【完結】トレーナー育成計画(仮)   作:壱合目

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今回は外側視点の話はありません。
外側視点と内側視点の話を組み合わせるのが難しい……


2話目

 学内最強チームへの勧誘を断った?

 またまた~wwそんなウマ娘がいるはずないでしょう?

 …

 ……はい、いるんです。それが中の人です。

 

《チームリギル》──敏腕トレーナーである東条ハナの下に集った猛者達によって構成される、トレセン学園最強を謳われるチーム。

 東条ハナ女史の指導力は疑いようも無いし、所属ウマ娘達も最高クラスの実力者達。

 そんな栄光に彩られたチームからスカウトされたのに断るとか……バカnano?

 競争ウマ娘としての成功を収めるには、これ以上ない最適な環境なんですがねえ?

 なのに、何故断るんだ?

 

 訳 が 分 か ら な い よ ?

 

 とりあえず、ここに至るまでの経緯をざっとお話させて頂きましょう。

 競争ウマ娘としての成功を収めるべく、トレセン学園に入学した中の人でしたが……

 私は言いました、超が付くほどのコミュ下手であることを忘れてやしないかと。

 三つ子の魂百まで。そう簡単に中の人の性根が変われるはずも無く。

 トレセン学園入学後もコミュ障モード発動!周囲から距離を置かれております。

 

 ──いや、もっと積極的に交流しに行けよと!

 その常時無口モードは何時になったら解除されるんじゃい。

 せめて少しは表情を緩めろっつーに!

 緊張でガッチガチなその顔、外から見れば、近寄るなオーラ全開の鉄仮面でしかないんだぞ!?

 ……あ~あ、周りからは完全に近寄り難い存在として扱われちゃってますね……

 まさかここまで懸念した通りになってしまうとは……

 おまけに人数の関係か、本来なら相部屋になるはずの寮室が1人部屋になったことも追い討ちになってしまいました。

 

 さて、ボッチ生活をこうして完成させてしまった中の人ですが、ボディが超一級品であることは疑いようが無く。

 学内レースでは圧倒的な強さを見せました。

 これだけのモノを見せては放っておかれるはずもなく、走り終わるや否や、トレーナー達が我先にと押し掛けていますね。まるで砂糖に群がるアリの如し。

 ま、気持ちは解ります。

 中身こそヘボですが、肉体はチートですからね。その走りっぷりは規格外。

 特にレース最終局面になってからのスパートによる追込走法は圧巻の一言。

 ……実はこの走法、妥協の産物なんですけどね。

 ヘッポコな中の人には、このボディはハイスペック過ぎました。

 いざ走り出してもすぐには扱えず、序盤はとにかく感覚が肉体に馴染むまで慣らし運転で行く──つまり、スピード抑え目で走るしかないんですよね。

 そのせいで後半にならんと本領が発揮できないんです……まあ、その慣らし運転でも相当な速度なんですけど。

 ここまで来ると、ズルとすら言いたくなります。

 

 そんな才能あるウマ娘を見たら、そりゃトレーナーとしては放っておけないでしょう。

 ……でもね、中身はヘボなんですよ(2回目)。

 見て下さい、人波に囲まれてビビッております。

 外見には全く表れておらず相変わらずの無表情顔ですが、内心では滝の様に冷や汗を流しているでしょう。

 多数の他人に囲まれるというのは、ボッチにとっては最大級の恐怖ですから。

 あかん、そろそろ精神的に限界点が近付いてますね。

 このままじゃ、いつ「寡黙なウマ娘」という仮面が剥がれ落ちるか……と思ってたら。

 何やら人波が割れまして──

 

 そこに、東条ハナ女史が近付いてきたというわけです。

 彼女の名誉のために言っておくと、決して力づくで周囲を押し退けてきたわけではありません。

 逆に、周囲が自然と彼女の為に道を開けたんです。

 それだけ隔絶した存在ですからね、東条ハナというお人は。

 

 ……って。お~い、中の人?

 

 …

 ……駄目だ、完全に固まってますわ。

 女史の圧倒的な存在感に対して、完璧に委縮してます。

 この時ばかりは感情を隠してくれる自分の無表情無感情顔に感謝するところでしょうね。

 中の人の素のままだったら、腰抜かして立てなくなってましたよ……冗談抜きで。

 

 ただ、これは絶好のチャンスです。

 チームリギルっていったら、トレセン学園内最強のチーム。

 所属メンバーも、皆、ラスボスクラスの強者ばかり。

 チームを率いる東条ハナも、この界隈で最高クラスの指導力の持ち主であると断言できます。

 強さと栄誉を求めるのならば、これ以上ない場所。

 本来ならば物凄い倍率の入部試験を通過しなければ得られない環境なのに、それを向こうからお話を持ってきてくれるとは……

 中の人、運が向いてきたんじゃない?

 

 行け、中の人!

 ただ頷くだけで良い。

 それで道が開けr

 

「大変、光栄ですが──」

 

 ──は?

 

 

 はい、以上。せっかくのスカウト──それを断っちゃったんですよ、このスカポンタンは!

 

 その時のお断りの言葉は、途中で詰まっちゃったんですがねw

「大変光栄ですが」の後も言葉を続けるつもりでしたが、ハナ女史の迫力にチビッて何も言えなくなっちゃっただけなんですがね(笑)

 

 ま、過程のことはどうでも良いとして、加入勧誘を蹴ったという結果が重要。

 ウマ娘としての栄光を得るためには最高の環境である最強チームへの誘いを何故断ったのか?

 その理由は……

 

 ──中の人がヘタレだから。

 

 これに尽きます。

 敏腕トレーナーの下、トップクラスの実力者達と切磋琢磨できる。

 それは素晴らしい環境であることに間違いありません。

 そして、そこには密接なコミュニケーションが発生します。

 活発な意見交換や互いに対するアドバイス、的確に下される助言。

 これ以上ない理想的なサイクル。

 ……しかし、その波に生粋のヘタレメンタルの中の人が乗れるでしょうか?いや、乗れるはずがない(反語)。

 会話?意見の交換?

 ボッチ体質の中の人にとって、それらは心身を削る地獄の作業に他なりません。

 ましてや、その相手が憧れの対象ならばなおさら。

 転生前にウマ娘というコンテンツに触れていた中の人にとってみれば、チームリギルの面々は憧れの存在。

 ……そんな相手を目の前にしてコミュニケーションを取る?

 緊張による呼吸困難を引き起こして、あの世に召されてもおかしくありませんね。

 

 ポンコツ、ここに極まれり。

 

 いや、どーするんだよ?

 こんなんじゃ、競争ウマ娘として栄誉を掴む、という夢のスタートラインにも立てないぞ?

 

 ウマ娘がメイクデビューするためには、基本的にトレーナーと契約する必要があります。

 アニメ等ではウマ娘が5人以上所属するチームに加入しなければならないという設定もあったようですが……

 この世界では、その条件は無いようですね。

 ただ、デビューのためにはトレーナーとの契約は必須。

 トレーナー無しでは、そもそも公式レースには出場すらできないのです。

 

 さすがに中の人も色々考え出したようですね。

 とりあえず考え事に集中したいので、学内レースへの出場は一時見合わせることにしたようです。

 出たら間違いなく人だかりを集めちゃってビビっちゃうからね、仕方ないね(笑)

 とは言っても、何も走らないようでは脚が錆びつきかねません。

 そのため、人目を避けて夜間にサブグラウンドでの調整走行を行うことにしたようですね。

 …この時、生徒会長のシンボリルドルフを始めとした幾人かのウマ娘に走りを目撃されちゃって、彼女たちの間で話題に挙がってしまってますが…本人、それに全く気付いていません(笑)

 何とか打開策を見つけようと思考に没頭する余りに、周囲のことにまで気を配っている余裕が無いようです。

 

 そうして何日か考え込んでおりましたが……

 おや?どうやら何か思い付いたようです。少し、頭の中を覗いてみましょう。

 

 ──そうだ、逆スカウトをしよう──

 

 ……そう来たか~。

 トレーナーとウマ娘との契約の成立には様々な形がありますが、ウマ娘の方からトレーナーに契約の打診がされるパターンもあります。

 原作ゲームでもこのパターンでトレーナー(プレイヤー)と縁が結ばれるウマ娘もいるんですよね。

 中の人、そのパターンでの契約成立を狙っているようです。

 

 ただ、誰でも良いという訳ではありません。

 あんまり大所帯や名前の知られたチームには行きたくないようですね。

 何故って?……複数人による中身の濃い遣り取り──それだけ密度の濃いコミュが生じるからです。

 学内レース以降に声を掛けてくるトレーナー諸氏は、皆、実績のある人ばかり。

 そんなところに行ってしまったら密接なコミュニケーションが発生して精神が死ぬ!

 だから少しでもコミュ密度が低いところを狙おう、と。

 トレーナー1人ウマ娘1人のマンツーマンチームが願いどころ、と考えていますね。

 

 ……ずいぶん厳しい制限を設けましたなあ……

 他のウマ娘と契約していないって……その条件満たすのって、新人トレーナーしか居なくないですか?

 まだ経験が浅い彼らに己の身を任せるというのも、かなりのリスクを伴うと思うんですが……

 

 ……駄目です、自分の思いつきを自画自賛する余りに、その危険性に全く気付いていません。

 こりゃまた、一筋縄ではいかん気しかしませんが……さてさて、どうなることやら。

 




今回、拙作を読んで頂いて誠にありがとうございました。
ここからもっと精進していきたいと思います。
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