完全に戦意を喪失し蹲る奏斗を英寿はただ無言で見下ろす。
この酷く弱り切った姿からして、この場で暴れ回る事は無いだろうが英寿達を包む空気は酷く重苦しい。
「ゴオオオオオォォォォ......」
「!」
そんな空気に横やりを刺したのは巨大な唸り声だった。
「おいギーツ、見ろ!」
道長が指さす方角に視線を移す。それは景和と城戸真司が戦っていた地点。
その上空を蠢く影は、遠く離れた英寿達にも十分視認出来る程巨大だった。
「アレは....」
◆
「ゴオオオオオォォォォ......」
見た目は巨大なウミウシなのにクジラの様な唸り声を上げながら、スラグフォートレスジャマトはタイクーンと龍騎達の真上を旋回している。
「揃えてはねえが1体も居ないとは言ってねえ。デザグラでは破壊不可能な鉄壁の要塞。ギーツならまだしも、お前等であの城を落とせるか?」
ケケラが挑発してる間にフォートレスジャマトの額に眩い光が集まる。
まだライダーになる前の景和はあの城と遭遇している。これから何が起こるか容易に想像出来た。直ぐに駆け出す。
「マズイ、離れて!」
「うおおお!」
龍騎サバイブも本能的に危機を察知し一目散に走る。
次の瞬間、フォートレスジャマトの額から巨大な光線が発射された。目標はタイクーンBR。
鏡に入って回避しようにも運悪く現在地からビルの窓まで距離が有る。このままでは直撃してしまう。
「だったら....」
《SET》
《DUAL ON》
しかしタイクーンBRは比較的冷静で素早く新たなバックルをブジンソードバックルに装填。
直後、光線はタイクーンの居た地面に着弾。
その爆発の衝撃は凄まじく付近の建物のガラスを粉々に粉砕した。まるで散々鏡で翻弄してきたタイクーン龍騎フォームへの報復かの様に。
辛うじて回避した龍騎サバイブはその場で転倒。ケケラは爆心地から近かったが自らのレーザーレイズライザーが発するシールドで難を逃れる。
「景和!」
「ウハハハハハ、まあ精々頑張れよ」
「お前ぇ!!」
タイクーンの身を案じる龍騎を嘲笑しながら退避するケケラ。
彼を追跡してる暇は無い。今度は一本の触手が龍騎サバイブを叩き飛ばそうと伸びて来たのだ。
身構える龍騎サバイブ。
刹那、目の前を何かが高速で通り過ぎ龍騎サバイブに向かう触手を切り裂いた。
「今のは...」
「こっちだウミウシ!」
全くの別方向から聞こえる景和の声。真司が視線を移した先は直ぐ近くの高層ビル屋上。
そこには再び別の姿へと変化したブジンソードが佇んでいた。
今装備してるバックルは景和が今まで一番長く仕様し続けた物。 漆黒の武士の鎧に鮮やかな黄緑と白銀と甲冑鎧が交わった姿。
《GREAT NINJA!》
仮面ライダータイクーン・ブジンニンジャフォームである。
「行きましょう真司さん!」
「おっしゃあ!」
《READY FIGHT!》
タイクーンBNは両剣型武器・ニンジャデュアラーを両手に構えながらスラグフォートレスジャマトに飛び移ろうと高くジャンプ。
龍騎サバイブも飛来したドラグランザーに飛び乗り、2人のライダーは鉄壁の要塞目掛け飛翔する。
「アイツは確か体の中が弱いんです! でも周りの武器が邪魔で」
「じゃあまず、それ全部落とすぞ!」
こんな要塞が暴れ続ければ街の被害は拡大するばかり。まずは攻撃手段を奪わねば。
近付かせまいと伸びるフォートレスジャマトの複数の触手。先端には開花前の花びらの様な部位が有り、大人一人分程の大きさだ。屈強な表皮も相まってあんな物で殴打されれば例えライダーと言えど命は無い。現にタイクーンになる前の景和はアレの犠牲者の現場に居合わせている。
だがそれ等を瞬身の術や変わり身の術など忍術を駆使し機敏な動きで回避するタイクーンBN。
ニンジャフォームは機動力・俊敏性・隠密性に優れた武装である。
途中、触手の上に飛び移るとデルードマントを靡かせながら本体へ向けて風の如く疾走する。
触手の先端から大量の光弾が発射されたが、それらを全て龍騎サバイブがドラグバイザーツヴァイから発射された炎球で撃ち落としタイクーンを援護する。先ほど使用した飛龍爆連弾の効果がまだ持続しているのだ。
やがてタイクーンBNがフォートレスジャマトの背中に降り立った。
これでジャマトから死角になる筈、と思った直後に側で爆発が発生。
見ると背中に聳え立つ城の石壁から古風な大砲が吐出していた。
明らかに体表を直撃してるのだが自身が発する弾丸だからかスラグフォートレスジャマトは気にも止めず飛行を続けている。弾幕は激しく、自分一人に対し敵の強大さは圧倒的だ。
フォートレスジャマトの表皮に刃を突き刺すがやはり異常な程頑丈で真面な攻撃ははじかれてしまう。しかしタイクーンBNは臆さない。
「今度はもう逃げない....」
今は彼は、初めてデザグラに居合わせた光景を思い出していた。
まだライダーの存在すら知らずただの就活生だった頃の景和に、コイツは現れた。
好き放題街を破壊するこの城を前に、成すすべなく逃げる事しか出来なかった自分。
そんな時、颯爽と現れたのがギーツ事、浮世英寿だった。
最初こそキザで無駄に自信家、勝利の為に自分を何度も騙し、遂には先ほどまで命を奪おうとさえする所だった。
しかしそのいけ好かない頃から、英寿は常に景和に対し諦めない、信じる事の大事さを説いてきた。今では彼の言葉が自分にとって鼓舞の意味合いとして根付いている。
だからこそ誰かを守ると言う志が同じ時は共に戦えたのだ。
「お前には.....あの時のお返しだ!」
そう言ってタイクーンBNはニンジャレイズバックルに装着されたレバー・クナイスターターを引き
手裏剣型のシュリケンジェネレーターを回転させる。
《GREAT NINJA VICTORY!》
その場で高くジャンプすると、タイクーンBNの姿が分身の術により複数人に増加。
全ての分身体から巨大な光の手裏剣が放たれ、向かってくる砲弾や触手をニンジャデュアラーで次々と叩き斬り裂いて行く。
一人でも機敏に戦うタイクーンBNだが、龍騎サバイブも負けてはいない。
襲い掛かってきた触手を次々と撃ち落とし、ドラグランザーが噛みつき引き千切る。
「ゴオオオォォォ.....」
やがて身を身を翻したフォートレスジャマトは龍騎サバイブとドラグランザーを纏めて噛み砕こうと巨大な口を開きながら接近してきた。
しかし龍騎サバイブはドラグブレードを展開しその刃に再び炎を宿らせる。
「木造なら燃え易いよな?」
そして急降下するドラグランザーの上でドラグブレードを構え、大口を回避。そのまま下腹部から生える触手をバーニングセイバー一振りで全て切断。
「喰らええええぇぇぇぇぇぇ!」
加えて下腹部にも聳え立つ城も一等両断してしまった。炎の大剣で切り裂かれた城は派手に爆発し大炎上。
その一方で、真上ではタイクーンBNの必殺技はまだ続いていた。
全ての触手と砲弾を叩き斬ったのち、分身達が高速で一斉に大砲を斬り裂いた。正確には大砲本体ではなく、大砲内部に位置する砲弾である。城その物も体の一部なら火薬の入った砲弾を内部で爆破すればジャマト本体も負傷するのではと考えたのだ。予測通り大砲は一斉に爆発、火の手は城にまで達し黒煙を上げ燃え広がる。
「ゴオオオオオォォォ」
フォートレスジャマト本体も熱そうな呻き声を上げた。
「よし、このまま一気に....って、うわ!?」
ふと地面がグラリと振動しよろめくタイクーンBN。彼の立つ場所が徐々に傾き始めた。スラグフォートレスジャマトが急に方向転換し急上昇を始めたのだ。
「ちょ!ちょっと待っ.....」
「景和!」
龍騎サバイブの呼びかけを他所にスラグフォートレスは空を登っていく。
重苦しい城が無くなり身軽になったのか上昇スピードは異様に早い。地上の高層ビル群はみるみる内に小さくなり角度もほぼ90度まで傾く。遂には雲の上まで到達してしまった。
タイクーンBNは表面に辛うじてしがみ付いていたが、押し寄せる風圧に耐えきれず体力の限界により振り落されてしまう。
「うあああああああぁぁぁぁ落ちるうううううぅぅぅー-----!!!」
高度は大体3000メートルと言った所だろうか? ライダーに変身中とは言えこんなパラシュートの無いスカイダイビング状態で正気を保つのは難しい。
何か策は無い物かとベルトを探ってみると...
「って、これは!?」
取り出したのは先ほど龍騎と戦って使用したブーストレイズバックルだった。
通常、必殺技使用後は何処かへ飛んで行き繰り返しの使用は不可能な筈だが、先ほどはコンファインベントにより不発に終わったのでどうやらノーカンだった様だ。
コンファインベントはアドベントカードの効果こそ無効にするがカードその物を消失させる物ではない。レイズバックルもアドベントカード同様、再変身すれば効力は戻るらしい。
理屈はどうあれ、タイクーンBNは一瞬使う事を躊躇った。これの送り主があのケケラだからだ。
「......でも、今はこれしか!」
《SET》
《DUAL ON GREAT!》
《BOOST》
《READY FIGHT!》
不本意がならもタイクーンは再びブジンブーストフォームへ変身。すぐさまブーストライカ―を呼び出す。
《BOOSTRIKER》
「キュイイイイ!」
炎を吹かせ空を疾走してきたブーストライカ―・タイクーンモードの背に立つ。これで地面に激突する心配は無くなったが、問題はジャマトの方だ。
「ゴオオォォォォォォ.......」
明らかに憤怒の感情が混じった唸り声を上げながら、スラグフォートレスジャマトは方向転換して此方に頭を向けており、額に光線のエネルギーを集めいた。
その光の量は先ほどの比ではない程膨張しており、自身の全長程を優に超えている。
ブーストの力が有れば回避は容易だが、自分の背後には都市が広がっている。あんな物が地上に当たれば街一つ消し飛ぶかもしれない。
何とかしようにもジャマトは既に光線の発射準備は完了していた。
「やめろぉ!」
タイクーンBBの叫びも空しく、
スラグフォートレスジャマトの額から容赦なく光線が発射さ――――
《FREEZE VENT》
不思議な事が起こった。
突如、スラグフォートレスジャマトの体表が一瞬で氷結。エネルギーの光は消失、頭部の触覚一本動かなくなったのだ。
「へへ、運も実力の内ってな?」
「真司さん!」
ドラグランザーの背に立ち、タイクーンの側まで飛来した龍騎サバイブが得意気にドラグバイザーツバイを見せつける。
特定の対象を動けなくするフリーズベントのカード。ストレンジベントを使いこの土壇場で引き当てたのである。
全身を凍らされたフォートレスジャマトは飛行能力を失い、頭から垂直に墜落しはじめた。
こうなれば最早ただのデカい的である。
「倒すなら....」
「今しかない!」
2人とも考える事は同じだった。同時攻撃でジャマトを粉砕する。
そしてタイクーンは思い出す。以前アレを単体で撃破した英寿の決め技を。
偶然か、それを行うには既に条件は揃っていた。
「だったら、こうだよな!」
《REVOLVE ON》
そう言って、ブジンソードバックルが填ったデザイアドライバーを反転させる。するとタイクーンBBの全身が両手足を広げたまま軽く浮遊。
「リボルブリング」と呼ばれる銀色のリングに包まれ、タイクーンの全身が回転しながらまるでプラモデルの様に変形し上半身と下半身の装甲が入れ替わる。
これぞデザイアライダーのみが行えるフォームチェンジ方法の一つ「リボルブオン」
簡単な操作だけで上下のレイズバックル能力を瞬時に入れ替える事が出来る機能だ。
リボルブオンを完了した事でタイクーンブジンソードは下半身にブーストによる真紅のアーマーを纏い、上半身はブジンソードの物だが見た目は黒く塗られたニンジャフォームに酷似していた。
さながら「タイクーン・ソードブースト」と言った所だろうか?
変形の一部始終を龍騎サバイブは無言で見つめていた。
リボルブオンの存在自体はデザグラを調査してた頃か熟知はしていたが、この人間の関節の挙動範囲を遥かに逸脱した変形は間近で改めて見ると異様である。
「......なあ、今の大丈夫なのか?脱臼とかしてないか?」
「え?......いやそんな事は.....」
改めて考えれば自分でも不思議としか思えない現象である。
他のデザグラ参加者同様さも当たり前の如くやってのけたが、龍騎が疑問に思う気持ちも理解出来るタイクーンSBは言葉を募らせ2人の間に一瞬だけ微妙な空気が流れる。
しかし今はそんな事を話してる暇は無いのは百も承知。
「そうか....まあ良いや、兎に角決めるぞ!」
「あ、はい!」
自から振った話を強引に打ち切り若干閉まらない感じになったが2人は必殺技の準備にかかる。
デッキからカードを引き抜く龍騎サバイブ。引いたのは龍騎のライダーズクレストが描かれたファイナルベントのカード。しかしサバイブの様に黄金の翼が描かれていない。これはサバイブでない通常の龍騎が使用するドラゴンライダーキックだ。本来サバイブ状態で所持する物では無い筈だが、これも英寿によりカードの所持数が増えた結果なのだろう。
即座に召喚機にカードを挿入する。
タイクーンSBもブーストバックルのグリップを絞りコマンドを入力する。
《FINAL VENT》
《BOOST TIME!》
ドラグランザーとブーストライカー、互いに共闘する異形の背から高く飛び上がる2人のライダー。
途中、体を捻らせ上方向から墜落するフォートレスジャマトに向けて片足を向ける。
そして彼らの背後から炎を塊となり駆け抜けるブーストライカーが重なり、ドラグランザーが口から炎を浴びせ、急上昇を始める。
《GREAT BOOST GRAND VICTORY!》
『だああああああああぁぁぁぁぁー-------っ!!!!』
凄まじい量の炎を身に纏ったダブルライダーキックが炸裂。
それはフォートレスジャマトの巨大な口の中に到達。
喉を貫通し、暗闇の様な体内も、体と一体化した城内を焼き尽くす。
最後は炎上した城の残骸を突き破り、龍騎サバイブとタイクーンSBは空中へと投げ出された。
やがて激痛で悶え苦しむスラグフォートレスジャマトの皮膚がベコベコと膨れ上がる。
遂にはフグの様に全身が膨張。
最後は太陽が二つ出来た。
縦横無尽に暴れ回った鉄壁の要塞は、2人のライダーにより上空で大爆発を引き起こす。
この光景を地上で鬼のような形相をしながら眺める男が一人。
「桜井景和ぁぁ!! 見てろ、このままで済むと思うなぁ!」
ケケラはそう叫び、憤慨しながら何処かへと去るのだった。
ブジンソードのリボルブオン。一応フィギュアでは可能らしいのでダブルライダーキックの為に使用させました。デザインはニンジャフォームのリペイントっぽいので実写には出せなかったのでしょうか。
名前は他に良いのが思いつきませんでした。