウマ娘の将来を守ることだ。

 そのためには、勝負から降りるという勇気ある撤退も必要では無いだろうか。

 

 そんな解説者の思いを読み取ったのか、実況者も口出しは差し控えて己の職務に集中する。

 

『自然の猛威は誰にでも平等、と私は先程言いました。しかし、いくら何でもここまでの仕打ちを重ねるのは余りに無慈悲に過ぎないか──そう思ってしまうのは私だけでしょうか!?』

 

 記録継続を懸けて臨んだ一大レースで、不運の連鎖に見舞われた上に負傷する。

 目を背けたくなるような、痛ましい惨状。 

 そんな惨過ぎる渦中に身を置いてなお、【彼女】は乱れない。

 涙も怒りも見せず、ただ静かに視線を上げる。

 

 ……だが。絶望的なこの状況で、果たしてその目は何を見ているのか。

 王座から陥落する瞬間が迫り、連勝記録は途絶えようとしている。

 豪雨に身を濡らして佇む姿からは、否応なく突き付けられているそれらの現実が連想される。

 

 ──その時だった。【彼女】に変化が生じたのは。

 

 感情の揺らぎを見せない瞳が、ある方向へ向けられる。

 満員に膨れ上がったレース場の一角に。

 どこか遠いところを見るような眼差しの先に映しているものは何なのか? 

 ……それを他者が知ることは無い。

 

 次の瞬間、【彼女】は身を翻してレースへと駆け出したからだ。

 

『リタイアはありません! 他の出走者達からは大幅に遅れましたが、今、【常勝】がスタートを切った!』

 

『記録も勝利も、掴むことは非常に難しくなったと言わざるを得ないでしょう……ですが、それでも立ち上がって戦い続ける姿勢は敬意を表するに値すると思います』

 

『王者としての意地と誇りか! 最後まで駆けることを選んだその姿に、観客席からは大きな声援と拍手が送られています!』

 

 観戦者達からの応援を背に受け、駆けてゆく【常勝】。

 これで形はどうあれ、全ての出走者がレースに参加したことになった。

 予想だにしないハプニングに意識を割かれていた人々の目が、レースへと戻る。

 

『驚天動地、大波乱の幕開けとなった有馬記念。各ウマ娘達の走りを目に焼き付けましょう!』

 

『隊列が縦長になっています。かなり間延びした展開ですね』

 

 先頭から最後尾まで、距離が開いている展開。

 その中での出走者達の並び順について解説者が言及する。

 

『レースは3つの集団で進んでいます。各ウマ娘の位置を確認しましょう。

 まずは最後尾。誰が【彼女】がこの位置にいることを予測したでしょうか!? 

 最後方にポツンと1人、【常勝】が駆けている! 

 そこから遥か先の第2グループ、その他の出走者達が長い集団となって鎬を削っています!』

 

『皆、実力者達ばかりです。順位が激しく入れ替わっていますよ』

 

 第2グループは隊列こそ縦長ではあるが、決定的な差は付いていない。

 体がぶつかるような距離で、目まぐるしく位置が入れ替わる。

 互いが醸し出す闘志が刃のように激しく交わっているその光景は、息を呑むかのような迫力に彩られている。

 

 ──だが、先頭はそんな彼女達のさらに遥か先。

 そこを駆けているのは、桃色の髪を靡かせる小柄な影。

 

『そして、これもまた予想だにしない方が多かったのではないでしょうか!? 

 独走状態で先頭を走るのは──ハルウララ! 

 前回出走時には一度も立つことのできなかったトップの座を掴み、雨中を駆け抜けます!』

 

『驚きましたね。普段は〔追込〕走法を用いているハルウララが、スタートから飛ばす〔逃げ〕で来るとは』

 

 思い起こされるのはスタートの瞬間。

【常勝】のハプニングばかりに気を取られがちだが、ゲート開錠と同時に矢の様に駆け出したのがハルウララだった。

 

『ロケットスタートとも言うべき飛び出しでしたが、いかがでしたか?』

 

『〔逃げ〕戦法を採る上では、これ以上ない好スタートと言っていいでしょう。完全に狙い澄ましていましたね』

 

 今回の有馬記念で出走者達の頭にあったのは、大本命である【常勝】の存在。

 どうやって対応すれば良いのか? 何か良い対策は無いか? 

 次元違いの実力者を前にしては、その動向に思考が割かれるのも当然。

 ことに、レースの趨勢を決する一大ポイントであるスタート時ともなれば尚更のこと。

 完全に【彼女】の動作に出走者達の意識は集中していた。

 

 その間隙を突いて、大きなリードを奪ったのがハルウララ。

 

『レース開始直後に大本命が転倒するというアクシデントがありましたが、その影響は有るのでしょうか?』

 

『マークしていた相手に予想外の事態が起きたのですから、動揺するのが当然です。

 その影響で出走者達のスタートが微かに遅れたという面はあるでしょうね』

 

『その中でハルウララだけは絶好のスタートを切った、と』

 

『仰る通り。彼女だけが全くハプニングに動揺していませんでした。己のスタートにのみ集中していた──驚嘆すべき精神力だと思います』

 

『素晴らしい駆け出しを見せたハルウララ。まもなくコーナーに差し掛かります……!?』

 

 ハルウララの走りを軸に中継を進めようとしていた実況者だったが、次の彼女の行動に度肝を抜かれた。

 

『減速しない!? ハルウララ、そのままのスピードでカーブに突入していきます!』

 

 実況者が驚くのも無理からぬところ。

 曲線を走るには、体の傾きや体重移動等を考慮しなければならない。

 そのため、コーナーの走りは負担が大きくなる。

 ましてや、降雨によって濡れて滑り易くなっているフィールドならなおさらのこと。

 スピードは落とすのが定石だ。

 

 それを無視した走りは、自殺行為にしか思えなかった。

 

 ○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○

 

『ハルウララ、これは無謀か!?』

 

 そんな実況音声も、駆けているウララ本人の耳には届かない。

 荒い呼吸と、軋みを上げている肉体。

 そんな中で見据えているのは──トップでゴールすること、ただ1点。

 

 ──『本当に良いのか、ウララ……?』

 

 脳裏によぎるのは、こちらを心底案じる老トレーナーの顔。

 

 普段用いている〔追込〕とは真逆の走り方である〔逃げ〕で不意を突いて先頭を奪う──

 これが当初から描いていた作戦。

 そのための準備に、2人は心血を注いできた。

 スタートの切り方や〔逃げ〕の走法について、他のウマ娘達の協力の下で体に叩き込み。

 しかし、そうやって取得した技術をレースでは披露せずにひた隠しにしてきた。

 せっかく得た成果を事前に見せてしまっては、対策を練られて効果が減少してしまうからだ。

 

 全ては、この日の有馬記念の勝利のために。

 

 ……しかし、今まさにウララが行っている雨中でのカーブ全速走行。

 レース直前の打ち合わせで彼女が主張したこの作戦については、老トレーナーは最後まで渋った。

 余りに肉体に負担が掛かり過ぎるから、と。

 ただでさえ負荷が大きくなるコーナーを、足元が滑り易くなる雨の中で速度を落とさずに通り抜ける――

 それは確かに、無謀以外の何物でもない。

 

 だが、ウララは自らの主張を押し通した。

 

 ――「心配かけてごめんね、トレーナー……でも、私、勝ちたいんだ」

 

 無謀なことは百も承知。

 だが、それを通さねば……あの【常勝】には勝てない――

 

 そんなウララの覚悟に、老トレーナーは遂に折れた。

 彼女が、どれほど強い気持ちを抱いているかを知るが故に。

 そして、【常勝】との圧倒的な地力の差を嫌でも理解しているが故に。

 

 そうして有馬本番に臨んだわけだが……

 老トレーナーの言葉は真実であったことを、今まさにウララは実感していた。

 先程からひっきりなしに太腿付近を中心とした部位に奔っている、痺れにも似た痛覚。

 バ場不良状態のコーナーを減速せずに駆けている脚部が、大きすぎる負荷に悲鳴を上げている。

 

 だが、辞めない。

 

「(今度こそ……今度こそ、有馬で1着を……!)」

 

 早くも限界を迎えようとしているウララの肉体を支えているのは、その一念。

 その精神が、身体を突き動かす。

 血が滲むほどに唇を噛み締めて駆けた体は、バランスを崩すギリギリのところで踏み止まる。

 そして、そのまま勢いを落とさずにコーナーを通過した。

 

『ぬ、抜けた!? ハルウララ、ほとんど速度を落とさずにコーナーを通過しました!』

 

『あの勢いでカーブを抜けるとは驚きました。恐ろしいほどの覚悟ですね……!』

 

『後続との差が一段と開きます! 早くも独走態勢に入りましたハルウララ、これは最後まで行くのか!?』

 

 半ば単騎駆けとなる走りを見せる桃色の小柄な影に観客席は沸くが、本人は全く気を緩めない。

 

 ……規格外の存在が、このレースには居るからだ。

 レースを完全に自分のモノにしてしまえるだけの出鱈目な実力を持った化け物――【常勝】が。

 

 自身のスタートにのみ集中していたウララは、【彼女】がどれほど遅れているかを知らない。

 だが、確信していた。

 

 ──絶対に、【あの娘】は後から追い付いてくる──

 

 だから、その前に少しでも距離を広げておかなくてはならない。

 有馬記念は、まだ始まったばかりなのだから。

 




今回、拙作を読んで頂いて誠にありがとうございました。
ここまで書いてきても、ちっとも成長した気がしない……
でも挫けずに精進したいと思います。

予定ではあと2話で完結予定です。
それまでに少しでも良いものが書けるように頑張ります。
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